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アンドロイド・キャリー



アンドロイド・キャリー 作/絵 LAIN.

発明家の父を持つ17歳の少年ロンは、科学を専門とした高校、「ロボトロンニクス高校」の二年生だ。発明の才能は学年トップだが、コミュ障で友達もいない。優秀ゆえに教師たちからは褒められるが、彼を良く思わない生徒たちからはいじめを受けていた。学校にしばらく行かない夏休み、その最後の日、ロンは発明に明け暮れていた...

ロン「もう少し、もう少しで完成する!」

アルミ板を何重にも張り付けて作った発明小屋。ここは幼少気に彼が自分で建てた、一人だけで発明に没頭できる場所。

システム音「データインストールカンリョウ」
ロン「よし!さぁ、起動せよ!ボクのアンドロイド!」

大きなクリアケースからプシューと音を立ててモヤモヤと煙が上がる。その中から彼女は姿を見せた。

ロン「う、動いた」
キャリー「...コンニチワ、ロン。」
ロン「うひゃあっ!」

薄紫の長い髪と、色白で熱を持たない肌。
衣装は紫のレオタードとロングブーツ。
つり上がった機械の瞳が発明室を眺めている。

ロン「我ながらとんでもないクオリティの発明だ。そ、それにかわいい...」
キャリー「ロン、ゴメイレイヲシテクダサイ」
ロン「いいとも、ボクをいじめたアイツらに仕返しするんだ!」

夏休みが終わり、学校が始まった。昼休みになると、いつも決まって3人で現れてから、校庭の裏にロンを追いやる憎たらしい連中。普段ならこれから悪口と嫌みの連続パンチを食らうのだが、今回は違う。

「おう、久しぶりだな。夏休みの分、可愛がってやるぜ」
ロン「...(もう今までとは違う!)キャリー!」
キャリー「オヨビデスカ、ロン」
ロン「コイツらを投げ飛ばせ!」
「な、なんだ!?」

突然、現れたキャリーに驚き逃げようとする3人を校庭の真ん中に軽く投げ飛ばした。

ロン「仕返し成功だ!よくやった、キャリー」
キャリー「...ハイ。」

その日からロンは周囲から一目置かれ、彼をいじめる者はいなくなった。休日になり、キャリーは家の窓から町を眺めていた。

キャリー「ニンゲンハマダヨクワカラナイ、ナゼイミノナイアラソイヲスルノカ」

ここで、アンドロイド・キャリーのスペックを簡単に紹介。

身長:170cm
体重: 92kg 
パンチ力 3t
キック力:7t
ジャンプ力:20m
走力(100m):8.4秒

窓の外で走る車の群れ。そこにオレンジ色のゴムボールが転がって来ると同時に子どもが飛び出してくる。
キャリー「!」
超スピードで走って、車が子どもを引く前に助け出した。

子ども「お姉ちゃんすご~い!」
キャリー「オネエチャン...?」

次の日、すっかり調子に乗って廊下を歩くロンの後ろに付いていくキャリーは、昨日のことを考えていた。

ロン「よう、お前ら!今日も可愛がってやるぜ~、行けキャリー!」
キャリー「・・・」
ロン「ん?キャリー?」
キャリー「......ワカラナイ」

キャリーがフリーズしていると、ロンをいじめていた男子生徒が、後ろから水の入ったバケツをキャリーにぶちまけた。

「隙ありー!」
ロン「キャリー!!」
キャリー「ガガガガ...ナンデ、ニンゲ...ンハ、アラソ...ウ...」

情報を管理するデータベースが故障して、戦闘モードへと、移行してしまった。

キャリー「アラソイ...ニクミアイ...ニンゲン...!」
ロン「あ、ぁ...知らない!ボクは君をそんな風に作ってない!」
「お、おい!何なんだよコイツ!」
ロン「やめろキャリー!」
キャリー「ハカイ、カイシ。」

キャリーは、超スピードで校舎を走り回り、物を壊し、ガラスを割ったりと恐ろしい戦闘能力を見せた。キャリーは窓から外に飛び出して外に出た。

ロン「そ、そんな...」

その時、キャタピラが地響きをさせながら数台の戦車が校舎前にやってきた。学校は自衛隊によって囲まれ、軍人が一人、拡声器を使ってこう言ってきた。

軍人「我々は危険な存在を排除するためにやってきた特殊部隊だ、お前はここから逃げられない!」
ロン「ま、待ってくれ!キャリーに攻撃しないでくれ!」
軍人「ええい、邪魔だ!」
キャリー「...ロ...ン...」

ロンはキャリーの前に飛び出し、戦車は砲身を向ける。大砲が発車され、キャリーはロンをかばって爆発した。
バラバラと降り注ぐキャリー、地面に転がった顔を拾いあげて、ロンは涙を流した。

ロン「ご...ごめんよ、キャリィ...」
キャリー「...」
ロン「キャリー、君を戦闘マシンにしたのはボクのせいだ...」

ロンの涙がキャリーの顔にかかると、彼女の中でずっと空いていた隙間が埋まった。
人間が誰かを大切に思う気持ち、そのデータを元にキャリーは自己修復機能を会得した。

キャリー「ロン、ナカナイデ...」
ロン「!」
キャリー「ジコシュウフク、ワタシハ、ニンゲンヲモットシリタイ...!」

キャリーは元に戻った。
次の日、思いやりを覚えたロンは自分の発明小屋を売り払って学校に寄付すると、キャリーと共に恵まれない子どもを助ける活動を始めた。

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