MMS152中村さん

「モビリティを通じて次世代の人達に夢(=能力の拡張)を提供する」Cartivator代表 中村翼さん

本記事は2017年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

●ご挨拶と出演者紹介

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三木:第152回マイクロモノづくりストリーミング本日も始まりました。本日も司会は株式会社enmonoの三木でございます。本日はCartivatorの中村さんにお越しいただきまして、空飛ぶクルマの開発について色々お伺いしていきたいと思います。よろしくお願いします。

中村:よろしくお願いします。

●中村さんの自己紹介と会社紹介

三木:中村さんには約2年前こちらの番組にご出演いただきまして、まだあの時はクラウドファンディングをやってる最中でしたね?

中村:そうですね。

三木:それからどんな変化が起きてるのかということを含めて、お話を伺えればということで、まずは自己紹介からお願いします。

中村:有志団体Cartivatorの中村と申します。空飛ぶクルマの開発をやっています。

元々東京出身で理系の大学を出て自動車会社に入ってます。小さい頃から車が大好きで自分で夢の乗り物を作りたいと思って自動車会社に入ったんですが、普通の量産している車以外に夢のモノを作りたくても会社ではなかなか難しいというのもあり、自分で勝手にやろうというので入社して3、4年目ぐらいの時に、会社の同期を誘ってこのCartivatorという活動を始めました。

宇都宮:おいくつぐらいの時ですか?

中村:27か26ぐらいの時ですね。大学院を出て3、4年ぐらいです。

三木:ちょうどムズムズムズムズする年代ですね。

中村:そうですね。大学の頃学生フォーミュラというレーシングカーを作る活動とかもやっていたので、自分で手を動かしたいなという想いはありつつも、会社は基本的にオフィスワークがメインになるので、すごくムズムズ感はありました。

宇都宮:集まってきた人も同年代のムズムズした…

中村:そうですね。今さらにメンバーが増えてるんですけど、かなりムズムズしている人が多いなというのは感じます。

宇都宮:エンジニアばかりじゃないんですか?

中村:当初はエンジニアが多かったんですけど、今は比率的にはエンジニアが6割ぐらいで、事業企画やマネジメント系が4割ぐらいです。2012年に始めて最初は空飛ぶクルマではなかったんですけど、違うアイデアでビジネスコンテストに出て優勝することができて、そこから活動をやっていこうというので空飛ぶクルマの開発を始めて色んなコンテストに出ました。

三木:東京都のコンテスト(TOKYO STARTUP GATEWAY)が大きいやつですね。

中村:そうですね。優秀賞というのをいただいて、450人ぐらいの中から選んでいただいたのが大きくて、ちょうどそれが終わった翌日か当日ぐらいにzenmonoさんでクラウドファンディングを始めさせていただいたというタイミングです。

三木:すごいいい感じのタイミングですね。全てはスムーズに。

中村:そうですね。もう狙ってそこでやらせていただきました。

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中村:次に有志団体Cartivatorの紹介ですが、業務時間外でやりたい人が集まって勝手にやるという位置づけの活動で、今空飛ぶクルマを作っていて自動車関係や航空、ベンチャー、広告代理店の人や学生さんも含めて本当に色んな人が入ってやってます。普段は平日の夜と土曜日がメインの活動時間です。場所に関してはメインの技術のほうは愛知県の豊田市で廃校の小学校を借りてやってます。東京も最近拠点を立ち上げて、富士通さんのテックショップさんというところで活動させていただいてます。

これは一部のメンバーですが、赤で示したのが技術系、青で示したのが事業系です。示した通り自動車、航空、ソフト、ベンチャーとか色んな人がいて、今はアクティブに動いているメンバーが40~50人ぐらいいます。

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三木:すごいですね。

宇都宮:どうやって組織を運営しているんですか?

中村:基本はやりたいことをやるみたいなのがベースなんですけど、例えば設計チームとか広報チームとか5人ぐらいのチームに分けて、そのリーダーが戦略を作って進めています。

宇都宮:ホラクラシーな感じなんですか?

中村:はい。本当にフラットにやってます。誰かが「やれ」とかじゃなく、みんなで「これをやろう」と言って…

三木:コミュニケーションはどういうツールを使ってるんですか?

