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辻村深月「盲目的な恋と友情」


あっとう間に読み終えてしまった。

自分でも驚くほど共感できる部分が多く、本があっという間に付箋だらけになってしまった。

音楽の世界にいる人間というのは面白い。

女の友情も面白い。

彼氏や男を必要とせず、女の友情においては人を心底心配することができる、留利絵。

とりあえず彼氏を作ってみなさいという母親の勧めから、ある音楽の人と出会ったことで歯車の狂い始めた元タカラジェンヌの娘、純粋で育ちの良い蘭花。

男関係も音楽に対する姿勢も少し軽い、明るく経験豊富な美波。

散々彼に傷つけられた自分を慰めてもらうよう、留利絵に頼ったくせに、彼からの電話があるとすぐに出てしまう蘭花。そしてそれを汚らわしく思う留利絵。そういう自分には無垢すぎる留利絵に、自分が彼に対して甘い彼女の顔をしているのを見られるのも恥ずかしく鬱陶しく、そして美しい自分のことをとことん心配し、綺麗ごと・正論を並べてくる留利絵を見下す。「この子は男を知らないのだと、申し訳ないけど思ってしまう。」のである。この穢れた自分の気持ちをわかってくれない自分とは違う穢れ無き留利絵を。

そして彼が落ちぶれて、蘭花への依存が強まっていくと、留利絵はアドバイスの語気を強めていく。「みんなにも反対されているのに彼に執着するのは(中略)蘭花ちゃん自身の欲のせいだよ。好きだからっているけど、『好き』って気持ちはそんな、何もかもより一番偉いの?」

男がこそこそされるのが嫌、きれいな女の子と崇められる女子とは仲良くしたいと思わない、でもそんな女子に憧れている拗らせているのに、友達の彼氏と倫理的にいけないことをしてもいいかなと一瞬でも思ってしまった留利絵にはついつい感情移入してしまった。でも、彼女はまたもや男のドライで軽くて切れ味の鋭い言葉によって、傷を負う。そして、憧れの女の子の唯一無二の友人になることを望んだ。

しかし、憧れの女の子は不幸せな別れと結婚をした。

一方、美波はあっさりと幸せな結婚をする。

女友達はより多くのライフイベントに左右される。絶対的な女友達を持てないなんて信じたくない。信頼してもいくら心も時間も彼女に費やしても彼女は誰かのものになって私を置いていくのか。

そんな未来が怖くて仕方ない。

女友達とはどこかに”客観性”を持ったものだという文言には妙に納得した。

女子校にいて女の友情にはかなり詳しくなったはずだが、それがこの本には大いに文面化されていた。


逆に男の友情には疎い。

そんな中、最近気付いたのは、男の友情もプライドのぶつかり合いで、結構ネチネチしている面があるということだ。




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