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夜明けから間もなくの、曇天。 山と山の狭間に開けた草原に、つんとした血の匂いが漂う。 「……あぁ、良いな」 小さく、男が呟いた。 返り血に全身を染めた男は、薄暗い空に己の得物を掲げる。 白銀の刃は一点の汚れも無く、鞘から抜いたばかりかのように煌めいていた。 けれど……そうでは無い。 「ぅ……ぁぁ……」 「さて、お前で最後だ」 血濡れの男は、目前の武士へと声を掛けた。 大鎧に身を包む彼は、青白い顔で震えながら、覚束ない手付きで弓に矢を番える。 「化け物、め…