原題「韓 콘크리트 유토피아／英 CONCRETE UTOPIA」

未曾有の大災害に襲われたソウル、唯一倒壊しなかったマンションで繰り広げられる“極限状態スリラー”。

生き残りを賭けた人間の心理…自衛と排斥、秩序とカオス。
狂気に駆り立てられた人間によりタイトルとは裏腹にディストピアと化す“取り残された”マンション。

優位に立った人間の醸し出す不穏さに気持ちがどよめきながらもやはり各シーンを自分に置き換えて観てしまう【他人事ではない感】がある。
ここまで災害が多発するとホントに絵空事ではないと思えてしまう。

登場人物達の設定も巧みで何処かリアル感が否めないのも見事。

ただのパニックスリラーでは無くコメディーやクライム要素、政治＆ヒューマンドラマと言う顔も覗かせる韓国映画らしい多面的な描き方も秀逸。

途中からラストは何に辿り着くのか楽しみで仕方なかった。
この破滅的状況をどう意味ある結末を迎えさせるのか？

『ユートピア』とは何なのか？タイトルでそれの持つ意味は？

冒頭に“取り残されたマンション”と記したがそこに住む(住んでしまった)人々の心理状態とそのマンションとは無縁に瓦礫の中でなんとか生き延びた人達との心情の差を見せつけるシーンが終幕後も脳裏に残る。

人間は利己的になった時点で終わるのだ。
排斥が生じた時点でカオスを招く。
そして秩序を生むための無秩序が生まれる。

ただ、そんな正論を書いたところで自分だって極限になったらそんな正論を述べて居られるかどうかなんてわからないな。

むしろ何も残らずに生き延びる方が人間らしく居られるのかも？と瓦礫の世界に体温を持たせたエンディングは素晴らしかった。

しかし、イ・ビョンホンはまた本国で傑作を生み出したな。
ただ、だいぶ過激ではあるがね(≖ᴗ≖ )ﾆﾔﾘ
あの二重人格さながらな狂いっぷりは非常にカッコ良かった。
善と悪、廉潔と狂気・・・相反する二極な背中合わせ。
そんなイ・ビョンホン演じるヨンタクの背景の明かし方も好みだった。

そしてヨンタクに心酔していく夫ミンソンに違和感や不安を覚えていくミョンファ、この若い夫婦の心理変化はラストまで不安定で見応えあったな。
極限の最中に自分を保ち続ける事が如何に難しいかを見せる。

ただ、それでも人間は生き、生かされる。
文殊の知恵をフル活用して生き抜く事が最後には一番の糧になるんだと教えられる。
だから独りでは死んでしまうのかもな。(ウサギかよ！)

思いの外良い作品で結果「韓国映画オモシレ～」ってなるんだよな。

何をもってユートピアと言わしめるのか？
其処だね！