MMS159今井さん

「3D技術を駆使するメタル仏師が生み出した新感覚仏像『Polygonアシュラ』」(株)アイサク 今井 祐二さん

●ご挨拶と出演者紹介

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 三木:皆さんこんにちは。本日は株式会社アイサクの業務運営室長の今井さんにご登場いただきまして、メタル仏師ということでこちらの阿修羅像を、2016年12月に受講したzenschool豊田市で企画構想されて、それから約1年かけて作られたということで、そのお話を伺っていきたいと思います。

よろしくお願いします。

今井:お願いします。


●株式会社アイサクの紹介

三木:それではアイサクさんの事業のほうからご説明していただいてもよろしいですか?

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今井:はい。改めまして株式会社アイサクの今井と申します。まず弊社の会社概要ということで、会社名は株式会社アイサク、場所は豊田市広久手町という所にあります。

社員数は62名で、弊社の事業内容、主力商品ということで2つあります。大型プレスの自動化装置(ディスタックフィーダー)というものを作っております。これがプレスのラインとなってまして、その前にあるブランク材(同じ大きさにカットされた鉄板の束)を1枚ずつ分離し、プレスへ投入する装置です。こういった

ブランク材、鉄板の束を1枚1枚分離して大型プレスに流し込むといった全体はものすごく大きな設備となっております。もう1点がナックルリンクプレス、ちょっと小さなプレス自体も作っておりまして、リンクモーション・剛性構造により、高精度・低騒音/低振動を実現したこういったプレスも作っております。

三木:元々は井戸を掘る…

今井:そうですね。アイサクという名前なんですが、元々愛知鑿泉(さくせん)工業という名前でして、その鑿泉というのが井戸掘りの意味を持っておりまして…

三木:井戸堀り装置を開発されてたんですか?

今井:井戸はたぶん手堀りから始めて、それでトヨタさんに入っているうちに「こういうものを作ってみないか?」という話があって、それからこういった設備関係をやるようになったと聞いております。

三木:今創業…?

今井:創業50年を超えましたね。

三木:そうなんですね。井戸堀りからフィーダーにいった…すごいですね。

宇都宮:プレス機も作るしプレスの周辺の自動化装置みたいな感じですよね。

今井:そうですね。そのディスタックフィーダーというのはもっと大きなプレスに対応しているものですけど…

宇都宮:人が投入してたら間に合わないという…

今井:そうですね。サイドメンバー(自動車の構造部品)といってすごい大きなのを打つ材料を送り込んだりしますので、到底人で送り込んでたら全然間に合わないですね。


●zenschool豊田市を受講したこと

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三木:そういう装置を作ってらっしゃる会社さんがなぜ自社商品開発というのにご興味を持たれてzenschoolに来られたのかというのをちょっと…

今井:私はこれまでに個人的な趣味の延長で薪ストーブとかペレタイザーというペレット材を作る木材に興味がありまして、自分の空いた時間で会社に時間をいただいてお金の面でも協力していただいて、開発というのを進めてたんです。元々キャンプとかが好きで、モノは見よう見まねで色々試行錯誤してできてくるんですが、それをどう商品化までつなげるかという部分でノウハウが全くなくて、そういった時にタイミングよくzenschoolの話を社長のほうから、「こういうセミナーがあるので出てみるか?」と言われまして…

宇都宮:2016年ぐらいですか?

今井:その話は2016年の春ぐらいだったと思います。

三木:豊田市さんのほうからご連絡があったんですよね?

今井:そうですね。社長のほうに入って社長は出れないので「出てみないか?」と。もう本当に僕でよければ全然受けたい内容でしたので、ちょうどいいタイミングでいい話をいただけました。

三木:受講したご感想はいかがでしたか?期待していたものと同じでしたか?

