音楽理論にハマってはいけない

「音楽理論オタクにはなりたくない」と、あるひとは言った。

数学者は、多くのひとが必要とするよりも多くの次元を扱う。それはもはや数学のためであって、ほかに役立てるための算術ではない。

音楽と音楽理論も似た関係にある。理論が扱う領域は、実際に在る音楽に対応するだけあるのではなくて、現実の制約が無い分広くなりうる。

それは確かに理論の延長であるが、必ずしも対応する音楽は存在しない。この乖離を防ぐか、せめて小さくするには、もちろん音楽をも扱うことである。あるいは、音楽で困ったときにだけ理論を顧みていれば、そのふたつは互いに周辺にある。

逆に、音楽の(現実的な)存在を問題にしなければ、理論はより“豊か”になる。音楽に依存しない理論は自立するだろうが、しかし、音楽とは分離し、間に溝を切るだろう。それを扱うのは、音楽家ではなくなる。

そのひとにとっての問題は実にこのことであるらしい。たしかにそうかもしれないが、本当は、私にとっては、どうだろうか。

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