MBS184桐林さん

「エンジニア的アプローチによる内観で自己変容を体験」日本トランスパーソナル学会 常任理事 桐林千登勢さん


●ご挨拶と出演者紹介

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三木:本日もマインドフルビジネスストーリー第184回始まりました。本日は日本トランスパーソナル学会常任理事の桐林さんに来ていただいて、色々なワクワクすることを聞いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

桐林:よろしくお願いします。


●三木さんとの出会いについて

三木:まず私と桐林さんの最初の出会いって何でしたっけ?昨年のZen2.0のボランティア募集というのがあった時に初めてお会いしたんですよね?

桐林:初めてお会いしたのはそちらで。その前からFacebook等でお写真では拝見してたんですが、「あ、これが本物の三木さんだ!」みたいな。

三木:どうでした?本物に会った時の印象は。

桐林:ちょっと感動したんですけど、想像してたよりもすごく物静かで淡々とした感じがあって。

三木:その前はもっと暑苦しいやつだと思ってました?

桐林:やってらっしゃることを拝見してただけなので、ものすごく熱い方なのかなと思って。でもたぶん内面と外見と違うのかなっていう印象を受けております。

三木:桐林さんはZen2.0の関わりってどういう…?

桐林:昨年は「あ、こんな面白そうなのあるんだ」って本イベントのチケットを申し込んじゃってから「ボランティア募集してます」みたいなのがあって、私ボランティア好きで裏側を見るのが好きなタイプなので。

三木:恥ずかしい裏側を見ていただいて。表面はかっこよくクールにやってる風なんですけど、もう心臓が痛くなるぐらいな感じで。裏を見たご感想はどうでしたか?

桐林:去年は裏を見たかったんですが、もう本イベントに申し込んじゃった後だったので、一番最後のお片付けと掃除だけ参加させていただいたっていう経緯があります。

三木:今年は色々初期の段階からこんな風にイベントが作られていくという。

桐林:そうですね。裏側見ながら大丈夫だろうかって冷や汗流しながら(笑)。


●桐林さんの自己紹介

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三木:ご自身の簡単なご紹介というか、今までどういうことをやってらっしゃったんですか?

桐林:「どういうことをやってきた人?」って言われるのが一番困るぐらい色んなことをしてきたんです。仕事としては一番最初がITエンジニアから始まりまして、そもそもITクリエイターになりたくてIT業界のほうに進もうと思ってたんです。会社に入社した途端に「今クリエイティブ関係の仕事ないから取りあえずプログラム勉強しておいて」みたいに言われてエンジニアになったら、そのままいつまでもエンジニアみたいな感じで。

三木:何年ぐらいコードを書いてらっしゃったんですか?

桐林:3年ぐらいだったんです。でもそこで「クリエイターになりたいんだ」って言って辞めて、自分でAdobeのソフトとか買って絵を描き始めたりとかして。その頃ってインターネットがワーッと盛り上がってきた時期だったので、Web制作とか色んなことを細々やりつつ、そのうちアート活動とかもするぐらいまでにはなりました。そこでも色々ありまして、医療業界に。心理学を学んでみようと思って心理学を学び始めてから、民間のすっごい簡単な協会資格のカウンセラーを取ってメンタルクリニックに入ってみたんです。そこから医療業界のほうに入ったらすごい大変なことになってまして。

三木:どんな大変なことに?

桐林:患者さんが多すぎてスタッフ誰も休憩できなくて、水飲む暇もないしトイレ行く暇もないみたいな感じで。そういうところでも色んなお話を聞くうちに、ちょっと世の中の企業って何してるんだろうというのがありまして、そこから色んな企業を転々とし始めました。数年のベンチャーから大手さんまで雇用形態とかあまりこだわらずに入れるところに入って行きみたいな。

三木:それはプログラマーとしてですか?

桐林:いえ、色々です。事務だったりとか色々…

三木:メンタルケアとか?

桐林:そういうのもありつつ、ITっぽいところとか医療的なところとか色んな経験を生かしつつ。でもITに強かったっていうのはすごい助けられました。どの業界でも。

三木:何社ぐらい変わられたんですか?

桐林:雇用形態を問わなければ20社以上変わっています。

三木:20社ってすごいですね。


●トランスパーソナル心理学に関心を持ったきっかけ

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三木:色々経験があって、なぜ今トランスパーソナル学会の理事をやってらっしゃるんですか?

桐林:一番最初のIT会社にいた頃に犯罪被害体験的なものを受けまして、その時仕事は普通にしてたんですが、家に帰ったら1人で内省するような毎日だったんです。

三木:何歳ぐらいの時ですか?

