ニンジャのらくご

 よく来たな。おれは逆噴射聡一郎ではない。おれは毎日かなりの量のクトゥルフ神話TRPGテキストをほんやくしているが、誰にも読ませるつもりは無い。
 ほんやくチームのやつらがヘッズに感想文、ハイク、短歌、四行詩、動画、劇、落語、料理とかの新作を書けとかせがんできたが、そんなものをおれが頼まれて書くと思っていたら奴らは甘すぎる。
 とはいえ、ほんやくチームのやっつらが「まあ、書いてはみたけど四行詩とか落語を投稿する暇人はいないね」と、自分達だけは全ての未来を把握していると言わんばかりの預言者面をしているのはたいへんに原田らたらしい。
 スマッホに飼い慣らされ、なんでもヘッズ集合知で出てきたものばかり受け入れるから日常感覚が希薄になり、きょうそうすることを忘れる。だからおまえは、ほんやくチームの戯言を無視しても平気でいられる。そして声なき声を忘れ、酒やベイブにとうひし・・・・やがて老いて死ぬ。・・・THE END OF MEXICO・・・。答えは一つ、落語を書くのだ。

 存在しないはずの落語でほんやくチームの顔面にまこうからパンチをたたき込むのだ。それによって尊厳が保たれアルパカは微笑み、帽子掛けの代わりになるのがやっとのヘッズという評価を覆すことができるのだ。
おれは今までの人生の中で、パタリロの漫画を何冊か読んでいる。だからおれの言葉には確かさがある。そうでないお前らは『パタリロ師匠の落語入門』でも読んでいろ。

 これは、自分では一回も落語を見ていないくせに落語ブームの中で女の気がひこうとして「フフッ、志ん生といえば、徹底的な人間観察が一般庶民の真情をね・・・・・一丁入り・・・・」などとほざき、でかい扇子を揺らして今の間がどうこうぬかしている腰抜けどもとは根本的に違う。そんなやつは長屋の壁にもたれかかって脳天に釘でも打たれていろ。
 落語には江戸の粋と張り、すなわち乾いたメキシコの風が吹いている。この噺には3種類の人間しか存在しない。月番、与太郎、そしてあほの若旦那だ。分からなかったらあほが大あほをからかう噺だと思えばいい。
 なお面倒なので江戸弁ではなく標準語で書く。


