J2 第1節 徳島 vs 岡山 レビュー



 徳島 0 - 1 岡山 

2018年2月25日(日) 14:05KO  鳴門大塚



それではJ2開幕戦 徳島ヴォルティスvsファジアーノ岡山のレビューをお届けします。まず両チームのフォーメーションから確認していきましょう。


徳島のフォーメーションは31411、中盤はダイヤモンド。

岡山のフォーメーションは3142。前線は2トップ。


次に、両者のフォーメーションのかみ合わせをチェックします。

両チームともCBのところで人が余っていて数的有利がありますから、その分相手の守備をいなしやすくなるため最終ラインではボールを持ちやすい傾向が予想されます。

中盤はほぼ数的に同数で、守備のマークが決まりやすい傾向があります。そのために中盤でボールを受けるにはまず相手のマークを剥がさないと前が向けない可能性があると予想されます。しかし、徳島は中盤がダイヤモンド型なので4人。岡山は中盤3枚なので一枚足りません。




◎徳島はなぜ前半リズムが良くなかったのか?




徳島のキープレーヤーはアンカーに入る岩尾選手。彼を経由してゲームを組み立てられると徳島のリズムが出てしまいます。そのために、前半から岡山はフォーメーションをイジり岩尾選手を消しにかかります。



2トップのイ・ヨンジェ選手と赤嶺選手をタテ並びにして、赤嶺選手をトップ下の位置に配置。そしてほかの選手と分担しながら継続的に岩尾選手へのパスコースを寸断します。これにより徳島の中盤から前のFWまでマークがバチっとハマり、なおかつ最終ラインに守備の余剰人数(阿部・ジョンウォン)をえることになりました。徳島が中盤でいい形を作ってMFが前を向くにはマークを一枚剥がさねばなりません。



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岩尾選手が監視されているということで、気を利かせるのはインサイドハーフのシシーニョ選手、前川選手。本来の中央から降りたり、サイドに張り出したりしてポジションを変えボールを引き出そうとするのですが・・・

前述のとおり岡山の守備はバチっとマッチアップしているので、逃げていくインサイドハーフを深追いしても人数は足りています。ですからシシーニョ、前川両選手が移動しても遠慮なく追いかけてマークできます。そうなると、徳島は岩尾、シシーニョ、前川の中盤3枚がボールを持てませんし、中盤で前を向くシーンがかなり作りにくくなります。


中央で中継地点を得られない徳島の攻撃は、自然とサイドへの長いボールやFW呉屋選手の裏抜けなどの比率が高くなっていきますが、やはりキモはパスワーク。開幕の固さ、呼吸のズレ、らしくないミスが多かった徳島。一番得意とする形を封じられてはなかなかリズムに乗れません。徳島には難しい前半でした。とはいえ、岡山の攻→守の切り替えのときルーズなところをついて中盤が前を向いたり、前川選手を一列上げて試合の中で揺さぶりをかけチャンスメイクしていたあたりはさすが。

パーフェクトとまでは言えませんがうまく徳島の中盤を封じていた岡山の前半の守備。しかし、ちょっとしたスキを与えてしまうと、

前半最大の決定機は33分。やはり岩尾選手のところから。杉本選手のシュートが枠を外れてくれて助かりましたが、完全に崩されてしまいました。徳島はコンビネーションがいいので、パサーにボールを出せてしまうと受け手は積極的に仕掛けはじめます。そして守備がついていけない複雑な動きで崩されてしまう。そういう怖さを発見できるシーンです。


塚川選手に2つ、上田選手に1つ、赤嶺選手に1つ決定機が訪れましたが、そのうち塚川選手のヘッドでなんとか先制できたのは大きかった。ビッグチャンスを逃し続けると徳島を仕留めきれないまま後半に逃がしてしまうことになりますから。




◎堅守から2トップへ、ダイレクトプレーに磨きのかかる岡山



一方の岡山。

明らかに昨年よりレベルアップしていたのがチームの共通理解と強力な2トップ。大黒柱の赤嶺選手に加え、今年は京都からイ・ヨンジェ選手を獲得。開幕はこのヨン嶺コンビでスタートしました。


岡山はボールを奪ったら裏・サイド・FWの頭をめがけて長いボールを蹴りこんでいきます。このあたりチームとしての統一感がしっかり感じられますね。とても大事なことだと思います。

前述のとおり、徳島の攻撃を止めることができていましたから徳島の崩れた守備バランスを整える時間を与えずに、赤嶺選手やイ・ヨンジェ選手へボールを入れていきます。そして、彼らがボールを収めている間に全体が押し上げる。徳島は攻撃するために中盤から前に人を割かなければなりませんから、後ろはどうしても手薄になります。そこを狙う岡山。相手のCBとこちらのFWが徳島陣地でやりあうシーンが多かったのはこのためでした。