中村:普段はメッセンジャーとかを使ってやってますが、土曜日は直接会うのと、あとは月に1回みんなでリアルに集まる場というのを作ってます。でも東京と愛知はどうしても毎回というのは難しいので、そこはスカイプでつなぎ、それぞれの拠点にみんなが集まって、各自進捗報告をするということで情報共有をしています。

宇都宮:主に2拠点ということですか?

中村:そうですね。ただオンラインで海外から参加している人とかもいますし、オーストラリアとかタイとか。

三木:日本の方?海外の方?

中村:国籍的には日本人なんですけど、ほぼ向こうのネイティブの人とか。

宇都宮:どうやって知り合ったんですか?

中村:日本に来てた時に知り合うとか、あとは問い合わせしてくださる方とかもいらっしゃるので、時差がなければ何とかいけるかなみたいな。我々はブログとかつけてるんですけど、その英語化でサポートしてもらったりとかすごく助けてもらってます。

三木:大きな組織になると、組織運営自体が大変だと思うんですが、こういったホラクラシー的なバーチャルな組織を、どういう風に取りまとめてるんですか?

中村:仕事じゃないので命令指揮系統みたいにはしてないんですが、一番重要なのは“何のために”というところと、“何を目指すか”というミッションとビジョンを、しっかりと統一してブレないでやること。そうすると判断軸が勝手に決まって、色んな人がいてもみんなが同じ方向に向かえるので、そこは大切に示すようにしています。


●有志団体Cartivatorの目指す姿

中村:まさにこのCartivatorの目指す姿というのがミッションなんですが、目指しているのは“モビリティを通じて次世代に夢を提供する”ことです。夢という言葉を我々は“人類の可能性の拡張”と書いてまして、今できないことを将来できるようにしようというので、簡単に言うとドラえもんみたいな世界をイメージしています。22世紀のネコ型ロボットですね。色んな道具を持ってると思うんですけど、特にモビリティに関しては自由に空を飛べるモノとか時空間を超えるモノとか色々持っていて、この時空間を超えるのは技術的にまだもう少し時間がかかるんじゃないかと思っています。ただ空を自由に飛ぶっていうのはもう間もなく来る世界だと思っています。「何でできるの?」というところで大きく3つあって、一つはドローンと呼ばれるマルチコプターです。垂直に飛び立てて非常に安くて操縦も簡単で、飛ぶモノが民衆化しているというものの代表だと思ってます。2つ目は自動運転です。これも車でかなり叫ばれてますけど、空を飛ぼうとした時に「パイロットライセンスが必要です」と言われた時点でかなりハードルが高くなりますが、最終的に自動運転になっていけば運転資格が不要になったり、それがたくさん飛んでいくようになってそれぞれをコントロールする時の事故を減らせるといった意味で自動運転の技術が使えるんじゃないかと思ってます。3つ目はライドシェアというタクシーで呼んで乗っていけるサービスで、これによって必要な時に必要なだけ使うことができて、結果的にすごく高いものだったとしても所有せずに必要な時だけ使う分のコストを払うということで…

三木:いいですね。私も空飛ぶクルマに乗れるわけですね。

中村:そうです。一部の富裕層だけじゃなく、一般の方も使えるようになると思っているので、こういったところから空飛ぶクルマは現実に近づいていると思っています。これは飛んだ瞬間にほぼ航空の世界に入ってくるんですけど、自動車より航空が進んでいることが多々あって、例えば安全性の考え方とか飛行機のほうがよりシビアなので。

宇都宮:オートパイロットも飛行機なんかはそうですよね。

中村:そうです。そういうところは自動車に活かせると思います。逆にハイブリッド技術とか、車で培ってきたものを飛行機に、というのもあり得ると思います。

三木:こちらは今任意団体という形ですが、将来的には何かもっと変化していくんですか?

中村:基本的には事業化を目指してるので、会社を作ってというのを考えています。

三木:その時にはまだ明確にはされていないかもしれないですけど、どんなビジネスを展開する感じですか?