桐林:19歳の時です。会社では普通に淡々と仕事して、当時のIT業界って女性が少なかったのでそんなに仕事以外の話ってすることもなく、家では1人暮らしだったので、家に帰ってはその頃のこととか出来事を反芻しながら「なぜ自分はこんな目に遭ったんだろうか」「何を考えて行動してたんだろうか」「何がいけなかったんだろうか」みたいなことを1年ぐらいずっと考えてました。

三木:結構辛いですよね。1人で悶々と。

桐林:そうですね。

三木:相談する先はなかったんですか?

桐林:一番最初にそこに入る前に嫌な思いをした時に、相談も兼ねて「こういうことがあってこうでこうで」みたいなのを会社の同僚の1人に伝えたんです。その時に「そんな話人に聞かせて何?かわいそうだねとでも言ってもらいたいの?」みたいに言われた瞬間に「えっ?」って助けを求めたのをパーンって弾かれたみたいな。

三木:それは男性?

桐林:男性ですね。

三木:冷たいな。エンジニアによくあるタイプ。

桐林:でもそれを聞いた瞬間にたぶん若干自覚あったんでしょうね。「失礼な!かわいそうとかそんなんじゃないです」みたいに言い返せなかったんです。「あれ?私何考えてたんだろう」みたいになりまして、そこから内省の日々が始まってしまいました。「そう言われてみると『かわいそうだね』って言われたかったかも」とか、「え?じゃあ私あの時何でそんな行動を取ったんだろう」「あの辺で違和感あったよね」とか、「おかしいなと思ったけどいやいやってわざわざ自分を否定してまで相手に合わせてしまったのは何でだろう」とかっていうのをずっと考えてました。

三木:それで1年ぐらいそういう時期が続いて、その後何が…?

桐林:結局内部を掘り下げていくと色んなことを考えてましたし、ちょっと人には言えないようなどす黒いものもありまして、そういうのを通していった時に、最終的には「あれ?自分ってものはないな」ってなったんです。

三木:その境地に?

桐林:はい。最初は「相手がこうだったから自分はこうした」とか、「相手が悪かったんだろうか、自分が悪かったんだろうか」みたいなところを行ったり来たりしてたんですが、そのうち色んなものを見ていくうちに、「こんなにいっぱい自分の中には色んな想いがあったんだな、そのうちの一部にしかフォーカスしてなかったんだな」って考えられるようになってきて、徐々に今度は「じゃあもし相手がこの人じゃなかったらどうだっただろう」「状況がこうじゃなかったらどうだったんだろう」っていうシミュレーションを始めたんです。「人によって違うし、状況によって変わるし、その時の自分の状態によっても変わるな」って思っていったら、「固定された自分ってないな」っていうものに行き着いていったんです。

宇都宮:全て自問自答なんですね。

桐林:全部自問自答でした。あの当時はそれこそ「そんなこと言ってどう言われたいの」って言われてしまったので…

宇都宮:何か本を読んで心理学を学んでとかそういうことをしたわけじゃなく、自己流でこういうことを?

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桐林:何もなかったです。自己流ですね。ずっと1人だけで1人暮らしの部屋に閉じこもってました。

宇都宮:そういう気質なんですか?元々。

桐林:たぶんオタク気質というかアスペルガータイプと言いますか…

宇都宮:集中して何か入り込む?

桐林:1つに興味を持ったらそこに入り込んでいっちゃいます。

三木:それでバーンって変わった経験がそういう自分の心理状況をもっと研究してみたいって感じになったんですか?

桐林:そうですね。意識の上では自分ってないんですけど、「体あるしな」と思ったんですね。でもこの体も日々細胞入れ替わってますし、ある一定期間この形を保っているかのように入れ替わっているだけであって何か固定されているわけじゃない。これも分解していくと(机など)こういう物と同じ物質に辿り着いちゃうっていうのを考えると「あ、この体もまるでここにあるかのように動き回ってるけど、あるわけじゃないんだな」っていう。

三木:すごいな。ある種悟ったんですね。

桐林:そう考えたらだいぶ精神状態が落ち着いてきまして。そこからは日々家に帰ると瞑想のような状態で何もないところに入って行くことを繰り返してました。すると、ある日、家に帰って扉を開けて電気をつけたらゴキブリがいて、すごいビクッてしたその瞬間にバーーーッて世界が弾けまして。

三木:ゴキブリで!?

桐林:はい。ちょっとこれ言うのは何かもう…(笑)。もうちょっと良いものできっかけがあったら良かったんですけど。

三木:ビクッてなった時にどんな感じになったんですか?

