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De Vermis Cultusist

 紺碧の海面に斜陽が煌めいている。海原を吹き抜ける風が心地良い。サンフランシスコから上海までをつなぐ太平洋航路、SSプレジデント・クーリッジは予定通りホノルルへ向かい航海中だ。

 スペシャル・クラスの船室に陣取った二人は、神経を尖らせて拳銃の手入れをしている。その眼差しは狂気の一歩手前といったところである。
 「間違いない、この船のどこかに『ワーム』はいる」
 「『妖蛆』か、実在するとは思わなかったが……既に最下層で死体を見つけた。無残なものだった」
 男は溜息をつきながら、机の『妖蛆の秘密』に手を伸ばした。

 勇敢なる探索者の諸君は、知力体力に優れ、ここ一番の胆力を備えている。だから、彼らにラテン語の知識が無かったとしても、彼らのことを責めないでやってほしい。
 「"vermis" 確かに蛆とも読めるが、私は『妖蛆』ではなく『妖竜』だ」
 真っ赤に焼けた石炭を優雅に咀嚼しながら、私はゆらりと薄い煙を吐き上げた。

(続く)

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