今井:5名募集のところ6名応募しまして、まず面接がありまして、久しぶりに面接を受けてすごく緊張したのを覚えています。事前に資料をいただいて企画から販売まで教えていただけるという内容に目を通したんですが、いまいちパッとしない、イメージができないというのですごい不安があったのと、思い出すと三木さんが面接官としていらっしゃったんですが、ただならぬオーラを放っていた(笑)…何者なんだろうこの人はみたいなちょっと掴みどころがないような(笑)…

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一同:(笑)

今井:そういったのをちょっと覚えておりまして、実際受ける5人に入りまして。

三木: zenschoolではワクワクトレジャーハンティングチャートというのを作っていくんですけども、その前に瞑想を10分ぐらいして10歳の頃を思い出すというところでそのワクワクと持ってらっしゃる技術で新しい商品を考えるんですけども、その時にどういうワクワクが出てきたんですか?

今井:僕の場合は10歳の頃を瞑想の最中に考えまして、パッと出てきたのが確か小学校高学年と中学校ぐらいまですごい仏像が好きな時期が…それも瞑想するまで自分の中でも忘れちゃってたことなんですけど、思い出してみると友だちと京都とか奈良に2人で行ってお寺を回って…

三木:その時のことがすごいワクワクしてた?

今井:そうですね。それがパッと出てきまして、まずそれを書きました。10歳の頃の好きだったことの思い出ということで、自社の強みとか得意な分野は大きな設備を組み立てますので、色んな組立の技術を持っているというのを組み合わせて、まずは廃材で仏像を作ってみたらどうかという話にまとまって。廃材というと鉄の板からビニールのチューブやら色々あるんですが、色々社内に持ち帰ってやってたんですがどうもイメージと違いまして、色々調べてみるとペーパークラフトって立体にできるよなとか、それも実際僕が好きだったのでつながって、しかもアルミで作れば強度も出て大きなものが作れるんじゃないか、アルミで作れば表面が光ってますのでカクカクにすることでミラーボールのように反射したりということがイメージに湧きまして、まず探したところちょうどこの阿修羅像のペーパークラフトが市販されてるものがありましたので、ちょっとそちらを借りて一回作ってみたというのが最初のステップです。仏像の中でも何で阿修羅像を選んだかなんですが、それも小学校の時に行ってた時に一番好きだったのが興福寺の阿修羅像というのが頭の中にありましたので、一番好きなやつを一番最初にやりたいなと思ってこれになりました。


●Polygonアシュラについて

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三木:ちょっとこちら映していただきたいんですけども、非常にカクカクしておりまして、ポリゴン調な感じなんですが、本来のペーパークラフトはこういうカクカクはしてないんですけど、どういうところからカクカクさせるっていうのが?

今井:まず面と面を組み合わせると光が乱反射してキレイで美しいというのもありますし、ペーパークラフトは紙で本当は作るんですが、紙で作る時はねじったり丸めたりとかそういった部分もあるんですが、それをアルミでやろうとすると変にねじれてしまったり変形してしまったりするという意味もありまして、2つの特性、良い面と悪い面を反映した結果このようなカクカクのポリゴン形状をやるようになりました。

三木:zenschoolの場合は全部プログラム(集中講義)を終わって約1ヵ月の間に試作品ができるところまで作ってくるというルールになっているんですが、本当にここまで作ってくると思ってなかったので、それが出てきた時の(発表会)会場の驚きが結構すごかったんですけども、バージョン1ではどういったとこに苦労して作られたんですか?

今井:こちらはもう完全なオリジナルなんですが、市販されている阿修羅像のペーパークラフトをほぼこれと同じ大きさで作ったんですが、作ること自体はちょうどタイミングよく正月休みがあったので必死になってオリジナルでやって作りました。

三木:Facebookに所々出てくるんですよ。足のところだけとか右の足だとか「今手を作ってます」とか「頭ができました」みたいな…

今井:発表会には間に合って結構好評で、これからどう展開していこうとなったんですが、そこで問題で市販の図面を使ってましたので、表に出したり後々には販売したいので、ペーパークラフトのメーカーに許可を取らないとまずいなということで、実際問い合わせをして「後々販売まで考えてるんですが」という話をしたんですが、やはり向こうとしてはNGだと。

三木:お電話でお話されたんですか?

