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手で伝え、顔で表す


大学生になるまでの、この時間を有意義に使いたいと思ったため、カフェで本を読むことにした。

お気に入りのカフェに入り、大好きなハムチーズサンドを注文した。
席に座り、店内に流れる心地いい音楽を聴きながら本を読み進めた。

30分くらいしてからだろうか。
1人のおじいちゃんが店に入ってきた。
ハンチング帽子をかぶり、革靴を履いた、見るからにコーヒーが似合いそうなおじいちゃんだった。さすがにずっと見ているのも不審がられると思ったため、また本を読み始めた。

そしてなんと。そのコーヒーが似合いそうなイケイケおじいちゃんは私の隣の席に座ったのだった。
オシャレなおじいちゃんの隣だとなんだか気分が上がり、本を読むペースも上がった。

イケイケおじいちゃんの席に店員さんがスコーンとコーヒーを運んできた。しかし、イケイケおじいちゃんは「ありがとうございます。」と言わなかった。

なぜなら、イケイケおじいちゃんは手話で「ありがとう。」と伝えていたからだ。そんなおじいちゃんを見て店員さんはGoodサインを出しながら笑顔で応えていた。さらにイケイケおじいちゃんはほっぺたを触りながら店員さんに向かって最高に輝く笑顔を見せていた。これは「美味しい。」という手話だった。店員さんも「ん?あ、美味しい??良かった〜!!」と言いながらGoodサインをもう一度出していた。

こんなにも心が温まる会話を見ることが出来てとても嬉しかったし、自分の知らない世界を知ることが出来たような新鮮さも感じた。


そんな出来事があり、わたしは手話に興味を持ち、動画サイトや本を頼りに自己紹介や基礎的な会話に使う手話を学び始めた。

手話を学びながら思ったことがある。
それは、表情筋をたくさん使わなければいけないということである。
例えば「大丈夫。」と手話で伝える場合、「大丈夫!」と「大丈夫??」をイントネーションの変化で伝えることが出来ないため、表情で見分けがつくようにしなければならない。「大丈夫??」と伝えるならば、心配している顔を作るのだ。

イケイケおじいちゃんが「美味しい。」と伝えていた時の、最高に輝く笑顔も表情が豊かであるからこそだと今では思う。

また、手話のひとつひとつの意味を知れば知るほど面白いと感じた。
これも例を挙げるとすると「こんにちは。」という手話は①人差し指と中指をくっつけて額の前に出す。②両手の人差し指を前に出し一緒に曲げる。

①は時計の長針と短針がピッタリ重なり、午後12時になったことを表し、②でお辞儀している様子を表すことで「こんにちは。」という挨拶の意味になるという。

引用:https://encrypted-tbn0.gstatic.com/images

なんだか漢字の成り立ちのようで、その手話が出来た背景を知ることによってさらに理解を深めることができると感じた。


手話を学んでいると、新しい言語を学んでいる感じがする。動画サイトでろう者の方々が手話を使って話しているのを見ると、その空間は海外のような感じだった。その様子を見て、自分も理解できるようになりたいと思ったし、新しい世界をもっと知りたいと思った。

カフェでイケイケおじいちゃんに出会えて本当に良かった。またカフェで会えたら、手話を使いたいなと思う。

そんな風に考えながらイケイケおじいちゃんの最高に輝く笑顔を思い出すと心が温かくなった。

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