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第178回MMS(2019/3/13対談)「イギリスで西田哲学を研究し、精神性をビジネスやパートナーシップに活かすためのコンサルティングを行う」村田・ボイドご夫妻

●ご挨拶と出演者紹介

三木:第178回MMS(マインドフル・マニュファクチャリング・ストリーミング)本日も始まりました。本日はスピリチュアリティとビジネスとかスピリチュアリティとパートナーシップのコンサルティングとコーチングをされている村田さんとボイドさんにお越しいただきました。お二人にはZen2.0で大変お世話になって。

村田:ありがとうございます。

ボイド:ありがとうございます。

三木:我々とのZen2.0の話も後で色々聞いていきたいと思います。

村田:ぜひぜひ。


●enmonoとの出会いについて

三木:私あるいはZen2.0あるいはenmonoとお二人との最初のファーストコンタクトはどんなところからだったんでしたっけ?

村田:Zen2.0の前に慶應の井本さんの研究発表会がありまして、それで僕たち出会ったんです。

それはマインドフルについてのプレゼンテーションで。それでZen2.0関係の色々な方がいらっしゃって、山下さんとかThink Spaceのサラちゃんとか。

ボイド:岩濱さんですね。

村田:岩濱さんとかいらっしゃって、それでその後三木さんと僕達は次の日ぐらいに三軒茶屋でお話したんです。

三木:三軒茶屋でお会いする前は話さなかったので、「もっと話しましょう」みたいなことでZen2.0のことをお伝えして。

村田:あの時本当に驚きました。すごい色んなことがつながってて、「会いましょう。今日暇ですか?」っていうのもたまたま暇で、「もしかして東京に来ますか?」「あ、今日来ます」それで「渋谷の付近なんです」「今日渋谷に行きますよ」みたいな色々なことが凝縮した瞬間で、話がスムーズにいつの間にか進んでしまったと。Zen2.0の目指していることが僕達がずっと日本でやったらいいなと思っていることをやってくれているので、すごく協賛したいと思ったんですよ。

ボイド:そういう出会いができて本当にうれしかったです。

三木:ありがとうございます。

宇都宮:どういうことをやりたいと思ってらっしゃったんですか?

三木:お二人が日本でやりたかったこと……

村田:僕達は海外にいて日本って結構情報発信力があるようでない。日本の文化ではマインドフルはずっと根付いてきたのに、そういう言葉にして出してやるっていうことがあまり上手じゃない。北米では日本や東洋のことが好きな方はいっぱいいるんですが、そういうことを日本に求めて来ているのに、日本のほうでは向こうの需要に対応できていない。モノづくりの話でも精神性が大事で東洋に素晴らしいものがあるっていう憧れを持っている人はいっぱいいるんですが、そういうことに日本がうまく対応できていなくて、「何で日本からやらないんだろう」ってずっと思ってて。イギリスにいる時もカナダにいる時もそういうことに関わりたいという気持ちはあったんだけどなかなか接点がなくて、三木さんのZen2.0なりマインドフルシティ構想なり大学(マインドフルユニバーシティ)の話とかすごいなと思ったんです。あの時感動したんですよ。

ボイド:本当にびっくりした。こういうことをやってる方にようやく出会えてすごくうれしかったです。本当にすごいと思いました。

宇都宮:ご縁ですね。

村田:ご縁です。

ボイド:本当にご縁です。間違いなく。

三木:それでZen2.0にゴワーッと巻き込まれてしまって、お二人で大変なライフを…

村田:渦にですね。またいつか…


●村田・ボイドご夫妻のバックグラウンドについて

三木:お二人のバックグラウンドを簡単にお話をしていただきたいです。今までどういうことをやってらっしゃったんですか?

ボイド:私の場合は20年以上前に初めて日本に来た時に日本の企業で働いてたんです。

三木:日本国籍の会社?

ボイド:そうです。

三木:その時から日本語は?

ボイド:カナダの大学で勉強してからこちらに来て、話すほうは向こうではあまりできるわけではないので、読み書きが中心だったので、こちらに来てできるだけ日本語の環境の中で自分のことを磨いていこうと思って来たんです。それで日本の企業で色んな経験をさせていただいて、中小企業に入りまして色々やってたんですが、途中で銀行のほうに移りました。中小企業の雰囲気とか環境も分かるようになったし、大企業の雰囲気も…

宇都宮:良いことも悪いことも大変なことも色々あると。

ボイド:そうですね。そこから途中でこの人との出会いもありまして。

宇都宮:日本で出会われたんですか?

ボイド:そうです。

三木:銀行で?

ボイド:ではなくて友達の紹介で。

宇都宮:合コンってやつですか?

