MMS162_大熊さん

第162回MMS「製造業の枠にとらわれない東大阪の町工場社長が、新たに仕掛けることへの思いを語る」(株)オークマ工塗 代表取締役 大熊重之さん

●ご挨拶と出演者紹介

三木:第162回マイクロモノづくりストリーミング、本日も司会は株式会社enmonoの三木でございます。本日はオークマ工塗さんのほうにお邪魔して塗装業さんなんだけど塗装業さん以外のこともいっぱいやってらっしゃるといったお話を色々伺っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

大熊:よろしくお願いします。


●enmonoとの出会いとzenschool受講の経緯

三木:大熊さんがzenschoolを受講されたきっかけなんですけど、元々我々のことをどういう経緯でenmonoって知ってたんでしたっけ?

大熊:元々は2012年3月に村上さん(株式会社創 代表取締役 村上肇さん)の勉強会に三木さんが来られて話を聞いたんですよ。

三木:そうですね。あれは大阪に来て講演したのかな。

大熊:あれを聞いて知ってはいたんです。自分の会社が製造業から新しいモノに展開していくけど製造業をもう一度活性化したい、製造業で何か新しいことをやりたいというのがどうしてもあって、もう1人の宮本さんという方と一緒に勉強会を主催するのにもう1回三木さんに来てもらったんですね。

三木:一番最初の話を聞いた時にどういう印象をお持ちになりましたか?

大熊:もう1つよく分からなかったですね。

三木:そうですか。もう1つよく分かんない人をもう1回呼んだっていう何か理由はあるんですか?

大熊:目的はクラウドファンディングだったんです。そういうのが勉強したいなと思って、でも聞くとクラウドファンディングというのはちょっと付加されただけであって、本体はzenschoolって中身なので、「あれ?何だろうこれ?」っていう感じで。

三木:そうですよね。その時に反応した方が何名かいらっしゃったんですけど、「zenschool受講したい」って言った方はたぶん大熊さんだけだった。

大熊:そうですか。結構来てましたよ。

宇都宮:“関心がある”っていうチェックは5、6人いたんですけど実際受講したのが1人だったんです。

大熊:25、6名いましたよね?あの時。結構行ってた。

宇都宮:5分の1ぐらいが“関心がある”っていうチェックは入ってたんです。

三木:そうでしたね。それで何か興味を持っていただいて、1回東京の体験会に来ていただいてそこで握手みたいなのを。

大熊:そうです。焼き鳥屋さんで。

宇都宮:何が握手につながったんですか?

大熊:何か自分の中から取り出せるっていうことを「絶対取り出せますか?」って言って三木さんに確認したら「100%取り出せます」と。

宇都宮:取り出せた感じなんですか?zenschool16期を受講して。

大熊:取り出せましたね。

宇都宮:何が湧きました?16期の中で。結構悩んでおられた風情で……

三木:鬼の宇都宮さんと仏の三木で、「もう帰りますか?」みたいな(笑)。

大熊:今から考えると依存してたんです。取り出してもらえるものだと思ってたので。

三木:「何で来たんですか?」って言われましたね(笑)。

大熊:「何しに来たんですか?」って何回も言われてね。

宇都宮:でもそういう問いかけって想像もしてなかったですか?

大熊:想像もしてなかったです。

宇都宮:でも全くあさっての方向からボールが飛んできてぶつかってどんな感触だったんですか?

大熊:分からない。何を言ってるのかが分からない。「経営者脳だ」とか言われて「いや、経営者だし」と(笑)。

宇都宮:でも何かが変わったんですもんね。

大熊:そうですね。でもそのzenschoolの中で一応取り出したんですけども、これでいいのかなみたいな感じですけどね。でもそれをやっていってまたモノにもなってきたら「あ、そうだったんだな」と。モノを作るにしても目的があってモノを作るので、モノが目的にならないようにって戻れるようになりましたね。

宇都宮:心が向こう側にいったっていうことですか?

大熊:そうですね。だから今までは何か新商品とか作る時はそれが目的なんです。モノを作ることが。

宇都宮:見えるところの目的なんですよね。そのゴールがちょっと見えない先にいったってことですよね。

大熊:そんな感じです。何のためにモノづくりするんだみたいなところですね。


●オークマ工塗の紹介

三木:せっかく会社のほうにお邪魔してるので、オークマ工塗さんの本業をご紹介していただいてもよろしいですか?

