善福寺川上流の地下トンネル式調節池について、今起こっていること


はじめに

東京都が、善福寺川上流域に巨大な地下トンネル式調節池を作ろうとしています。水害対策を目的としたものであり、推進派は「地域住民の命と暮らしを守る」としています。しかし実際には、引き換えに破壊される自然環境・生活環境の大きさから、恩恵に預かるはずの善福寺川流域住民の多くが、この計画に反対しています。私達はむしろ、「この工事によって命と暮らしが奪われる」と感じています。その証拠に、昨年10月に集め始めた計画見直しを求める署名は、15,000筆を超えました。また、都市計画上の手続として昨年12月1日~15日に東京都に届いた「意見書」は、1,000通を超えたと聞いています。計画の問題点については、昨年12月5日発表のプレスリリースに詳しく記載しています。

プレスリリース後の動き

近頃、署名や意見書提出にご協力いただいた方々から、「あれから1ヶ月経つけど、計画は見直されることになったの?」とお尋ねいただくようになりました。そこで、プレスリリース後の動きを纏めます。

2023年
12月5日:PR Timesにてプレスリリースを発表(その後、noteに移動)
12月6日:都庁記者クラブにて記者会見を実施
12月13日:国交省記者クラブにて記者会見を実施
12月1日~15日:公告縦覧期間。東京都に対し住民らが意見書を提出
2024年
1月16日:杉並区都市計画審議会(※1)
1月20日:住民説明会 @杉並区役所(※2)
2月6日:東京都都市計画審議会(※3)

(※1)と(※3)は、都市計画法第18条第1項に基づくものです。一方、(※2)は、都市計画法上の定めはないものの、杉並区からの強い要望を受けて、東京都が緊急開催したものと聞いています。

(都道府県の都市計画の決定)
第十八条 都道府県は、関係市町村の意見を聴き、かつ、都道府県都市計画審議会の議を経て、都市計画を決定するものとする。
 都道府県は、前項の規定により都市計画の案を都道府県都市計画審議会に付議しようとするときは、第十七条第二項の規定により提出された意見書の要旨を都道府県都市計画審議会に提出しなければならない。

杉並区都市計画審議会(1月16日)

委員21名中、出席19名、賛成12名、反対6名(+議長1名)で、可決されてしまいましたが、ここまで票が割れるのは異例だそうです。議論の様子については、審議会を傍聴された方が素晴らしいnoteを書かれています。

住民説明会@杉並区役所(1月20日)

説明会には定員100名を大きく上回る約180名が詰めかけ、予定の2時間を超えて4時間以上議論が続きました。約25名の住民が質疑を行いましたが、計画見直しを求める声ばかり。「詳細は決まり次第、説明します」、「ご意見は参考にします」といった東京都の官僚答弁に会場からは怒号が飛ぶなど、大荒れとなりました。住民合意が得られていないのは誰の目からも明らかで、「賛成するつもりだったけど、あまりに不誠実だ。これだけ反対意見が出ているのに審議会にかけるのか」との声も上がりました。東京都は長年に亘って住民を無視し、秘密裏に計画を進めてきたわけですが、この説明会も住民意見を真摯に聞いて計画に反映するためではなく、「地域住民に丁寧に説明した」というアリバイを作り、2月6日の都市計画審議会で強行採決するために開催されたのではと感じました。なお、説明会の様子は、複数のメディアにも取り上げられています。

東京都都市計画審議会(2月6日)

これまで述べてきたように、この計画は地域住民の賛同を全く得られていませんが、東京都は2月6日の都市計画審議会で強行採決するようです。1月20日の説明会で、「どのように住民意見を反映するのか?」、「立坑の位置は見直すのか?」といった住民の質問に対し、東京都職員は「この計画がベストと考えており、このまま2月6日の都市計画審議会に上程する」と断言していました。いったい何故そんなことが言えるのでしょうか。善福寺川流域住民が望んでいないのに、行政による善意の押しつけは止めていただきたいです。また、私達は水害対策は喫緊の課題と考え、プレスリリース等でより迅速で実効性の高い代替策を提示していますが、東京都は耳を傾けてくれません。東京都が本当に行いたいのは、治水ではなく工事ではないでしょうか。

私達は、住民の悲痛な声を届けるべく、都市計画審議会委員の方々へお手紙を書くよう呼び掛けています。また、12月1日~15日に住民らが東京都に対して提出した「意見書」の要旨も、審議会で報告される予定です。ぜひ委員の方々には、住民の声に向き合い、良識あるご判断をいただだければ幸いです。

第243回東京都都市計画審議会(2023年11月17日開催)の出欠名簿

なお、2月6日の都市計画審議会では、20個もの案件が付議される予定であり、「東京都市計画河川 第8号善福寺川」について、どれだけ真剣な議論がなされるのか不安です。多くの杉並区民の人生を左右する重要事項を、こんな粗雑な手続によって決められてしまうことに憤りを感じます。

第244回東京都都市計画審議会(2024年2月6日開催)

おわりに

命と暮らしを守るはずの水害対策に、これほど大きな反対が上がっているのは、工事と引き換えに奪われる自然環境・生活環境が大き過ぎるからです。これに加え、能登半島地震で発生した地盤の隆起や、調布市の住宅街で発生した外環道トンネル工事に伴う陥没事故を受けて、シールド工法の危険性を指摘する声も、署名活動のなかで多数寄せられています。外環道トンネル工事での陥没事故については、下記noteをご覧ください。

シールド工法は多数の成功実績を誇るものの、現に外環道トンネル工事では陥没事故が発生しており、善福寺川上流域でも住宅の下で起これば人命に関わります。確率が低ければ良いという話ではありません。外環道での陥没は入間川沿いで発生しており、河川近くの軟弱地盤を掘ることに不安を感じます。特に、今回の地下トンネル式調節池では、住宅の立ち並ぶ西荻地域において、川の真下を川沿いに掘り進める区間や、住宅の真下を掘り進める区間があり、陥没事故が起こらないのか心配です。また、工事期間中は、大量の土砂を立坑から搬出するために毎日数百台のダンプトラックが狭い住宅街を出入りすることになります。命を守るはずの工事により、人命が奪われないとも限りません。

これに対し、善福寺川の氾濫により人命が奪われたのは、1958年の狩野川台風が最後です。その後も溢水による家屋浸水は散発しているものの、半世紀以上に亘り誰も亡くなっていないのです。署名に賛同いただいた水害経験者の年配ご婦人の言葉が印象に残っています。

「何年前だったか、膝くらいまで浸水して。そりゃね、家には良くなかったかもだけど、死んだ人もいないしね、そのまま住んでるのよ。でも、この工事で精神的に参ったり、住めなくなる人が出るのはおかしいわよ。浸水しても死なないのよ。だから、大げさな工事は要らないのよ」

署名活動を継続しています。ご賛同いただける方は、下記署名サイトにアクセスください。周囲にも拡散いただければ幸いです。
www.change.org/SaveZenpukuji

最新の情報発信は、X(旧Twitter)にて行っています。
@zenpukuji_green

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