ボイド:ではないです。職場の友達にもう1人の外国人の女性がいて、アメリカ人で日本の男性と結婚するということで、2人それぞれ「司会をやってくれないか?」ということでそれで紹介されました。

三木:結婚式の司会をお二人で?

ボイド:はい。そういうことです。

三木:すごいですね。

ボイド:そこからの出会いでした。それで少し時間が経ってからですが、二人とも仕事の他にやりたいと思ってることもあって、勉強もやりたいなと思ったりしてたので、海外に留学に出ました。

三木:その頃からスピリチュアリティとかには興味はあったんですか?

村田:途中からです。

ボイド:たぶん最初のほうはそんなに意識してないと思います。

三木:単純に勉強するためにということでイギリスのほうに行かれたんですか?

ボイド:最初はイギリスでしたね。

宇都宮:どういう勉強というか…

ボイド:EUのヨーロッパの政治、経済の統合についてのマスターでした。

三木:それは国際政治みたいな感じ?

ボイド:そうですね。それで途中からそのままPhDを続けようと思ったんですが、何となくヨーロッパよりも日本とかアジアのほうに二人とも関心を持ってるのに気がついたので、方向性も変えて、私の場合はアイデンティティとか国際関係論、政治理論の中でのアイデンティティ理論とかナショナリズムとかそういったものと日本の関連でやるように段々なっていったんです。

三木:それはオックスフォードでしたっけ?

ボイド:そうですね。最終的にはオックスフォードでした。

三木:村田さんもオックスフォードに留学された?

村田:はい。それで最初は僕達国際政治だったんですが、段々やっていくとアイデンティティの話とか結局心の話に行き着いていくっていうことに…

三木:お二人は政治のほうをやってたんだけど、結局アイデンティティになって心のほうに行って?

村田:心の話みたいな。

ボイド:アイデンティティの話とか空(くう)の話とかそういった方向に段々歩むようになっていった。

三木:それは面白いですね。普通は国際政治はあまり心のことは考えないけど。

村田:元々は西洋中心批判っていうのが当時あって、それで西洋中心的でないパラダイムをどうやって打ち上げるかっていう話になるとターゲットをどこに置くかっていうことになって、西洋のものでない方法論を使った学問ってどうなのかって考えたら、方法論っていうのはいわゆる正統的な大学でやってる学問じゃなくて、瞑想とかシャーマニズムのスウェット・ロッジとかも方法論だから深い知恵があるじゃないかと。

ああいうものを基本にした学問にしてもいいんじゃないかと思って色々考えてたら、西田哲学のほうに僕は行ったんです。

三木:村田さんは西田哲学のほうに行って。

村田:こちらはアイデンティティのほうに。

ボイド:私は政治理論の中でナショナリズムを通して国民のアイデンティティを見直そうという話になったんです。

三木:すごい面白い展開ですね。お持ちの博士号は国際政治なんでしたっけ?

ボイド:政治と国際関係論の部署です。

三木:村田さんは西田哲学に関しての?

村田:そうですね。東洋学と哲学の半々みたいな感じです。

三木:博士号をお二人ともお持ちということで、お二人の博士号をお持ちの方がなぜかスピリチュアリティとビジネスとパートナーシップをやってると。

村田:そうです。変人でございます。

ボイド:そういう人は少なくないかもしれないですが、表に出てないだけで。

村田:世の中も今そういう時代になってきてますから。

宇都宮:そうなると僕らも思っています。

村田:どうしてそういう風にお考えなんですか?

宇都宮:僕らは結局モノづくりのほうから入ったので、不思議とモノの良し悪しは気持ちが反映される。

三木:トヨタの生産システムで「システムが素晴らしい」ってみんな世界中から学びに来るけど、結局仕組みを会社に持ち帰って入れても急に生産性が落ちるんです。

実はコアは心の持ち方の上にシステムがないとダメだってことにみんな気づくんです。だから全てのモノづくりのベースには心があると気がついて、モノづくりから心のほうに産業がシフトするっていう直感がある。

村田:絶対そうですね。だって技術は導入できるけど、それがうまくいくかどうかは結局周りにいる人達なり作る人達なり使う人達なりっていう…

ボイド:システムは人間によるものですから、人間を忘れてはいけないっていうことですね。

三木:そうです。人間も非常に重要な要素なんです。

宇都宮:お客様は人間なので。

村田:そうですね。そういうお客様とこのモノ余りの時代に意味のあるものを作っていくっていうと価値を創造するという話に段々なってきますよね。ますます意味とか心の話、価値をどうするか。

ボイド:付加価値があるとか。


●村田・ボイドご夫妻の現在の活動について

三木:今のお二人の活動でどのようなことをされているのかお話していただければ。

ボイド:今は1つはパートナーシップについてコーチングの活動を行ってます。

三木:パートナーシップっていうのは夫婦関係っていうことですか?