大熊:分かりました。後ろに色々あるんですけど、こういうプラスチックの樹脂製品があったり、あとはダイカスト製品、金属でできたもの、プレス板金もありますし、業界としては自動車、それから家電製品とか機械部品とか様々な部品が多いです。基本的には小さいものです。手で持てる大きさのモノばっかりをやってるというのが得意なとこです。普通の塗装屋さんはだいたい金属製品ばっかりやったりとか樹脂だったら樹脂ばっかりやるんですけど、うちはもう樹脂も金属も両方やる、多品種少量をやる。1個からも受注するというところが特徴かなと思います。

三木:創業は何年前ですか?

大熊:創業は2000年です。それ以前は父親の会社で同じことをやってました。それから独立してちょうど18年ということです。

三木:何か特徴的なモノとしてこれは?

大熊:これはうちの今売り出し中のワレンコートっていうやつなんですけども、こういう柔らかいモノに塗っても全然塗料として大丈夫という。

宇都宮:塗装っていうとパリパリするイメージがあるんですけど、これはそういうしなやかさがあるようなモノなんですね。

大熊:そうなんです。それは同じワレンコートなんですけども、こういうPE(ポリエチ)って普通塗料付かないんですけども、それを付くようにするのがこのワレンコートなんです。これシリコン部分にも塗装してるんです。それを塗っても密着もするし割れないというのがうちの新商品というか技術というか…

三木:これ配合でいうと塗料の配合でこんな感じ?

大熊:塗料の配合と下処理の組み合わせで付くようになる感じです。あとはこういった模様の塗料ですね。プラスチックなんですけどもパッと見焼き物に見えるとか、これは石目に見えるとか、こういうのは得意なんです。

三木:これもその配合で?

大熊:これも塗装技術です。

宇都宮:模様になるように吹いてるってことですか?

大熊:そうです。これはうちがiPhoneカバーが出た当時、うちがこういう色を塗って成型品を買ってきてネットショップで自社商品だということで売って大失敗したやつです。

enmono:(笑)

大熊:全く売れなかったんです。

宇都宮:何年頃?2010年頃?

大熊:これはもっと前でリーマンショックの後ぐらいですね。こういうスマホカバーがどんどん増えた時です。フェラーリの色にしたりとかして売ってたんですけど全く売れなくて(笑)。

宇都宮:それは何か原因が?

大熊:原因はまずネットショップをやったことがなかったので、ネットショップでの売り方自体が分からないし顧客対応も全くできなくて。1,000個を塗って梱包して出すのは全然問題ないんですけども、10個注文きて10個出すのにものすごい時間かかったりとか。

宇都宮:色々経験値が貯まりますね。

大熊:はい。大失敗しました。

三木:その時から自社商品を持つというのは何か1つ目標みたいな?

大熊:その前からもうずっとそうですね。

三木:なぜそういう?

大熊:塗装業をやってるとモノがないんです。必ずお客さんから預かったモノに色を付けるということなので自分とこの形ってないんです。それがすごい憧れだったんです。自分の形があるっていうのが。だから自社商品として形あるモノを作りたいっていうことをずっと思って、iPhoneケースの前はトイレレバーカバーっていうのを作ってました。それは成型屋さんと印刷屋さんと金型屋さんとか何社かで組んで会社を作ってトイレレバーカバーっていうのを作って結構売れたんです。レバーをちょっとオシャレに飾れるっていう。


●zenschool受講で得られたことと新商品SOUKIについて

三木:そういう自社商品を持ちたいって想いでzenschoolに来られた?

大熊:そうです。

三木:そこでどういう想いが取り出せた?どういうコンセプト?

大熊:結局モノじゃなくて僕がやりたいとか憧れてたのは、父親にまず憧れてたっていうのがあって、その父親がやってた仕事が塗装だったので、塗装の職人に憧れがあったんです。ふと自分の会社を見ると、汚いとか汚れるとかそういうイメージの仕事なので、「あれ?もっと職人がカッコよく輝いてもいいのにな」ということが出てきまして、それを見せれるような何かを作りたいなというのがポイントというか取り出せたとこです。

三木:職人の技とかそういう憧れていたお父さんをイメージするようなモノという?

大熊:そうです。だから職人がカッコよく見えるようなことをしたい。

宇都宮:そういうのってそれ以前はあまり意識はしてなかったんですか?

