お香の話

最初のきっかけはクリスマスパーティーだった。

クリスマス近辺にモツを食べるパーティーを大体毎年やっていて、プレゼント交換会がある。予算は500円。しかし全員いい大人なので、ほぼ全員が500円の枠からはみ出したものを用意する。

ある年に私がもらったものが、マッチ箱一つで焚けるお香「hibi」だった。不燃性のスポンジとセットになっていて、火はおろか皿の用意も不要。ゼラニウムの香りで、これがとても良かった。

私はお香をやることにした。


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最初に「お香」でググって出てきた銀座の松栄堂へ行ったところ、丸っきりおばあちゃんちの仏壇の匂いがした。私がやりたいお香とはちょっと違う。

するとおしゃれな友人から、松栄堂がやっているモダンなラインの店舗が青山にあることを教わり、行ってみた。「Lisn(リスン)」なるお店だ。ここが最高だった。

Lisnでは常時100種類ほどのインセンス(お香)があり、店員さんとマンツーマンで匂いの好みなどを話し合いながら、実物をどんどん嗅いで1本単位からチョイスできる。値段は1本30〜50円が中心。よくわからない人やギフト向けに良い感じの詰め合わせも用意されている。

私が初めて行った際、店内があまりにおしゃれ&店員さんもお客さんも小綺麗な女性ばかりで、心は美人OLとはいえ現実は万年マウンテンパーカーおじさんなので、ほんの少しの思い切りを要した。今では常連気取りでふらっと買いに行っている。


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初回でお香を挟むタイプのお香立てを買った。その後これに合うお皿を求め、しばらくしてカフェと雑貨屋がくっついている合羽橋のお店で手に入れた。


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Lisnの店舗でお香を買い求める場合、こうした別売のケースを一緒に買う必要がある。サイズ・材質ごとに何種類かあって、100円~300円くらい。二回目以降はケースを持参すれば買ったお香を入れてもらえるし、買いすぎて入り切らない場合にも追加でケースをくれる。個人的にはこのガラスケースがきれいで良い。

お香にはカタログがあり、販売中の銘柄がジャンル別に全部載っている。買った銘柄には店員さんがチェックを入れてくれるので、気の赴くままにじゃんじゃん買ってしまっても後から確認できる。また上の写真でもわかるが、目を凝らせばお香の1本1本にも番号と銘柄名が明記されている。

個人的に好きでよく買う銘柄はこのあたり。

・スパイス系
No.201【マサラ】カルダモン・ジンジャー・バニラ
No.202【マウステ】ディル・山椒・パセリ

・オリエンタル系
No.273【ミッドナイトシャワー】イランイランとアンバー

・ナチュラル系
No.143【アクア・デ・ベベル】水と緑

他にもフローラル系、シトラス系、クラシカル系、ムスク系、フルーツ系のジャンルがある。ちなみに2枚目の写真で焚いているのは、シトラス系のNo.276【オレンジ・イン・ラブ】オレンジとウッディ。思っていたよりもしっかりと甘いオレンジだった。

お香を直に嗅いだ印象と、実際に火をつけたときの香りの印象が異なることはまあまあある。言っても「お香」なので、芳香剤や柔軟剤のようなダイレクトな香りをイメージするとだいぶ違う。燃焼しているお香の奥に、それぞれのフレーバーが「いる」感じだ。フルーツ系やムスク系の強めのやつは、その「いる」位置が少しだけ近い。【オレンジ・イン・ラブ】もやや近く感じた。


お店でカタログを眺めつつ気になった銘柄をその場で次々に嗅いでいき、いいなと思ったら3本とか5本とか10本とかの単位でノリでガンガン即決していく。これが楽しい。私のガラスケース(大)は最大60本くらい入るので、毎回それを目安に補充する。60本びっしり埋めてもトータルで2000円少々。毎日何本も焚かない限りは2ヶ月以上持つので、全然高くはない。

私は大体、外から帰ってきて風呂などを一通り片付けたあと、腰を落ち着けたタイミングで適当に1本だけ焚く。15分ほどで燃え尽きるが、部屋が狭いので窓を開けなければ香りは1時間以上余裕で持続する。

酒の味わいと香りはマッチしないことが多いので、晩酌のタイミングで焚くことはあまりしていない。酒と競合しているおかげでどちらか一方だけになり、結果的に財布にも優しい側面があると思っている。お香は1本で満足できても、酒が1本で終わることはごく稀だ。

私はタバコを一切吸わないので、お香がある生活になってからキッチン以外で初めて身近に火が出現することになった。最初はそれがだいぶおっかなかったものの、扱いにも慣れ、お香は生活を充実させる要素の一つとして定着した。火が導入された流れで、キャンドルもやろうかなとかちょっと考えるようにもなった。ますます美人OLに向かっている。

お香は私に合っていたが、お香そのものはけっこう人によって合う・合わないが分かれるので、人にプレゼントしたり勧めたりするのは慎重に……とは思っている。なので今回も積極的にオススメはせず、あくまで「私はこうです」という話だけを書いた。

冒頭に述べたきっかけはあったものの、基本的に私は一人でお香の門戸へたどり着き、一人で満喫することをベースとしている。お香はあくまで「閉じた」趣味で、それもまた私にはピッタリだなあという思いがある。

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