2018 J2 第21節  岡山 vs 金沢  レビュー

岡山(10位) 3 - 3  金沢(17位)

2018年7月1日(日)18:03KO Cスタ


◎試合全体の流れ



堅守をベースにタテに早い攻撃を軸にした春先のいいときのサッカーに回帰しているような印象を抱かせる試合でした。前半の早い時間に見事な右サイドの崩しから先制して岡山ペースで試合を進めましたが、前半終了間近でPKを与えてしまい。前半は1-1で終了。金沢はほとんど攻撃が組み立てられてなかったのであまりにももったいない同点弾でした。後半も失策は続き、カウンター処理ミス、自陣深くでボールを奪われて押し込まれるなど3失点。すべて防げた失点でした。一方、塚川の美しいミドル、伊藤大介のヘッドで追いつくなど意地を見せることができた試合でもありました。勝てはしませんでしたが、内容的には良化を感じさせていて後半戦に期待を抱かせる試合でした。



☆今回のレビューのトピック


◎4222で攻める金沢とマラニョンカウンター

◎岡山の原点回帰を匂わせる541での守備とタテに早い攻撃

◎後藤圭太の復帰が及ぼすチームへの好影響の連鎖

◎あまりにもお粗末だった3失点

◎前半戦をふまえて後半戦に期待したいこと


それではまず、両チームのフォーメーションから確認していきましょう。

※青い方が岡山です

岡山のフォーメーションは3421

金沢のフォーメーションは442

次に、両者のフォーメーションのかみ合わせをチェックします。

両方とも最終ラインで人が余るので後方ではボールが持ちやすい傾向がうかがえます。しかし、3バックと4バックの対戦でよく起こるんですがWBのところが比較的空きやすい可能性があります。それから久々に2シャドーを置いていますので、金沢はボランチ周辺でシャドーに効果的な動きをされないように注意が必要ですね。




◎4222で攻める金沢とマラニョンカウンター




まず金沢の攻撃面をみていきましょう。基本的なフォーメーションとしては422を採用している金沢ですが、攻撃の時は少し形を変えてきます。

このようにSHの加藤、清原が中の方に入ってきて4222の形になります。これは以前対戦した大宮も採用していた形ですが3バックのチームにとって守りにくいボランチ脇のスペースを効果的に活用しやすいフォーメーションですね。金沢はここでフリーになる選手を使って、崩しに入っていきたかったところでしょう。対する岡山としては泣き所のボランチ脇を有効に活用されてくるとマークがつきづらくて押し込まれやすくなってしまいます。


そして金沢のもう一つの攻撃の軸がマラニョンカウンターです。

金沢は中央のエリアより低い位置でボールを奪った際、迷いなくロングボールを蹴りこみスピードのあるマラニョンをスペースに走らせます。岡山でもイ・ヨンジェを使ってなじみの深い形ですが、素早い切り替えからシンプルなFWとCBの勝負に持ち込むメリットは決して小さくありません。




◎岡山の原点回帰を匂わせる541での守備とタテに早い攻撃




一方の岡山。まず金沢の4222に対してどのように振舞ったのか?守備の方では久しぶり541でセットする形をとり、金沢を迎え撃ちます。

齊藤を残して、5枚と4枚の2ラインを敷いて守りを固めるのは首位を走っていた春先のころ以来の形。この541の状態で守る際は、金沢のCBのボール回しにプレッシャーをかけに出ることはせず放置します。

そしてCB→SBとボールが渡ったら、541の4の列に入っている伊藤・仲間の2シャドーがSBにプレッシャーをかけます。これによりSBは自由にタテパスを入れることができなくなるのでサイドを封鎖できる。また、541にしたことでダブルボランチの上田・塚川の両脇をシャドーでケアすることができるので、泣き所になるボランチ脇をあらかじめ埋めることができます。金沢としては、なかなか平面でパスをつないで崩しにくいですね。それゆえ前半金沢のシュートは1本でした。

長澤監督:前半の入りはほぼパーフェクトに入っていたと思います。点を取ってコントロールしながら前へ出ていく作業も出ていましたし、畳み掛けるような部分の精度は足りなかったんですけど、いいゲームで入れたかなと思っています

ただ、前からのプレスに出るときはこのままの形では出れません。

相手のCBおよびSBにプレスに出るときは、541のままではできませんのでやはり523の形になってプレッシングに飛び出していくしかありません。そうすると必然的に、ボランチ脇が空いてしまいますしそこにSHが入ってくるのでパスコースができてしまう。ほとんどの場合ボールホルダーにプレッシャーがかかっていましたから、ボランチ脇を射抜かれることはありませんでしたが、今後この守り方で引く⇔出ると併用するときには注意してみておきたいポイントですね。



岡山の攻撃面での軸はFWへのロングボールですが、ここには明らかな変化が見られます。大きなところではタテに早い攻撃が復活してきたことです。

上田、伊藤とボールの配球役が増えたことで平面でのパスワークを積極的に活用していこうと変化してきていますが、この試合ではそれに加えFWが裏のスペースに走ってロングボールを呼び込むプレーが増えました。こうすることで、ポジティブトランジション(守→攻の切り替え)のところで判断が早くプレーできますし、攻撃が成功するにしてもしないにしても敵陣深くでプレーすることができますからボールを失った時のリスクを低くすることができます。これも春先にはできていたことでした。