桐林:その衝撃で「あ、自分と世界は一緒だった。同じものでできてたんだ。私が世界で世界が私だった」。もうちょっと具体的に言っちゃうと、「ゴキブリと私は同じものだった」みたいな感じなんです。

宇都宮:それは理解した感じなんですか?

桐林:その瞬間腑に落ちた感じですね。全体でそれを理解した、腹落ちした。

三木:その悟り体験がきっかけっていう…

桐林:そうですね。そういう意味では犯罪被害者でもあって加害者でもあったけど、どちらも同じ自分だったみたいな、色んな価値観、倫理観全部が統合されてしまったっていう感じです。

三木:それを体験した後どういう行動を?

桐林:それは自分的にはすごく腑に落ちたんですが、世の中の人ってそれを知ってるのかなって思ったんです。

宇都宮:説明しづらいですよね。

桐林:そんな話誰からも聞いたこともないと思って。

宇都宮:お友達にも言ってないんですか?

桐林:言ってなかったです。数日は会社の人にも特にそんな話をするきっかけもなかったので仕事に行ってました。当時会社が青山にあったので渋谷を経由してたんですが、ある日渋谷の駅を降りた時にいっぱい人がいて、「こんなにいっぱい人いるけど、みんな自分はいないっていうことを知りながら生活してるんだろうか?」って何となく周りを見渡した時に、草木も道行く人も車とかビルとか全部がパーッて光り始めたんです。「何だ?これ」って思ってたら光の帯でそれぞれがつながり始めまして、「あ、みんなつながってるんだな。でも何で光ってるんだろう」と思って、その光が段々広がって眩しくなっていったその次の瞬間に、今度バーッて宇宙の映像に変わったんです。渋谷が宇宙に大変身。

三木:真っ黒の…

桐林:はい。真っ黒の中に惑星とか星とかいっぱいあって、それを見た瞬間に「あ、ものすごい遠い過去からものすごい先の未来まで全てが今この瞬間にあって、あらゆるものは全部奇跡的なバランスでできているんだ。このバランスで成り立ってるから全てこのままでOKなんだ」っていう…

三木:すごいな。

桐林:そこまでは意識が飛躍しちゃってまして、渋谷の人混みの中で朝から1人号泣してました(笑)。「わ~~みんな1つ。これで良かったんだ」みたいな。

三木:渋谷で泣いてたんだ(笑)。

宇都宮:でもその会社には行くんですよね?

桐林:はい。会社には淡々と仕事しに行ってました。

三木:号泣した日には誰かに何か伝えました?

桐林:誰にも何も言ってないです。全てこのままでOKなので言う必要もなかった。

宇都宮:それってビジュアルとして伝わってきたっていうことなんですか?音声とか香りとか……

桐林:私たぶん視覚優位タイプだと思いまして、何かあると脳が全部ビジュアル変換するらしいんです。

三木:つながり始めたんですね。

桐林:エンジニアだったのでソフトとハードの関係はどういう関係なのかっていうのがあったので、脳とそのビジュアル、ソフトの関係、起こってる心理関係って…

宇都宮:グラフィックボードがあってとかCPUがあってとか。

桐林:そうなんですよ。すごい興味を持ちまして、しかも自分が現実だと思ってたこの映像は、光り始めたところからすでに脳内で展開している図なんです。その境目は自分では分からないんです。どこからそこに切り替わったのかっていうのは分からないぐらい精妙な映像が展開したんです。

宇都宮:でも視神経が捉えてるのはたぶん現象としてあるものだけど、脳が合成してるんですよね?

桐林:リアルタイムで合成を始めてるんですよ。

宇都宮:そのビジュアルはどこかにあった情報が来てる感じなんですか?

桐林:おそらくそうなんだと思います。でも自分では意識してないから無意識ですし、しかもそのビジュアルっておそらく自分が脳内とか体感で体験して理解してるものを映像展開してるから、脳がすごい素晴らしい制作能力なんですよ。脳の制作能力も合成能力も半端なくすごいなと思いまして。これは何が起こってるんだろうっていうのはものすごく探求心をくすぐられました。

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三木:それからこちらの道に来る勉強を始めた?

桐林:そうですね。でもまっすぐそこには行かないで、「こんな状況で自分に何ができるんだろう。この体も意識も一時的なものであれば、この一時的なものが保てる間にできるものって何だろう」って考えた時に、「あ!子ども産んで育児だ」みたいな。

三木:突然そっちの方向に?

桐林:これは生物として続けていくために一番重要な機能だなって思いまして、これはちゃんと使わねばって思ったんです。

三木:使わねば(笑)。それでご結婚を?