ボイド:そうですね。夫婦に限らないんですが、一応そうですね。

三木:いわゆるカップルっていうんですか?

ボイド:そうですね。

三木:そこに焦点を当てられているのは何か理由があるんですか?そこが重要と思ってるということ?

ボイド:そうですね。かなり長年コーチングをやってきてるんですが、その中でよくキャリアにおいての悩みを持ってる方も少なくないんですが、キャリアの面で何かあったとしてもパーソナルのほうも何かある、よく両方あるようなケースが多いんです。その中で結局パートナーシップっていうのも、最初はパートナーは色々こういう問題があるというような話も出るんですが、最終的には自分は何か、パートナーのことは簡単に変えられないだけじゃなくて完全に変えられないと思ってもらったほうがいいぐらいで、そうすると本当に自分のほうで何ができるか、自分の変化によって全部変化していくので、その中で自分の気づきによって成長していくものだと思ってるので、それを中心にワークしていきます。

三木:具体的にはどのような形でコーチングしていく…?カップルがいらっしゃって、そこにお二人で対話していくみたいな感じですか?

ボイド:普通は1対1で話します。場合によって順番に話すこともありますが。

村田:でも僕達2人で向こうが2人っていう時も例外的にはあります。

三木:基本は1対1で、ブレンダさんが話すのは女性のほう?

ボイド:必ずしもそういうわけではないです。みんな色んな好みがありますので。

村田:女の人と男の人のほうが話しやすかったり、男・男で女・女のほうが話しやすいっていう人もいるので。

ボイド:話しやすいほうが基本です。その中で素直になってもらうためにも1対1のほうが落ち着きます。人数が多ければ多いほど、パートナーがいるから言えないことがあったりするので、また後で2対1とかそういう話もできますけど。

三木:すごい。そういうパートナーシップのコーチングっていうのはたぶんあまり日本では今までなかったと思うんですけど、海外ではそういうサービスっていっぱいあるんですか?

村田:マリッジカウンセラーみたいなのはあると思うんです。僕達はカウンセラーっていう資格は持ってないんですが、先ほどのZen2.0と結びつくんですが、愛にも段階があるし形があるしっていうことで、テクニックを越えた本当に大事なことっていうのは人類共通していることがあると思って。ギリシャ哲学的に言うと愛の形は4つあったと。最初は男女の愛をエロスと呼んでたのが、もっとスケールの大きい神様的な愛っていうのをアガペーって…

三木:人類愛みたいな?

村田:人類愛。そういう風に愛の形が段々成長していく中で、2人の関係も深まっていくというコーチングをしたいと思っていて、日本では1930年代に純愛っていう言葉はプラトニックな愛っていう意味で使われたんですが、純粋に小さい自分と小さい相手が愛し合っても愛の形としては非常に限られてるから、もっと深くなりたいと思ったら段々自分を捨てたようなアガペー的な普遍的な人類愛的な立場に行かないと愛は深まらないという、それは何でかというと宇宙の形、意識の構造がそうなってるので、必然的なことでもあると思うんです。

三木:そういう対話の中でその人の意識を拡大させるような方向にいざなっていく感じですか?

村田:そうですね。成長していただく。成長することと愛し合うことは別じゃなくてほとんど同義語、これがなければ愛は深まらないと。その成長するっていうのも単に小さい自分が成長するんじゃなくて、自分を捨てていってもっと大きな自分になることで深い愛も段々目覚めていくという。

三木:そうなんですね。学ばせていただきました。お二人はカナダにいらした時も同じお仕事をされて?

村田:そうです。

三木:カナダでもニーズはたくさんある?

村田:そうですね。世界中どこに行ってもありますね。

三木:まだ日本はこれからっていう感じなんですかね?この市場自体は。

村田:そうでしょうね。人に相談する相談業的なことが段々これから増えてくるまさに心の時代になって、三木さんが言ってる心のアップデートの時代になってくると、ますます相談業の種類も内容も多様化していくのは必然的だと思います。

三木:まだ日本では悩みを抱えてらっしゃる方は多いんだけど話せるところがなくて、それを日本で新しく作っていくっていう?

村田:そうです。そういうことを自分で話しながら自分の愛に目覚めていく。元々人間はすごい愛があると思うんです。マインドフルネスやZen2.0もその延長線上だと思うんですが、ソクラテスとかのギリシャ哲学でいうと人間は愛の記憶喪失の状態にいて、それを段々思い出すためにっていうそれが人生だと思ってるので、そのお手伝いをやりながら色々な人間関係を良くしていくっていうのにつながるんです。

三木:面白いですね。普通のビジネスコーチってその辺をたぶんやらないと思うので、「そもそもあなた自身は何者なんですか?」みたいなところから入ることが必要なんでしょうね。

宇都宮:僕ら中小企業の経営者さんとお付き合いしてて、悩みごとのほとんどは人事とか人間関係だったりして、それは1対1という部分もあるし社員っていう部分もあるし、親の代とか、ほとんど9割以上が人間関係の悩みで、それが改善されると業績も良くなるってことで。

村田:そうですね。人間関係は人間にとって普遍的というか。

宇都宮:今後ますます増えると思いますよ。

村田:そうですね。そういう相談業が。

三木:その新しい切り口を日本で提供されようとして、この間もイベントとかやられてましたけど、反響はどうでした?