大熊:それはなかったですね。僕は父親に憧れて塗装の職人に憧れて高校卒業してすぐ会社に入ってますから。

宇都宮:それは無意識なんですよね?たぶん。

大熊:無意識ですね。

宇都宮:zenschoolの中でも瞑想とかして何か思い出されたってことですか?

大熊:そうです。あ、瞑想ワークでは出てこなかったですね。

三木:帰ってからですか?

大熊:だって最終日まで苦しんでましたから。ギリギリまで。

三木:そのコンセプトから出てきた製品がそちらにある…

大熊:このSOUKIというものです。

三木:ちょっと説明をしていただいてもいいですか?

大熊:このSOUKIという商品はモノ自体はプラスチックなんです。軽いモノなんですけども、このプラスチックを我々の技術で塗るとこういう金属調になるんです。これは真鍮とスズで、こっちが銅とスズの商品になります。

これはスズを塗った上にレーザーカットしたようなお皿であったりとか、こちらはこの塗料自体が金属粉が入ってる塗料なのでそれを塗ったらこんな感じになるんですけどもそれを磨くと質感が変わるんです。キレイに磨くとさっきみたいなピカピカになってしまい、ブラシとかショットブラストで磨くとこういう風にテクスチャーがちょっと変わるのでこれを利用してるということですね。

三木:すごい質感ですね。何かもうプラスチックじゃない感じですね。こういうのってお茶の席とか華道の席になるとかなり質感が合いますね。これを東京のほうで展示されたんですか?

大熊:はい。三越の日本橋本店で展示販売をやりました。2017年の年末から今年にかけてと、また2月に改めてと2回やりました。

三木:どんな反応でしたか?

大熊:すごい反応はあるんです。「これどういう風に作ってるのかな?」とか「質感がすごいですね」とか「金属なんだけども軽さがあるね」とか言ってみんな見てくれるんですけども「高いね」って言って。

enmono:(笑)

三木:ちなみにおいくらぐらい?

大熊:セットで31,500円から53,500円です。

三木:すごいですね。それなりの手がかかってるってことですね。

大熊:高いやつはもう1日に1個ぐらいしかできないです。

三木:それは高いですね。この商品に込めた想いっていうのが職人さんが誇りを持って仕事ができるっていう?

大熊:そうですね。

三木:このSOUKIっていうブランドですけど、どういう想いが?

大熊:“素”の器って書くんですけどそのものっていうことを表してるんです。塗装によって素のモノが色んな変化をしていくっていう。素の職人を見せようっていう意味も入ってるっていう。

三木:すばらしいデザインですけどこちらはどなたが?

大熊:こちらは西村拓紀デザイン株式会社さんです。

三木:あの有名な西村さん!

大熊:この器のデザインから色もそうですしこのチラシもそうですし、この秀逸な箱ですよ。これがまたカッコいいんですよ。これ下にちっちゃいの上におっきいのが入るセットになってるんです。

三木:そういう細かいところまで…

大熊:こだわってますね。このSOUKIを使ってこれをワークショップ化してたくさんの人に来てもらって、その時に塗装の職人にいてもらう、カッコいい職人にいてもらうというのが目的なんです。

三木:こちらのほうにそういうブースも?

大熊:そうです。ここでワークショップを行って壁に穴を開けて向こう側で塗装ブースがあると、そういうことを計画してます。

宇都宮:いつ頃?今年中ですか?

大熊:今年中にはやりたいなと思ってるんですけど。

宇都宮:楽しみですね。


●畑違いと思える不動産業について

三木:実は塗装以外のお仕事も色々やられてるということで、お手元に本がありますが。

大熊:『儲かる!空き家・古家 不動産投資入門』っていうのが僕実は著者で入ってるんですけども、1万2千部売れております。

三木:すごい。ベストセラー作家じゃないですか。

大熊:ありがとうございます。これは何かというと古家を買って再生をして投資利回りを得るっていう仕組みになってるんです。

三木:確かに最近空き家が多いですからね。私も鎌倉に住んでるんですけど鎌倉も空き家がすごい多いんですよ。人がいないので犯罪の温床になったりとか、あと雰囲気があまり良くないのでゴミがあったり、どうやって町をキレイにしていくかっていうのが課題なんです。

大熊:だから僕らが再生し出すと工事をし出すと隣のおばちゃんとが出て来て「あ、やっと誰か入ってくれるんだ。良かった。やっぱり隣が空き家で心配だったんだ」と。近所の人が来て「ここちょっと臭いが気になってたんだ」とかそういうことを言われるので非常に喜ばれてます。

三木:いいですね。喜ばれるビジネス。これは空き家を買って内装とか外装もやるんですか?