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中村:色んなアイデアはあってもちろん個人に売るという話もありますが、まずはライドシェアでタクシー的に使うというのを考えています。“次の世代に夢を”と言ってるんですけど、我々がターゲットにしているのは2050年という時間軸です。33年後ですね。自分たちの子どもたちの世代になるんですけど、その世代にどういう社会課題があるのか、そこにどういう風にこの空飛ぶクルマを役立てるのかというのを議論した中で、2つあると思っています。一つは都市化というので、2050年には世界の7割ぐらいの人が都市に集まってきます。そうなると交通麻痺が東京の比じゃなくて、そういった世界がボンボン出てきてしまいます。もう一つは人口爆発というので100億人ぐらいになると言われています。そうなった時に都市はパンクした状態ですが、道を作るというのはすごくお金がかかるので、インフラ投資ができない国においては、人はいるのに移動できないという状態も生まれてしまうと思うので、そういうところに我々はアプローチできるんじゃないかと思っています。

宇都宮:すぐですね。33年後って。

中村:そうです。

三木:こういうビジョンとかを具体的に持ち始めたのは27歳ぐらいの時ですか?

中村:いや、まだ当時はおもしろい車を作ってみようみたいなところで、最初「空飛ぶクルマって夢だよね」みたいなところからプロトタイプを作り始めたんですけど、途中で東京都のコンテストやベンチャー関係のコンテストに出る中で、事業企画をやりたいというメンバーが入ってくれて、我々エンジニアってそういうところが妄想で終わっちゃうんですけど…

宇都宮:エンジニアってモノを作ることが楽しくなっちゃう。

中村:そうなんです。事業企画のメンバーが入ってくるとそういうところを具体的に話ができて、そのメンバーとディスカッションする中で「こういう世界を創っていきたいよね」っていうのが段々醸成されていった感じです。

三木:最初のコアメンバーって何人ぐらいなんですか?

中村:本当に最初のコンテストは3人で出て…

宇都宮:3人!?中村さんと…

中村:大学の同期と会社の同期とで最初のコンテストに出て、その後プロトタイプを作ろうとなった時に10人ぐらい集めましたね。

三木:その3人の時にはモノとかまだないんですか?

中村:まだないですね。事業計画書だけ作ってコンテストに出てという状態です。

三木:それは何か賞を?

中村:一応優勝をさせていただいて、一つそれが箔になったのはあると思います。

三木:モノづくり系のプロジェクトなのにモノがなくても一応優勝できたっていうか…

中村:私の個人的なところで、モノづくりというか技術もすごい必要なんですけど、事業と両輪が必ず必要かなと思っていて、何かモノを作るにしても空飛ぶクルマみたいになれば一旦まず研究開発的要素で、とにかく作ってみようと動いてますけど、もう少しビジネスとかをにらんでいくと、具体的にこういうモノを作ろうとした時に、使い方なりが決まってないと、その仕様も決められないので、そのビジネスのほうを固めるというのが重要だなと思って、コンテストはそういう趣旨から入りました。


●enmonoとの出会いとzenmonoのクラウドファンディング活用

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三木:2年前にzenmonoのほうでクラウドファンディングを開始されたんですが、その3ヵ月前ぐらいにお話をいただいたと思うんです。

宇都宮:渋谷でお会いして。

渋谷で初対面-2014年8月11日

中村:そうですね。

三木:たまたまフェイスブックでつながっていたある方から紹介を受けて、その方の後輩ですか?

中村:そうです。大学の私にとっては先輩。

三木:先輩の方で、「とりあえずスカイプか何かで話してみましょうか?」みたいな、「空飛ぶクルマ」って言った時に、空飛ぶクルマを開発している方がいるってちょっと「う~ん、ちょっともしかしたら…」

宇都宮:三木さん的には懐疑的だったんですよ。

三木:もしかしたら「う~ん」かもしれないと思って、実際にスカイプでお話した時に何かもうプロトタイプを作ってることとか、大学でフォーミュラをやられていた経験とか、今お勤めの某自動車会社での経験とかが、ちゃんと積み重なって層になってるのが見えたんです。だからこの方は本物だと思ったんですね。

中村:実現してからじゃないと本物とは言えないんですけど(笑)。

三木:そうですね。お手伝いをさせていただくことになって、実際にzenmonoで最初はスロースタートでしたけど、ある段階で一気にお金が集まって。

中村:そうです。投資家の方とかも入れてくださったり。

宇都宮:鎌田さんとか。

中村:はい。それでドーンとなったりしたのが大きかったですね。

三木:それで終了したのが年末でしたっけ?

