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トニー・ゼマイティス物語


ゼマイティス・ギターを語るには、その創始者であるトニー・ゼマイティスに関して語る必要があるでしょう。

トニーはたぐい稀なる英国の天才ギター・ルシアーで、現在のゼマイティス・ギターの基本的なデザインは全て彼の作品の中で生まれました。

最初のブログでも書きましたが、アコースティック・ギターの製作から
キャリアをスタートさせたトニーは、1960年代末からソリッド・エレクトリック・ギターの製作を開始しました。

「アコースティックもエレクトリックも同じギターだろう」と思われるかも知れませんが、実は両者は似て非なる物で、その境界線を行き来するルシアーは現在でも極めて稀です。

しかも、トニーの製作したアコースティック・ギターとエレクトリック・ギターがどちらも高く評価されたことは、大いなる偉業と言えるでしょう。
 

・少年時代のトニー 

では、そんなトニー・ゼマイティスが世界屈指のギター・ルシアーになるまでの道のりを見ていきましょう…。
 
1935年にロンドンの郊外で生まれたアンタナス・カシミア・ゼマイティスは、どんな少年時代を過ごしたのでしょうか? 

彼は子供の頃から好奇心が旺盛で、また物を作ることが大好きでした。

飛行機や車の模型はもちろんのこと、自転車を作ったこともあったようです。

元々音楽が大好きだったトニー少年は、思春期に誰しもが一度は憧れるギターに興味を持つようになります。

しかし、彼の家庭はすぐにギターを買えるほど裕福ではありませんでした。

そこでトニーは考えました。「…自分で作れないかな…」と…。


ある日トニーは、友人からタダイというブランドの古いクラシック・ギターを借りて、ギター作りを試みます。

彼はタダイを隅々まで採寸し、内部の構造を調べ、ギターがどのように作られているのかを探り始めました。

現代のようにギター作りに関する書籍などはなく、もちろんインターネットも無い時代に、トニーは誰にも相談することなく見よう見まねで1本のギターを完成させました。

トニーが初めて製作したギターはお世辞にも素晴らしいとは言えない見栄えの悪い物でしたが、その時彼は、言葉にできないほどの喜びと満足感を味わい、ギター製作の楽しさを知ったのです。

 トニー少年は、その後すっかりギター作りに夢中になりました。

作ったギターは材料費程度の金額で友人に譲り、そのお金でまた材料を購入してギターを製作するようになりました。

常に研究熱心でアイディアに溢れるトニーは、ギターを製作するたびにそのクオリティは高くなりましたが、そんな少年がやがて世界的なギター・ルシアーにまで上り詰めるとは、誰が想像したでしょうか。
 
その後トニー少年は木工に強い興味を抱くようになり、家具職人の道に進みます。

彼が若い頃製作した家具は、英国の宮殿などにも納められたほどの完成度で、そのまま家具職人の道を歩んだとしても、名のある職人になっていたでしょう…。

※工房の写真はイメージです。

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