今井:メールでやり取りです。「商業利用は控えてくれ」ということでしたので、もうそこで頭を切り替えて全部図面からやり直さないと商品化できないなということになりまして、実際図面から全部作ってできたのがこちらになります。

三木:大変でしたね。1年間ね。半年ぐらいかかったんですけど。

宇都宮:実際3月、4月ぐらいに切り替えたんですか?

今井:そうですね。それでもう必死になってまずは図面を自分では描けないので、そういったノウハウを持っている企業を探して、運よく名古屋に近いところにそういう協力していただけるところがありまして、そこもペーパークラフトは作ってるんですが、このような細かくて大型のものは作ったことがないということでいろいろと苦労されましたが、

、結果的にはすばらしいものができました。

三木:これを作るために市の助成金も取得できたって?

今井:そうですね。ちょうど6月ぐらいだったと思うんですが、色々調べているとそういった新規開発の商品に対して補助金が出るということを知りまして、半額出るということで、今まででしたらそんなこと挑戦もしたこともないですし、ストーブの時も考えたこともなかったんですが、zenschoolで企画から販売、色んなノウハウを学んでいたというのがたぶん大きいんだと思うんですが、補助金を申請する時もそういった事業計画とか学んだことを何のストレスもなく書けて、市の関係の方に協力をしてもらえば今までやれなかったことも全然すんなりできちゃいまして。

三木:すごいですね。zenschool。

宇都宮:色々活用できた。ノウハウを。

今井:そうですね。一番不安だったのは豊田市というとモノづくりで有名だと思うんですが、仏像となると何の実用性も…暮らしが楽になるとか、使ってて楽しいとかそんなのがないので…

三木:飾って楽しいっていう…

今井:これって認めてもらえるのかなというのがあったんですが、非常におもしろいと感じていただけたのかなと。他の何社かは技術的なもので、これだけ『アルミで作った阿修羅像』とかって…

宇都宮:異彩を放ってたんですね(笑)。

今井:それを見た色んなうちの関係の業者さんとかがなにをしてるんですかとか(笑)。逆にそういう反応がおもしろいかなと。

三木:今井さんこのバージョンの前のバージョンの時に興福寺までわざわざ本物を見に行かれて、それで精神を注入してから取り組んだという逸話があるんですが、それは本当ですか?

今井:そうですね。ちょうど大阪のほうに出張があった時に会社に頼んで「1泊させてください」と。小学校中学校の時は行ってたんですが、それ以来全然仏像というのを忘れちゃってまして、思い出してみるとまだ心の中で興味が全然ありますので、もう1回作る前に見て自分のモチベーションを上げてということで行ってきました。

宇都宮: 2017年の夏頃ですか?

今井:いや、2017年の2月頃ですよ。オリジナルじゃなくて前の市販のやつを使わせていただいたものを作る前に1回行っています。

宇都宮:どんな感じでした?興福寺の実物は。

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今井:実物を見るとすごい有名ですので何回見ても飽きないと言いますか、その前に立ち尽くして10分でも1時間でもいれるぐらいの…

宇都宮:撮影とかできないんですか?

今井:撮影は一切ダメですね。

三木:自分に染み込ませて組み立てる時に…

宇都宮:染み込みましたか?

今井:ええ。

三木:驚いたのは本物を写した写真というのがあって、バージョン1の写真をほぼ同じ角度から撮ったら手の位置とか全部ぴったりなんですよ。それってペーパークラフトの設計図も良かったのかもしれないし、自分の中に染み込んだ感覚があったからぴったり同じようにできたんじゃないですか?

今井:実際見に行きまして、「作らせてください。お願いします」と、そのご利益があったのかなと。

宇都宮:お顔の表情とか目のところとかすごい。

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三木:バージョン2も今日は初めて拝見したんですが、これなりに表情が出てますよね。正面と左と右でちょっと違う。手の表情が非常に豊かで、バージョン1はここまで手が表情が出てなかったんですけど、バージョン2の心掛けたところを説明してもらっていいですか?

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今井:実際バージョン1の時は調整している部分が見ててありまして…

三木:ペーパークラフト用に調整してる?

今井:そうですね。組みやすいようにとか顔とかもすごい削っちゃったりとか…

三木:こっちのほうがリアル、本物に近い感じですか?