桐林:はい。なのでちょっと結婚、出産が早かったんです。

三木:いくつの時にお子さんを?

桐林:21で結婚して22で出産してます。しばらく育児に時間を取られてたんですが、その間にも好奇心に従って色々勉強していた中で心理学に出会って、心理学の受けた講座の中でトランスパーソナル心理学っていうものがありまして。「あれ?これはいつぞや見た経験した何かかな?」と思いまして、ネットで調べたところ明治大学の諸富先生に行き当たりました。

三木:その時は明治大学にしかなかったんですか?

桐林:諸富先生が学会長で色々トランスパーソナルの活動をしてたので、検索したら一番に引っかかったっていう感じだったんです。先生の講座に行きまして、懇親会に出まして、「私こういう体験をしたんですけど」っていう話をしたら、「それは病的な幻覚とかじゃなくて、健全な幻覚体験だった」というお話をいただいて。

三木:一応それは分けてる感じなんですね?

桐林:そうですね。今の私なりの考えで整理したのでいくと、色んな体験ってどんな人間も内面でしてると思うんです。それが病的か病的じゃないかカテゴライズする一番の基準って、周りの人と合意を取れる状態かどうかだと思うんです。その合意が取れない状態になっていると若干支障あるということで病的のカテゴライズに入ると思っています。

三木:一応起きてるけど、みんな知らないよねっていうのを自分で分かってるっていうことですね。

桐林:それを例えば人に話すとしてもそれはそれとして自分の体験であり、これが現実、絶対唯一の真実ではないとか、そういう相手との間にちゃんと距離を作れるとか。

宇都宮:結構エンジニア的ですよね。

桐林:エンジニアだったので。

宇都宮:感性と理性が行き来している感じなんですか?

桐林:そうですね。そこの行き来は楽しいですね。

三木:すごいですよね。そういう体験をするとフワーッって向こうに行ってフワーッてなっちゃうじゃないですか。いわゆるスピ系。それをちゃんと踏みとどまって理論的に分析しているのが学会たるゆえんなんですね。

桐林:そうですね。ただそういう意味では心理学だけではちょっと物足りなかったんです。フワフワし過ぎちゃいますし、表面に出てきたとこだけで解決しようとするとだいぶ難しいというか無理が出てくる感じがします。


●トランスパーソナル心理学について

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三木:後半はトランスパーソナル心理学とは一体何なのかというのを伺っていきたいです。

桐林:トランスパーソナル心理学自体は一応定義としては非日常体験を理解するための枠組みということになっています。ただその非日常体験って人によって全員違いますし、それをどう捉えるか次第でも変わってきますので、再現性にはすごく乏しいので、「これです」っていうセオリーは作れない状態で言ったもの勝ちみたいなところもあったりするので、「ちょっと証明難しいですよね」っていう領域になってます。そこがすごく怪しいと言われて広まらないゆえんです。

三木:起源はどれくらいからなんですか?学問という体系として。

桐林:1970年ぐらいに確か宣言があったはずなので、60年代後半ぐらいから人間性心理学と共に広まっていきまして、どうしても人間のこの心理っていう枠組みを超えた何かがあるよねっていう話からトランスパーソナル心理学っていう…

三木:個人を超えた何かの体験を分析するということですね。当初学会を立ち上げたばかりの時は僕もこの間本を読んだんですけど、ケン・ウィルバーさんとかが引っ張って行った感じですか?

桐林:そうですね。エサレン研究所を創設した方とか、ヴィクトール・フランクルですとか、結構有名どころな方が引っ張って行ってらっしゃいます。

三木:ケン・ウィルバーの本は20冊以上ありますが、最近はインテグラル理論とかいう…

桐林:そうですね。色々盛り上がった勢いでヒッピー文化と組み合わさって色んな実験が行われ。

三木:色々薬物を使ったりとか。

桐林:カオスに見られた時にケン・ウィルバーがものすごい批判して、トランスパーソナルじゃなくてさらに踏み越えたインテグラルな世界とか。

三木:トランスパーソナルが乱れた時に彼らは決別した感じなんですか?

桐林:詳しいところまでは分かんないんですが、その時にはトランスパーソナルに対してだいぶ批判が入ったというのは聞いております。

三木:彼のインテグラル理論を読んだんですが、社会制度とかそういうのも全部組み込んだような形にケン・ウィルバーさんは変化している感じですね。

桐林:はい。色々理論とか思想とかを彼は統合して整理して分類してマッピングしたみたいな感じです。

三木:今トランスパーソナル学会っていうのは国際学会もあるんですか?

