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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【2月14日㈬~2月20日㈫】

第74回ベルリン国際映画祭での仕事を終えてロンドンに一泊。何もかも高くて驚愕しつつ(着いて食べたホテル近くの日本料理店のランチの焼魚定食が日本円で6,000円近く、ビール入れたら7,500円!(@_@))、観劇したり(「太平洋序曲」を観ました)、小雨降る中ハイドパークを走ったり、束の間の休日を楽しんで羽田に向かう機内でこれを書いています。 

さてさて。大変お待たせしておりましたが、一昨日、遂に次回配給作品『ミセス・クルナス vs.ジョージ・W・ブッシュ』の、5月3日公開決定が、ネット上で情報解禁になりました。ザジにとって、新作映画では実は初のドイツ映画配給です。

チラシ、ポスターはこんなデザインになりました。

作品との出会いは、昨年4月に東京で開催された“ドイツ映画祭 2023”。「どんな映画が上映されるのかな?」と、気軽な気持ちでサイトを訪問。LINE UPに目を通して一番気になったのが『クルナス母さんvs.アメリカ大統領』(映画祭時の題名です)でした。〈タリバンに間違えられ無実の罪でグアンタナモに収監されてしまった息子を助け出すため、ドイツに住むトルコ移民一家の主婦が、電話帳で見つけた人権派弁護士の力を借りて、アメリカ最高裁判所でブッシュ大統領を訴えに出る〉というストーリーに興味を持ち、早速サイトに貼られているオリジナル予告編を見てみました。

「えっ?これコメディ?」。今回お披露目した日本版予告にも入れているのですが、主人公のクルナス夫人が自宅に戻ると、そこには報道陣がいっぱい、というシーン。「あなたの息子はテロリストか!」と詰め寄る記者たちに放つ第一声が、私のツボにズキュンと入ってしまったのです。その第一声とは、「植木鉢から降りて!マジで!」。カメラを担いで玄関前の植木鉢に乗って撮影しようとするクルーを諫めるセリフです。何と説明すれば良いのでしょう。これは“好み”としか言いようがありません。その庶民感覚の主人公に一発で興味を持ってしまった私なのでした。

早速オンラインでチケットを押さえ、4月のある日、会場のユーロライブに出かけました。いやぁ、想像した通り、いや想像以上の面白さでした!「植木鉢から降りて!」のみでは無かった(笑)。ベルリンに出品されていた一昨年はコロナ禍で、私自身まだ復帰しておらず、オンライン・スクリーニングもしてなかったのでノーチェックでした。同業他社の皆さんも同じような状況だったのでしょうか?主演俳優賞、脚本賞の銀熊賞2冠に輝いていたにも関わらず、日本向けの権利はまだ空いていたのが不思議と言えば不思議ですが、主人公が“お洒落なマダム”ではないから日本のマーケット向きではない、と他社さんは二の足を踏んだのかもしれません。私も翌月にカンヌ国際映画祭出張を控えていたので、速攻でオファーはしたワケではありませんが、カンヌから戻っても気になり、スタッフにオンラインで観てもらうことにしました。そして社内の賛同を無事得られ、買い付け交渉に入り、ザジ配給での公開が決まったのでした。こうして買い付けの経緯を書いてみると、やはり“縁があった”としか、言いようがありませんよね。 

情報解禁後、作品名を入れてXをサーチしたりしているのですが、早速田中康夫さんの目に留まって、“政府の欺瞞と闘う名作「スミス、都へ行く」を彷彿”と、ポストして下さいました。今回のキャッチコピー「オカン、都へ行く。」に込めたフランク・キャプラ的なヒューマンで温かい映画である、というサインをしっかり受け取って下さっているようで、感激しました。

 監督は『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(’20)の俊英アンドレアス・ドレーゼン。今回のベルリンでも、『ミセス・クルナス~』の次作『From Hilda with Love』(英題)がコンペティション部門に出品されています。第二次大戦下、レジスタンス活動をして、ゲシュタポに捕らえられてしまった若い男女の物語で、二人が出会い恋に落ちるラブ・ストーリー部分と、牢獄での辛い日々を強いられるお話が交互に描かれる手法で、マーケットの試写で観ることが出来たのですが、どっしりと見応えのある映画でした。賞に絡むとしたらタイトルロールのヒルダ役を演じた女優さんが、主演俳優賞を獲るのでは?と思ったりしますが、めちゃめちゃ評判の良い『My Favorate Cake(英題)』というイラン映画(こちらは未見。監督の前作は日本でも公開された『白い牛のバラッド』)の主演俳優も、相当良い芝居をしているらしく、明日の授賞式が気になることろです。 

『ミセス・クルナス~』の流れで、今回のベルリン国際映画祭について触れましたが、私はミーティング中心の6日間で、試写は10本も観れていないので、映画祭各部門の全体像を語ることが出来ません。しかしながら数少ない試写作品の中で、かなりハマってしまった映画もありました。でも「ザジっぽくないよなぁ…」と思う映画なので(「ザジっぽい作品、って何よ?」という話もありますが…)、買い付けに至る可能性は、今のところさほど高くありません。一方で各社とのミーティングで、「リバイバル劇場公開したら面白いかも!」、「この監督のレトロスペクティヴやりたい!」という、企画も浮上しました。が、うちの会社のスタッフのマンパワーも限られているので、「やるとしたら2025年の後半以降?」という感じです。そんな悠長なことを言っていると他社さんに先越されてしまうかなぁ、と思いつつ、こちらも“縁“なので焦らず話を進められれば、と思っております。

「noteに貼ってもOKです」と許諾を頂いている、某劇場の方が撮った画像をベルリン・レポート代わりに何枚か貼って、今週のザジ通信を閉めさせて頂きます。あと2時間で羽田に到着です!

コンペ部門の作品が上映されるメイン会場
Berlinale Palast
Berlinale Palast場内。公式上映舞台挨拶の模様。
マーケット試写が行われるシネコン
Cinemaxの館内
業界紙に掲載されるコンペ作品の星取表

texte de daisuke SHIMURA


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