今井:それも色々本物と見比べたり資料を見たりとかやっていくと気づくんですが、その辺はなるべく本物に近い形でやりたいなと。もちろん大きさもそうですし、この手の感じとかもバージョン1だとただの筒だったんです。


三木:これはちゃんと腕輪のところの表現もされてますね。あと衣の表現がこっちのほうが豊かですね。

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今井:そうですね。パーツベース的にもこちらのほうが多くなってますので、よりバージョン1よりはリアルになっていると思います。

三木:なるほど。バージョン1は正面と右の顔の大きさがそんなに違わなかったんですが、これは本物に近い形だと大きさも変えてあるんですか?

今井:これもたぶん実際のものと比べて同じアングルで撮っていただければかなり重なると思います。

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宇都宮:これはアルミだから照明によって全然表情が変わりますよね。夜見た時と昼見た時と。見るごとに表情が違うっていうのがすごい。

今井:かっこいい言い方をすれば生き物のように…

三木:僕らが見てておもしろかったのが、今井さんがどんどん仏師みたいになっていって、顔つきとかも仏師の表情になって…(笑)

宇都宮:エンジニアじゃなくなってきてて(笑)。

今井:怒られちゃいますね。

宇都宮:でもエンジニアの根底にある職人気質と仏師というのとは近いので…

今井:何をするにもこだわりたいというのがあるので、適当にやったりというのが気にくわないからごまかすのが嫌なので。

宇都宮:それも職人気質ですね。

今井:そうですね。

宇都宮:アウトプットとしてCADを使ってっていうのは今度手の技のほうですからね。

今井:元々細かいことを黙々とやるというのは好きなほうです。社内で空き時間に作っていて、みんな空き時間なのでたぶん何も言わないだろうなとは思ってたんですが、逆にやって積み重ねていくうちに「何ができるの?」って楽しみにしてくれる方もいて。その辺もクリアできてやることができました。

三木:これは腕の表情もたぶんこっちのほうがリアリティ上がっていますね。この3本に分かれるあたりの腕の表情がいい感じですね。

今井:業者さんと協力してやったんですが、やっぱり最初なので実際組んでみると辻褄が合わなかったりとか手の角度が違ったりとか、そういった面は直し直しやっていたので時間がかかったというのも実際あります。

宇都宮:2017年ようやく12月に展示会に出展されて、クリエーターズマーケット。

今井:そうですね。ポートメッセなごやというところで毎年2回6月12月に開催されているんですが…

宇都宮:こちらを出展されたんですか?

今井:これを出展しまして、それが12月の頭にあったんですが、もう本当ギリギリでポートメッセの搬入する前日の昼に完成しました。

三木:反応はどんな感じでした?

今井:反応は最初全然想像がつかなくて、そういう展示会に出ること自体も僕は初めてでしたので…

宇都宮:お客さんとしても行ったことはなかったんですか?

今井:なかったですね。実際行ってみると人数的にものすごい方が見えて。予想外だったのは、年配の方に受けるかなと予想してたんですが、男女関係なしで年齢も問わず前を通り過ぎる時に絶対これを見てパッと止まって、顔がちょっと笑顔になりつつ「わっ、すご!」って口でボソッと…

三木:何か寄って来る感じですか?ジロジロと…

今井:そうですね。

宇都宮:笑顔になるんですか?

今井:不思議と口が緩んで「すごっ!」とか「うわっ!」っていう反応をしていただけて、最初のうちは何も表示してなかったので途中から『写真・カメラOKですよ』というのを出しましたら結構の方に撮っていただいて。

宇都宮:全身を見るような感じですか?

今井:三方囲まれたブースでして、それにこのような黒い布を全面に張りまして、後ろにちょっと照明を当てる感じですね。初めてにしては結構インパクトのある展示会ができたかなと思います。

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●3D技術を駆使したPolygonアシュラの制作と今後の展開

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三木:引き続き阿修羅像の制作に関して色々お話を伺っていきたいですけど、これは実際3Dのデータ作成というのが大変だったということで、これはまだのっぺりバージョンだと思うんですけど、このデータを見ながら合っているかというのを会話しながら業者さんと作ってきたという感じですか?