村田:すごく良かった。驚くぐらい良くて。そういうので第2弾、第3弾…

三木:どれぐらいのお客様がいらっしゃったんですか?

村田:人数的にはそんな多くないんだけど、日比谷公会堂の小さなホールはいっぱいになって、もう座れないぐらいになって…

三木:それって何人?100人以上?

村田:150人かな。

三木:すごいですね。

村田:今はそれをZoomとかでやっております。

三木:どういう反響が声としてありましたか?

ボイド:題がちょっと変わってて『この人をやめる前に考えないといけないこと』として…

村田:こんな男、こんな女やめちゃいたい…

ボイド:「その前にこれを考えてみましょう」っていうことで、それがきっかけに。

三木:危機を迎えたカップルが来る……

ボイド:そうですね。基本的には。

村田:やめ前と言われるんです。やめ前イベントやってるんですが、でもパートナーがいない人も来るんですよ。恋愛しばらくしてないとか。

ボイド:昔はパートナーシップあって今はパートナーいらっしゃらないけど、そういうのを望んでるので関心を持ってるとかそういう人もいます。

村田:結局パートナーシップでみんな幸せになるってちょっと考え過ぎてる方が多くて、パートナーシップは幸せになることの1つの道筋だから、パートナーシップでなくても人間幸せになれるし、パートナーシップがうまくいってなくても幸せになれる。

宇都宮:男女だけじゃなくて僕らもパートナーシップなので、ビジネスパートナーも相性がありますよね。

ボイド:ありますね。

宇都宮:僕ら2人で経営しててよく「喧嘩しないんですか?」って言われるんですけど、喧嘩にならないんです。なぜかと考えたら対話をしてるんです。対話と議論は違うもので、議論になると喧嘩になりがちですよね。対話だと未知のものが生み出されてくる部分なので、喧嘩にならないっていう。

村田:衝突を回避するシステムがもう出来上がってるんですね。

ボイド:お互いに尊重し合ってるところもベースとしてあるんじゃないですか?

宇都宮:あまり尊重してないですよ。

村田:尊重してないの(笑)?

三木:尊重…お互いに好きなことを言い合う。

宇都宮:あるがままっていう状態になって。

三木:いいんじゃないかな。あまり誰かの意見に批判はしない。「いいですね」「いいですね」ってお互いに「いいですね」しか言わないのでコンフリクトが起きないんです。

村田:「いいですね」って言って2人の意見がズレた時にはどうされてるんですか?

宇都宮:お互いがどちらでもいいと思ってるので。

三木:だからズレても何か形ができていくんです。「いいですね」って言っていくと。あまり主張しないので、「そっちのほうがいいと思ったらそれがいいんじゃないの?」と。

村田:任せちゃう?

ボイド:信用してるところがあるんじゃないですか?信じてるところがあるとして、そちらの方向に向かっていく中で「いいですね」みたいな感じで。

宇都宮:無理なものは無理っていう。説得もしないし。説得ってあり得ないと思ってるので。それは僕自身が説得されない人だし、三木さんも説得されない人同士だから、説得すらしないっていう。

村田:最初からそういうベースがあるんですね。良い意味で諦めちゃってるっていう。個性が違うっていうことですね。

ボイド:お互いに個性を活かしてあげるような体制がもうすでにできちゃってるんじゃないですか?

三木:10年ぐらいかけてですね。

ボイド:いいですね。


●スピリチュアリティとビジネス、西田哲学について

三木:後半はいわゆるスピリチュアリティとビジネス、マネジメントについてお話を伺っていきたいと思います。パートナーシップということをベースに、そこから組織とか会社とかビジネスを回していく上でも非常に重要なパートナーシップもあると思うんですが、そういうビジネスに関してのアドバイスもされてる感じですか?