桐林:元々カリフォルニアのほうで起こっていて、それを日本に持って来たっていうのが始まりなので、本体はやはり海外のほうなのかなという感じがします。

三木:同じようなスタンスの研究?

桐林:若干海外のほうがサイケデリクスとかテクノロジーも含めて発展していますので、もっと多様なのかなという感じです。

三木:それが最近言われているトランステックとかそういう流れに合流しているんですか?

桐林:はい。日本のトランスパーソナル学会はあくまでも心理学にフォーカスしてるので、あまりそういったお話は表には出て来ないです。

三木:この間アリゾナでStudy Of Consciousnessとかいうカンファレンスがあったりとか、サンフランシスコではトランステックとか、どうやら向こうのものはバリエーションが色々増えてきてる感じですよね。

桐林:そうですね。たぶん心理じゃなくて身体の方からのアプローチでもあると思いますので、もっと心理学というのを超えた枠組みになっていると思います。

三木:日本トランスパーソナル学会ではどういう方達が主に集まってらっしゃるんですか?

桐林:あちらは心理学系の方とか、ソマティックといった身体心理学の方が多いと思います。

三木:学会で何か発表みたいなのをされるんですか?

桐林:色んな方の理論とかを見て新たにまとめ直すとかそういう感じが多くて。

三木:結構喧々諤々みたいになりますか?

桐林:あんまりないかなという印象ですね。私としては。

三木:「あ、いいね」みたいな感じですか?お互いに。そこは別に批判とか出ない感じ?

桐林:そうですね。こういう実験をしてこうなったみたいなのはあまり学会では聞かないです。

三木:「こういう体験をしてこれはこうなんじゃないか」みたいなそういう発表というか論文というか…

桐林:「○○はこういう理論展開で、○○はこうであって…」みたいなのをまとめたと言いますか…

三木:いわゆる学会みたいな感じじゃないですね。要は体験のシェアにもう少し学会的な色彩を加えたみたいな。

桐林:そうですね。トランスパーソナルに限っていくと、臨床的な研究もたぶん実験も再現も難しい分野だっていうのもあってそんなにない感じです。

三木:お坊さんとかもいらっしゃるんですか?その発表とかに。

桐林:あまりメインでは出てらっしゃらないですね。

三木:ソマティックをやってらっしゃる方とか心理学系の人。一般の方とかもいらっしゃいます?その学会発表的なところに。

桐林:はい。そういうとこに興味を持ってらっしゃる方はいらっしゃいます。

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●ヒューマンポテンシャルラボの活動について

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三木:桐林さんが山下さんのヒューマンポテンシャルラボのサポーターになられたり。

桐林:プロデューサーでやっています。

三木:それはどういうきっかけで?

桐林:私は心理も好きではあるんですが、それだけでは説明がつかないものとか、もうちょっと身体的、身体と言ってもソマティック心理学ではなくもっとダイレクトに脳科学とか生化学とか筋肉の組成とかっていうところも含めないと難しいんじゃないかと思ってます。山下悠一さんとお会いした時にそういうテクノロジーとか、彼の言っているテクノロジーっていうのはいわゆるモーターとかバッテリーで動くものだけではなく、心理技法とか古代からの技法も含めたテクノロジーということだったので、「それは面白そうだね」っていう話から…

三木:実際どういう組み方をされてるんですか?

桐林:私はヒューマンポテンシャルラボさんで企画しているのは主にトランスパーソナル心理学をちょっと違う視点で扱うとか…

三木:この間第1回目をやりましたね。

桐林:勉強会を。井上貫道老師をお招きした時の。

三木:井上貫道老師に感動しました。バラの花を持って立つ。

桐林:あれは良かったですね。

三木:それを取り上げた本がシリコンバレー式脳と瞑想…

桐林:『ZONE』。

三木:『ZONE』か。その本を一言でバッサリと…

桐林:「こんなものを求めてる時点で今ではないどこかに行こうとしてるし、何者かになろうとしてることだよね。そんなんじゃなくて問題は常にここの自分の中で起こってるのだから、自分をちゃんと見つめるところから始めなさいよ」と。

三木:素晴らしいね。こうやるんです(両手を叩く)。「今音が鳴ったでしょ」みたいなそういうところがあったりして。

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桐林:でも私自身が体験したその体験っていうのも自分を見つめ続けるっていうことをした後のゾーン体験なので、ゾーンを目指してやったっていうより、本当に今の自分にフォーカスしていったらそこに行っちゃったみたいな体験なんです。