大熊:内装も外装もやります。メインは内装なんですけど。この投資家さんはこのお家を買って家賃収入を得るという利回りを得ます。それから工事業者さんは再生する工事をいただくということ、それから空き家に入居者が入ることによって地域が喜ぶと、それから入居者の方も狭いマンションにいるよりはこういう戸建ての広いところであったりとかあるいは音とか気にしなくてお家に住めるとかいうことで、4方良しのビジネスモデルになってるということが特徴です。

三木:このビジネスを始めたきっかけは何だったんですか?

大熊:このきっかけはここ(後ろの壁)を見ていただくとクロスの上に塗装してるんです。壁自体がクロスの上に塗ってるんですけども、最初は塗装を使ってリノベーションするということを考えたんです。最初こういうクロスを塗って、空き家のマンションしかも賃貸住宅専門でマンションの壁を塗って…

三木:壁紙を張り替えるんじゃなくてその上に塗ると張り替えるよりも早くキレイに…

大熊:早くできるしローコストで普通の壁紙にはない色が出るので差別化ができて、結構それで何百室とかやらせてもらったんですけど。

三木:それはどこかの依頼でやったんですか?

大熊:依頼で来るんです。

三木:そのやり方を「あ、これイケる」と思って?

大熊:そうですね。それが今度「戸建てもやってくれないか?」っていう話が出てきて古家の再生にどんどん変わっていったんです。

三木:でも普通だと中をリノベーションしていわゆる下請け的にやるっていうぐらいの発想でしかないと思うんですけど、これは自分で投資をする、家を買うっていうことですよね?そういう風に発想が変わったのは何か…?

大熊:これは僕自身が自分で古家を買って投資したっていうことです。お客さんの気持ちになるためにはお客さんになったほうが早いなと思ったので、古い空き家を自分で買って自分でリフォームして家賃収入を得るということを自分でやったんです。その時の失敗とか成功とかをノウハウ的にしていってお客さんにそれを提供していくという形です。

三木:一番最初に古い家を買ったのは何年ぐらい前ですか?

大熊:7、8年前ぐらいですね。

三木:どのぐらいの投資をされたんですか?最初の家は。

大熊:購入額が200万円。10坪の長屋の一戸なんです。

三木:そんなに大きな金額じゃないからね。土地も付いて200万円?

大熊:はい。それを100万ぐらいでリフォームして利回りが15、6%ぐらいですかね?家賃を取ってそれがうまくいったっていう形です。

三木:その体験をもとにどんどん他にも?

大熊:はい。僕自身も増やしていきましたし周りの仲間もという形で増えていったんですけども、スケールメリットを生かすためにはもっとたくさんの方と一緒にやるほうがいいなと思ったので、一般社団法人を作って情報を共有し合ってリスクを少なくして勉強もできるような、そして仲間としてやっていけるような投資家の集まりの会を作る。そうすると物件がどんどん増えていくので今度工事業者が必要になってくる。工事業者をどんどんまた同じように作っていくというようなそういった仕組みを作ったのが一般社団法人全国古家再生推進協議会と。

三木:あ、これ(パンフレット)ね?

大熊:はい。これ(パンフレット)になります。

三木:すごいですね。古家再生協議会って何か公的な機関のような感じですけど。

大熊:そうです。一応全国の空き家をなくそうっていうのが大きな理念です。

三木:この協議会はどういう仕組みなんですか?

大熊:協議会の仕組みは協議会の会員になってもらってオンラインで古家の投資を勉強してもらう。それから物件ツアーっていうのをやってますので、毎月東京と大阪と名古屋で7、8回ぐらいやってます。

三木:東京にも支店があるんですか?

大熊:東京にも名古屋にもあります。支店というかこの協議会の支部があるという。物件ツアーにその不動産投資したいなという方が行くと、古家をいっぱい見れて古家のビフォーアフターも見れて実際にその古家が欲しければ買えるというツアーを毎月やってるんです。

三木:不動産屋さんと一緒に何かコラボレーションしたりとか?

