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    クトゥルフ神話TRPGに関するツイートを保存する備忘録

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ニンジャスレイヤーで分かるWarframe~ニンジャなら無料~

 我らがザ・ヴァーティゴ=サンの耳にも「ニンジャなら無料」という謳い文句が届いている宇宙ニンジャSFアクションゲームWarframeですが、今年で11年目になる長大なオンラインゲームであるため、無料と言われても、実際にどのようなストーリー展開があったのか、ついていけない方も多いかと思います。  そこで今回は、ニンジャヘッズ向けに、「ニンジャスレイヤーで例えると、Warframeはいったいどうなっているのか」を解説したいと思います。  当然、このテキストにはWarframeの核

    • 骸骨を乞う

       「帝国憲法によって信仰の自由は保障されております。従って、貴殿の『息子の霊を神殿で祀るな』というご要望にはお応えできません」  「馬鹿な!確かに、我らが一族は帝国に戦力を提供する契約をした。だが、死後の作法まで貴様らに委ねたわけではない!」  神殿官は眉一つ動かさない。  「帝国は貴民族の信仰を尊重しております。葬礼を邪魔することはありません。同様に、我らは帝国のために命を捧げた忠勇なる霊を祀り――」  「貴様らの礼拝もどきを受けて、倅が神の国へ行けるか!」  族長は激高し

      • 犬に非ず、人に非ず

         江戸では何人たりとも犬を殺してはならぬのだという。犬以外の生き物はどのように扱っても構わないが、犬だけは傷つければ死罪となる。  犬公方。  時の将軍が蔭でそのように噂されるのは当然と言えた。  「せめて、生類全てを憐れむというのなら、納得はできぬが理屈は通る。だが、なぜ犬だけなのだ?」  「よせよせ、犬だけでも一苦労なのに、生類全てとなれば、儂らは足の踏み場も無くなるぞ」  その時である。夜の静寂を破る悲鳴と共に、獰猛な犬の吠え声が響き渡る。  「御前!」  老中、青山備

        • 2023年7月2日

          新クトゥルフ神話TRPGの新しいまとめ”Miskatonic Repository Best-Sellers - Summer 2023”が公開を開始した。タイトル通り、2022年7月から2023年6月までのミスカトニック・リポジトリにおける英語で書かれたテキストのベストセラーをまとめたものとなっている。現在の新クトゥルフ神話TRPGのトレンドを知る上で、大いに参考になりそうだ。 https://www.drivethrurpg.com/product/443795/Mis

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          2本

        記事

          ターナー写本に関する覚書

          はじめに  この文章はSentinel Hill Pressのホームページに掲載されている”Notes on theTurner Codex”(https://sentinelhillpress.com/downloads/notesontheturnercodex/)の邦訳です。  クレジットにもある通り、ターナー写本は『クトゥルフ・ナウ』収録の「悪魔のロックバンド」で初出した魔道書で、マヤ文明を通して見たハスターに関する記述を特徴としています。  ハスターは昨年度行われ

          ターナー写本に関する覚書

          捧げ手(サクリファイアー)の酒宴

           ゴロヴィンの両手をチェンバース大佐が拘束し、大帝がサラダと酢を彼の口と鼻に流し込んだ。 「ゴボボボッ!ゴボボーッ!」 「皇帝は汝ら臣民の尊父、ならば飲食の好悪を正すのも我が役目なり。どうだ、旨いだろう?」  噴出すれば死あるのみ。鼻から血を吹き流しながら、ゴロヴィンは地獄の液体を嚥下し続けた。  「大帝の……仁愛に……感謝……を」  感謝の辞を述べ切ったゴロウィンに周囲は安堵した。 「さて諸君、再度の乾杯を。ここにある酒ときたら小便と良い勝負だが、棟梁よ、お前なら余の酒と

          捧げ手(サクリファイアー)の酒宴

          【90年代心霊遺産】集団失踪事件で有名なあの宗教団体の施設が廃墟化。中は今でもオカルトパワーみなぎってた…【ホラー/宗教団体/山奥/夏休み/肝試し/生配信】

          こんばんわ、ヤマムキです。今夜も皆さんの分まで凸していきます!  今夜は某県の山中に来てます。ここはですね、昔、集団失踪事件を起こした曰く付きの宗教団体の施設だったんですよ。今は色々あって権利関係が宙に浮いちゃって、不法侵入にはなりません。  さて、入ってきますね。集団失踪ってことにはなってますが、当時の噂だと、教祖様が信徒を皆殺しにしたとか色々言われてました。これでもね、大昔の週刊誌とか調べてるんですよ俺。あ、スパチャありがとうございます。  ライト暗くないですか?…大丈夫

          【90年代心霊遺産】集団失踪事件で有名なあの宗教団体の施設が廃墟化。中は今でもオカルトパワーみなぎってた…【ホラー/宗教団体/山奥/夏休み/肝試し/生配信】

          「ラヴクラフトは魚介類が嫌いだから、彼の作った神話生物は皆海産物の姿をしている」説は正しいのか

          ラヴクラフトが魚介類を好まなかったのは非常に有名な話で、そこから「ラヴクラフトは海産物が嫌いだから、彼の作った神話生物は皆海産物の姿をしている」という説が国内外問わず流布している。 しかし、ラヴクラフトが創造した神話生物が本当に魚介類だらけなのか、それを検証した調査は寡聞にして見たことが無い。「ラヴクラフトは魚介類嫌い」「ラヴクラフトは深きものや古のものを創造した」程度の論拠しか挙げられたことはないのだ。  そこで、今回はラヴクラフトのクトゥルフ神話作品を確認し、彼が創造した