三木:シリコンバレーはゾーンを目指しちゃうんですね。自分を見つめるのが本来のことであって。

宇都宮:外に行っちゃうんですね。

桐林:でもそこを体験した後にその体験も含めて自分をもう1回見つめるっていう方向もありだと思うんです。絶対発達段階下から行かなきゃいけないわけではないと思ってまして、いきなり体験してから統合していくっていうのもありだと思うので、それはそれでいいんじゃないかなと私は推奨しています。


●知識と体験、理論と実践について

三木:今色んな組織論、ティール組織とかそのベースになってるインテグラル理論とかあって、それが割と意識高い系の人達がむさぼるように読んでる本が結構あるじゃないですか。

「それで本当にご理解されてますか?」っていう。心身的な肉体的なある種の通過を経た人だとたぶん読むと入っていくものが多い気がするんですが、何の経験もなくあれを読んでもたぶん理解した風だけど理解できないんじゃないかなっていう疑念があって。

桐林:そうですね。たぶん日常的に似たような体験はされてる方とかは何となく想像ついたりとか、「あんな感じかな?」みたいなのはあると思いますし、私が体験したように「あ、自分なかった」とか「体もないんだ」みたいなのを思考で理解するっていうことまでは辿り着けると思います。あと本当に脳内でネットワーク外れちゃったみたいな、時間とか空間の感覚が判断できないっていうものがどういうことかっていう体験とかっていうのはしないと理解できないところはあると思うんです。

三木:もちろん理論化して分かりやすくするために本を書いてると思うんですが、その本を読んだらそれを実行してみる必要がすごいあるんじゃないかなと。

桐林:そう思います。

三木:特にティール組織とかインテグラルとかU理論とか。

桐林:たぶん知識として持ってたほうが体験として味わった時の整理のしやすさっていうのも違うと思いますので両輪必要ですよね。知識と体験と。

宇都宮:僕製造業出身なので現場主義寄りではあるんですが。

桐林:体験のほうがたぶん現実として展開はしやすいんですが、それを応用するためには知識があったほうが…

宇都宮:そうですね。技能を技術化しないとね。

桐林:だから両方を行き来するっていうのは大事だと思います。

三木:トランスパーソナル心理学でベースになっているテキスト的な本ってあるんですか?

桐林:一応推奨されてるのは『トランスパーソナル心理学・精神医学』という本があります。

三木:それは日本人の方?

桐林:いえ、訳されてると思います。テキスト的なんですが、絶版になっちゃってるんです。前半は色んな有名な方、フロイトとかケン・ウィルバーとかグロフさんとかがトランスパーソナルに関わるどういう活動をしたかみたいな紹介で、後半は結構瞑想とかヨガとかの効果とか心理に関わる影響とかそういう説明になってる本です。

三木:僕の専門はイノベーションなので、ちょっと前に日経にある記事が出て、オープンイノベーションという考えなんです。「企業のリソースを外部に公開してそれをみんなでハッカソンによって良いアイデアをいっぱい出して企業にイノベーションを起こしましょう」みたいな、それを東京大学の先生が座長になって色々分析してみたんです。そしたらほとんどオープンイノベーションは日本の企業の中では有効に動いてなくて、上から言われてるので内発的なワクワク感がないので全部失敗してる。

内発的なワクワク感って本を読んだからって出てこないですよね。

桐林:確かにないですね。自分の中から出てくるので。

三木:あるいは海外の素晴らしい手法通りやっても出てこないです。その根源にあるのは小さい頃の夏休みのカブトムシ捕ったとかカエルを捕まえたとかいうところに原点があって、スタンフォードの○○式を持ってきてもそれはできないっていうことが明白になって、そこに至るまで5年ぐらい企業は色んなことにお金を投資してるんです。原体験とか実際の体験っていうところの重要性を最近すごい認識してて。同じように有名なその先生の本でも理論と実践、両方学ばないと難しいかなというのが最近すごい出てきて。

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桐林:実践も本当にやって何かにしようと思ったら、それを人からやらされるんじゃなくて自ら動いていかないと絶対ならないと思ってます。実践できるかどうかですでにハードルになってると思います。


●桐林さんの今後の活動について

三木:ご自身の内発的なワクワク感っていうのはどの辺に今持ってらっしゃいますか?どういうことをやっていきたいか。

桐林:私はヒューマンポテンシャルラボさんの活動や、Zen2.0とかWisdom2.0のお手伝いをしてるのって意識の探求、つまり脳内で何が起こってるのっていうのと照らし合わせるほうが好きなんです。

三木:実践もやりながら理論化していくみたいな感じ?