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今井:そうですね。これはまず最初に作っていただいたやつなんですが、これから修正を加えていったんですが、これをもとにまず紙で作ってそれで表情を確認して、実際この顔は全然納得できなくて。

三木:そうですよね。あまりにものっぺりで顔がないみたいになっちゃって。

今井:そうですね。だけどこれは忠実に再現するとこんな感じになってしまうんですが、本当はこのままいくのがリアルにはなるんですが、それとはちょっと違うかなという部分もありますので詰めて直していきました。他の部分も布の感じとか…

三木:布の感じがとてもよく表現されていますね。あと背中の辺りも結構よくできてるなと思って。

今井:そうですね。背中のラインもキレイな曲線ができてます。

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三木:これで身につけた技というかこれを作る中で色んな3Dのデータの取り扱いとかそういうのも学習されたんですか?

今井:そっちのデータのほうはほとんどお任せで指示するだけでやっていただいて、作るほうに関してはこの仏像以外にもちょっとしたランプシェイドとか作ったりはしているんですが、やるごとに精度は上がっているなと。失敗もほとんどなくなる。多少の修正なら図面なしでもパパッとできちゃうぐらいに、もう現合で合わせてやっちゃうということも身についてきました。

宇都宮:アルミの板から部品を切り出していって曲げていくというプロセスですよね?

今井:そうですね。全部手作業で機械は使わずに手で切って…

宇都宮:切り出しもハサミで切って?

今井:平面図を紙に印刷して貼りまして、その線に沿ってまず切りまして、こういうカクカクを出すには裏に薄く線を入れてそれで曲げないと曲線になっちゃうので、曲げる部分がエッジ感が出ないので薄く線を入れるんですが、その線も入れ過ぎちゃいますと曲げた時にパキンと折れちゃいますので、その辺の力加減とかもどんどん慣れてきて。

宇都宮:スピードも上がってきて生産性も上がって…

今井:でも今回は直し直しでやってきましたので、実際時間数にすると200時間ぐらいかかってるんです。バージョン1の時はもう出来上がった図面でしたのでその半分ぐらいで実際できてますので、これももう次作る時はその半分の100時間ぐらいでできます。

三木:実際今後の阿修羅像の販路というか何か考えていますか?どうやってビジネスにしていくか。

今井:自分のいけないところなんですが、とにかく売ったりとかより作りたいになっていまして、もう阿修羅像以外にも次はこれ作ろうあれ作ろうっていうのはあるんですが、そればっかりですと会社に迷惑をかけてしまいますし、続けていくにはやはり入ってくるものもないと継続できませんので…

三木:どのような用途が考えられますか?

今井:まずターゲットとして考えたのは、飲食店とかに演出とかも含めて飾っていただくという、光で演出とかも色んな色の光を当てたりするとすごくキレイですし、実際クリエーターズマーケットの時もそうでしたけど、これを見るとパッと見ただけで頭の中に記憶として残りますので…

宇都宮:目立つということですね。

今井:インパクトはあると思うので、そういった飲食店とかでも使っていただけるのかなと。あとはもちろん販売とかレンタルとも考えてますし、まず自分の中で考えているのはどんどん発信してファンを増やすことに…

宇都宮:色んなアイデアをもらってとかですかね?

今井:そうですね。今後の予定としてはまだ販売まではつなげないですが、展示会としては豊田市の展示会でとよたビジネスフェアというのが3月にありますので、そちらにも出展します。それとzenschool卒業生の富山の梶川さんのところのFactory Art Museum Toyamaに展示してもらいたいというのもあります。

宇都宮:4月ですよね?

今井:そうですね。一周年記念で何か企画しておりますので、いずれ情報は出てくると思いますのでそちらに参加したい。

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三木:あとはクラウドファンディングとかはどうですか?