中村:そうですね。2015年の1月中旬です。

三木:その次の年にお子様がお生まれになるということでご祝儀みたいな感じで渡したことを覚えてます。

中村:ありがとうございます。力強いサポートをいただきました。

三木:そのクラウドファンディングの経験はいかがでしたか?

中村:すごく開発にとって大きくて、お金というのももちろんそうで、皆さんからいただいたもので加速した部分ってすごく大きいんですけど、あとは色んなメンバーも入ってくれたりとか、zenmonoさんのサイトを見てメディアの方とかも問い合わせしてくださったり、だいたい“空飛ぶクルマ”とかで検索するとzenmonoさんのが当たって、それでかなり取材とかもいただいて、それをまた見てメンバーが入ってというそういう循環が生まれたというのはすごく大きかったです。

三木:非常におもしろいご縁でその時にコアメンバーでいた福澤さんが我々のzenschoolというのを受講していただいて。

宇都宮:去年の年末に前職を辞められて羽ばたかれて。

三木:今ハッピーな感じで色々活動をされているみたいです。

宇都宮:世間的には怪しいかもしれないですけど。

中村:彼はうちのチームで事業企画のリーダーをやってもらってて、もうかなり推進してもらってます。プロフェッショナルが自分のスキルを活かしてくれるというのがあって、アウトプットで「おおーー!!」みたいなのが出てくるんですね。

宇都宮:本業よりレベルが高いですよね(笑)。

中村:そうなんですよ。本業だと色々制約があるのに対してここはないので、そういう意味では本当に個人の創造性が、フルに発揮されたようなアウトプットが出てくるという感じです。

宇都宮:その動画とかもそうですよね。

中村:動画とかも全部自分たちで作ってます。

三木:このプロジェクト自体も非常におもしろいんですけど、何かチームとしての成長も非常に変遷がおもしろいなと思って。

中村:あまり意識はしてないんですけど、続けていると色んなことが起きるというので、その中で奇跡みたいなのが時々起こって…

中村:自分たちでも想像し得ない動きが起きるのがすごく魅力的です。突然海外の大手メディアから話が来てみたり、直近大手の会社からスポンサーをしてもらえたり、勝手にやってることを支援してくださる方がいるっていうのが、個人的な感覚としてはすごく不思議なんですけどすごくありがたくて、そうなると実現しなきゃなというのをすごく強く思います。

三木:チームの変化と同時に中村さんの心の変化みたいなのは?

中村:すごく大きいです。毎日変化しています。

三木:初期の頃から段々とチームができてきて、どういう風に自分が変化してきたんでしょうか?

中村:楽しいことをやろうというのは変わっていなくて、実現しようの度合い、コミットメントレベルとか、想いがどんどん強くなってるというのがあります。今までは実現できたらいいな、というような感覚だったのを、どうやったら実現できるのかというところを常に考えて、そのためにはお金だったり人だったりが必要だよねというので、「こういう人が必要です」というのを明確にして「ここにじゃあお願いしてみよう」とかっていう具体的な構造になっていってるという意味で、想いが明確化しているというのが変化ですね。

三木:夢であったことをチームと一緒に活動する中で、段々と現実に実現化するための明確なプロセスというのが自分の中で明確になって?

中村:そうです。ピントが定まってきたという感じですね。

三木:まさに起業の前段階を2年ぐらいかけて助走しているということですね。

中村:そうですね。

三木:もしその状態で最後起業するということになると、かなり2年も経験値を積んでるからエラーが少ないというか…

中村:やろうとしていることがどうしてもかなりお金的にも、規模的にも大きいので、そういう意味で助走でいかにスピードをつけられるかで、その後、谷に落ちちゃうのか先の丘に辿り着けるのかが決まってくると思うんです。すごく早くやらなきゃいけないという想いと、一方でしっかりと一歩一歩着実にというところをバランスを見ながらやっているところです。


●競合他社の空飛ぶクルマの開発とskydriveの開発

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中村:この空飛ぶクルマは2年前ぐらいはまだ少し競合がいるかなぐらいだったんですけど、今かなり世界中に色んなところで出てきていて、有名なところでも20社以上やっています。赤いのは垂直離着陸するタイプ、青いのは滑走路を使うタイプなんですけど、垂直離着陸タイプは我々が作ってるのと近くて、特にシリコンバレーで最近盛んになっていて、ITの大手のお金が入っていたりします。

