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Chicago Booth Review: より良いサプライチェーンを構築するために③

原文

https://www.chicagobooth.edu/review/how-create-better-supply-chain

サプライチェーンの強靭化を図る

不透明さは、サプライチェーン内に潜在化したリスクを孕むこととなります。「2011年の東日本大震災の前、トヨタは一次サプライヤーと密接に連絡を取っていて、多種多様な二次サプライヤーも使っていたと考えられていた」、とDeHoratius氏は言う。震災後、トヨタが一次サプライヤーを精査したところ、ほとんどの商品は同じサプライヤーを使っていたことが判明しました。トヨタが想定していたリスクの分散は、実際にはほぼ出来ていませんでした。

Iakovou氏は、範囲を広げた供給ネットワークをマッピングするためのデジタル的手法を改善することが重要であると主張しています。そうすれば、サプライヤーを変更する必要が出た際に、企業は他のサプライヤーに簡単に移行できるようになるからです。「複数のサプライヤーを認定し、関与させることはもちろんコストがかかりますが、混乱期にはそのコストは何倍にもなります」と本学のJohn R. Birgeは言います。

複数のサプライヤーを持つことは、危機的状況の中で一から新しいサプライヤーを探し出し任命するコストを削減し、そして製造の遅れによるコスト増を回避することに有効です。「もしより多くの企業が不安定な現在の状況を鑑み、複数のサプライヤーを追加的に任命することでサプライヤーベースに余剰を増やしたとしたら、結果的に彼らのサプライチェーンネットワーク全体のレジリエンスを高めることにつながるだろう」とBirgeは語ります。
しかし、将来何かが起こった時に備えてサプライヤーの余剰を確保することはコストがかかります。そしてどれくらいの量を確保すれば十分と言えるのでしょうか?必要余剰の推定には、サプライチェーンに大打撃を与え得るリスクについての正確な分析が必要となります。竜巻、エネルギー価格の高騰、そしてパンデミックが起こる可能性は?これらの不確定要素に備えるために、余剰在庫またはバックアップとなる生産拠点を抱え続けることは、果たして費用対効果があるのでしょうか?

そしてリスク分析にかかるコスト、また、行わなかった場合のコストとは一体何なのでしょうか?COVID-19が起こる前、WHO(世界保健機関)は感染症が蔓延するリスクについて、発生可能性は平均より低く、しかし発生した場合の影響は平均より大きいと評価していました。多くの企業は、株主達から反対されるであろうことを予想したため、COVID-19の様なビジネスに多大な影響を与える不確定要素に対する準備をしていませんでした。しかし、今ではCOVID-19を経験し、不確定要素に対する備えを行うことに対してのメリットについて各社が再評価しています。

次回

次回は、『より柔軟になるための方策』をお届けします。

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