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カーカー、カラスの鳴き声も、ひとつとして同じ音はない | Zen Sounds 撮影日誌 #03

東京に滞在していました。

ドキュメンタリー制作のために長期取材している人たちに同行させていただき、移動日を除いて4日間の滞在。1日だけ午前中オフになる日があり、そんな時に「誰かに会おう」とか「買い物に行こう」よりも「Zen Sounds撮ろう!」がファーストチョイスになっている自分。夢中だ。フィールドレコーディングは中毒性があるような気がします。

朝7時、前日の散歩で見つけたスポットに直行。三脚の脚を最長に伸ばし、自分の目線の高さ(180cm弱)に置いたカメラを真上に向けてセッティング。空に向かって伸びる冬の木を真下から見上げる(平山アングル)。

レンズは35mm単焦点を使用。木の幹から枝の先までピントをパキッと見たかったのでフォーカスの深度を広く、F8程度まで絞りました。シャッタースピードは1/50、ホワイトバランスは5500K。S-Log3撮影です。

グレーディング BEFORE  →  AFTER

東京でZen Soundsを撮影するとは予定していなかったので、オーディオレコーダーを固定設置するスタンドが手元になく、木の枝と枝の間に直置きしました。

さあ、RECスタート。ビデオとオーディオレコーダーの同期を取りやすくするためにパンパンッと手を叩く。

撮影・録音している間は、その場の音に耳を傾けます。カメラやレコーダーのことを気にかけているので、「無になる」とは言えないけれど、時間が経つにつれて頭の中が澄んでいく。この時間がとても好きです。

生ゴミを荒らして街を汚す、見た目も可愛げない、ただただ厄介な存在として認識していたカラスの鳴き声も、じっくり聴けばひとつとして同じ音はない。甲高く歌うように鳴くのもいれば、濁音混じりで叫ぶように鳴くのもいる。のびのび鳴くのもいれば、息が詰まったようなのもいる。当たり前のことだが、皆ちがう。当たり前のように、皆ちがう。

帰り際に門を出る時、方向を示す道標の上に一羽のカラスが留まっていた。でっぷり大きく、ドス黒い。朝を急ぐ人々がそばを通り過ぎようと微動だにしない。都市という自然の中で生き抜くために纏った威圧感に、目を奪われた。


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