大熊:不動産屋さんからは物件の提供をしてもらって我々がそれを見に行って買い方とか見方とかそれからどういう風に収益を回していくかということをアドバイスするということです。

三木:なるほど。何か学校的な感じなんですね。

大熊:学校ですね。古家専門の不動産投資の学校みたいな感じ。

三木:いいですね。ちょっと鎌倉支部もお願いします。鎌倉市が実際悩んでるので。いっぱいあって解決しようがないですよね。鎌倉市だけじゃなく隣の横須賀もいっぱいあって。

大熊:横須賀も多いでしょうね。

三木:いっぱいあって、山の上とか結構空き家があってどんどん高齢化が進んでるのでもう何ともならない感じなんです。1回ちょっと市長に紹介しますので。

大熊:ありがとうございます。

三木:鎌倉市のほうに。何かお声がけがないですか?色んな行政とかから。

大熊:行政とか呼ばれて何回か話は行ったんですけどもなかなか話が進まないんです。

三木:何かちょっと堅い感じですか?

大熊:堅い感じですね。それとこの投資と絡むのがあまりよろしくないんじゃないですかね。

三木:投資とかね。なるほど。


●zenschoolマスターとzenschool関西について

 三木:色々と話を聞いてる中で製造業的な脳じゃないなというかビジネスマンですね。ビジネスを作っていくっていう。

宇都宮:商社マンっぽいですね。感覚が。ビジネスマンに近い。

大熊:僕の名刺には“趣味:ビジネスモデル”って書いてあるんです。

三木:zenschoolでも「ビジネスモデルを作ること」って言ってましたけど、元々そういう思考なんですか?

大熊:元々はなかったと思うんですけど。元々僕も塗装職人からいってるので、そこから何でそうなったかちょっと分かんないです。

宇都宮:経営をしていてお金の流れとか人、モノ、リソースの流れを見ながら楽しくなってきたとか?

大熊:はい。塗装以外の製造業以外のことをどんどんやり出すと、モノづくりから距離が離れていくような気がして不安になっちゃうんです。それをもう1回戻そうと思ってzenschoolに行ったっていう。

宇都宮:そういう想いもあったんですか?

大熊:そういう想いもあったんですよ。

宇都宮:いざ今心境どんな感じですか?zenschoolを卒業されて。

大熊:結局zenschool卒業してモノは作ったんですけども、目的はそのモノじゃなかったり、もっとおもしろいのはzenschoolそのものがおもしろく感じてしまったので、zenschool関西をやることになりました。

三木:それでもう明日のzenschool関西第2期の発表会が終われば、関西のzenschoolマスターとして自分達でzenschoolを開催できると。

宇都宮:大熊さんどの辺に面白味を感じられたんですか?

大熊:やっぱり人の中から(何か)取り出せるところですね。

宇都宮:他にあんまりないものなんですか?そういうのって。

大熊:あんまりないでしょ。取り出し方が違いますもんね。マーケティングから取り出すっていうのがだいたい普通なんですけども、違いますからね。対極にあるような気がするんです。

三木:マーケティングからは確かに取り出してないですね。

宇都宮:マーケティングはどっちかと言えば外の世界を眺めて、空きを探す感じじゃないですか。市場を見て。僕らは市場を見てなかったですもんね。

大熊:また本当に取り出せていけるところがおもしろい。

三木:おもしろいですよね。人が変わるのがおもしろいでしょ?

大熊:ええ。おもしろい。

三木:ガラッと変わる。

宇都宮:関西1期でも色々ありましたしね。2期でも明日発表するから何かあるかもしれませんし。

三木:今地元の工業会とか所属されてるんですか?東大阪市の。

大熊:東大阪商工会議所には入ってます。

三木:どうですか?他の方とお話し、合いますか?

大熊:あまりお話することないので分かんないです。

宇都宮:不動産投資の話とかしないですか?

大熊:もうほとんど製造業の方が多いのであまり…

宇都宮:大熊さんも製造業じゃないですか。

大熊:製造業ですけど。

三木:ちょっと僕らが見てても頭1つ飛び抜けてる感じがするんですけど、なかなか飛び抜けちゃうと、あんまり周りとお話が合わなくなっちゃう。でもその時は製造業モードでお話しされてるんですね?