今井:これもちょっと話したことがあるんですが、夢は大きく海外に持っていきたいというのがありますので、ニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館)とかそういうところに…

三木:個展を開きたいのでその渡航費用をクラウドファンディングで…

今井:そのようなイメージで最終的には狙っていきたいなと思います。

三木:いいですね。ぜひzenmonoでやらせてください。

今井:はい。

三木:海外からもたぶんこれは注目が集まるものだと思いますので。

今井:阿修羅像に限らず色んなシリーズを…

三木:なにか考えてるのがあるんですか?

今井:考えているのは先ほどもお話に出たクリエーターズマーケットの年に2回あるうちの1回、毎年12月に参加してその都度新たな仏像を発表して、そちらに関してはもう準備は実際始めてまして…

宇都宮:阿修羅像の次?

今井:そうですね。ちょっとそれはこの時点では内緒にしようかなと、お楽しみということで、必ず出展はしますのでこれを見ていただいて、もし見に来ていただける方がいたら楽しみにしていただきたいなと思います。

今井:そうですね。色んな卒業生がzenschoolにいますので、色んな方と交流していけばそういった色んなアイデアもいただけるというのも実際ありますので、そういったことも今後どんどんやっていきたいなと。

宇都宮:発表会とかにも来ていただいて、その時に交流していただいてもいいでしょうし。

三木:そうですね。これはインパクトがありますから。

宇都宮:これを持ち歩くのは結構大変なんですよね?

今井:いや、これは分解ができるので、本当にバラバラになりますし…

宇都宮:じゃあ車のトランクに入るんですか?

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今井:入りますし、アルミで中は空洞ですので重さもこれで3.5kgぐらいで全然持ち上がっちゃうぐらいですので。

宇都宮:今ちょっと持ってもらっていいですか?ちょっと横向きにしてもらっていいですか?サイドもこういう感じになっています。

三木:背中もすばらしい。後姿がいい。

宇都宮:衣服の感じとかも。なかなか見ないですよね。後姿は。正面のはインターネット上でもあるし写真とかもあるんだけど。後ろも実物と同じ?

今井:もう全部再現していますね。

宇都宮:本当にそういう後姿になっている?

今井:そうですね。

三木:腕の表現がすごいなと思って。ちょうどこういう感じなんですよ。ちょっと細くて折れそうな感じの腕が本当についているので、そこがすごくよく表現されていますね。すばらしいです。将来的にはどんどん仏像を増やしていく感じですか?

今井:そうですね。

宇都宮:三十三間堂みたいに(笑)。

今井:そうですね。もう次作るやつの事前のお参りは済ましてますので。

宇都宮:お寺参りもセットにして、魂を注入するという…

三木:バージョン1の時も反響があったと思うんですけど、今までどういう反響が起きましたか?

今井:一つあったのはアルミの専門誌のほうから…1日だけ(2017年4月)富山のほうに展示していただいたことがありまして、その情報を聞きつけてどこかから見て直接東京の出版社のほうから会社のほうに「ちょっと取材をさせてくれ」という依頼が…

三木:これはもう取材OKなんですよね?

今井:その時はオリジナルじゃないので表に出せませんので「申し訳ありません。オリジナルを作りますのでできた際には連絡させていただきます」と言って先月連絡はしました。

三木:そうですか。何か取材が来そうな感じですか?

今井:逆に色々質問されてそれをただ出す、写真を送るという形でやってますので、もしかしたら載せていただけるかなと思います。

宇都宮:アルミですもんね。他の材料もこちらに銅があるように作れますもんね?

今井:そうですね。

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三木:銅は銅の質感があっていいですね。

今井:銅はこれの2倍の大きさで頭だけ作っていて、何で2倍かというと銅は扱いがアルミと違って、銅自体粘りがありますので…

宇都宮:曲げづらい?

今井:曲げづらいというのもありますし切りづらい、手が傷だらけになるぐらい切れ味がよくなっちゃうので、だけどアルミにはない重厚感とかも出せます。

宇都宮:経年していくとまた風情が出ますよね。

今井:強制的に薬品で錆びさせたりもできるので、あれはあれで同じ図面で作ることもできますので…

宇都宮:表情が違いますね。肌の色が変わると。

今井:例えば真鍮の板で作れば金色になったりとか。

宇都宮:でもアルミだとアルマイト処理をするとか、やれなくはないですよね。

今井:はい。同じものでもやり方によってはまだまだ広げれるなと思います。

宇都宮:当然照明の当て方でも全然表情が違いますもんね。

今井:そうですね。


●zenschool受講後の変化とつながり

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三木:ここで話をzenschoolのほうに戻してもいいですか?

