ジャンボタニシとキュレーション

 最近キュレーションサイトの不祥事が盛り上がっている。この辺は前から胡散臭くて嫌だったけど、ついにやっちゃけないラインを超えて大騒ぎになっている感じがする。あの大量生産された文体もAIが書いているのではと思うくらい似ていて伝えたいことがよくわからない。そして書いてあることはとにかく都合の良いことばかり。これは詐欺師の語り口に似ていると思っていた。そしてそれを指摘しても世の中は何も変わらないと思っていた。頑張れば変わるんだなあ。

 企業倫理とかもそうなんだけど、一番よくないのはそういうのを許してしまっているユーザーなんだろうなと思う。騙される人がいるから騙す人がいる。みんなが騙されなくなればそういう人はいなくなるけど、新たな騙す手口を考えたりより弱者に狙いを定めたりするからなかなか難しい。

 この出来事を見て思い出すのが、「ブログで稼いで自由な暮らし!」という奴だ。コロンブスの卵でそのようなビジネスを発明した人はスゴイと思うけど、それを真似して「俺もブログで大儲け!」みたいな人がウジャウジャ沸いたのはどうなんだろう。少し前までは「会社なんか辞めよう」というアプローチだったのが、最近は「就活なんかやめよう」と大学生がメインターゲットになっている感じはする。一昔前のカルト勧誘について指導があったように、最近の大学では「プロブロガーには気をつけましょう」とかプリントを配布しているのだろうか。したほうがいいと思う。

 キュレーションサイトもネズミ講ブロガーも、話を聞いてしまう人がいるから存在していた。そんな人を減らせれば少しは変わるのかもしれないけれど、できればまず振り込め詐欺がなくなっている。はてさて、どうしたらよいのか。

 こういう問題はインターネットなど情報網の普及で最近になって目立つようになった気がするけれど、意外と昔からある。昨日テレビで「ジャンボタニシ」について紹介していた。このジャンボタニシは稲を食い荒らす強力な外来種で農家が困り果てていた。ところがこのジャンボタニシ、どうやって日本に入って来たのかと言うと「タニシを養殖して高級食材として売ろう」という業者の甘言に乗った当時の農家が積極的に買っていたからだと言う。その後ジャンボタニシは売れず、養殖場から逃げ出したジャンボタニシが田んぼに潜りこんで大繁殖をしているのが現状だそうだ。本来なら外来種の問題なのだけれど、それ以外の問題もはらんでいる。

 随分と昔の話なのでそのタニシの養殖業者がどんな雰囲気だったのかわからないけれど、もしこれが現代の話だったらかなり胡散臭い話になっていたのではないだろうか。意外とタニシ業者たちは大まじめだったのかもしれない。ところが「儲けよう」と話しかけられる話はやはりあまり良い結果を生まない。タニシも悪い結果に終わり、儲けどころか未来の田んぼに大損害を与えている。

 この番組を見て最初に思い出したのが、一昔前「マングローブの森をエビの養殖場にするので出資しませんか」と声をかけて多額の金銭を騙し取った事件だ。そしてこの構図は現在「プロブロガーになって儲けませんか」になってきている。プロブロガーの部分はFXでもメディアクリエイターでもなんでもよいが、とにかく「甘い言葉」というのに触れる機会が確実に多くなっている。

 情報の養殖業者が撒いた外来種があっという間に正常な情報を駆逐してインターネットを荒らして回る。入ってくるのはあっという間だけど、駆逐するのは非常に大変なのである。そんなことを考えた。



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