村田:そうですね。そういうほうも最近僕達やりたいと思っていて、色々ワークショップとかも考えてるんですが、最近ビジネス界で言われることはGoogleとかがマインドフルネスをやってたり、どういう風に生産性を上げるかっていう話がよく出てて、日本はOECDの中で労働時間は長いのに生産性は低いのをどうするかっていうことになると、Googleなんかがやってることが1つのヒントになるのではないかという人もいて、それはこの本(『Google流疲れない働き方』)に色々出てます。

この人(ピョートルさん)が言ってるのはフローっていう状態に入ると生産性が2倍になると。フローっていう状態とマインドフルネス、自己の成長っていうのは関係あると思うんです。西田哲学ともすごく関係があって、西田哲学っていうのは僕が昔勉強してきたんですが、これは西田哲学の本(『善の研究』西田幾多郎)でございますが…

三木:たぶん西田哲学をご存じない方もいると思うので、ザクッと…

村田:ザクッと言いますと、西田幾多郎さんという哲学者でございます。稲村ケ崎に昔お住まいで、京都学派と呼ばれる学派を作った方でございまして、僕が留学してたオックスフォード大学では当時日本人で哲学者って言ったらこの人しか名前が出ないっていう感じでした。

三木:それぐらい有名な方?

村田:この人がダントツ。今でもそうですけどね。

三木:Zen based philosophyみたいな感じ?

村田:僕はそう思うんですが、哲学者の中ではちょっと違う解釈があって、あまり禅のところを全面に出さないという解釈が多いです。実際マインドフルネスと関係あるんです。今言ったような生産性を上げるフロー状態の先の先にあることが書いてあるということです。

三木:Googleのずっと先をやってたと。

村田:ずっと先をやってたんです。フロー状態っていうのは結局西田の言ってるような没入状態で、その没入状態っていうのは色々心理学でも研究されてると思うんですが、マズローっていう心理学者が「人間色々な段階がありますよ」と。基本的に普通はここまでしか出てないんだけど、ここは晩年に言ったことで…

三木:超越的な自己実現。

村田:「超越的な体験がありますよ」と。この人がやったことの流れで心理学としては新しい段階に入って、トランスパーソナルサイコロジーっていうのが流行ってますが、「ここからここに今社会が行ってる」とケン・ウィルバーっていう有名な人が言ってるわけです。たぶん僕達がやってることはここに一生懸命引き上げる…

三木:zenschoolもそうです。

村田:三木さんが言ってる心のアップデートとかもこういうこと(超越的な自己実現に引き上げること)だと思ってるんですが、フロー状態っていうのもこっち(超越的な自己実現)に行けば行くほどフロー状態の質も上がるし、それからフロー状態の中にいつもいれるようになって、生産性を上げやすくなったり、それからクリエイティブなことにつながりやすい状態にいつもなれるっていうことだと思ってます。それはどういうことかと言うと、自分の中のニーズ(欲求)も変化しなくちゃいけない。

三木:こっちに行くと自分の欲求も変化していく感じですか?

村田:そうですね。こっちのほうだと結構ベーシックなニーズで、生理的なこととか、食べるとか身の安全とかってことなんだけど、段々上のほうに行くともっと精神的なニーズになってくるわけです。意味の世界みたいになって、その意味の世界でももっともっと深みがあるから、生産性にしろフローにしろまた違う話になっていくんではないかなと。

三木:お二人がやってるのは対話を通して押し上げていく感じですか?

村田:そうです。それで三木さんからいただいたテーマですけど、本当にやりたいことを内省し、そこからイノベーションを起こすということについて、イノベーションっていうのを高いレベルで行うにはどうするかということなんですが、やりたいこと、やりがい自体が変化しなくちゃいけないと。自分の中に入ってやりたいこと、やりがいを見つけるとしても、もっと意味がある、もっと普遍的なやりがいにつながると人間はイノベーションももっと大きな普遍的なイノベーションになる、もしくは自分も人との関わりの中でもっと普遍的な変化、トランスフォーメーションに関われるような自分になっていくのではないかなと思っております。

三木:普遍的というのはより大きな視点で見た大規模なイノベーションみたいな感じですか?

村田:そうですね。多くの人が求めてるような、多くの人が感動するような、多くの人にためになるようなという意味です。

三木:ガンジーさんがやられたようなこととかそんな感じですか?

村田:大きいとそういうことですね。

三木:自分の小さい会社のことじゃなくて社会をよくする?

村田:そうそう。社会をよくする。それを会社を通してどうやるかというような…

三木:企業活動を通して社会をよくしていく。

村田:よくするか、もしくは自分の会社の生産性を上げるために、自分の会社のファンというか、最近色々なマーケティングでもコミュニティを作っていかなくちゃいけないっていうことをよく言いますよね。

三木:『感じるマネジメント』。

村田:この本は結構面白いんだけど。

三木:これは誰の本ですか?

村田:こちらはデンソーという会社で、リクルートHCソリューショングループさんが関わった本なんです。このデンソーさんの自分達の理念は何かと、会社としての意味は何かと、何でそういう会社があるのかっていうことを深めていく段階で、実際参加している人達の中に色んな変化が起こったり、まさにこの内省の状態に入っていくというか探す旅に出るっていうことになっています。

三木:製造業もそういう内省をやり始めてるんですか?