宇都宮:2016年12月に受講されて2017年の2月に発表されて。

三木:受講前と受講後、自分がこういう風に変化すると思っていましたか?

今井:面接の時に思ったように、事前に目を通しても何をやるのかイメージがつかないというのが正直な感想でしたが、終わってみて率直に思ったのが今まで色んなセミナーに出たことがあるんですが、その中でもダントツに楽しかったなと。4回あったんですが、行く度にどんどん気持ちが「楽しいな、楽しいな、次来ないかな」と。最初は4日間長いなと思ったんですが、「もう終わってしまうのか」というのがありました。

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宇都宮:どの辺が楽しかったんですか?今井さん的には。

今井:やっぱり自分が事前に考えてもストーブとか実際世の中にあるものしか出てこなかったんですが、実際受けて瞑想してワクワクトレジャーをやりまして、それで自分でも予想外のものが出てきたということに…

宇都宮:これは予想外なんですか?

今井:予想外です。そこに驚きがあったのと、自分でも作っててすごい楽しいので、そういったものができたというのが非常に毎日ワクワクできると言いますか…

宇都宮:自分の再発見みたいな感じですか?

今井:そうですね。

宇都宮:でも元々あったものですもんね。

今井:zenschoolの自分の好きなこと、マイクロモノづくりという考え方とストーブはたぶん似てはいるんですが、でもオリジナリティとか自分しかできないみたいな、自分が考えたんだと自信を持って言えるようなことができたっていうのは、すごく自分の中では大きいなと。

宇都宮:好きのレベルが違うということですか?

今井:そうですね。ストーブもやめるわけじゃないんですが、自分の中でのワクワクが全然違いますね。

三木:ワクワク感のレベルが…

宇都宮:モノに反映していますもんね。

今井:そうですね。今話したように受けたことによって、販売までのノウハウとかそういったことも学べて、実際補助金も受けることができましたし、自分としては度胸がついたと言いますか、同じ卒業生でもよく話をするんですが、「自分でやらなくていいんだよね」「仲間をどんどん増やしたり、自分がやれないことに対してお金を払ってやってもらうということは、別におかしいことじゃないよね」って考えれるようになりました。

宇都宮:昔は違ったんですか?

今井:全部自分でやらないと逆に気がすまないとか、そうすると逆にどんどん進まなくなっちゃう。時間的に限界が来たりとか、技術的にも自分の限界がありますので、プロに任せたり協力していただければ…

三木:他の同期生はどういう風に変わってきた感じですか?

今井:そのセミナーが終わっても「さよなら」ではなくて、定期的に集まったりとかできてますし、昨日の新年会には第二期生も参加していただいてたんですが、すぐ打ち解けて…

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三木:そうですね。同じモードで喋れますから。

今井:それでも十分楽しいですし、色んな情報交換もできますし、お互いの工場を見に行ったりとか仕事の面でもフォローできますし、本業のほうでも協力できることは全然できますし。

三木:そのつながりこそ豊田市さんが必要としていたネットワークですね。製造業界の作られたものじゃなくて、本当の意味で対話できるネットワーク。

宇都宮:期が増えていくごとにそのコミュニティがより増えて強固になっていきますから、末永くzenschool豊田市が継続できたらいいなと僕たちは勝手に思っております。

