J2 第12節 千葉 vs 岡山 レビュー

千葉 1 − 0 岡山

2018年5月3日(木)13:03KO フクアリ


◎試合全体の流れ


ホームで非常に強い千葉相手にフクアリ初勝利を目指しましたが、難しい試合になりました。前半から前からのプレスは機能せず、また後方からのつなぎでは千葉のプレスをかいくぐれず攻撃が形になりません。後半に入っても流れは変わらず。前節同様中盤でのボールロストからのカウンターで失点。濱田の退場と、立て続けに苦境に追い込まれます。10人になってようやく火がついて攻勢に転じますが1点は遠くそのまま敗戦となりました。


☆今回のレビューのトピック

◎千葉のボトムチェンジに前プレを諦める岡山

◎守備の対応力が身についてきた岡山の修正

◎千葉のハイプレスとコントロールされたライン

◎守備の陣形の変更と繰り返される失点パターン

◎パワープレーをめぐる岡山千葉の応酬


それではまず、両チームのフォーメーションから確認していきましょう。


岡山のフォーメーションは3421

千葉のフォーメーションは433

次に、両者のフォーメーションのかみ合わせをチェックします。

相手の最終ライン4枚に対してこちらは前線3枚なので、千葉のSBは比較的フリーになりやすいことが考えられます。中盤のインサイドでは千葉の3枚に対し岡山が2枚(上田・塚川)なので数的に不利。しかしワイドは左右WBが浮きそうな気配。こちらの最終ライン3枚に対して、千葉の前線も3枚ですから千葉のプレスはハマりやすそうなかみ合わせでした。



◎千葉のボトムチェンジに前プレを諦める岡山



前節の熊本は岡山の前からのプレスに対してボトムチェンジをやってきませんでした。なので、比較的プレスがかかって自由を奪えたのですが、この試合の千葉はボトムチェンジをすることで岡山のプレスを回避してきました。構造的な部分をいじるのみならず、選手の起用にまで踏み込み万全をつくして岡山のプレスを攻略する。そういう姿勢を感じる千葉の作戦でした。

アンカーに入っていた熊谷が2CBの間に落ちてきて3バック化します。そして両SBを前へと押し上げる。こうするとこちらの3トップは千葉の増嶋・熊谷・近藤の3枚と数的に同数になりますが、遠く離れたSBはどうすることもできません。前述のとおりそもそも4バックの時点でSBはフリーになりやすい傾向があるんですが、さらに上乗せしてボトムチェンジを行うことでなおさらSBの自由度を強化する千葉の狙いを感じます。さらにはキャスティング(起用)のところ。サリーナスは攻撃にいいところのある選手で守備が不安、右の茶島はもともと広島でシャドーだった選手です。つまり、守備力に目をつむってボールの扱いに優れた選手を使うことで、ボールを持てる力の底上げを狙ったということでしょう。岡山のプレスを破壊する気まんまんという千葉ですね。



◎守備の対応力が身についてきた岡山の修正



相手との枚数合わせができないぞ?ということで、岡山は前からのプレスを諦めて守備の位置を下げ、千葉の様子をうかがうことになります。

守備のブロックを下げたことで相手に前進は許してしまいます。そして、プレスに行かない分、CBや熊谷、SBのところはかなり自由にボールを動かされてしまう。これはやむを得ないところでした。ボールを回したい千葉にとっては思った通りの展開でしたが、岡山にとってみるとここは成長したポイントだったと思います。

というのも、以前は枚数が合わなくてもとにかく前プレありきでどんどん出ていって相手のパス回しに翻弄されて攻撃を食らっていたんですね(特に愛媛戦)。しかし、この千葉戦では「あれ?おかしいぞ枚数合わないな」と判断して、いったん守備を下げ相手を観察するという工程が挟み込まれています。観察して岡山はどのように修正をしたのか?それを見ていきましょう。とにかくSBのところをどう処理するのか?それが大事です。


まずはシャドーの2度追いです。2度追いとは一人目のプレスに行ってパスで交わされても足を止めずに二人目にも続けざまにプレスをかけに行くこと。図では千葉の右サイドへの展開ですが、まず、シャドーの仲間がCB近藤のところに寄せる。パスがSB茶島に出ると2度追いをかけてもうひとつプレスをかけに行く。個人の走力とスタミナまかせの解決法ですが、体力のあるうちはこれでも前進は妨害できます。


千葉は右サイドの茶島・船山・町田と3人がしきりにポジションを入れ替えながら右サイドを攻略してきます。なので、船山が落ちて茶島がサイドの高い位置に顔を出したりしていたんですが、枚数が増えるわけではありません。SBの位置にいる選手に対してはWBを前に出して捕まえさせます。これにより喜山のところで千葉の選手と1vs1になる危険はありますが、右サイドの枚数はハマる。このように、ハーフタイムを挟まずとも修正して相手の出方に対応できた点については収穫と言えるポイントだと思います。



