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冬の散歩

寒くても冬の散歩は出掛ける価値がある 常緑樹の緑に救われたり、 むき出しの白木に心が浄化されたり、 蕾のまま咲くことなく凍えている赤い薔薇に自分を映したり、 澄んだ空気のおかげで 普段より解像度の高い風景が心を照らしてくれる

    • 再生

      だから天才になんてなりたくないんだ

      ダンサー Sergei Polunin のドキュメンタリー映画を観た。踊ることは正直好きだ、でも、踊ると消耗する、しかし、休むと身体が軋んで痛い、僕は肉体と義務感の奴隷だ。心臓の薬と増進剤と鎮痛剤を飲んで舞台に立つ天才ダンサーを休ませてあげたい幸せになってもらいたいと身体を硬くして見守るように映画を観ていた。でも、彼は踊りをやめないことにしたのだという。跳躍しているその瞬間は自分だと感じられるから。それならば、踊り続ければいい。肉体の苦しみを抱えながらの美しい跳躍を、同じだけの苦しみを感じながら観つづけよう。

      • 色彩を重ねる、それはジャズのようなものだ

        ソール・ライター展を拝覧。 絵画を描きながら写真も撮るという人には、2種類のタイプがいるようだと気がついた。これまでは、デッサンを通して陰影による画法を理解しているから、写真における露出を感覚で理解し奥行きのある上手い写真が撮れる、それが、絵画を描きながら写真を撮る人のポテンシャルの高さだと思っていた。 ソール・ライターは、画家でありながら、写真家だ。でも、彼の作品を観ると、陰影という画法とのシナジーではなく、色彩を重ねるという画法が、特にカラー写真になってからの作品に気

        • 貨幣価値を否定する手段としての芸術

          渋谷文化村 ル・シネマで上映中のオーストリア映画「エゴン・シーレ 死と乙女」を観た。20世紀初頭、クリムトに認められた天才画家エゴン・シーレの人生を描いた作品だ。エゴンは、映画の中で、エゴイスティックなまでに描くことに執着する。目に映った日常の風景から、鏡に映る自分の姿から、モデルのふとした仕草から、描くべきものを捕食対象のように瞬時にとらまえ、切り取り、デッサンに落とし込んでいく。その執拗さ加減はとにかく異常。彼をそこまで描くことに駆り立てているのはなんなのか。映画館を後に

        冬の散歩

          アンカリングに翻弄される愉快さ

          お正月番組の定番「芸能人格付けチェック」を今年も楽しんでいる。 この番組の楽しさは、自分が参加できること。さらにいうと、自分が最初に決めた答えを、タレントさんのコメントによりアンカリングされて決断が揺らぎ、別のタレントさんのコメントで別の場所にアンカリングされ元の決断を再度正当化しはじめ、違うコメントを聞けばまたアンカーポイントが変わり考えも変わる。そんなことを繰り返しているうちに、アンカリングというバイアスの罠に翻弄されている自分自身に気がつき、そんな自分が面白おかしくな

          アンカリングに翻弄される愉快さ

          イベントとカレンダー

          映画スター・ウォーズのレイア姫として有名な女優キャリー・フィッシャーさんが、60歳にして亡くなった。そのニュースが流れるや、日本国内にいる友人、アメリカやカナダにいる友人、南アフリカにいる友人が、ほぼ同じタイミングで "rip princess Leia..." と投稿をし、わたしのタイムラインは彼女の死を悼むメッセージで埋め尽くされた。そうか、誰かの死という出来事は、タイムゾーンという概念を飛び越えて同じ瞬間にやってくるのだ。 人の行動に動機付けを与えるイベントには、カレ

          イベントとカレンダー

          CRMの原体験 星のや軽井沢

          星のや軽井沢に初めて訪れたのは7年前。今回で8回目の来訪となるのだろうか。年月を経ても色褪せることなく古びることもなく飽きさせることもなく、堂々と存在してくれている。隅々まで行き届いた心配りがリラックスを約束してくれる。 安心して心身を休めに帰ってこれる場所。 部屋の中は、過去7回の来訪時にリクエストした品々が当たり前のように整っている。私が眠る側のベッドにだけ置かれている低い枕。エクストラの加湿器が備えられ、部屋に到着する時には十分に加湿されている。茶器の脇に用意された

          CRMの原体験 星のや軽井沢

          楠わいなりー ピノノワール 2014

          北信州 須坂市のワイナリー。20年間サラリーマン人生を歩んだ楠茂幸氏が、お父上の介護をきっかけにUターンをし、土地の風土を生かした仕事をとワイン醸造家を目指しオーストラリアで修行。2004年からぶどうの苗付けをはじめた。醸造家の真面目さと土地への尊敬と信頼と愛情を感じるストーリーにどんなワインなのかと興味がわく。 楠氏のワインを多く取揃えるワインショップの棚では、2015年のG7長野県・軽井沢交通大臣会合のウェルカム レセプションで供されたという2014年ヴィンテージのシャ

          楠わいなりー ピノノワール 2014

          有機物と無機物、静と動

          中学の美術教師が写生会で枯れた桜の木を描いていたわたしのところにアドバイスにきた。有機的なものに無機物を表すと風景になるのだよ。だから、桜の木を横切るような電線とその脇の電柱も一緒に描くといい。 高校の時の数学教師が夏休みにスピーチコンテストの練習をしているわたしの様子を聴くともなく聴いていたのかアドバイスをしてきた。静の後に動があることでストーリーになるのだよ。 今、目の前にある自然の風景を写真に撮ろうとする。木々と山並みをフレームに収めようとすると、どこか退屈だ。少し

          有機物と無機物、静と動