村田:はい。結局ここに書いてあるのは、相手の心の中にある宝物を相手と一緒に見つけながら共に豊かになろう。

三木:ワクワクトレジャーハンティングチャート。

村田:そうでしょ?面白いじゃないですか。伝道者の役割とはそういうことです。結局ワクワクトレジャーハントみたいな感じで、バリューの伝道者にみんななっていくみたいな話に段々なっていくんです。みんなが求めてどうしても経験するんだけどなかなかできないようなものを、もっと分かりやすいレベルで表現させてあげられるような人になるためにはこういう変化が必要だということです。だからイノベーションの質とかもこういう自分の中の変化において段々変わってくるんじゃないかと。

三木:変わります。

村田:具体的にどうでしょう?

三木:zenschoolがやってるのはまさにここなので。最初は我々モノづくりから来たので、いかに新商品を作るかということをやっていたんですけど、結局それだと作れてもその先が続かないんです。

宇都宮:失速するんですよね。

村田:どうして失速しちゃうんでしょうか?

宇都宮:本業のほうに気が取られるとか。

三木:自分のエネルギーがそこまで向かないので、もっと大きなレンズでこれを広めることが社会に世界にどういうインパクトがあるかとか、そういうことを考えるようになるとずっと継続できるし、あるいは自分の原体験、自分はこういうことにワクワクしていたなっていうことに基づいてるとずっと継続するんです。

村田:それそれ。これ(超越的な自己実現)ワクワクですから。超ワクワク。

三木:そうなんですか?

村田:ワクワクのレベルが深まるということです。よくスピリチュアルでも最近ワクワクって言葉が出てきますけど。

三木:実は同じところをやっていたと。

村田:うん、そう。

宇都宮:「そうするとどんな利益があるの?」とか聞く方にどういう風にお話をされるんですか?

村田:利益っていうことを考えると、どこに形として落とし込むかっていうことになりますよね。

宇都宮:どっちかと言うとその辺の利益ですね。みんなが想像しているんです。

村田:こっちのほうですよね?

宇都宮:そうです。

村田:ただし、今モノ余りの時代で、意味とか価値とかを付けてモノを作らないとダメだっていうことになってきます。だから意味をどういう風に商品に付けたり、どういう夢を語らせたりっていうことになると、ますますこっちの話になってくる。売る相手に対して自分のマーケットの人達が自分の商品を分かってもらえるようにマーケティングするっていう話だとこういう話になってくる。

宇都宮:その時にファンクションは分かってもらうっていう領域から、今度は体験的なものを分かってもらうとか、社会に与えるインパクトを分かってもらうとかって徐々に抽象度が上がっていくじゃないですか?

村田:そうですね。分かってもらう意味が変わるってことですね。

宇都宮:その先に今三木さんが勝手に妄想してるのは、それは言っていいのかな?

三木:マインドフルエコノミー。

村田:はい。まさにその通りです。

宇都宮:社会性の先にあるものを分かってもらえる領域に来てるんじゃないのかなっていう。勝手に言い始めてるんですけど。

村田:勝手に言い始めてください。100%そうです。

宇都宮:そこに価値を求めるようなサービスなりモノなりが出てきつつあるんじゃないかなっていう兆しが感じ取れるのと、今後はそっちにしかお金を払わなくなるのかなって。だって日常のファンクションは100円ショップに行けばほとんど賄えたりする。あとお金が残っちゃうし。

三木:これが僕らの考えているマインドフルビジネスの定義なんですけど、その中に今までユーザーが求めているのが機能は例えば洗濯機で洗濯物を洗わないとダメでしょ。デザインでしょ。体験、社会性、ここまで来てるんですけど、この先が自己変容。機能は昭和時代は重要なんですね。でも段々と平成はデザインとか体験とか社会性とかが来てて、新しい年号の時代になるとこの価値よりもむしろこっちのほうが大きくなるっていう。

村田:まさしく。このトランスフォーメーションのところの内容をうまくキレイに分けたのがさっきの図の上のほうだと思うんです。ここを上下に分けられる。ここの第1段階と第2段階があって、この自己実現っていうのと、それから超越的な自己実現っていうのがあって、超越的な自己実現のほうに来てる。

三木:これね。

村田:はい。これは2段あるということ。トランスフォーメーションって言ってもこういうトランスフォーメーションもあればこういうトランスフォーメーションもありますよと。こういう風になればなるほど精神的な話になる。精神的って言っても心の深い全ての人間が追い求めてるようなトランスフォーメーションになっていく。それはマズローで言うとピークエクスぺリエンス=至高体験っていうことなんです。西田哲学はこういうのにとても関係します。

