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流星群

「東の空、流星群すごいらしいよ。見てる?」


スマホの通知に浮かび上がる文字。
それを見て私はすぐにダウンを着て外に出た。


先程の通知をタップし画面を開く。
幼なじみからのメッセージだった。家が近く、大自然の中で育った私たちは、中学生になっても高校生になってもずっと仲が良かった。彼との付き合いはかれこれ12年になる。
喧嘩もしたし、課題を手伝いあったりもした。別々に高校に通っているが、帰り道に一緒になった時にはたわいの無い会話に花を咲かせた。
周りからは「両思いなの?」「付き合ってんの?」と肘で突っつかれることもあったが3文字や6文字で収めることが出来るような関係じゃなかった。


外に出た瞬間、頬に冷たい空気がまとわりついた。
私の住んでいる地域の冬は夜になると気温がグッと下がる。冷蔵庫の中にポイッと入れられたような感覚だった。周りに街灯がなく真っ暗で星が綺麗に見えるのがこの地域の魅力だ。周りにビルなどひとつも無いため空も大きく、そして広い。


そんな中で育ったからか、彼は昔から空を見上げることが好きだった。そのため、綺麗な夕日の写真や、ユニークな形をした雲や綺麗な星空の写真を唐突に送ってくることが多々あった。彼と同じように、私も空が好きだったため、彼からの写真を見ることはとても好きだった。


昔話はこれくらいにしておいて、と。
夜空を見上げると快晴だった。最初は目が慣れなかったが、徐々に、点々とした光が見えるようになってきた。流れ星はどこか、まだか、と思いながら。白い息を5回ほど吐いた時、空の真ん中を、すうっと泳ぐように流れ星が流れた。思わず「わっ。」と声が出た。その後も縦や横。短かいもの、長いもの。申し訳ない程度に光るもの、自信ありげに光るもの。多様な流星群を見ることが出来た。


20分ほど空を見上げていた。彼の家は歩いてすぐの所にある。すごく近い。だが、夜空を見上げている時はとても遠く感じた。世界が広く感じた。自分の存在などミジンコよりも小さいものに感じた。
それとは反対に、同じ空の下にいるモノとして、同じ空を見上げているモノとしては近く感じた。これに関してはいつも思う。どんなに遠く離れている人でも、手が届くか分からない尊い人でも、結局は同じ空を見上げている、同じ空の下にいる。そう思うと何だか存在が近く感じるのだ。


そんなことを考えながら口をあんぐり空けて流星群を探していると、スマホの画面が明るくなった。
彼からのメッセージだった。

「今見えてる星は過去の姿って考えるとめっちゃ面白いね。タイムスリップした気分。」

確かにな、と思った。今見えている星の光は過去の光であり、今は見えているが、もう既に爆発して無くなっているかもしれない。そんなふうに思考をめぐらせると更に面白かった。自分が生まれる前の星の姿を見ているだなんて、何だかしみじみと感じた。


その日、私は流星群を10回見ることが出来た。
願い事を3回言うことは叶わなかったが、空を泳ぐ星の姿を見れて、宇宙が生み出す綺麗なものを見れて、とても気分が良かった。何だかいい事がありそうだな、と思った。


こんなに綺麗に並んでいるオリオン座、面白いな〜

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