大熊:そうですね。でもそれでもモノづくりの話はあんまりおもしろくないなっていう感じはしますね。

三木:そうですか(笑)。

宇都宮:モノっていうのに縛られてるってことじゃないですかね。モノづくりっていうことをもう少し拡大解釈していくとか、見方を変えていくと色んな展開があるわけですし、こういう全然関係なさそうな不動産もモノづくりと関連性があるわけですし。

大熊:この古家投資もそうなんですけども、人が困ってるとか問題解決するとかいうことがおもしろいし、そこをポイントに置いてるんです。だからうちのこの塗装業のほうも、塗装の問題解決をしてるんです。お客さんが塗装について色んな不良が多いであったりとか、こんな色が作りたいとかそういう問題解決するっていうことのポイントでやってるんです。

宇都宮:それって製造業的ですもんね。問題を解いていくっていう。

大熊:ええ。問題を解決する。だからこれ(全国古家再生推進協議会)も投資家さんが投資で失敗するという困り事があったので、その体験とか勉強とかできる場を作ろうということでやってます。


●製造業、不動産業以外の活動について

三木:もう1つの困り事解決として手掛けられようとしているのが…

大熊:そうなんです。今ほとんどの製造業だけじゃなしに企業のほとんどが、採用に困ってるんです。「人がいない」「募集しても来ない」というようなことをずっと聞いてたので、あるきっかけで企業主導型保育園を企業がやると、求人すると5倍申し込みになったりとか離職率が6分の1になったりとか、土日の仕事をやりやすくなったとかすごいメリットが多いんです。だけどたぶん保育園の話をしてもピンと来る経営者がいなくて、だったらそれをアドバイスできる協会を作ろうと。しかもその協会の中に会員が多くなればまたスケールメリットで、保育園自体も良くなるし企業も良くなるしっていうことができるんじゃないかなということで、今回こういう新聞に載ってるんですけども、一般社団法人全国企業主導型保育支援協会というのを作りました。

三木:これはどういう協会なんですか?

大熊:これは企業主導の保育園を運営がうまくいくように応援しますよということで、今から企業が保育所をやって会社の福利厚生とか採用とかに貢献したいなと思ってる企業さんのフォローもしていきますよ、立ち上げのお手伝いもしますよというのがこの協会なんです。

三木:実際こちらの会社さんでは保育所というのは作られるんですか?

大熊:うちの会社ではちょっとできなかったので。

三木:別のところで?

大熊:はい。今20社ぐらいはこの会に入ってもらって立ち上げの応援をしていくということでやってます。

三木:zenschoolのこの間の東京の発表会の発表された方も加工会社なんだけど保育園をやりたいっていう。ぜひ支援していただけると。自然の感じられる自然体験型の保育園。

大熊:やるなら今すぐですね。この新しい4月から企業主導型の補助金を出すんですよ。それでいくと建築費が7割ぐらいを助成されます。

三木:本当に?いいね。めぐちゃん(zenschool21期の大藪さん)をちょっと支援していただけると…

大熊:時間がないです。申請すぐしないとたぶん間に合わないと思う。

三木:すぐ後でつなぎますので。この仕組みがうまくいったからちょっとこの横展開っていうことで?

大熊:そうですね。一般社団でスケールメリットを生かすビジネスモデルっていうのがうまくいったので、そういった保育所であったりとか、あるいは今別で火災保険を適切に使える工務店の社団法人を作ろうとしてるんです。

三木:何ですか?それは。

大熊:火災保険ってなかなかほとんど使えてないです。保険実際使えるのに、台風とかで壊れて使えるとか経年劣化でないものは保険が下りるんだけども、それをほとんどの人が使えてないんです。それを保険屋に任せるからそうなるんであって、それを工務店がやるとちゃんとものが見れるので、管理もできるので適切に保険を使えるようになると。そうするとそこのオーナーさんもそうですし、工務店もそれによって仕事が増えるということを一般社団法人で、ノウハウを提供するよということを今計画中です。

三木:どんどん色んな社団法人で地域の困り事を解決する?

大熊:解決していくという。

三木:なるほどですね。すばらしいですね。

大熊:だから何かノウハウ、これは人に役立つというノウハウがあれば、私に言っていただければ社団法人化しますので。

宇都宮:そういうコンサルティングを?