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今シリコンバレーに行く渋滞がすごいというのが背景にあって、4、50kmぐらいのところを2時間かけて行く人たちもたくさんいるので、去年の秋ぐらいからUBERというタクシー配車アプリの会社が、電動の垂直離着陸機を使ってエアタクシーをやろうという構想を出したり。

具体的には今地上から飛び立つことはできないので、垂直離着陸できるヘリパッドまで、地上のタクシーで行って乗り換えて上がって飛んで行き、また降りて再度地上のタクシーを使うというので、これで先ほどの2時間を15分にしようみたいな計画が進んでます。毎年アメリカで2014年から学会の中でワークショップが開かれてて、NASAとかMITとか研究機関とかも入ってディスカッションがされているような状況で、あながち夢じゃなくてかなりリアルな時間軸です。2025年にはサービスインをするということも言われています。

宇都宮:国としても支援したりしてるんですか?

中村:アメリカは航空局も入ったり、NASAもやってたりというので…

宇都宮:法整備とか……

中村:本当にそこをディスカッションして新しい産業を創っていこうという動きなんです。そういう中で我々も今やらないとどんどん遅れをとるなと。なかなか顕在化はしてないというところです。

三木:日本として取り組まないといけないことですよね。

宇都宮:水面下で有志同士では話したりもしているんですか?

中村:そうですね。他のところで会うと話したりするんですが、しっかりと企業規模で顕在化しているところはまだあまりないです。

宇都宮:でもそこを押さえないと技術的なものだけでは完成しないですよね。

中村:そうなんです。そういった仲間づくりをやっていかないといけないなと思ってます。

宇都宮:ぜひ国の方も有志に参加いただけると。

中村:本当そうです。

三木:今そういう省庁の方とかも参加されてるんですか?

中村:この活動自体には省庁の方は参加していなくて、個人的にネットワークを今作り始めているところです。我々が作っているモノには競合がいくつかあり、アメリカのベンチャーでJOBYという会社はNASAと一緒にやっていて、飛行機の形でちっちゃいプロペラをたくさん付けて垂直に上がってプロペラを倒して飛んで行くというタイプのものだったり、

エアバスもシリコンバレーにスピンアウトした会社を作って、同じように垂直離着陸できるタイプのモノを作ってたり、

さらにZEE.AEROという会社はGoogleの創業者ラリー・ペイジさんが、数十億円規模で出資している会社で一応プロトタイプも飛ばしてます。

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三木:本当に?

宇都宮:CGじゃなく、1分の1サイズでプロトタイプを飛ばしてるんですね。

中村:そうですね。NASAの滑走路を買い取ってやってます。

宇都宮:それは有人飛行を?

中村:まだテストとしては無人ですが、有人も間もないとは思います。アメリカでやっているので結構サイズが大きくてセスナぐらいのサイズで、どうしても都市部で使おうとした時に場所が狭いところでは制約もあるな、というところから、我々はこの世界最小の空飛ぶクルマを作ろうと。

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三木:世界最小なんですね。

中村:はい。“skydrive”と呼んでいますが、垂直に離着陸できて、サイズも軽自動車と同じぐらいのサイズで、操作もハンドルとペダルという車と同じような操作でできたり、将来的には自動運転にしようと思って、原理的にはドローンと同じようにプロペラで垂直に上がって、タイヤで走るというようなモノです。動き方は走ることもできて飛ぶこともできるというので、災害時に使えたりとか、海の上みたいな道がなくても移動ができたりとか、そういった自由自在に移動できるモビリティというのを考えています。

中村:、空飛ぶクルマ“skydrive”の実現に向けた歩みですが、2014年に5分の1を作って、まさにこれができてzenmonoさんでクラウドファンディングさせていただいて、ちゃんと飛ぶことを確認した上で「じゃあ1分の1サイズをやろう」というので、これ自体は全部自分たちで作ったとかではなく、個人で元々空飛ぶ乗り物を作られていた方の、機体をお借りしながらという形でやっています。

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三木:何か大学の研究室と作る…?徳島大学でしたっけ?

