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ブラックボックスのままで、“つくりたいものをつくる”方法!?

待ちに待った、ミラノ出発まであと1日となりました!
どきどき、わくわく、でも何だかおっかない~、仕事ともまた一味違うこの緊張感は子供のころの遠足前夜を思い出すような、そんな心境です。

さて、前回まで主にアイディアが生まれるまでについて触れてきました。

今日は「プロダクトを作るまでの流れ」の中でも、特につくりたいものを明らかにする部分についてご紹介します。

初めてつくるものをどうやって具体化していくか

当たり前ですが、初めてつくるものは、誰もその作り方を知りません。検索しても出てこない。では、どうやって誰もつくったことがない新しいアイディアを具体的な形にするのでしょうか。

第1回でも紹介しましたが、私たちは慶應大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科で、つくりたいものを明確にし、つくり方の手順を示してくれる考え方として、“システムズエンジニアリング”を学んでいます。

システムズエンジニアリングは、INCOSEというシステムズエンジニアリングに関する国際的な協議会の定義で、次のように示されています。

システムの実現を成功させることができる複数の専門分野にまたがるアプローチおよび手段 」(INCOSE SE Handbook,2000) 

この”システム”とは、ある目的のために、複数の構成要素から成り立つ集合体で、それら要素が相互に作用するものを指します。
いわゆる情報システムはもちろん、人工衛星、お箸、介護サービス、結婚や育児、会社組織や市場主義経済という仕組みまで。この定義で考えると、私たちの身の回りはシステムだらけです。
“システムズエンジニアリング”とは、超ざっくりいうと、そうしたシステムに定めされた目的を成功させるために、本質を深く広く丁寧に考える助けとなる手法・アプローチだと思ってください。

(より詳しく知りたい方は、私たちに教えてくださっている白坂成功教授の「システムズエンジニアリング概要」記事をご覧ください。)

つまり、今回、私たちがミラノサローネで展示したい“新しいアイディアが形になったもの”もまさに1つの”システム”「X」として捉え、達成したい目的のためにはどんな機能が必要なのか、それをどう具体的に実現するのかというアプローチで考えました。

つくりたいアイディアはある。
それをどうやってつくっていいかわからない。
そんな困った時こそ、システムズエンジニアリング!!

つくりたいものを明らかにする要求定義

なんだかつくりたいアイディアが見えてきた初期の段階で、私たちはそれをより具体的にするために次のような思考のプロセスを取りました。

まず、つくりたい「X」の輪郭(内側と外側の境界線)を明らかにしていく作業。仮に作りたいものをソリューション「X」として置き、その中身や詳細は一旦ブラックボックスの状態で、それを取り巻く周辺環境、ユーザー・作り手である私たち、運ぶ人、大学の先生方などの利害関係性との関係性を明らかにしていく「コンテクスト分析」を行います。

そして、「X」が展示されている間、どんな風にユーザーに体験をしてもらいたいかを考えながら、ユースケースを図にしていきます。
例えば、展示スペースに入ってきたら“目に留まる”→“他の人が体験しているのを見て気になる”→“体験したときに何かを感じる”みたいな。そんな流れを書いていくと、その「X」がもつ機能が明らかになります。

チーム内での意見の一致にもつながる

こうした可視化は、チームメンバーのそれぞれの考えを表に出すため、方向性をきちんと合致させながら、次のステップに進むことができる上でもとても役立つ方法です。

今日ご紹介したのはほんの一部ですが、アイディアをこうして“体系的に考える”ことは、まぁとりあえず作ってみようアプローチで起こりがちなコストや時間の浪費を抑えることができる強力な武器なのです。

武器を片手に全力で挑む全力ポーンですが、当然すべてがスムーズにいくわけがありません。途中、行ったり来たりの繰り返しを何度も経験しました。
でも、その「行ったり来たり」こそ「新しいアイディアを考え形にする」ためにとても重要な要素なので、きっとこの後のどこかのタイミングで説明してくれるはずです。乞うご期待くださーい。





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