悶絶!! どんでん返し

東大卒、自身の父親が重役を務める会社で何不自由なく過ごしていた北山であったが、谷ナオミが猛烈にノーパンでサービスするキャバレー・メキシコに行ったところから運命は狂い始めた。

ナオミが北山と結合したまま、そのアパートの階段を登り、部屋に入りとそこにはむちゃくちゃがさつなチンピラがいて、

「てめえ!あれほど店の客は部屋に連れてくるんじゃねえって言ったろ!」

と、ナオミに折檻を喰らわす。

その凶暴さにたじろいだ北山だったが、チンピラの、

「まあ。上がって酒でも飲んでいけや。ナオミ!冷やでいいから早く持ってこい!」

の声にさらにビビり、その茶碗に入った酒を飲もうとするが、ガタガタ震えてなかなか飲めない。

「てめえ!俺の酒が飲めねえっていうのかよ!」

北山はむせながらも、なんとか飲もうとするが、最後は吹き出してしまう。

「なんでえ!意気地のない野郎だな!貸してみろい!」

そう言ってチンピラが飲み干そうとしたが、それは酒でなく酢であり、たまらずチンピラも吹き出してしまった。

「ナオミ!てめえ!こりゃ酢じゃねえか!」

そう言って、さらにナオミに折檻を加えるチンピラ。

そのアパートの一室は完全にチンピラの独裁政権下にあった。

「おめえ、この女と寝たいんだろ?」

「い、いや。そんな」

「分ってんだよ。俺と勝負しようじゃねえか。勝ったらあの女好きなようにしていいぜ。ナオミ、サイコロ持ってきな」

「ぼくが負けたら?」

「負けたら?その時はその時次第よ」

が、北山はあえなく丁半博打に負けた。そしてぎらつくチンピラの目つき。

やにわに北山の体に襲いかかり、そのパンツをはぎ取り、自らのいちもつを北山のアナルに無理矢理挿入しようとする。

「やめろ!何やってるんだ!やめてくれーっ!」

抵抗し、悲鳴を上げる北山だが、チンピラのいきり立ったいちもつは、容赦なくそのアナルを犯し始める。苦痛に絶叫し、顔を歪める北山。それでも猛烈にチンピラは邪悪な表情を浮かべピストン運動を続ける。

ことが終わったあと、便所で毛布にくるまり、泣き濡れる北山。そのまま便所で眠りに落ちてゆく北山。

翌朝、谷ナオミが目を覚まし、尿意を催し便所に行くが、北山はまだ眠っている。

「もう!北山さん!いい加減に出てきてよ!あとがつかえてるんだからーっ!」

目を覚まし、昨夜の悪夢が蘇り、こんなとこ一刻もはやく逃げ出したいと、帰り支度をする北山。

「ねえ。北山さん。うちの人に一言挨拶して行ってよー。そうじゃないとわたしが怒られるのよー」

「挨拶?何を言えばいいっていうんだよ」

「お世話になりました、とかさー」

「冗談言うなよ!」

と、チンピラが目覚め始めると、北山は正座をしながら、

「どうも昨晩はお世話になりました」

と言い。チンピラは、

「おお。きのうの兄ちゃんか?また遊びにきなよ。可愛がってやるからよ」

と言い。北山は内心、こんなとこ二度と絶対くるものかと誓いながらもアパートをあとにした。

出勤した北山はいきなり父親である重役から叱責を受けていた。

「きのうは家に帰らなかったらしいじゃないか?女もいいが仕事だけはきちんとやれ!」

そのあいだ、ソファーに座ろうとする北山だが、ケツに激痛が走り、座るに座れない。

オープニングからこの間、俺が爆笑につぐ爆笑を重ねていたのは言うまでもない。

監督は苦手な神代辰巳なのだが、この作品はもう面白くてたまらなかった。神代辰巳特有の実験性や凝った撮り方をしているのだが、それがストリーテリングと相まって独自の世界を作り上げることに成功している。

いや。そういう構造的なことを考えなくても、この作品はひたすら楽しい。それで充分ではないか。

チンピラには子分がいて、ふたりのシノギは新宿の街で番を張っているスケバンを使っての美人局だった。

ジュクの街で爺さんを引っ掛けたスケバンの頭、緑はいつもの場所で情事に及ぶ。

「わしゃもうこういうことは血圧があがるから、やめとくことにしているんじゃよ」

その言葉とは裏腹に緑と結合すると、異常なほどのハイテンションを示す爺さん。ずんずんずんずん緑を突きまくる爺さん。

そこにチンピラと子分が現れ、

「おいおいおい。俺の妹を傷ものにしてくれて。どうしてくれるんだよ」

と凄んだが、爺さんの体には力が入っていない。

「おい?」

反応がない。

「兄貴・・・」

「キャーッ!死んでるーっ!」

爺さんは腹上死していた。とにかく単細胞で直情型のチンピラは、訳分んなくなり、緑をぶん殴ったり、蹴り飛ばしたりしたが、爺さんの死体を運び出し、夢の島に持って行き、泣きじゃくるスケバン三人に埋めさせた。

その頃、北山は秘書と高級クラブでことに及んでいたが、ケツの痛さを気遣っていた。

ある喫茶店にて、またもやチンピラとその子分は、スケバンをめっちゃくちゃに折檻して、その独裁政治、強権政治を体に覚え込ませていたが、さらに三人のアナルにゴム風船みたいなのを突っ込み、それをブッーと吹いてみろと命じる。