中村:そうです。真ん中の先生が徳島大学の先生なんですけど、ドローンの姿勢制御を研究されている方で、左の方が元々この機体を作られてる方で、「じゃあ一緒にやりましょう」というのでやらせていただいて、我々はzenmonoさんで集めさせていただいたお金を、実験費などに使わせていただきました。これはなかなか簡単に安定浮上しなくて、大きくなると難しいところがいくつか出てきて、一番顕著なところは、ドローンって基本的にプロペラの回転数で姿勢制御をしてるんですけど、大きくなると回転数を速くしたくても、モーターが重くすぐに動かないので応答性の遅れが出てきて、その結果安定しないという。最初の頃は本当にフラフラ暴れ回るようなところで、中身の制御のチューニングをしていくことで、少しずつ安定していき、今現在5秒ぐらいの安定浮上までは、持っていけてるところです。これが2015年に向けたロードマップですが、まず2020年東京オリンピックでデビューさせようというのが我々の第一目標で、2025年には発売を開始し、その後30年に先進国、40年に新興国というステップを刻んでいきたいなと思ってます。東京オリンピックのシーンがこちらで我々の妄想ムービーなんですが、新国立競技場にこのskydriveが入って行って、観衆の目の前で飛んで行って最後聖火台に向かって行って…

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宇都宮:これは中村さんが乗ってるんですか?

中村:いや、日本を代表するパイロットに乗ってもらおうと思ってます。最後聖火を付けて飛び去って行くと。子供たちに夢を与えるのと、こういう世界が来るんだという…

宇都宮:オリンピック関係者もチームにいたりするんですか?

中村:今関係者はいないです。ただ、今何とかつながろうとやってるところです。このプロジェクトは本当に自由にやっているので、時間は限られてるんですけど、逆につながりという意味ではオープンにできるな、というので色んな方に入っていただこうと。今ヒト・モノ・カネのリソースを何とか集めようというので、ヒトに関しては有志チームで今50名ぐらい学生さんも含めているんですが、各チームに分かれて主に技術と事業という形でやっていたり、アドバイザーという形で大学の先生方に、技術的なところのアドバイスをいただいたりしています。カネに関しては豊田市役所からサポートいただいたり、zenmonoさんを通して皆様にご支援いただいたり、5月にトヨタグループ15社から、4,250万円のご支援をもらえることになりまして、若手のモノづくりを支援するという位置づけで…

宇都宮:それはCartivatorに入れていただけるっていう?

中村:その受け皿として一般社団法人というのを構えて、しっかり法人で受けられるようにもしました。

三木:この反響はいかがでしたか?

中村:これはもうすごくて、メンバーがこれによって160人ぐらい応募いただいたり、メディアも200社ぐらい取り上げていただいて。

中村:海外からも問い合わせいただいたり、アメリカの航空学会や空飛ぶクルマ関連のワークショップでも名前を知ってもらっていたりしたので、これの効果はすごく大きかったなと思います。

三木:それだけ今何かモヤモヤしている若手のエンジニアがいっぱいいるということですか?

中村:そうですね。これを見て入ってくださる方は、「こういうことを日本でもやってるんだ」とか、「企業に勤めながらでもできるところが意外で勇気をもらった」、というコメントをいただいたりして、「じゃあ入ってください」みたいなので入ってもらったり。

宇都宮:平日の夜とか土日とか有休とかありますからね。

中村:そうですね。別に「毎週必ず来てください」ではなくて、来れるタイミングとか関われる関わり方でやっていただいてるので。

宇都宮:情報共有はITツールがあるからいつでもアクセスできるし。

三木:参加されたい方はホームページか何かで?

中村:そうですね。ホームページでメンバー募集のフォーム(http://cartivator.com/contact)もありますし、月に1回説明会もやってますのでそこに来ていただいて。

宇都宮:東京と豊田市以外の方はアクセスしづらい?

中村:基本的にはオンラインになるんですが、静岡に一部メンバーがチームとしています。拠点を作ろうとすると何人か集まってないといけなくて、一人ではどうしても拠点にならないので、何人か仲間がという方がいらっしゃれば、ボンボン作っていけると思います。

宇都宮:ぜひ町工場とか応援していただければ。

中村:そうですね。

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三木:そういうモノづくりの支援をしたい場合はどうすればいいんですか?

