オーガポンのことがあってから色々考えたんだけど、やっぱりね、僕はスグリくんの心を完全にへし折らないといけないと思うんだ。

別に意地悪で言ってるんじゃないんだよ。
でも、鬼さまに執着するスグリくんの気持ちを思うとね、それを諦めて現実を受け入れてくれって言ってもどうにもならないのは分かるから。もしかしたら時間が全部解決してくれるのかもしれないけどさ、それじゃスグリくんは長い間苦しむことになるでしょ？　だったらもう完全な終わりを叩きつけてやるしかないんだよ。「もしかしたら」「なにかが違ったら」なんて考える余地を残してたら、ズルズル引きずっちゃうかもしれないでしょ？

今スグリくんがどう思ってるか知らないけど、僕はスグリくんと友だちになれたと思ってるからさ……そんな風にスグリくんが苦しんだり、間違った方向に進んでしまったら、すごくイヤだしさ……

スグリくんにとっての「鬼さま」ってなんだったんだろうね。
話してたじゃん、スグリくん。三対一でも負けない鬼さまの強さに憧れてるとか、一人きりでもへっちゃらなのがすごいとか。でも本当のオーガポンはただ大切な人と一緒にいたかっただけの子で、確かに力は強いかもしれないけど、心はたくさん傷ついてたと思うんだよ。

オーガポンが僕と一緒に来たいと思ってくれたのだって、そういう部分があったからじゃん。ずっと一人だったオーガポンの為に、思い出のお面を帰してあげたくて、僕とゼイユとでともっこと戦って……その思い出があったから、今度は僕といたいって感じてくれたわけでしょ？

もしスグリくんがあのバトルで僕に勝ってたとしても、オーガポンは絶対に喜ばなかったよ。ゼイユだって「オーガポンの気持ち考えなよ」って言ってたのに、スグリくんはそれが出来なかった。
オーガポンの気持ちが全く分からないわけじゃないと思うんだよ、スグリくんは。でもそれ以上に「鬼さま」への憧れが強すぎて、憧れの「鬼さま」が遠くへ行っちゃう怖さが勝っちゃって、それを考える余裕が無かったんだろうね。

僕は別にいいんだよ。
おまえばっかりすごいポケモン捕まえてズルいって思われても、おまえは僕とちがうんだからって線を引かれても。パルデアに帰れば友だちもライバルもいるし。でもさ……スグリくんが本当にオーガポンのこと好きなんだったら、あの時はオーガポンのことを祝福して欲しかったんだ。オーガポンのためにも、スグリくんのためにも。オーガポンの新しい一歩は祝福に満ちたものであって欲しかったし、好きだった相手の新しい一歩を喜べるスグリくんでいて欲しかった。

スグリくん、自分に自信が無いんだろうね。
ゼイユはあんな感じだし、ブルーベリー学園ってポケモンバトルに特化した学校なんでしょ？　スグリくんだって弱くはないと思うけど、「自分はこれが出来る！」って気持ちを育てられてないのかも。だからそんな弱い自分と真逆の、誰の助けも借りずに戦える「鬼さま」に憧れてたんでしょ。だけど自分じゃ届かなかった。今すごく悔しいだろうし、無力感にも苛まれてると思う。でもスグリくんが「鬼さま」に憧れてる限り、オーガポンの気持ちを考えて祝福できるスグリくんではいられないわけじゃん。

だから叩き潰すんだよ。
スグリくんの気持ちを完璧にへし折る。
頑張ったら「鬼さま」に届くかもなんて甘い考えを捨てて、スグリくんだけの道を見つけられるようになってほしい。

荒療治かな？　もしかしたら逆効果かも？
でもあの様子のスグリくんに「誰かと協力することの大切さ」とか「一人一人に出来ることを」とか言ったって、つまらない慰めだとしか思って貰えないでしょ？　だから差を見せつけて、諦めてもらうしかないんだよ。

僕にはこれしか出来ないんだよ。

メンバーは用意してるところ。
スグリくんが「鬼さま」への執着を断ち切るには、やっぱり「鬼さま」の力で完膚なきまでに叩きのめさないとダメだよなって。だからオーガポンにも協力してもらうし、他の「鬼」の力も借りることにした。

オーガポンは言うまでもないと思う。
いろんな思い出作って、他人からみても「なかよし」だって思って貰えるようにならないとね。

次は、今は昔ヒスイ地方から呼んで来た「鬼」。
トルネロスとボルトロス。風神と雷神。頭に伸びる角も含めて、彼らもまちがいなく「鬼」のポケモンだと僕は思ってる。でもランドロスやラブトロスはなんかちがうんだよね……

もう一体の「鬼さま」は氷の鬼。
キタカミで捕まえたユキワラシが進化したオニゴーリ。
オーガポンやボルトロストルネロスに比べるとふつうっぽいけど、鬼であることに異論は無いハズだ。強そうな赤い目をしてるけど、本当は臆病な子なんだよ。……そういうところ、スグリくんには伝わらないだろうけど。

それで、いま揃ってる最後の「鬼さま」は……
「オニトンボポケモン」のメガヤンマ。この子もキタカミ産色違い。
林間学校が始まってすぐに、まだヤンヤンマだったこの子に出会ってさ。キタカミにいる間はこの子を連れまわそう！って決めてゲットした子なんだ。
……スグリくんとバトルした時も、スグリくんが近いレベルのヤンヤンマ出してきてさ。「同じポケモン対決だー！」って僕は内心ですっごく喜んでたし、毎回対面するように意識して戦ってたんだ。スグリくんのヤンヤンマが進化してメガヤンマになってた時も嬉しかった。一緒にだんだん強くなってるって感じがしてたんだけど、スグリくんはそうは思ってくれなかったんだろうね…………

いま集められる面子はこれくらい。
もしかしたら今後、オニドリルとかオニシズクモとかと出会える機会があるかもしれないし、六匹目は決定しないでいる。

そもそも、次にスグリくんと戦う時、どんな状態かも分からないしね……
彼らじゃなくて新しい仲間を連れてる時に出会っちゃうかもしれないし。

なんとかなるといいなぁ。