さむねどくろ

髑髏城の七人 -廻り続ける物語-

「浮世の義理も 昔の縁(えにし)も、三途の川に"捨之介(すてのすけ)"!」

しびれ上がるほど、かっこいい名乗り。
これは『髑髏城の七人』という舞台の、主人公 捨之介のセリフです。

こんな、たまらなく最高の台詞が、とてつもない演技力の役者さんの口からバンバン飛び出し、とんでもない殺陣・アクションが繰り広げられ、そしてなにより、”人間の業”がこれでもかと詰め込まれた「物語」・・・。

すべてを揃えた、バケモノみたいな作品

それが、昨年3月30日に始まった、劇団☆新感線の舞台『髑髏城の七人』
1年と2ヶ月にも渡る公演が、先日、5月31日に終わりました。

ただし、同じ内容を1年以上続けていたのではありません。

『髑髏城の七人』シーズン花、鳥、風、月(上弦/下弦)、最後に
それぞれのシーズンによって、役者、登場人物、物語・・・様々な部分を変えながら、この舞台は演じられてきました。

私はシーズン鳥から観劇しはじめたのですが、それ以来、すっかり『髑髏城』に魅了され、その後の風・月・極・・・と、鳥以降の全てのバージョンを観ないと気が済まないほどにハマってしまいました。

一昨日、千秋楽。ライブビューイングで観てきました。
今、私の胸には「髑髏城、おわっちゃった」という喪失感と、「この1年、本当に楽しませてもらった」という感謝の気持ちの両方が溢れています。

とにかく、この魅力を、感動を、なんらかの形にしたい。
『髑髏城の七人』の凄まじさが、少しでも伝われば幸いです。

『髑髏城の七人』 -あらすじ-

自らを”第六天魔王”と名乗る苛烈な武将、織田信長が、家臣の謀反によって亡き者となった後。豊臣秀吉によって天下統一がなされようとしていた。
しかし、秀吉の手がまだ及んでいない、関東荒野にて、それぞれの信念を持ち、目的を果たそうと動く者たちがいた。

髑髏城に君臨し、鉄機兵二万人を率いて”関東髑髏党”と名乗り、天下統一を目論む、刀も銃も効かない無敵の鎧に身を包んだ「天魔王」
飄々とした態度でありながら、身のこなしはただものではない、関東髑髏党の野望を阻止しようと立ち回る「捨之介」
関東一の色里でありながら、女の意思が尊重され、弱者にも手を差し伸べることから救いの里と呼ばれる”無界の里”の主、「無界屋蘭兵衛」

髑髏城の絵図面を持つ少女、沙霧(さぎり)が鉄機兵に襲われ窮地に陥っているところに捨之介が現れ、無界の里へかくまうことで、物語は動き出す。

天魔王、捨之介、蘭兵衛。
関東荒野で、3人の男の因縁が混じり合う
捨之介は、天魔王の野望を阻止できるのか?
そもそも、彼らの因縁とは一体何なのか?

変わりゆくキャラクター

上に記した通り、『髑髏城の七人』は「捨之介・蘭兵衛・天魔王」という3人の男をメインとして、物語が展開していきます。
しかし、その性格は、シーズンごとに全く変わってきます。
(※役者さんのお名前、敬称を略させていただきます)

「捨之介」は、白い着流しで長髪をくくった色男、というのがデフォルトです。小栗旬、松山ケンイチ、福士蒼汰などなど、”イイ男”が演じることがほとんど。しかし、シーズン鳥では、”怪優”と評判の阿部サダヲさんが、黒装束の忍姿で、ひと味もふた味も違う捨之介を演じています。

「蘭兵衛」は、男でありながら妖艶で、立ち回りは鮮やかな色里の主。
そのため、女形で有名な早乙女太一、色気のかたまりの向井理、スタイル抜群な三浦翔平・・・と、見目麗しい役者さんが演じています。
しかし、シーズンごとに性格は苛烈であったり、さっぱりしていたり、これまた少しずつ違います。

なにより、シーズンごとに変化が著しいのが「天魔王」
”信長公の遺志を継ぐ”というのが基本コンセプトですが、その真意は各シーズンごとに異なります。本心から信長に心酔している場合もあれば、野心家として動いている場合もあったり・・・。
そんな癖の強いキャラクターを演じるのは、これまた癖のすごい役者さん。
表情豊かな森山未來、美で魅了してくる早乙女太一、憑依型役者の鈴木拡樹、などなど。シーズン風では、松山ケンイチが一人二役で捨之介と天魔王を演じます。体力どうなってんの!?