中村:まさにこれから今そういう面でのスポンサーを募集していて、9月までに先ほどの1分の1機の2号機を作るんです。それはまだ無人機なんですが9月中旬までに設計FIXさせて、それから春に向けてガーッと作っていこうと。

宇都宮:実機を作るには当然プロトタイピングが。

中村:そうなんです。そこで我々いくらお金をいただいたとはいえまだまだ足りなくて、そういうところで加工のお手伝いをいただいたりとか、材料提供とか部品提供とかいただけたらすごくありがたいなと思っています。

三木:zenschoolで今100社卒業生がおります。様々な技術を持っている製造業さんなので、もしご興味があるあなたはこちらへ。

中村:ぜひよろしくお願いします。

宇都宮:たぶん福澤さんが元購買なので、色々調達していただけると思います。

中村:彼がまさにスポンサー募集の窓口になってるので、福澤とつながっていれば一番早いですし、ホームページからという形でも。モノに関してはもう今1分の1機があるのでこれを使いながら実験を進めてというのを考えてます。直近の困りごとでまだまだエンジニアの方を募集していて、例えば機体設計が出来る方とか、ドローンの制御に詳しい方とか、鳥人間をやられてた方とかすごく募集しています。あと実際飛ぶとなると航空法をしっかりやらなきゃいけなくて、最近航空機開発の会社の方からスポンサードいただいて、年間1,200時間社員の方のお時間をいただけることになったんです。

三木:年間1,200時間はすごいですね。

中村:それで航空法の調査とか国交省との交渉をやろうとしていて、まだまだ必要だなというところです。あとは広報関係で言うと、色んなメディアの方へのアピールとか、オリンピックに向けてオリンピックの関係者への渉外とかも必要ですし、先ほどの動画のようにクリエイティブのほうも作っていきたいと思いますので、そういった面でご協力いただけたらすごくうれしいです。

宇都宮:メディア自身がスポンサーとして関わっていただくといいですよね。

中村:そうですね。ずっと追ってくださってるメディアの方とかもいらっしゃって、そういう方はほぼスポンサーみたいな形で応援していただいてます。もしご興味があれば活動説明会をやってますのでホームページから申し込みをしてください。

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三木:この話を聞いて思い出したのが、HAKUTOというプロジェクトをやっている袴田さんという方もMMSの初期2012年1月にご出演いただいて、我々と知り合った時は「お金いくらいるんですか?」「数百万円貯金があります」と、「ロケット飛ばすのにいくらかかるんですか?」「50~70億です」みたいなところだったのが、今では色んなスポンサーがついて、実際Googleのある程度のステージにも上がっているということで、段々本格的になっていると。

中村:私もサポーターに入ってます。今年末には飛ばしますよね。

三木:そうですね。彼も最初は夢でしかなかったんですが言い続けることで仲間が集まってきて、言い続けることがすごい重要だなと思っていて、中村さんの熱く色んな所で言い続けてきた結果が徐々に形になって。

宇都宮:でも自信がなくなる時もあるじゃないですか。

中村:そうですね。現実に近づくと色んな課題とか出てきますけど、そこでやめるんだったら本当にやりたいことではないと思うんです。本当にやりたいんだったら、それをどう乗り越えるかを。

宇都宮:言い聞かせてるところもあるんですかね。

中村:そうですね。たぶん言ってるともうできるような感覚とか、やらなきゃいけない感覚になってくるので。

宇都宮:奇跡が起きるとそういうのが循環してくれるじゃないですか。

中村:そうです。先ほどのトヨタグループからのご支援とかほぼ奇跡で、この有志団体というわけの分からないところにお金をつけてもらえて、みんなモチベーションや責任感みたいなのが全然変わってきますし。

三木:奇跡の話をもうちょっと聞きたいんですが、そのご支援以外にこんな奇跡があったみたいな…

中村:メンバーの加入も、すごくプロフェッショナルなスキルを持ってる人が入ってくれて、まさに日本の旅客機の設計をされてる人で、航空法の交渉でやってる人が入ってくれたりとか、有名広告代理店でプロモーションをやられてる方が、我々の広報戦略を今作ろうしてくださったりとか。

宇都宮:クオリティが高いですもんね。

中村:そういう人の面というのが一番奇跡が起きる時にびっくりするところです。

三木:そういう優秀な方が増えれば増えるほど逆に自分も責任が発生するというか…

中村:やれることが増えるもしくはレベルが上がるというのはすごくうれしいですし、同時にその人たちに、十分に発揮してもらえるだけの、環境やビジョンもしっかり作っていかないといけないなと思うようになりました。

三木:自分の心とどうやって対峙しているのかなと。毎朝瞑想してるとか?