三木:西田哲学の中にもあるんですか?そういう概念は。

村田:ありますね。この辺(超越的な自己実現の上)の話ですけど、上の上の話ですが…

三木:上の絶対無。

村田:絶対無とかそういう話。西田に言わせると、西洋社会っていうのはとてもクリエイティブな社会だと。東洋社会の彼の批判は無の文化って言ってとてもすごいものがあるが結局静観的、静観的っていうのはクリエイティブの逆で活動的っていうのがないと。

三木:見てるだけみたいな。

村田:そういうことを克服するためにもう少し活動的な文化を作ろうっていうことを西田は後半はされたんですが、そのクリエイティビティの話と結びつくんです。

三木:結局行き着くところまで行き着くと何もしない感じになるじゃないですか。完全に解脱、何の欲もなくなり、それはちょっと行き過ぎだみたいな感じなんですか?

村田:行き着くところに行き着いてそういうパターンもあるし、もしくは変革者になったりする人もいます。例えば空海とかはすごい色々なことをやっちゃう人だから。

三木:もう1回そっちの世界に行って、今度色んな企画をして世界を創っていくってことですか?

村田:創っていきましょう。ガンジーさんもスピリチュアルなことを極めたけど。

三木:精神世界を創っていったりとか、社会を変革したりとか。そういう人達を生み出していくお手伝いをお二人はしていくと?

村田:そうですね。ビジネスを通してそれの現実版ですけどね。

ボイド:パートナーシップを通してでも同じようなことを目指しているわけです。

宇都宮:そういう領域のことって哲学のお話をされましたけど、宗教とまた違うポジションになるんですか?

村田:宗教は何かって言うとすごく難しい話で、僕達は宗教とかスピリチュアルっていう言葉だと手あかが付いたというか、一定のイメージが固まってて、オウム真理教を考えちゃったりとか。

宇都宮:もうイメージが固まっちゃってますもんね。

村田:僕達はそういう言葉がないと思うんです。新しい言葉を作っていかなくちゃいけないっていう時代に入ってる。

宇都宮:本来の意味を伝えるような表現方法が必要になってくる?

村田:だからzenschoolとかで新しいフレームワークを作り、そして新しいコンセプトを作りっていうところにおられる。

三木:そうですね。我々は別に宗教ではないので、宗教はたぶんこういった考えがなかった時代に人が自己変容する1つの手段ではあったけど、今色々な方向から自己変容できると思うので、宗教もあるし、あるいはコーチングもあるし、あるいはテクノロジーを使ったものもたぶん出てくるし。

宇都宮:技術も発展していきますからね。

三木:どの道から山の頂上を目指すかっていう話だと思うので、宗教にこだわらなくてもいい。ただ宗教の良いところも学んでいくっていう。

村田:zenschoolの究極的な目標、目的っていうのはどういうところにあるんですか?

三木:全人類目覚めるみたいな。

村田:これですよ。さっきのトランスフォーメーションでもこっちのトランスフォーメーションですよね。

三木:zenschoolもそうだし、Zen2.0も全人類目覚めるという、ちょっとちっちゃい穴を開けてみた。

宇都宮:皆さん眠ってらっしゃるので。「そろそろ朝だよ」っていうことです。

三木:そんなことを色々と妄想をしています。

村田:ほとんどみんな重なってるんですよね。こういう話(『Google流疲れない働き方』)とかそういう話とか僕達が言ってることとか西田の話とか…

宇都宮:同じ山を登ってますよね。山の頂上に近づくと皆さん顔見知りになってますからね。

村田:そうですね。価値観も感性もそういうほうに行くしかないですからね。心のアップデートをするしかないっていう。

ボイド:ついこの間東日本大震災の8周年がありましたよね?久しぶりに日本に帰って来て住むようになっているからこそすごく強く覚えてるのは、それ(大震災)がすごく色んな人にとって大きなきっかけになってるように見えます。人生って短いか長いか全然自分は分からないし、コントロール以外のものですし、でもこういう全然期待されてないもの(大震災)も起こり得るので、その中で本当に自分は何ができるかとか、今のうちに意味のあることをやりたい。自分の中にあるものを何か将来に、例えば今の会社から引退したら何かやりたいなみたいなところからもうちょっと良い意味で焦ってきて、もうちょっと早く今やりたいとか…

三木:スピードアップして。

ボイド:そういう気もします。

三木:多くの人がそれを感じてると思うんです。ただ何をやっていいかが分かんないから、お二人がそのガイドをされるといいんじゃないかなと。

ボイド:できればそうですね。

村田:そうですね。こういうビジネス界の話についてもパートナーシップについてもそういう役を担っていきたいと思っております。


●村田・ボイドご夫妻の今後の方向性について

三木:これからお二人の向かっていきたい方向をお話いただきたいです。これからのお仕事でもいいです。

村田:ワークショップを中心に、それから個人的なセッションと織り交ぜて、僕達20何年間ずっと海外にいましたので、日本に帰って来てまだ1年なので、まだ足場を作ってる状態。

三木:ちょうど1年ぐらい?