大熊:コンサルティングします。

三木:すごいな。もう完全に製造業を越えちゃってますね。

宇都宮:枠にとらわれる必要がないっていうことですよね。製造業に、コンサル業に。

大熊:それは僕どっかで気づきました。箱にとらわれる製造業が多いんですね。

三木:モノとかね。

大熊:だいたい工場があったらそれをいっぱいにしないと気が済まないんです。機械買ったらそれをフル稼働させるということが目的になってしまって…

三木:目的と手段がごっちゃになってる?

大熊:ごっちゃになってるんですよね。

宇都宮:利益が増えればいいんですけど、そうでない数値が出てくる時は考える。

大熊:だから無理してでも稼働、稼働ってやって安い仕事を取って稼働させるみたいな。

三木:お困り事を解決することが目的だから、そのために別に機械をフルじゃなくて別にこういう社団法人を作ったり他のことでもいいわけですね。

大熊:はい。

三木:そういう風に柔軟に製造業の方はぜひ、行政の方もぜひ特に…(笑)。

宇都宮:大熊さんに相談していただければ。でもセミナーとかも時々されますもんね?

大熊:はい。その辺の話をちょっとすることもありますし、投資に関しては説明会等を色んなとこでやったりしてます。

宇都宮:zenschool関西の説明会もありますもんね?4月に。

大熊:4月12日(木)にありますのでぜひよろしく。

三木:何でそういう思考回路になっていった、製造業、塗装職人からそういう風になっていったんですか?

宇都宮:開く方向に行ってるじゃないですか?集中していく方向が多い業界の中で、開く方向の思考回路ですもんね?

大熊:何でなったか分かんないですね。

enmono:(笑)

大熊:父親が言ってた言葉で「人と違うことをしろ」っていうのが、ずっと言ってたんですよ。それがちょっと頭にあるんですよね。

宇都宮:そうなんですね。実は梶川さん(zenschool11期)もそういうことが頭に残ってるって言ってましたよ。父親から「人と違うことをしろ」みたいな。そういう人多いんですかね?

大熊:そうですか。塗装屋だけど別のことをするとかいうのはそういうところから来てるかもしれないです。

宇都宮:そういうのに対して反対が起きない感じなんですか?

大熊:父親がいる時は父親が逆に「それはどんどんやれ」みたいな感じがあるので、1人になってからはもう止める人がいない(笑)。

三木:また周りに大熊さんを慕って色んなおもしろい経営者が集まって来てますもんね。何か大熊コミュニティみたいなのがあるんですか?大熊さんコミュニティ、大熊さんを囲む会とかですか?

大熊:あんまりこれといってそういうのは作ってないんですけども、何かおもしろいことがあったら「一緒に勉強しに行かないか?」って言って連れて行くというのは、しょっちゅうやってるみたいです。

三木:そのコミュニティがzenschoolにつながってるっていう感じですかね?大熊さんの仲間が。

大熊:そうですね。はい。

三木:zenschool受けたりとか?

大熊:あります。

三木:(大熊さんが)おもしろいですからね。

大熊:おもしろいですかね?

三木:おもしろいです。

大熊:いっぱい叱られましたけど(笑)。

宇都宮:叱った覚えはないですけど、大熊さんの鏡のように対応してたので。大熊さんの表情が物語ってたんですよ。そうじゃないって。

三木:あんまり感情を表現しないタイプですよね?

大熊:そうなんです。

宇都宮:そこを僕ら見てるので、違和感があるなっていうのは体が感じてることと考えて発言してることにギャップが感じられたので。

大熊:そういう見方をされたことがなかったんですね。

三木:どういう見方ですか?

大熊:論理的なところとかそういうところのほうが多くて。

三木:モノづくりはね。

大熊:それと感情と別々に見るとかね。

宇都宮:両方必要だと思ってるので、ロジックが強い時は感情が欲しいし、ロジックが弱い人に対しては僕はロジックを突っ込んでると思うんですよ。両方たぶん必要かなっていう。

三木:ロジックが強い人に感情を求め過ぎると、時々爆発しちゃうんです。ワーみたいな、「俺はこれでいい!」みたいな。

宇都宮:感情の取り扱いに慣れてないから。


●自社商品を持つというマイクロモノづくりについて

三木:我々がzenschoolでやっている自社商品を持つというマイクロモノづくりって考え方があるんですけど、これに関して大熊さんどういう風に感じましたか?

