キャンプの話【前編】

「焚き火をしたい!」と発案した友人たちに誘われて、先日はちょっとしたキャンプへ行ってきた。主催の友人夫妻をはじめとする、平均年齢30代中盤の5人パーティだ。

目的地は、千葉県香取市にある【THE FARM】という、農園の中にあるキャンプ場。こちらでアウトドアブランドの「snow peak」が企画した「手ぶらキャンプ」なるプランに参加する。

手ぶらキャンプでは、snow peak製のテントやシュラフ(寝袋)のほか、テーブルやチェア、焚火台、BBQセット、食器類、鍋やフライパンなど、キャンプに必要な道具のレンタルが、あらかじめプラン内に含まれている。あとは調理する食材や着替えなどを持っていけば誰でもキャンプができるということで、私のようなキャンプ初心者でもハードルが低い。

ただし、キャンプをするのが11月下旬で、すでに相当寒いことだけは予想がついていたため、私は近所にできたワークマンで暖かい肌着類などをいくつか買い足すなどして、ざっくりと準備を済ませた。


キャンプ当日の朝。

まずはTHE FARMの近くまで、高速バスで移動する。手ぶらキャンプと言いつつ、私は大きなザックを満杯にした上にIKEAの青いバッグまで引っ提げた重装備になってしまったが、予定通り浜松町バスターミナルへ集合できた。そこから90分ほど銚子行きのバスに揺られて、千葉県香取市へ。降りたバス停にはキャンプ場の送迎が来ているはずだったが、それらしき車がまったく見当たらない。荷物を下ろしてキャンプ場に連絡を取ろうとしていたところで、ようやく送迎のワゴン車が現れて、私たちは慌てるようにして乗り込んでいく。それらの様子がまるで「ラブワゴンに駆け寄るあいのり新メンバーっぽい」と誰かが言い出して笑った。

そこから10分弱走って、THE FARMに到着。13時にチェックインを済ませて待機する。木々に囲まれた芝生の上では子どもたちが走り回っていて、BBQブースは賑わってはいるものの、全体的にはのどかで、とてもいい雰囲気の場所だ。雲ひとつない快晴の、完璧なキャンプ日和。なんとなく田舎の香りが感じられる。


こちらは谷底まで勢いよく滑り降りる「ジップスライダー」というアトラクションの準備をしている様子。宿泊利用者は1時間1000円で乗り放題とのことだったが、結局私たちは誰も乗らなかった。みんな若くないので……1回500円とかなら乗ってもよかったかもしれない。小学5年生の私だったら、時間いっぱい狂ったように乗りまくっていたと思う。実際、そういう子どもがちらほらいた。


やがて、ほがらかな感じのスタッフのお兄さんがやってきて、ご挨拶。お世話になります。今回のプランについて事細かにうかがっていく。具体的にはこれからテントを建てるので、その全面的な手引きをしていただけるほか、レンタルするキャンプグッズの使い方も一通り教えてもらえるという。ちなみに今回レンタルする「snow peak」のグッズ、普通に買ったら総額55万円するらしい。テントだけでも15万とか。その15万するテントが、この日は見渡せる範囲内に3つほど建っていて「みなさんお金持ちで~!スゴいですねえ~!」と、お兄さんは頻りにおっしゃっていた。

さっそくテントの設営へ取り掛かる。お兄さんの指導は素人相手にも手慣れたもので、私たちは言われるがままにパイプを組み立て、テントを立ち上げ、ペグを打ち、ロープを固定していく。要所要所でのちょっとしたコツや、注意事項なども身に付けながら、サクサクとテントが完成に近づく。5人もいればラクですねえ!などとお兄さんが言っていたそばから、実は想定していたテントの向きが間違っていたことに気付き、一度固定したテントを全員で持ち上げて180度回転させる荒業も駆使した。

そうこうして、楽しみながら無事設営完了。


あらためて見るとこのテント、メチャクチャにでかい。写真ではわかりづらいが、四畳半くらいの部屋が縦に二つある感じだ。奥のインナーテントが寝室で、手前の土間がリビングといったところ。開け放ったリビングにはテーブルやチェアなどを広げて、その先に焚火台を設置。レンタルだからこそ出来る豪華で大掛かりなキャンプが出現した。

ところでこれは、古来からある「インターネットあるある」なのですが。テント組み立て中にスタッフのお兄さんから「みなさんはどういったお集まりなんですか?」と訊かれた瞬間、誰ともなく「スッ…」という空気になった。私たち5人はTwitterつながりの友人で、とはいっても付き合いはだいぶ長いし、素直にそう言ったところで問題がない時代だよなあ、と頭では思いつつも、私は咄嗟に「ヒツジを食べる集まり…?」みたいなことを口走った。実際に私たちはヒツジを食べに集まることがよくあって、主催の友人夫妻もこの日はBBQ用のラム肉を持参していた。結局これ以降、スタッフのお兄さんからは「ヒツジを食べる御一行」という認識をされることになる。