          「ラヴクラフトは魚介類が嫌いだから、彼の作った神話生物は皆海産物の姿をしている」説は正しいのか

          新校舎の蜘蛛

           女はブリッジをしていた。逆さ向きになった人間の顔はどうしてこれほど恐ろしいのだろう。それが笑い顔なら猶更だ。肩の間接は明らかに外れていた。いや、彼女にとっては、これが普通の姿か。普段はなんと窮屈な体勢だったのだろう。その証拠に、彼女は俺よりも早くその四肢を動かしている。追いつかれるのも時間の問題だ。しかし、この校舎はこんなに長かっただろうか。いつもならすぐに到達する階段が遠すぎて見えないほどだ。おまけに、廊下の所々は白い糸で覆われている。まるで蜘蛛の巣だ。そこまで考えた俺は

          新校舎の蜘蛛

          美食爛漫

           男は極度の緊張で箸を戦慄かせていた。  「迷い箸だ。執行する」  男は目を見開き、箸を取り落とす。己の喉に指を突っ込み、必死に吐き戻そうとするが、その動きはやがて糸が切れたように止まった。  「こやつは何年料理評論家をやっていたのだ?」  「今年で十周年と少し前のテレビで言っていましたね」  「ふん……十年経っても腹すら据わらんか。そもそも、常日頃から食膳に向かうことすなわち料理人との真剣勝負。このような不快な男をこれから見ずにいられるとは、この児戯にも感謝しなくてはな」

          美食爛漫

          熱波師戦争、あるいはアウフグトゥスの乱

           《熱波到来》以前のファランクスの歩兵が見れば、それは自分達に対する侮辱と受け取ったに違いない。  厚手の布を手に提げた薄着の男達の一団が、密集陣形を取りながら一糸乱れぬ行進を続けている。逞しい彼らの肉体は数百度の外気に晒され赤銅色に輝き、身に纏った短衣には「熱波魂」「豪風招来」「サンタナ」と極太の書体で認められている。 「下がれ!熱の民が無許可でエア・スクリーンへ接近することは誓約で禁じられている」  耐熱服に身を包んだ冷の民の警備兵が門の前で警戒態勢を取る。だが、男達は止

          熱波師戦争、あるいはアウフグトゥスの乱

          カツ・ワンソー魔法少女説に関する考察

          はじめに  カツ・ワンソーが何者であるのか。  それはニンジャスレイヤーのストーリーにおける最重要課題の一つであり、ニンジャヘッズの議論の的にもなっている。  偉人説、宇宙人説、特異点説、別世界人説など、様々な仮説が検討されているが、未だ決定的なものは見つかっていない。  さて、今回俎上に載せたいと思っているのは、「カツ・ワンソー=魔法少女説」である。  ごく一部の狂人……もとい、有識者の間では、ニン魔同祖論がまことしやかに囁かれている。  ニンジャと魔法少女の共通点は予想

          カツ・ワンソー魔法少女説に関する考察

          地の底に蠢くもの

           しくじった。奴は俺の利き腕を食い千切った。引き換えに引導を渡してやれたが。  アドレナリンが全身を駆け巡っている今でさえ、白熱するような痛みを感じる。  ぎこちなく片手で、腕を縛り流血を抑え、ついでに懐中電灯も括り付けておいた。  俺はポーチからスコッチを取り出し、最初は傷口にかけようとしたが思い直し、ラッパ飲みした。  今更、消毒が何になる?  胃の腑にアルコールが着水し、広がっていくのを感じると、やっと人心地ついた。  目の前に倒れ伏した獣は、締まりのないゴムのような皮

          地の底に蠢くもの

          マミさん、どうか成仏してくださいよ

          マミさんが空き教室で手首を切って死んでいるのが発見された。 「探偵、結論から述べてくれるか?」  探偵と呼ばれた少女は癖毛を漉きながら話し始める。 「会長のご指摘通り、自殺ではありません。手首に躊躇い傷は無く、硬直の様子などから判断しても、他殺の可能性が極めて高い」 「警察に知らせる前で良かった」  机がダンッ、と叩かれる。 「お前ら、人情ってモンがねえのかよ」 「不良に言われたくはないな」 「不良言うのは止めろ。アウトローくらいにしとけ」 「人情家のわりには、マミの売春を

          マミさん、どうか成仏してくださいよ

          汝、埋葬に能わざるべし

           いかにも、確かに吾輩は自分の息子を名乗るあの子供の首を斬り落とした。 殺人の罪は甘んじて受けよう。  だが、我が子を殺した人でなしという汚名だけは断固拒否する。  ……他の下賤な者共は、吾輩がこのように話すと、憐れんだ視線を送るか、鼻を鳴らして横を向くかのどちらかだが、貴君は違うようだ。  頼みたいことがある。あの子供の首を決して繋げることなく、頭部を叩き潰すか、せめて頭部と胴体を別々に葬って頂きたい。  疑問に思うのはもっともだ。恥を忍んで、吾輩とあの子供にどのような因縁

          汝、埋葬に能わざるべし

          おかしな狩人狩り

           こうして薬指を切り落とされる羽目になったからには、何とか逆噴射小説大賞に勝ち残りたいものですね。  R・E・A・Lさを追求しろでしたっけ?それで何か、人目を惹くような経験ができないものかと思ってたんですよ。  そうしたらですね、お菓子工場に勤めていた時の先輩に呼ばれたので、話を伺ったんです。 「女房が逃げたから手伝え」 「さいですか」 「奴は母方の爺さん婆さんが住んでる所に隠れたらしい」 「にしちゃ、遠いですね」 「いわゆる限界集落ってやつだ」  運転席の外側はもう草深い

          おかしな狩人狩り