川又堅碁選手以降、高さ強さ速さをバランスよく持って点にからめるFWがなかなか手に入らなかった岡山でしたが、この日前半最後の決定機のようにFW個々の力勝負に持ち込んでフィニッシュまで行けてしまうイ・ヨンジェ選手、赤嶺選手のコンビは相当よさそうです。相手の守備陣がヨン嶺を止めるにはそれ相応のCBのクオリティが必要になってきます。そういうこちらのFW陣vs相手のCB陣のクオリティ勝負が今季は存分に楽しめそうな気配。堅い守備からの速攻を狙っていく長澤ファジのチームスタイルを完成させる存在です。ケガだけはなんとしても避けたいところであります。





◎442に変化してゲームを取り戻す徳島





後半、徳島はキム・ジョンピル選手にかえて井筒選手を投入。フォーメーションを31411から442(ダイヤモンド型)へとチェンジします。再びかみ合わせをチェックしてみましょう。


前半と変わらず徳島は最終ラインでボールが持てますからCBからはスムーズにボールを配球することができそうです。中盤から前は相変わらず人数的には足りていてマークしやすいはずなんですが・・・サイドに問題が起こります。


サイドに目を向けてみると、前半はWB一枚でサイドを担当していた徳島ですが、442にかえたことでCB・SB・インサイドハーフ・FWと4枚を配置することができるようになっています。これに対し岡山は一枚枚数が足りません。徳島のSBを岡山のWBがマークしますから、SBはポジショニング次第でこちらのWBの位置を操れる格好になります。そういうシーンがこちら。後半開始早々左サイドを破られたシーン。


ボールはフリーのCBブエノ選手が持っています。SB内田選手は落ちてボールを受けるそぶりを見せますが、これに岡山のWB三村選手が反応してつり出されます。そうすると背後にスペース(いわゆる3バック脇)ができ、そこをFWの島屋選手が使うと。クロスから触れば一点というシーンでした。


徳島は442にかえたことで選手間の距離が縮まってショートパスを繋ぎやすくなりました。本来のプレースタイルを取り戻したことでチームの士気も回復。後半はらしいサッカーで岡山を押し込むシーンが増えました。しかし岡山の方も守備の粘り強さはしっかり出せていて、ボールは回されましたが中盤の人数が足りている分そこまで問題となるシーンはなかったですね。ただやはり疲れは出てくるのでボールに行けなくはなります。そのぶん陣地を押し込まれるのはやむを得ないところでしょう。


全体合流して間もないイ・ヨンジェ選手と赤嶺選手を下げて、斎藤選手、仲間選手を投入し、岡山は守備からカウンター一発での逃げ切り体勢にはいります。フォーメーションを3421に戻し、齊藤選手を1トップ、シャドーに仲間選手を配置。サイドの守備のテコ入れもあわせてやっていく狙い。


ところが・・・


交代で投入された仲間選手がピッチに入ってわずか3分ほどで一発レッドで退場を宣告されてしまいました・・・・。投入間もなくからちょっとテンションが高すぎる印象を受けた仲間選手でしたが、この退場劇に弁解の余地はないでしょう。勝ちゲームを不当に危険にさらす大失態というよりほかはありません。200試合を越えるキャリアを持つ選手にあるまじき愚行でした。しかし、ある意味仲間選手の退場劇で見えてきたものも決して小さくはなかった。




◎仲間選手の退場でも消えなかったカウンターの火




一人少ない状況で残り時間10分ですから、まず考えるのはガチガチに守備を固めて逃げ切ることです。余計なことを考えず守備に専心することで選手の意思が統一され下手すると退場者が出る前よりも守備が固くなるということもよくあることです。しかし、この試合一人少ないながら打てるときにカウンターがちゃんと打てているんですね。つまり、2点目を取ること、とれなくても攻撃に出て陣地を回復すること、そういうことを狙うアタマがちゃんとあったこと。守備一色の意識になってもおかしくない状況なのに。


これは本当に素晴らしかった。


というのも、岡山は押し込まれてからの陣地回復のへたくそさ、カウンターのお粗末さがおおきなおおきな課題でした。8人、9人で引いて守るのでカウンター時はFW頼みになるのですが、FWがボールを残せなかったり残せても押し上げがなかったりと、可能性のある攻撃がどうしてもできなかったんですね。ですから、押し込まれたら押し込まれっぱなしになってしまう。守りばかりではどうしても守り切れなくて失点してドロー、あるいは負けと、何度となく繰り返された光景でした。



しかし、この試合では齊藤選手を軸にグループで徳島の守備を剥がしてカウンターに入るシーンを出せていました。さすがに得点の可能性は高くなかったですが、もしここに退場した仲間選手がアクセントを加えていたら?と考えるとカウンター一発で追加点を取り、0-2でゲームを締めるなんていうシナリオもありえたかもしれない。これまでの課題に対して回答しようとしているチームの取り組みを感じられる後半でもあったのではないでしょうか。



徳島の猛攻をなんとかしのぎ、3年ぶりに開幕戦勝利をあげたファジアーノ岡山。チームの統一感もはっきり見てとれましたし、課題に対する取り組みも感じ取れました。そして、ルーキー2人を含む新戦力の頼もしさ。非常に収穫の多い開幕戦勝利となりました。この調子で春先ダッシュしていきたいですね。仲間選手が名誉挽回を果たす日が来るのも楽しみに待っています。




それではまた。



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