桐林:それこそケン・ウィルバーが言ってる水平の悟りと垂直の悟りっていうので、水平は日々行っていくもの、そこからある時何かのきっかけで垂直になる。なぜここの段階が上がるのかっていうのはウィルバーも明確には言ってないですし正解はないんですが、おそらく何かやっているうちに違う価値観とか自分の中のネガティブなものに遭遇した時に、それを通すことで統合されると1個上がる。その1個上がるのにどれだけ貯まるかは人によって違うと思うんですが、統合に向けていってちょっとずつ段階を上がっていく。上がるのがいいっていうわけではないんですが、上がるようにできてるんだったら上がったほうが選択の幅が広がりますよね。そこをどのようにしてやっていくかっていうのはすごく興味があります。

三木:ご自身が先ほどおっしゃった覚醒体験が垂直の悟りを何段階か行ったみたいな?

桐林:そうですね。最初は「何で私こんな目にあったの!あの人が…」みたいなところから始まって、「あ、何だ。全部これでいいんだ」みたいなところまで行ったので。

三木:そこまで行ったらあとはどうなんですか?ここにホールドできるのか、戻ってしまうものなのか。

桐林:たぶんある程度戻りはするんですが、何かあった時にはここを思い出してそこを乗り越えることになっていっています。

三木:何かここを行き来できるためにご自身でやっているワークとかはありますか?

桐林:あまり人にはお勧めしてないんですが、私は特に瞑想とかもやらないで自分の中を見つめてたんです。それって何か自分に問いかけた時に「いやいや、そんなことないよ」とか「いや、だってあの時は…」とか言い訳したくなる。そこには何かが眠ってると思ってそこをほじくり出すんです。

三木:内省の時間を取るってことですか?

桐林:そうですね。

宇都宮:それエンジニアリング手法ですね。

桐林:だから皆さんにはあまりお勧めしないです。

三木:部屋でずっと内省してるんですか?

桐林:例えば何かやってた時にイラッてしたりするじゃないですか。「えっ?」って思った時に何でイラッとしたかっていうのをマインドフルネス的に見たりしますよね。「今自分イラッとしてる。何でだろう?」「○○だから」って言った時に「本当にその理由かな?」ってもう1回自分に問いかけるんです。

宇都宮:それ“なぜなぜ分析”ですね。トヨタ生産方式で言うと。掘り下げていくっていう。

桐林:例えばそういうので嫌な思いをして、自分を正当化したいから「別に嫉妬してるわけじゃないよ」とかなった時に、「嫉妬してますって言ってごらん」とか(笑)。

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三木:ボソッと言うんですか?

桐林:自分に心の中で問いかけます。

宇都宮:それは人格は1つなの?別の人格が出てくる感じなんですか?

桐林:1つだと思うんですけど。

宇都宮:でも役割が違うじゃないですか。

桐林:違う役割で自分があっちこっち行く感じですね。

三木:自分自身を冷静に見つめれる段階にあるからそれができる?

桐林:そうですね。

三木:段階によっては統合しちゃってるからちょっと無理みたいなのもありますか?

桐林:たぶんそれは若干言い訳入ってるかもしれないと思います。統合してても一緒になってるわけではないと思うので。たぶんそういう体験をされた方で「感情がないです」っていうのは若干感情の配線が薄くなってるとか切れてるとか、もしかしたら障がい的な何かかもしれないって思うんですが。本当にちゃんと血流状態良く循環してたとしたら切れてるはずはないと思います。

三木:高次体験をした方が「感情の起伏があまりない」っていう風におっしゃったら…

桐林:「嫉妬したりとかネガティブな感情はないです」とか言うのはそこはもう1回見つめ直すか脳の点検をしたほうがいいんじゃないかしらっていう、私はそういう派です。

宇都宮:そうすると主観的な自分と客観的な自分が行き来してる感じ?

桐林:そうですね。客観的な自分になってる時そっちが主観になってるので、どれがどれって言うと…

宇都宮:役割がいるっていうことなんですか?自分の中の。

桐林:自分の中に色んな自分がいるとは思ってます。その色んな自分が切れてしまうと例えば多重人格的なカテゴライズされたりしますし。でもそこで連携が取れてるから取りあえず問題にはなってない感じですね。

宇都宮:色んな人間が存在してるっていうことを理解して役割を与えてるっていう人はそうそういないですよね。自分は1つって思いがちじゃないですか。

桐林:そうですね。思っちゃってる方も多いと思います。でもプロセスワークみたいなプロセス思考心理学では、そういうのを例えばロールっていう言い方をしてよりソフトに客観視できるようにしたり。

宇都宮:そういうワークがあるんですか?

