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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【8月10日㈬~8月16日㈫】

先週の通信、文末で触れた“買付け交渉中の作品”ですが、無事先方からOKの返事が来ました。「あなたとやっと仕事が出来て嬉しい」。長年やり取りはしていたものの、その会社とは過去に契約を結んだ実績が無かったので、担当者がそんな内容の返事をくれました。が、しかし…「オファーを受け入れる」とは明確には言っておらず、書いてあったのは上記の一行だけ。ちょっと不安になってきて、不粋ながら「それは我々のオファーに合意した、という意味ですよね?」と確認。「その通り。追って契約書案を送ります」と折り返しのメールが来たので大丈夫そうです。でも、これで100%安心、ということではありません。本契約書に両者でサインをするまでは気をゆるめず、細部の詰めに入りたいと思います。

ちょっとホッとしたので夏休みを取りたい気分なのですが、今年も引き続きのコロナ禍。特に旅行の予定を入れているワケでもなく…。そうこうしているうちに世間のお盆休みも終わり、海外の取引先もバカンスから戻り始めてきていて、完全にタイミングを逸してしまった感じです。コロナが無ければ、どこか海外に行きたかったなぁ。

一時期、夏休みを兼ねてロカルノ映画祭に出かけていたことがあります。調べたら、2002年、2003年、2004年、2006年の4回参加しています。「ホテル4泊の宿泊代と、映画祭の登録料を持ちますので参加しませんか?」という映画祭事務局からの招待メールをもらったのがきっかけ。ロカルノはイタリアとの国境近くのスイスの避暑地です。今年は、親しくしている配給会社の方が、今も続いている前述の招待を受けて初めて参加され、現地からLINEで様子を知らせてくれたり、Facebookにも投稿していたので、最後に訪れてから15年以上も経ったロカルノに想いを馳せることが多かったのでした。そこで今回は、ロカルノ映画祭について少々。

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※ロカルノへは、ミラノから映画祭の送迎車で1時間強。チューリッヒから   電車で入る方法もあります。画像はロカルノ駅。

何しろバカンス気分満点の映画祭。山間の湖沿いという風光明媚なロケーションのせいか、参加している業界人もベルリンやカンヌに比べてのんびりモード。街の中心地ピアッツァ・グランデで毎晩行われる野外上映は、一度に7,500人が観ることが出来るヨーロッパ最大の上映会だそう。以前も書いた記憶がありますが、映画の上映中に大きなスクリーンの上方、夜空に目を向けると、そこに本物の流れ星が流れるのを目撃したりして、非日常感たっぷり。今でも忘れられない映画体験です。

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※ 2002年ロカルノで銀豹賞を受賞したアルゼンチン映画『ある日、突然。』

しかし若手監督の登竜門と言われる映画祭で、コンペ部門はコマーシャルな映画は少ないので、ビジネスに向いているとは言い難い映画祭であることは確か。私も4回行ってて、そこで買付を決めた映画は、上の写真の『ある日、突然。』というモノクロの、オフビートな青春映画1本のみ(残念ながら興行はかなり苦戦しました)。買付をシリアスに検討した作品で思い出すのは2006年にコンペに出品されていたライアン・ゴスリング主演『ハーフ・ネルソン』ぐらいでしょうか(当時、別の会社に売れてしまいましたが結果的にお蔵入り。その会社の配給で公開されることはありませんでしたが、11年を経て彩プロさんが2017年に配給しました)。

コンペ以外にも何部門かありますが、特筆すべきはレトロスペクティブ。その充実ぶりはシネフィルにはたまらないものがあります。近年はサム・ペキンパー特集やジョージ・キューカー特集、今年はダグラス・サークを特集していました。私が行っていた2003年には“ジャス映画特集”がプログラムされていて、そこで初めて『真夏の夜のジャズ』を観たり、五所平之助監督の『マダムと女房』、岡本喜八監督の『ジャズ大名』などを観ました。純粋に仕事で来ていたら、こんな特集に通ったりは出来ませんが、そんなふうに楽しめるのも、夏休みを兼ねているからこそ、という感じです(実はその15年後に『真夏の夜のジャズ』の買付に走りましたが、玉砕)。

 映画の上映の合間に観光スポットに出かけられるのも魅力。湖の遊覧船はもちろん、ケーブルカーに乗って湖や街を見下ろす絶景を体験することも出来ます。あとは食事。スイスなので当時から物価は高かった記憶がありますが、イタリア語圏ゆえ美味しいイタリアン・レストランも多くて、食事に困ることもありません。

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※ロープウェイで展望台へ。眼下、雲の下にマジョーレ湖が見えます。

とりとめもなくロカルノについて書いてきましたが、ちゃんと読み物として成立しているか疑わしい今週の通信。自分自身がロカルノにまた行きたくなっただけ、という話もあります(笑)。

ちなみに今年の映画祭、コンペ部門はブラジル=フランス合作のジュリア・ムラット監督による『Rule 34』という作品に、最高賞である金豹賞がもたらされました。トレーラーを見る限り、セックスがテーマの“物議醸す系”映画の気配です。個人的には審査員賞を受賞した『GIGI, LA LEGGE』というイタリア映画が気になっています。同じ監督の、2017年のイタリア映画祭で上映された『幸せな時はもうすぐやって来る』という映画に、「ワケがわかんないんだけど、とにかく凄い!」と衝撃を受けたので、これも観てみたい(ただし配給のハードルは限りなく高そう)。

そういえば、今週末から昨年のロカルノ映画祭の金豹賞受賞作であるところのインドネシア映画『復讐は私にまかせて』が公開になります。なんだか呼ばれてる気がするので(笑)、観に行かなくちゃ。

texte de Daisuke SHIMURA



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