演目は「古代ローマカラテ」


月番「与太郎=サン。この寒いのに気の毒だね、付き合ってもらっちゃって。後でコロナ一杯奢ってやっから」

与太郎「ここをキンメリアだと思って我慢することにする」

月番「今日はニンジャスレイヤーの更新もあるから元気出して行こうぜ。ヤモト平坦ネタとかで盛り上がれば、身体も温まるってもんさ」

与太郎「いいねえ、でも、寒くて寒くって……指が動かなくてスマーーッホをフリック入力もできないや」

月番「ああ、今、あっちから毎回実況に参加して空回りツイートする、尾村屋のバカ旦那が来らぁ。あいつでもからかって笑えば、まあ少しは暖を取れるだろう」

与太郎「へえ、そりゃいいけど、どうやるんだい」

月番「まあ見てなって、ちょいとプライドをつついてやれば、たちまちほどける知った被り、とくらあ」

与太郎「旦那、旦那!ちょっと寄ってらっしゃいよ、素通りはいけないや」

若旦那「あららー、ドーモ」

与太郎「ドーモ」

月番「いやあ旦那、今日あたりニンジャの更新がありそうですね。あっしも早くサキブレダー!言いたいもんですよ」

若旦那「ま……あたしほどのヘッズになるとね。そう安易にサキブレダーオツカレサマドスエとは言わないもんだよ。感謝の気持ちはまずドネートで示さないとね。うん」

月番「さすがは旦那だ。ヘッズ歴も長いしシヨン全巻揃ってる。おまけにニンジャの論文もお書きになるんですって?」

若旦那「『カラテ速度から見るヤモトの平坦と空気抵抗』はなかなか好評だったよ」

与太郎「旦那はニンジャに本当にお詳しいんですねえ」

若旦那「そうだろう。あたしは詳しいんだ、なんてったって古参ヘッズで#njslyrタグで100リツイートされたこともあるんだからね」」

与太郎「100リツイートされるの勲章みたいに言う人初めて見たよ」

若旦那「なんか言ったかい?」

月番「そんなお詳しい旦那に、ちょっとお聞きしたいことがあるんですが」

若旦那「へえ、一体全体なんだい?」

月番「古代ローマカラテの五つの構えについて教えていただきたいんです。いつももうちょっとで見えそうな所で描写がボカされて分からないんですよ」

若旦那「はああ。古代ローマカラテというものはね、まず第一の構えが獅子の構えなんだ」

月番「獅子の構え……そりゃいったい、どんな構えですか」

若旦那「そりゃ、獅子の構えだからね、こう、四×四で十六……つまり獅子に獅子をかけて256倍だ。分かるか?この算数が。エエッ?」

与太郎「さっぱりわかりませんや」

若旦那「そこが古代ローマカラテらしいところなんだ」

月番「次行きましょう」

若旦那「えー、古代ローマカラテ第二の構えは鷹の構え」

与太郎「おお、強そうだ」

若旦那「鷹の構えは、そうね、こう、指を立てて」

月番「太極剣の剣指みたいですな、うちのカミさんがダイエットにいいからってやってました。効き目はワヤでしたが」

若旦那「立てた指を相手に突き立てて激しく前後させて振動でダメージを与える」

与太郎「旦那、この噺バレじゃないのでそういうのはあまり」

若旦那「とても健全です。いいね?」

与太郎「アッハイ」

月番「次はどんな構えですか?」

若旦那「次は馬の構えだ。馬の構えはとてもハヤイ過ぎる。なんてったって馬だからね。カラテには機動力がなくちゃいけない」

月番「あの時の大穴、最後で足が伸びてりゃ久々の万馬券だったってのに……あ、すいやせん、何の話でしたっけ」

若旦那「またスッたのかい。まあともかく馬の構えはスピード特化というわけだ。ヒーローのフォームチェンジで最低一つはあるパターンだね」

与太郎「高速移動表現に使うCGの予算次第で出番が左右されるというあの」

若旦那「与太さんいい歳してニチアサはもう卒業したらどうかね」

与太郎「今ので分かるってことは旦那も観てるってことじゃないですか」

若旦那「次の構えは一角獣の構えだ。これは背骨を含む全身27か所の関節をフルに使って加速してマッハの速さでカラテ・ヅキをたたき込む恐るべき構えなんだ」

月番「そりゃあまさにカラテ技だ。レッドゴリラ=サンだって倒せそうですぜ」

若旦那「本来なら机上レベルの存在を実戦にまで昇華させた古代ローマカラテの神髄がここにあるわけなんだな。古代ギリシャの哲学者オネミヤーマの言によると――」

与太郎「ところで、オロ」

若旦那「!?」

与太郎「尾呂内南公はトンマ天狗でしたっけ」

月番「妖怪始末人トラウマネタはヘッズ集合知でもさすがに厳しいだろ」

若旦那「古代ローマカラテ最後の構えは龍の構えだ。古代ローマでは、龍は軍旗の意匠として使用されていた。つまり、軍事力の象徴でありカラテだ」

与太郎「カラテなんだ……」

若旦那「『イーリアス』第11歌の冒頭でアガメムノン=サンが身に着けている楯の提帯には三頭の蛇=龍が装飾されている。(The band for the arm to go through was of silver, on which there was a writhing snake of cyanus with three heads that sprang from a single neck, and went in and out among one another.)これが古代ローマカラテの暗喩であることは、ニンジャ古代史に詳しい方々に広く知られている」

月番「旦那の知能指数が急激に増加していて後光が見えるぜ」

若旦那「『イーリアス』からの引用でも分かるように、古代ローマの龍は蛇に近い形をしているものだった。すなわち、古代ローマカラテ龍の構えとは、絞め技に特化したカラテスタイルに他ならない」

与太郎「なんてこった、今までの発言の中で一番説得力がある。知能指数も200以上はありそうだ」

月番「アッぜ!」

若旦那「ムッハハハハ!」

◆◎◆

与太郎「あっ!SAKIBUREが飛びました、父さん……」

月番「ええと、今日の更新のタイトルは……『ローマ・ノン・フイト・ウナ・ディエ』古代ローマカラテエピソードンですってよ、旦那」

若旦那「えっ!ああ、その、ローマカラテ」

月番「旦那の博識が実際一目で分かりやすな」

一方、スパルタカスはやや腰を落とし、両手指第一関節第二関節を曲げ、掌を下向けて、前に出した。古代ローマカラテ第一のイクサの構え。獅子の構えである。

月番「獅子の構えですな」

スパルタカスはクロス腕ガードの姿勢のまま……否、あれが古代ローマカラテ第二の構え、「鷹の構え」なのだ。見よ。Xの字に交差させた腕は手の甲側ではなく手のひら側を敵に対して向けている。そして両手は人差し指と中指を曲げている。

与太郎「鷹の構えだ。指前後の下りが無いんですがいったい」

動き続けるのは足のみにあらず。スパルタカスは高くかざした両腕を、やはりメビウスの輪めいて、内から外、外から内へ動かし続けている。前へ向けた握りこぶしが、さながら打ちかかる軍馬の蹄を思わせる……然り!これこそが古代ローマカラテ第三の構え、「馬の構え」である! 

月番「機動力はあまり関係なさそうな」

与太郎「旦那のローマカラテ評はみんな否定されそうですけど、もう座り込みたい気分ですかい?」

若旦那「ああ……全部分かるまでは座れないな」

月番「へえ?そりゃどういうわけで?」

若旦那「肯定は立って死ななければならないというわけさ」

#DHTPOST #ウキヨエ #ニンジャスレイヤー222

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