◎後藤圭太の復帰が及ぼすチームへの好影響の連鎖



この試合では千葉戦以降離脱していた後藤圭太選手が先発復帰してきたことが明らかにチームへ好影響を与えていましたね。信頼できる戦力が復帰してくるとどのような影響が出るのか?なかなかわかりにくいことだと思いますが、この試合ではそこがはっきりと出ていたのでチェックしています。


後藤の穴をふさいでいたのは主にボランチの塚川でしたが、後藤の復帰により塚川を本来のポジションであるボランチで起用することができました。塚川はサイズの大きさフィジカルの強さとハードワークできる運動量、そして地味に得点力もある選手です。その選手を最終ラインで使っていると良さを出し切るのは難しい。伊藤が先発に復帰してからの岡山はボランチの選手が伊藤と入れ替わってシャドーの仕事をすることが増えていますから、塚川がアタッキングゾーンに入っていくシーンが増えます。後藤の復帰で塚川を高い位置に送れるようになったことが、2点目のスーペルゴラッソが生まれる背景となったことは疑いの余地がありません。


また、この試合では右サイドが活性化されましたが、その理由の一つに椋原が高い位置を取れるようになったことがあります。後方に後藤が控えているので、背後のケアは後藤に任せ積極的に前に出ていけるようになったので、シャドー・ボランチとWBがサイドで絡むシーンが増え、パスコースが単純に増えました。元々右サイドに流れてくるプレーの上手い齊藤がからみ、厚みのある攻撃が作れはじめています。それは仲間の先制点にもくっきりと刻まれているところでしょう。このように、後藤の復帰影響は椋原の位置や塚川のポテンシャルを生かすことにも波及しておりチーム全体としてみた場合のパフォーマンスに大きくかかわっていると言えます。




◎あまりにもお粗末だった3失点



この試合においては守備はおおむね機能していて決して金沢の脅威にさらされていたわけではありませんでした。しかしながらあまりにもイージーな失点を3つも重ねてはせっかくいい攻守を展開しても努力が水泡に帰してしまいます。前半終わり際のPKもかなり厳しいジャッジでしたが、不必要なプレーでしたし、2点目は単純なカウンターの処理ミス。3点目も低い位置でセーフティにプレーすれば何ら問題なかったところをひっかけられてカウンターで押し込まれて逆転を許す、と。自分たちでゲームを難しくしてしまった感は否めませんでした。ベースとなる堅守はあるのにもかかわらず、イージーな失点がかさんでいては順位の上昇の妨げになってしまいます。そのあたりも春先の水準に戻ってくることを祈るほかありません。




◎前半戦をふまえて後半戦に期待したいこと



長澤監督:最初にドッと重ねて、ただ戦力的な入れ替えとかいろんなことがあった中で、本当にリーグって厳しくて今現在で勝点10いくつだと別の戦いになりますし、ちょうどいいポジションというか、ファジアーノらしい。上から下を見下ろす戦いをしちゃうとなかなか力を出せないんですけども、われわれのポールポジションというか。やっぱり上にかかっていくチームがありつつ、近くに勝点差の近いチームがありつつ、常にチャレンジャーでいれるチャレンジャーポジションというか。いろいろ勝点を落としたりなかなか勝ち切れないことがあったんですけど、結局そこにいるので、ここから力の出しどころかなと。


この試合をもって前半戦21試合が終了。

岡山は 8勝7分6敗 勝点31 10位 で後半戦に向かうことになります。


第10節終了時の勝点が21。現在首位の大分の勝点が21試合で40ですから、第10節までは優勝ペースで勝点を積み上げることができました。

第11節~第21節までの勝点は10。これは現在19位20位に位置するチームと同じペース。ヨンジェ離脱後なんとか手を変え品を変えもがいてきましたが、11節から21節までの11試合は低迷を極めました。よそのチームのサッカーが固まってきたこともあり単純な競争力で劣ることが増え競り勝てなくなってきたことも大きいでしょう。この金沢戦はチョンボの多い試合でしたが、内容的には春先のサッカーに最も近い形をしているなと感じます。後藤圭太の復帰がチームのベースアップにつながっているようにスタメンクラスの復帰はチームを変えます。方向性のとっ散らかっていた岡山の迷走がようやく原点回帰という形で決着しようとしているのかもしれません。夏にはヨンジェの復帰もありますし、再び統一感を持ったチームになってほしいですね。迷いなきチームは強い。長澤ファジは強いときはとても強く、弱いときはとても弱いピーキーなチームがほとんどですが、もう一度トップフォームを取り戻せそうな下地はそろってきつつあると思います。可能な限り勝利を追求しより高い順位へとチャレンジしてほしいと思います。まだすべてが終わってしまったわけではありませんし、一つ一つの試合をしっかり戦っていくことでどういうサッカーを見せてくれるのかそれを楽しみにしています。




それではまた。




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