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「生体認証・静脈認証の技術を使ったセキュリティシステム を開発した元ソニーの熟年ベンチャー」 (株)モフィリア 天貝佐登史さん

本記事は2014年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

MMS本編

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enmono 本日は、株式会社モフィリアにお邪魔しています。社長の天貝さんです。

天貝 よろしくお願いします。最初にお会いした時は会社を立ち上げてまだ8ヶ月頃で、それから苦節3年、やっと息がつけるようになりました。

enmono 天貝さんはソニーで、aiboなどのロボットや生体認証技術に携われて、独立されました。

天貝 研究所でやっていた指静脈認証技術を事業としてインキュベーションするところの模索中、「これは事業として発展していくに違いない」と思いました。ソニーという大きな会社でやるのではなく、自分達で即断即決できる小さな集団でやった方が良いのではと考え、事業ごとソニーから出させていただきました。

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enmono 天貝さんと同じように、志を持って独立された方がいらっしゃるそうですね。大手メーカーから技術あるエンジニアが独立して、サービスやデバイスを生み出すということは、これからの日本にインパクトを与えるのではないでしょうか。

天貝 お客様に求められたらすぐにデモをお見せしたり、改造できるのは、即断即決できる小さい会社のメリットです。だからこそ取れたビジネスも、かなりあると思います。ソニーは、志を持って何かやろうとする人を応援してくれる温かい会社です。喧嘩別れではないので、私は「脱藩」と言っているのですが。ソニーが築いているグローバルなネットワークや、市場の人脈を教えてもらえている関係です。また、ソニーが我々の技術を使いたいとなれば喜んで協力します。我々にとってはソニーという有名な会社が将来的なポテンシャルのお客さんになり、ソニー生まれの技術で評価が高まります。

enmono キャピタルとはお金だけでなく、人的な資本や関係資本もあると言われています。天貝さんのお人柄で、そのような目に見えない資本や協力が得られるのでしょう。

天貝 高い技術評価のもとで独立したので、サポートしてくださったのではないでしょうか。ソニーと言えど、面白い技術全てにお金を出せるわけではありません。素晴らしい技術を闇に葬ることは、ソニーにとっても社会にとっても、もったいないわけです。「そんなに気前良く外に出してしまっていいの?」とも感じますが。ソニーからの出資はありませんが、ベンチャーキャピタルの方がリードインベスター的に手を挙げてくださったのは、本当にラッキーでした。日本独自の特許技術であること、世界で適用できるというところを面白いと思っていただけたようです。

enmono セキュリティシステムのデモを見せていただいてもよろしいですか。

天貝 静脈情報の登録は非常に簡単です。

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今、装置の中に埋め込まれているカメラで、指の静脈を3枚撮りました。自分では同じように装置に指を置いたと思っていても少しずれてしまうので、疑似三次元的に少し広く生の情報を登録しておいて、多少ずれても大丈夫なようにしています。人の静脈は、全世界の70億人それぞれ全部違います。持って生まれた体が識別データベースになっているので、改めてデータベースを作ったり管理する必要がありません。

enmono 指紋や目の中の虹彩といった生体認証との違いはありますか?

天貝 指紋認証と指静脈認証は、同じようでだいぶ違います。指紋は、目に見える紋のところをデータベースにしています。ドラマで残留指紋から犯人を探したりしますが、残留した指紋からコピーも取れてしまうので、偽造もできてしまいます。静脈は目に見えない体の中にある器官なので、偽造の可能性が非常に少ない。静脈の情報を撮る時、流れている血液の成分が吸収するような光を当てていて吸収された影の所を撮っているので、生きていないと駄目なのです。そういうことも含めて、偽造が困難です。間違って認証される率も少なく、性能が高い生体認証の技術だと言われています。認証時間はパソコンのCPUを使うと1000分の10秒から6秒くらいで、本人かどうかを特定しています。例えばパソコンの場合、コンマ何秒でログインできます。

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enmono パスワードを打ち込むより早いです。(登録していない)私の指では反応しないですね。

天貝 ID・パスワードを盗まれても、ログインを静脈認証にしておけば、登録した本人でないと入れません。パスワードなどの管理は、我々のパスワード管理ツールですと安心です。静脈認証で本人確認後、編集と閲覧が可能です。データ暗号ツールは、重要なファイルやフォルダを簡単に静脈情報で暗号化できます。このように、静脈認証は登録も簡単で認証時間も早く、性能も高い。いいことずくめなんですけれども、なにせ今まで知られていなかった新参者なので、認知度が低いです。

enmono どのようなところで採用されているのですか?