桐林:そう。あらゆるロールは1つの人の中にあって、1つの人はあらゆるロールを取れるっていうことにするので、ロールって言われると自分とは違う人みたいに思えるので出しやすくなったりとか。

宇都宮:でもそれを自己流で積み上げてこられたのは…

桐林:だからちょっと危険なところもあるので、皆さんに「やってください」とは言わないんです。

宇都宮:体系立てられて存在はしてるってことなんですね。そういうことがあるっていう危険性を排除しながらみたいなことはあるんですね。

桐林:たぶんそういうのを使ってるのがプロセスワークだったりファミリーコンステレーションです。ファミリーコンステレーションでは代理人という言い方をして別の人に立ってもらいます。

宇都宮:それってお医者さんに行く感じじゃなくて、どういう役割の人にそういうことをお願いする感じなんですか?

桐林:これは心理技法としてカウンセリングだったりセラピーだったりってあります。

宇都宮:カウンセラーと呼ばれる人に相談するとそういうことができるってことですね。

桐林:はい。ファシリテーターとか。

宇都宮:でも自覚しないと相談に行かないじゃないですか。

桐林:だから最初は「あの人が!」みたいになってくると思うんです。「じゃあその人とあなたとで対話してみましょう。立場入れ替えてみましょう」ってなっていくと思うんです。それはゲシュタルトとかプロセスワークとかそういうところで使われます。

三木:僕の場合はそれが全部座禅の中で入れ替えることもしますし、あとはこんな自分、こんな自分っていうのもありますし、無意識のうちにそれを座禅の中でやる感じなんです。

桐林:たぶん瞑想とかはそうですね。

三木:1時間も座ってると全部の可能性を全部やるので、もうその中から選択肢は絞られていて次の行動へっていうのがトレーニングされてる感じで。

桐林:瞑想とか禅もそうですが、よりソフトにその人のペースで進みやすくなってるかなとは思います。

三木:その代わりすごい時間かかるんです。

桐林:時間かかります。気づかない人はずっと気づかない。

三木:最初3年ぐらいやってフッて上がって、またいつ上がるのかなと思いながら1年、2年と気づかない間に「これ前だったらすごいイラッとしてたのが全然そうじゃない」って段々と心のallowanceが増えていくのが急に来るんです。それが時間と共にだいたい2年とかで出てくる感じなので。

桐林:よりソフトに組み立てられて、そこにコンパッションを入れるっていうことは他者との関係を見ることにもなると思うので、マインドフルネスで自分を見て、コンパッションで他者との関係も見てっていうのでより促進されるのかなと思います。それをさらに意図的にやるのが心理療法を使ったワークだったりとかグループワークだったりすると思います。

三木:コンパッションのワークもいいですよね。「一番嫌いな人も幸せになってください」。

桐林:そこで言えない自分がいたら「それも見ましょうね」ってなりますし。

三木:段々と範囲を自分の家族、町、地域、日本全部、地球、太陽系、銀河、銀河の外、全部の宇宙みたいに広げていくトレーニングをやるといい感じですよね。人によってトレーニングの仕方が様々ですが、トレーニングの習慣をつけておくと自分が急にフッと上がる瞬間があって。

宇都宮:上がったっていう表現が分かるものなんですか?変わったっていう表現になるんですか?

桐林:たぶん世界の見え方が変わった、あとは幅が広がったっていう感じですね。

宇都宮:その前と後では違うっていうことを認識してるっていう?

桐林:例えば辛いことがあって「辛いと思ったけど、でもこれ一時的なんだよね。そのうちたぶんこの気持ちにも飽きて復活するんだよね」とか。

三木:そんな感じです。


●桐林さんの考える「日本(世界)の○○の未来」に対する想いについて

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三木:桐林さんの考える「○○の未来」なんですが、○○は自分で決めていただいて、トランスパーソナル心理学でもいいし、「その未来はどうなりますか?」とか、「どういう未来が来たらいいですか?」っていうところを語っていただくという。

桐林:自分の意識を自分で選べる未来ですかね。

宇都宮:今は選べないんですか?

桐林:今ってまだマインドフルネス瞑想を一生懸命トレーニングするとか、トランステックがあったらもしマッチしたら体験できるかもとか、もっと手軽で安全で確実にパーンと体験してそれを1回やれたらそこから下は選択できるみたいな。

宇都宮:すごい。

三木:すごいな、それ。

桐林:「なるほど!」みたいに理解してできちゃうと。

三木:人類みんな覚醒するんじゃないですか。

桐林:そしたらもう地球の未来は安泰ですね。

三木:争いもなくなるみたいな。素晴らしい。

桐林:地球の未来。

三木:どうもありがとうございました。

桐林:ありがとうございました。


対談動画


桐林千登勢さん

:⇒https://www.facebook.com/chitose.kiribayashi


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