それがなかなかできない緑。

「なんだよ!緑!ほらブッーと吹いてみろよ!」

テンション上げ上げでしごく子分。さらにチンピラから号令が下る。

「おまえら!あんなジジイじゃなくて、もっと若けえのを引っ掛けてくるんだよ!分ったか!」

命令通りに今度はスケバンが若いヤツを引っ掛けてきて、そこへ例のごとくチンピラと子分が乗り込むと、なんとそれは北山であった。

本能的に逃げようとする北山。それを制止するチンピラ。

「おまえらあっち行ってろ」

いつもと違う雰囲気にとまどう子分やスケバンであったが、ふすまを閉め姿を消した。

それでも逃げようとする北山。

「あら。お兄さん。ぜんぜん遊びにきてくれなかったじゃないの~」

「やめろ!やめてくれ~!」

だが、またもやチンピラのいちもつは北山のアナルめがけ突進してくる。再び苦悶の表情を浮かべる北山。しかし次第にその表情は愉悦、快楽のそれへと変わってゆく。

もうこのシーンとか本当に爆笑した。なによりこの北山役の俳優が、ものすごくこの役にはまっていて、このあとの展開も含めて怪演というより他にない演技を次々に見せつける。

そして北山はチンピラ&谷ナオミのアパートに監禁されるが、夜、再び情事が始まると、もう谷ナオミは邪魔になり、あっち行ってろ、と北山とチンピラはその体を求め合うのであった。

すると次第に北山は女装に目覚め始め、ついには元祖オカマ・雑民党党首であった東郷健先生のクラブ東郷でも脚光を浴び始め、さらに男としてはスケバンと寝て、彼女たちの稼ぎの上前をはね、チンピラとは蜜月関係を築き、谷ナオミにはすね毛を剃らせるという我が世の春を謳歌していた。

その姿は現在、オカマ界の第一線で活躍するIKKOとても、逃げ出すほどである。

と、見る者をぐいぐいと惹き付けてゆくこの作品であるが、見ていて非常にうまいなと思ったのは神代辰巳の音楽の使い方である。

例えばチンピラがスケバンたちを折檻し、俺は金バッチのやくざにも顔が利くんだと、ある組長の出所祝いに紛れ込むのだが、そこで高倉健の「唐獅子牡丹」が流れたり、ラストシーンでは北原ミレイの「ざんげの値打ちもない」が流れたり、全編を通して「あんたがたどこさ」の出だしで知られる「肥後の数え歌」が、まるで矢野顕子が歌っているかのようにモダンに流れる。

秘書は婚約者である北山の行方を探し、アパートに訪ねてきた。そこには谷ナオミがおり、ナオミが北山を奪ったと勘違いした秘書はナオミとキットファイトを繰り広げる。そこにケーキなんか買って帰ってきた北山が現れ、秘書はその変わり果てた姿に驚愕というかとにかく二の句が告げなかった。さらに豊胸手術までしちゃっている北山。

「お父さんに言っておいてちょうだい。わたしはここで幸せにくらしているってね」

次第に三人はその顔面にケーキを塗りたくり合う。そしてたまらず逃げ出す秘書。

一方、子分はいまだに緑にゴム風船のしごきを続けていたが、ついに緑がそれに成功すると、ふたりは歓喜にむせび抱き合って喜んだ。やさぐれた男とスケバンの純情。それはこの時期のB級映画の基本パターンだが、次第にふたりがねんごろの仲になり、シノギにも精を出さなくなったのを見つけた北山は、ふたりをチンピラのアパートに連れて行き、浣腸の刑に処するというチンピラの暴君政治の片棒を担ぐという存在になっていた。

だが、そんな我が世の春の崩壊は突然やってきた。

いつものようにスケバンが男を連れ込み、そこへチンピラが因縁をつけ現れると、警察手帳を持った刑事が乗り込んできた。それに抵抗した単細胞がさつなチンピラは、刑事を刺し殺してしまった。

アパートに急いで帰ってきたチンピラは、ナオミに旅の準備をしろと命じる。

「とにかく急げ!時間がないんだよ!」

「そんな急に言われたって」

「旅~。じゃあわたしも連れてって~」

マニキュアなんか塗りながら、余裕こいている北山。

「うるせえな!てめえなんか連れていかねえよ!とにかく急げよ!」

「なんで、わたしだけ連れてってくれないのよ~。いじわる~」

「てめえみてえな化物と一諸にいたんじゃ目だってしょうがねえんだよ!よし!それでいいや!はやく行くぞ!」

荷物をまとめ、アパートから出てゆくチンピラとナオミ。ことの重大さを理解したのか北山。

「おい待てよ!俺はどうなんだよ!?置いて行くなよ!!捨てるなよ!!」

そう言って、ふたりを追いかけ始める。そこに流れてくる「ざんげの値打ちもない」。

果たしてチンピラとナオミは逃げ切れるのか?そして北山の運命は?

約70分のなかに濃密なドラマとエンターテイメントが濃縮されている。

ロマンポルノ、神代辰巳を代表する一本ばかりでなく、日本娯楽映画を代表する作品であると思う。間違いなく傑作!

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