天貝 お客様は海外の、とりわけ新興国が多いです。今までインフラが確率していないところで、新しくインフラをつくったりビジネスをつくったりするところの方が、需要が強く反応が早いからです。中国では蘭州銀行が採用してくださいました。指を置いてパスワードを入れるだけで、カードは不要にできます。

enmono その方が安全ですね。日本の銀行も採用してほしいです。

天貝 日本の銀行は、生体認証が追加項目になっているのです。我々の技術だと、指がプリペイドカードに成り得ます。指によってこの指はこのカードと、紐づけができるんですよ。トルコ医療プロジェクトの場合は国の政策として、保険証をやめて静脈認証にしました。

enmono どういった経緯でオファーがきたのでしょう?


天貝 トルコの場合は生体認証の中で静脈認証を使うことを政府が実証実験などで決めて、政府の近しい企業が静脈認証をやっているところを探したようです。静脈認証をやっているところは少ないので、我々のところにもコンタクトがあったのでしょう。ある時、ほぼ同時に5~6社からメールが届いたのです。その中からパートナーを決めてすぐ、トルコへ行き、政府の要人に会い実証実験のデータを出しました。トルコが親日派で、地元のパートナーが国から信頼されていて、モフィリアの出身母体のソニーのイメージが良かったということもあり、即決しました。

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enmono 日本では考えられないスピードです。企業側もそのスピードについていかなければならないのですね。

天貝 もちろんこのような例ばかりに期待せず、ニーズがあるところにちゃんとアンテナを張っていきたいです。既に認証のためのシステムや機械があるところも、トラブルがあった時にもう一度テクノロジーを見直して、イノベーションがあって、地道な改善ではなくステップアップして解決することも考えられます。手ぶらという利便性だけでも、マーケットがあると思うのです。

enmono 車やドアの鍵とか。ホテルのオートロックも、これだどカードを無くす心配がないです。

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天貝 ジムやサウナなど、なるべくカードを持ちたくない場所では便利だと思います。

enmono メーカーズのような人達も関心がある技術なのではないでしょうか。

天貝 SDK(ソフトウェア開発キット)販売をしていますので、興味を持たれた方はホームページをご覧ください。使い道はたくさんあると思います。

enmono 今、流行っているIoTにも、静脈認証があるといいです。静脈認証は夢の技術ですね。

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天貝 技術的には、現実になりつつある夢です。

enmono 天貝さんがいらっしゃった、「燃える集団」と呼ばれた開発チームがaiboを発表したのは1999年とのことですが、早すぎたのでは?

天貝 自分で考えて自律的に次の行動をするから、このaiboとこのaiboは育ち方が違う、ということをやっていました。aiboの時もオープンソースのようなことをプロモートしたんですけれども、なかなか上手くいかなかったので、15年前というのは早すぎたという感じがしなくもないです。

enmono こちらのRollyも、aibo系の商品ですよね。

天貝 Rollyは踊る音楽プレイヤーです。音楽に合わせて自分で振りを考えることができれば、自分で振りをプログラミングすることもできます。技術があるからこそ、安定した動きが可能になるのです。見ていて可愛らしく、癒しにもなりますし、コンテストのように振りを競って楽しむこともできます。

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enmono 日本のモノづくりの未来について、「こうなったらいいな」ということはありますか?

天貝 我々は静脈認証の部分は自信があります。ただ車やドアにつけるとなると、それなりのチームをつくらなければいけません。我々にノウハウがない部分で腕に自信のある中小企業の方やベンチャーの方が、日本にいっぱいいると思うのです。案件に応じて、そのようなところと組んでトータルの開発ができたらいいですね。機動的にタイムリーに集まって、ぱっと仕事をして、ぱっと去って。

enmono 「オーシャンズ11」のような。そんなモノづくり集団が増えたら、もっと日本が元気になりますね。

▶対談動画

▶天貝さんFACEBOOK

https://www.facebook.com/satoshi.amagai.1

▶株式会社モフィリアWEBサイト

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