中村:常に携帯に自分の夢というか先ほどのミッション、“子供たちに夢を”というのを書いてるんですけど、それを毎朝起きたらパッと見て、「自分は本当にこれをやりたいか」みたいなところをやりますし、こういうプレゼンテーションの機会のたびに、考えを整理して色んなインプットをさらにブラッシュアップさせる中で、どんどんアップデートしていくという感じです。

三木:なるほど。このプロジェクトを始められて、新しいご家族ができたりとか色々流れがあったと思うんですが、ご家族の方の反応はどんな感じですか?

中村:基本的に「自由に勝手にやって」というスタンスで応援してもらっていて、特にうちの妻とかは元々、「やりたいことをやりなさい」と言ってもらってるので、すごくあれなんですけど、例えば親ってどうしても心配するというか、「そもそも空飛ぶクルマって何だよ」という話もあり、「会社の仕事もあるのにどうなの?」みたいなのがあるんですが、例えばメディアに取り上げていただくと、社会的に認知してもらってるというのが、一つの安心材料になって、今は逆に親戚含めてかなり応援してもらっています。zenmonoさんのクラウドファンディングの時も、家族に応援してもらったんですが、そういう対外的な力というか協力を、上手く活用することで味方が増えていくというのをすごく感じています。

三木:なるほど。周囲の方のサポートも重要ですよね。

中村:そうですね。


●中村さんの考える「日本のモノづくりの未来」に対する想いについて

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三木:日本のモノづくりの将来ということで中村さんに何か考えてらっしゃることがあれば大上段に…

宇都宮:大上段にぶった切る感じで(笑)。

中村:私の今の感覚で言いますと、日本というところに、こだわり過ぎないほうがいいのかなと思っています。特にこの空飛ぶクルマの分野に関しては、まだ日本では顕在化していませんが、一方でアメリカ、中国、ヨーロッパとか世界ではかなり行われていて、「その都市でどうやって入れていくか」みたいな話をしている中で、「じゃあ日本でまずやろう」みたいなところから始めちゃうと、「本当にそこニーズあるの?」とか「日本で全部やらないといけないのか?」とかもあるので、世界とのパートナーシップを前提に、日本がどういう役割を果たしていくべきかと考えたほうがいいのかなと。例えば日本のバッテリーの技術とか、モーターの技術とか、そういう固有の技術ですごく強いものがありますし、そういったところで海外の人たちと、うまく長所を生かし合って、短所を補えるような枠組みで貢献し合うのがいいかなと思っています。

宇都宮:海外でも拠点を持ってとか

中村:そうですね。ビジネスとかやっていこうとするとまずは海外だと思っているので、そういう捉え方をしています。

三木:そういうお考えの時に、今度日本の強みというのはどの辺にあると思いますか?

中村:例えば部品だったりユニットを磨き上げるというところはすごく強くて、一方で海外の特にアメリカは概念とかルールとかそういう枠組み作りみたいなのがすごく上手くて、そこでうまく組んでいけるといいんだろうなと思います。

三木:実際に今コミュニケーションをしている海外のパートナーはあるんですか?

中村:ありますね。国の機関の元研究者も含めて、先ほどのワークショップに関わってる人とかも話はしていて、どれだけ海外が進んでいるかというのを肌で感じているので、そういう意味で今のタイミングでは、日本だけにこだわるよりパートナーとしてやったほうがいいと思っています。

三木:ご自身の中ではこのプロジェクトは世界的にどういう位置にあると思いますか?

中村:我々はまだ遅れているので、先ほどの日本の強みというのを上手く海外の人たちにPRできるように、日本でまず横でつながって世界に魅せられるような、仲間づくりをしたいなと思っています。これはあくまで時間外でやってるので、規模自体は小さいんですけど、その奥につながって総体として、大きなパートナーとして見てもらえるようにできたらなと思っています。

三木:ということで、この動画を見ているあなた!あなたが主役です!!あなたが主役になって、日本の強みを生かしながら世界とつながって、世界をぜひ一緒に変えていきましょう。本日はCartivatorの中村さんにお越しいただきました。どうもありがとうございました。

中村:ありがとうございました。

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