◎千葉のハイプレスとコントロールされたライン



一方攻撃の方はどうか?エスナイデル監督体制下の千葉といえば、ハイライン・ハイプレスですが、まずそのハイプレスに手を焼きました。

ちょうど岐阜戦のイメージに近いかと思いますが、千葉は押し込んで攻撃が失敗して守備に転じるとハイプレスに出てきます。このところの試合で顕著になってきたんですが、キーマンである上田康太のところはかなり警戒されて自由にさせてもらえません。近場で預けどころが見出しにくいので、落ち着いてパスをさばけませんしパスミスしたらピンチを招く。そういうプレッシャーのかかる状況が多かったですね。プレスを逃げるにはショートパスやドリブルで剥がすとか、ロングボールを蹴ってしまうとかしたいところです。千葉がもし極端なハイライン(高いライン設定)のままだったならば逃げ場があります。

このように背後に大きなスペースがあるわけですから、アバウトなロングボールをスペースに落として前線の選手を走りこませればプレス回避とカウンターに転じることができます。ですが、この試合は千葉がこちらの状況に合わせてラインの深さを変えてこのようなイージーなカウンターに入るチャンスを与えてもらえませんでした。また、赤嶺や齊藤へのハイボールに対しても増嶋・近藤のCBの強さは十分で引けを取らない。岡山としては攻撃のとっかかりを作って押し込まれた状態を盛り返すポイントをなかなか得られない試合でした。さて、どこで優位を作って盛り返すか。


前半、よくそこのポイントを見つけたなと思ったんですが、岡山が千葉に対して優位に進められたポイントは左WBの武田でした。

前述のとおり千葉の右サイドは茶島・町田・船山がポジションを入れ替えてきますので、武田はこの3選手のいずれかとボールを競り合うことになるわけですが、武田将平は身長181cmと高さがあります。千葉のいずれかの選手に対しても攻守両面でハイボールの競り合いに勝てるんですね。攻撃のとっかかりにできそうなポイントがなかった岡山にとってはこの武田と千葉の選手たちの身長のギャップは無視できないアドバンテージでした。とはいえ、シュートに直結できるようなシーンは少なく苦戦は必至でしたが・・・・



◎守備の陣形の変更と繰り返される失点パターン



後半、岡山は守備の陣形を修正します。

シャドーに入っていた仲間を少し下げて、523から532へと変更します。これにより千葉の右の3枚(船山・茶島・町田)にそれぞれ対応する選手がはっきりしやすくなった分プレスに迷いなくいけるようになりました。とはいっても千葉の右3枚は目まぐるしいポジション交換をやってくるので、マークの受け渡しはかなりややこしい状況でした。そうした中で右サイドを割られたシーンもありましたが、状況が理解できた中でやられたのでまだまだマシといえばマシだったと思います。


後半は相手も疲れてきますし前半0−0でなんとかいけたので、どこかでチャンスを作って1−0にできたらいいな・・・というところで失点。この失点はいただけません。なぜなら熊本戦と同じパターンだからです。

岡山の中盤のインサイドは上田・仲間・塚川の3枚ですが、上田が攻撃のために前に出ています。このシーンでは岡山が攻撃していて齊藤にボールが入ります。齊藤は近くの仲間にボールを落として、さあスピードアップというところでした。しかし、齊藤が痛恨パスミスをしてしまいました・・・

本来であれば相手の前進をストップするフィルターの役割を果たすはずの中盤3枚がこのパスミスによってごぼう抜きにされます。為田がボールを回収して前進するのをストップできる選手が誰もいません。千葉はスピードアップして右サイドにボールを流して、ラッキーだったとはいえ先制点を奪いました。このように、中盤が不用意なボールロストに対する危機管理ができていません。熊本戦でもみられた大きな欠点です。


このシーンの間伊藤大介を投入する予定だったんですが、伊藤が入ることによって千葉がカバーしきれないエリアを有効に活用できることになり、平面でのビルドアップに改善が見込めました。さらには赤嶺が千葉のCBとの競り合いにかなり勝てたのでボールも残せましたから、可能性のある攻撃をやっと展開できそうだっただけに非常にもったいない失点でしたね。そして濱田の退場。間違いなく誤審で不適切なイエローカードでした。このシーンで濱田が責められるいわれはありませんが、この退場について強いて言えば一枚目のイエローカードがまったくいらないカードでしたね。



◎パワープレーをめぐる岡山千葉の応酬



岡山は10人で1点ビハインド。441へ布陣を変更し、リカルド・サントスを投入し432の形にして赤嶺と2トップを組ませます。そして大竹の投入。パワープレーを視野に入れた交代ですが、岡山はこれまであまり見せたことのない放り込み特化の配置を展開しました。

右利きの椋原を左SBのところへ、そして左利きの上田を右SBのところへそれぞれ配置します。それぞれのサイドとは逆の足が効き足となる逆足配置へと変更したわけですが、千葉のプレッシャーの届きにくいSBの位置から早めにクロスを上げ赤嶺・リカのところでスクランブルを作るための配置ですね。


千葉もこれに対応します。身長191cmのエベルトを投入し、高さに対抗。前線でよく走っていた船山のスタミナを考慮して清武を投入、プレスとボールキープを期待します。なんとかゴールにせまりたかった岡山ですがそこまで大きなチャンスも作れず。


残念ながら今季2敗目を喫した試合でした。しかし、この千葉は強かった。こちらとしては長澤監督言っていたようにエンジンがかかるのがあまりにも遅すぎましたし、特に攻撃のところで勇気が出ませんでした。誤審による濱田の退場もありましたし、欠点も失点に絡んでしまって・・・・攻守ともに完敗でしたね。ホームでこの悔しさを倍にして返しましょう。




それではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?