今井:豊田市はおもしろい企業がたくさんあるんですが、つながりがあまりないというのが自分でも感じるところがありまして。

宇都宮:通常製造業同士が集まるとライバル感がどうしても出ちゃうじゃないですか。「こんなこと言っちゃいけない」とか…

三木:ここではそういうのがない。だってみんな自分の好きなことをやっているから関係ないんですよ。

宇都宮:どんどん自己開示しちゃうわけですもんね。

今井:だからすぐに打ち解けれられるし、すごいおもしろいなと思います。

三木:豊田市の卒業生も時々東京の発表会に来ていただいたりとかして。

宇都宮:先日も渋谷のほうに来ていただいたし。

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三木:我々が慶応大学さんと一緒にやっているzenschool殿町も同窓生なので、そっちのほうにも来ていただけると医療系のことをやっている方が多いので、そういうつながりもできますし、どんどん日本全国、東京、東大阪、富山、豊田市、台湾にも卒業生がおりますし、ここに入るとみんなつながっていけるというコミュニティを、我々は作っていきたいと思っています。

宇都宮:豊田市という地元でつながるのもありますけれども、それがまた日本中世界中に将来的につながっていけば。Facebook上にはいつもいますので。


●今井さんの考える「日本の○○の未来」に対する想いについて

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三木:最後の質問で「日本の○○の未来」ということで、○○はご自身の好きなこと、製造業、中小企業、モノづくりでも何でもいいですけども。

今井:普通になっちゃうかもしれないですけど、日本の製造業に対してですが、僕は社長でもないですしサラリーマンで、結構zenschoolの参加している方は社長さん、経営者の方が多いんですが、僕が社長だったらという考え方を常にしたいなという想いはありまして、そういった考え方で話させていただくと、かつてメイドインジャパンといってすごく名が世界中に知れ渡ってて、だけど今それが崩れかけちゃってるかなという印象がありまして、それは何なのかなと考えると、技術的な部分は日本はすごい持ってるなと思うんですが、それを作る人の気持ちですかね。

三木:そうですね。ワクワクしながら作っていたと…

今井:仏像もそうですし、昔の作った仏像ってすごく魂を感じると言いますか、今の人では再現できないんじゃないかなとつくづく感じる部分でありまして、そういったモノに込める気持ちが変わっちゃってきてるのかなというのがありますので、昔の人が持っていた良い道徳心とか武士道とか、ちょっと個人的にもそういったものをもう一回見直したほうがいいのかなと思って、先日武士道の本を読んだりとか、自分も含めて会社でも鍛えて教育に反映したりとかしていきたいなと。

宇都宮:技術とか技だけではなくそういった魂とか…

今井:その違いが出てきてるのかなと僕は思います。

宇都宮:心技体って言いますよね。

今井:そうですね。昔の伝統工芸とか見ますとすごい理にかなったことをやってますし、品質も本当に追求して「これでどうだ!」という感じで、手に触ったり見た時にも相手が感じ取れるというレベルまできてますので、そういった考え方でやっていきたいなと思います。

三木:今井さんが感じたそういったことを、他の社員の方に共有していくみたいなのはあるんですか?

今井:今のところ僕一人で活動してますので、これも社長のフォローとか参加させていただいたこと自体非常にありがたいなと、お金の面でもフォローしてくれてますし、zenschoolに参加すると販売まで考えたり、経営者的な考え方が身につくと思いますので、できれば社員がどんどんそういうところに参加して自分のオリジナルのモノを開発して、みんなが社長になれるようなそんな会社を目指していきたいなと。

宇都宮:すごいですね。それが今度アイサクさんという会社だけではなく、他の豊田の企業にも広がってくれば…

今井:そうですね。おもしろい会社だなという風に…

三木:社長とちゃんとディスカッションできるぐらいのレベルの人材がどんどん育っていくという会社に、zenschoolを受講することになればいいんじゃないかなと。

宇都宮:社長一人で経営判断をしててもたぶん時代的にも追いつかなくなってきてますよね。

今井:よく言われることですけど、豊田市は自動車産業中心ですので、リーマンショックの時もそうですがそこが倒れちゃうとバタバタバタっといっちゃうので、自動車関係以外の商品も持っていたほうがリスクは分散できます。

宇都宮:先日トヨタの社長がラスベガスの家電ショーに出展されてましたもんね。

今井:そういった面でも進めていかないといけないなと感じています。

三木:本日はメタル仏師の今井さんにご登場いただきました。どうもありがとうございました。

今井:ありがとうございました。

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対談動画


今井祐二さん


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