大熊:僕もずっとメーカーになりたいって憧れてたので、それは絶対やらないといけないなと。ただ、僕ら普通そういうメーカーになりたいとかモノづくりしたいって思う人間は、一発目で成功させたいと思ってるんです。でもそんなことはあり得なくて、やっぱり続けていく中でヒット商品が出るとか良いモノができるということがあるので、zenschoolからもそうですし、マイクロモノづくりもお金をかけずに続けていけるような仕組みというか考え方なので、そこはすごい大切なことだなと思いましたね。

宇都宮:いきなり傷ついて二度とやりたくないっていうのは避けたいですもんね。

大熊:はい。2度ほどそういうことやってます。

宇都宮:よく戻って来られましたね。普通トラウマになって傷ついて戻って来れない人が多いじゃないですか。何かそういうのに手を出して苦労したからもう絶対やらないっていう人もいらっしゃったりとか。

大熊:僕はそこで傷ついたのでモノづくりから離れていったんですよ。

三木:今回のは続けていけそうですか?

大熊:続けていけます。

三木:やっぱりその先にある想いがあるから?

大熊:そうですね。あとはそこを具体化したいなと思ってるので、そんなに焦りもないですし。前なんかモノづくりって商品にしたらすごい焦ってて、早く作らないとダメだとかすぐ売らないといけないとかそんなのがあったんですけど、今回はそういう焦りもないですし、だから続けていけるんじゃないかなと思ってはいます。

宇都宮:焦ってってどういう焦りだったんですか?お金を回収しなきゃとかってことですか?

大熊:お金の回収が一番大きいですけども、計画を立てる中で進捗が進まないとか、その課題を解決できなかったりすると販売できないからどうしようああしようっていう、そんな感じですね。

宇都宮:でも実際経験されると計画が立たないことをやろうとしてるわけですよね?それを計画を押し込めると当然整合性がつかないですし、振り返るのが当たり前なんでしょうけど気づきにくいものですか?

大熊:全く気づかないですね。やってくうちは。

宇都宮:誰かアドバイスとかなかったですか?

大熊:アドバイスはあるんですけども気づかないんです。例えばこのiPhoneケースをうちがやるって言った時に、僕自身はうちの塗装でオリジナルだからこれは他にはない差別化だと、デザイナーと組んで絵も描いてやったから他にはない差別化なんだって思ってるんですけども、他の人から見たら「別にそんなの100均に行ってもあるじゃん」みたいな、普通同じ、違うのと色が変わるだけっていう感じだったんですよ。それを分かってて言ってはくれてるんですけども気づかないんです。後から振り返ったら全然差別化になってないなと。

宇都宮:そういや言われてたなみたいな?

大熊:そういや言われてたなという感じですね。


●大熊さんの考える「日本の○○の未来」に対する想いについて

三木:大熊さんの考える「日本の○○の未来」ということで、○○は自分自身で入れていただいていいんですけど、製造業とか中小企業とか塗装業でもいいですし、そういった何か想いがあれば教えていただきたいなと。

大熊:やっぱり僕は父親に憧れて仕事を始めたので、この製造業ですね。日本の製造業、特に中小零細というのが元気になってほしいなと思います。そこで歴史としてあるものと、新しい考え方のイノベーションを起こしてやっていけるっていうのが、特に中小零細はやりやすいと思うんですよ。「小さいからしんどい」とか言うんですけども、逆に大企業だったら動けないことがいっぱいあって、中小だったらもう自分さえ決めれば明日からでもできるので。

宇都宮:大企業とかだとエネルギーいりますよね。制約とかしがらみとか。

三木:中小企業は本当に動きが、社長が決めれば早いのでイノベーションを起こしやすい。

大熊:だからやるもやらぬも自分で決めれるので、そこで頑張ってほしいなと思いますね。そのための気づきになるっていうか手助けとして、zenschool関西がどんどん広がってくれると。

三木:広げていってください。ぜひこれからもよろしくお願いします。

大熊:こちらこそよろしくお願いします。

三木:今日はどうもありがとうございました。

大熊:ありがとうございました。


対談動画


大熊重之さん


「オークマ工塗」WEBSITE


「SOUKI」WEBSITE


「一般社団法人 全国古家再生推進協議会」WEBSITE


「一般社団法人 全国企業主導型保育支援協会」WEBSITE



「カラーズバリュー」WEBSITE


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