村田:ちょうど1年前で、まだ足場を作ってる状態なので。

宇都宮:日本とイギリスって違いはありますか?

村田:ありますね。もう少しこういうことが言いやすいです。

ボイド:でも同時に帰って来て、特に西田哲学ってかなり関心を持ってるような方々が、たまたま出会ってるかもしれないですけど、昔はそういうような会話はあまりできなかったので、それも今回は違うなって。

宇都宮:僕らも鎌倉に引っ越した理由の1つは場所の問題です。鎌倉って割と言える雰囲気が漂ってるっていうか、東京はまだちょっと言葉を選ぶという気がします。

ボイド:全国においてそういったような場所がいくつかすでにあるみたいですし。

宇都宮:和歌山県とか。

ボイド:例えばそうですね。

村田:まだまだそういう場所が増えるんでしょうね。

三木:自然の中で感覚を開いていくとこういう対話も成立しやすいので。

宇都宮:本来持ってるものにたぶん気づきやすくなるんじゃないですかね?身体を通して。

村田:人間唯一望んでるものはそれなので、それをほしいと思わざるを得ない構造になってますから、段々人間がそういうほうに向かうのは当たり前と言えば当たり前だけど。

宇都宮:ただ脳がブロックしてますよね。満員電車に乗るとブロックしますもんね。

ボイド:日常の習慣とか色々そういうのもあって、もうそれしかないみたいな考え方にどうしてもそういう風に固まってきちゃうようなこともあるんですけど。

村田:満員電車に乗ってる感覚から高い山に登ってもしくは飛行機に乗って下を眺めてる感覚までどう行くかっていう、会社もそういうことを分かりながら経営するのと分からないで経営するのは全然違うし、こういうリーダーシップの時代に段々入ってきてる。人をマネージするのは段々こういうことをつながりながらマネージするっていうことになってきてるんじゃないかと。

ボイド:あと個人としてもそうですしね。

宇都宮:若い人のほうが結構気づいてる部分があって、昭和のおじさん世代とか特に乖離が生まれてる気もします。

村田:その通りですね。

三木:そことの乖離を生まないようにどうやってその人達も一緒に引き上げていくかっていうのが結構重要なんです。

宇都宮:そういう対話が必要です。世代間ギャップ。

三木:いきなりは無理なので、ちょっとほぐしながらやらないと。


●お二人の考える「日本(世界)の○○の未来」に対する想いについて

三木:最後の質問でお二人の考える「日本の○○の未来」みたいな、○○はご自身で入れていただきたい。パートナーシップの未来とか日本のスピリチュアリティの未来とか、お一人ずつ何かコメントいただければと。

村田:パートナーシップの未来っていうのは唯一絶対ほしいものに目覚めるしかないので、それぞれが普遍的な愛、仏教で言ってるような慈悲のほうに向かうっていう、ますますそういう方向になりつつあると思うんです。だからそういうお手伝いをしたいと思っております。心の時代と言っても心でも色々なレベルがありますし、仲の良さって言っても仲の良さの質が全然変わってくる。そういうことにちゃんと進めることによって本当の意味で仲良くなることができると思っています。それはソクラテスとかプラトンとかが「本当の愛は魂レベルでなければ分かりません」って言ってることをそのまま言ってるだけなんですが、そういう風になっていくんじゃないかと思います。

三木:ブレンダさんのほうは?

ボイド:私は個人のレベルもそうですが、個人でできないものとして2人でとかあるいはグループでとか成長するところがたくさんあると思うんです。成長を求めて生活しようとしている人が増えてるように見えますので、本当に成長の時代というか、昔の急成長の時代とは全然違う質のものかと思うんです。

宇都宮:量的な成長ではなくっていうことですね?

ボイド:質的なもので、本当にそれも上から「こういう目標で頑張りましょう」じゃなくて自分の中にあるものを活かしていく中で成長していくものだと思うので。

宇都宮:成績とか順位とかじゃなくて。

ボイド:そういうことですね。それは私が見てる限り、「一緒に成長しようね」みたいな気持ちを持ってる人を探してる人は少なくないと思います。そこでコミュニティ作りとかそれにもつながると思いますので、すごくワクワクを感じます。

三木:Zen2.0もそのコミュニティになれれば。

ボイド:そうですね。そういう風に見えます。

三木:良いコミュニティになってきてると思う。おかげさまで。我々もコミュニティに逆に引っ張り上げられてるみたいな感じになってると思います。どうもありがとうございました。

村田:ありがとうございました。

ボイド:ありがとうございました。


対談動画


村田 樹紀(しげのり)さん


ボイド ブレンダさん


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