テントを建てた正面にある小屋(本来は貸し農園利用者用の休憩所にあたる)も、ご自由に使っていいですよ〜ということで大層喜んだ。ここには電源が来ていて、ソファはふかふかだし、もうこっちに泊まっちゃえばいいのでは!?と思うくらい良かったが、そうなるとキャンプではなくなってしまう。


テント設営からキャンプグッズ説明にかけての所要時間は、およそ90分ほど。ようやく一息ついたあと、立て続けに15時半から農園での「野菜収穫体験」に参加する。

この日は1グループごとに「にんじん3本、長ねぎ5本、ラディッシュ5個」を畑から持って行ってよいとのことだった。各自で軍手をはめ、靴にビニールカバーをつけて、参加者全員でぞろぞろと練り歩いて説明を受けてから、目ぼしい野菜を土を掘って引っこ抜く。これらはあくまで「野菜収穫体験用の畑」で行われたのだけど、中にはすでに踏み荒らされ「蛮族に滅ぼされた村」みたいになっている箇所もあり、なんとなくせつない感じもした。


なんだかセクシーなにんじんも採れた。


にんじんの葉っぱ部分は、併設されたミニ牧場にいるヤギやポニーに食べさせることもできた。


野菜収穫体験を終えたところで、火を起こして夕食の準備を開始。行きのバスでパンをかじって以来食事をとるタイミングがなかったので、全員お腹が空いている。次第に日が傾いてきて、一気に冷え込んできた。それなりの防寒装備を着込んでいるものの、すでにだいぶ寒い。

焚き火が安定し、料理ができあがっていくのを眺めながら、私は恋人とともに持ってきたメーカーズマーク(ウイスキー)をカップに注ぎ、ストレートのままペロペロとなめていく。あまりに寒いせいか、なかなか酔いが回らない感じがして、二人とも飲むペースがかなりおかしなことになる。


すっかり暗くなってから完成した夕食のメニューは、さっき収穫した野菜に加え、友人夫妻が持参した塩麹鶏肉や白菜を投入した素朴なスープ。


焚き火に炭を投入して開始したBBQでは、牛肉、ラム肉、ハンバーグ、ウインナー、さっき収穫した野菜などをガンガン焼いていく。友人夫妻が上等なお肉を持ってきてくれていたこともあって、肉類全般がとても美味かった。

それから何と言っても「さっき収穫した長ねぎをただ焼いたもの」が信じられないくらい甘くて、全員で感動しながら食べた。これは人生における「長ねぎランキング」の頂点に、当面のあいだ君臨し続けることになるだろう。サラダがおすすめと言われたラディッシュも、薄切りにして生で齧ると甘みがあっておいしかった。セクシーにんじんも煮たり焼いたりして食べた。これが本当の地産地消だ。


この後、本当はさらにリゾットなども用意していたそうだが……ざっと腹ごしらえが出来た段階で寒さが限界を迎えたため、一旦お風呂へ向かうことに。THE FARMの敷地内には「かりんの湯」という温泉が併設されていて、THE FARMの宿泊利用者は何度でも入り放題とのことで最高なのだが、今はもう寒くて寒くて、とにかく少しでも暖かい場所へ避難したい一心で、かりんの湯まで突き進んだ。

テントから5分ほど歩いて建物内に入った時点で、まずは室内の暖かさに腰がくだけそうなほどウットリする。とっぷりと温泉に浸かった瞬間には、そのまま泡を吹いて昇天してしまった。寒さで瀕死だったHPがみるみる回復していく。露天風呂もあり、体の芯までじっくり熱を通して、ほかほかに茹で上がった。温泉から出たら各自でテントへ戻ることになっていたが、なんとなくロビーに集合していってビールを注文してしまい、その場でまったりする展開に。このビールがまた格別にうまかった。

やがて誰ともなく、「この後にやるつもりだったリゾットとか、今日はもうよくない?このまま焚き火にシフトしてマシュマロ焼こうよ」という流れが即決される。私たちは温泉ですっかり完成してしまったのだった。その後、「こういうときに若い子がいないと判断が早くていいね~」なんて話をした。平均年齢30代中盤パーティは誰も無理をしようとしなくて、実にイイ。


〜後編へ続く〜

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zenpoly

何かしら書いています。
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