ボクの自殺日記
もう誰も信じられないので、僕は僕自身を殺すことにした。
『さようならみなさん。僕は僕自身で幸せになります』
置手紙を残して、僕は家を出た。所持金は一万円札が一枚、千円札が三枚、硬貨がいくつか。他に持っていくものはキレイなハンカチ、おばあちゃんからもらったビー玉、それと小学校の女の先生からもらった文鎮。それだけで十分だった。
まず、所持金で行けるところまでの電車の切符を買った。遠くならばどこでもいい。僕は各駅停車の電車に乗り込んでずっと遠くを目指した。できれば北へ、僕が僕であることを忘れられる場所へ。電車の中で他の乗客を見ているのが嫌だったのでずっと目を閉じていた。こんな惨めな姿を誰かに見られていると思うだけで体の芯から嫌な熱いものがこみあげてくる。それが吐き気やめまいに変わる日々が続いて、すべてが嫌になった。周りの誰も死なないなら、僕がいなくなるしかないじゃないか。朝から何も食べていないので時折気分が悪くなったが、誰の世話にもなりたくなかったのでずっと椅子に寄りかかって我慢をした。その苦痛ももうすぐ終わる。僕が僕自身を殺すのだから。
「ちょっと、どこから来たの?」
寝入っている間に気が付けば辺りは暗くなっていた。もう今日発車する電車はないらしい。駅員さんしか周りに人はいない。
「大丈夫です、構わないでください」
「ダメだよ、こんな時間にキミみたいな女の子がこんなところにいてはいけないよ」
そのまま駅員室に連れて行かれて、閉じ込められてしまった。財布を取り上げられて、名前と住所を知られてしまった。間もなく親がやってくるそうだ。
本当は誰もいない山の中で静かにしていたかったのに。
それか冷たい海の中に沈んでしまいたかったのに。
大人が全てを邪魔するんだ、だから信用できない。
僕自身も大人になんかなりたくない。自分が信用できなくなるなんて、耐えられない。
「出してくれよ、僕はもうどこにも帰る場所なんてないんだ」
「はいはい、そういう台詞は中学校を卒業してから言うんだね」
駅員さんは意地悪そうに笑った。汚い大人め。
僕は持ってきたキレイなハンカチを取り出して、いっぱい泣いた。
<了>
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