というわけで、一概に「3人の男」と言っても、その性格、見た目、細かい関係性は一言では言い表せないんです。各シーズンで全然違うので。

さらに、この「3人の男」という大筋すら覆していく。
それがシーズン極、通称”修羅天魔”です。

”修羅の女”と”天の魔王”

花鳥風月と変化を遂げていき、最後の最後に発表されたのが、シーズン極。

なんと、主人公「捨之介」にあたる人物が、女性になりました。
名前も「極楽」に変化。もともと極楽太夫というキャラクターは、無界の里の遊女として登場していたのですが、メインというよりはサブ的なポジションでした。それが今回、なんと主人公。
演じるのは元宝塚トップスター、天海祐希。女性ですが、もう、背が高い高い、スタイルすごい、足が長い長い。イケメンかつ美女です。

そして極楽太夫が野望を阻止しようと狙うのは「天魔王」。そこは変わりません。変わりませんが、演じるのは古田新太。ド渋い。貫禄がすごい。
歴代の天魔王とは一味ちがう、遺志を継ぐ存在とは別の「天魔王」です。

極楽と天魔王の関係性は、これまた今までの物語と異なっています。
3人の男の因縁が、今度は2人の男女の因縁へ。

今までの「男3人」の関係性もたまらなくカッコイイんですが、「男と女」もまた、別の趣があって、非常に素晴らしかったです。

とにかく”アツくて カッコイイ”!!

ひとまず『髑髏城の七人』の大まかな筋と、役者さんが”ヤバイ”ということについて述べてきましたが、まだまだそれだけじゃ言い足りない。

とにかく、登場人物全てが活き活きとしてカッコイイ!
例えばヒロインの少女、沙霧。彼女は、ただ守られるだけの子じゃありません。強い意思を持った、活発な、戦う女の子。ちなみにシーズン月では、霧丸という名前の少年になっていて、これまた最高です。
他にも刀鍛冶のヤバいオッサン、気高く美しい太夫、個性の強すぎる髑髏党の幹部たち・・・もうキリがない、全員が素晴らしいんです。

そして台詞回しと小道具
各シーズンで、捨之介の武器が違うんです。花では鉄扇、鳥では火薬、風は瓢箪、月では傘。それぞれ戦い方に差があり、名乗りの台詞も武器に合わせてちょっとずつ違います。
個人的には月の「虐げられた弱い人々の涙雨に差し出すため」という意味で傘を武器にしている捨之介が好き。バッと開いて撹乱するのもかっこいい。

天魔王の無敵の鎧も、デザインがシーズンごとに大きく変わっています。
華美だったり、無骨だったり、不気味だったり・・・。それぞれの「天魔王」の在り方にぴったりのデザインで、こだわりが感じられます。

で、そんな素晴らしい役者さんが、素晴らしいデザインに身を包み、演じる物語が、とにかく業が深い。
男3人の因縁だけでも十分に闇が深いのに、さらに沙霧や極楽太夫、3人を取り巻く人々の愛情が加わって、もう、観てると心が血みどろになる。
でも、そこがたまらないんですよ。

地獄みたいな状況でも、前を向こうとする、人間の強さが描かれている。
その姿の、なんと美しいことか!

本当に、心の底からかっこいい舞台です。『髑髏城の七人』。

舞台は廻り続ける

今回、『髑髏城の七人』が演じられた場所は、ステージアラウンドという、客席が舞台に360°取り囲まれていて、しかも観客席が回ることで舞台も動くという、なんかよくわからんけどとんでもないところでやっていました。

その特性を活かして、場面転換やら何やら、とにかく「なんだこれ!?観たことないよこんなの!!」という演出がバシバシ盛り込まれていて(自分の観劇経験が浅いだけかもしれないですけど)、非常に新鮮でした。

そもそも、私が『髑髏城の七人』を知ったのは、「ゲキシネ」という「劇団☆新感線の舞台映像を編集し、映画館で観られるようにしたもの」がきっかけでした。2011年に上演された『髑髏城の七人』、通称ワカドクロ。

実は『髑髏城の七人』は、1990年から始まり、それから7年ごとに上演されてきた、長い歴史を持った舞台なんです。
1990年、1997年 、2004年、2011年・・・そして、今回が、2018年。

では、7年後、『髑髏城の七人』は観られるのか?というと、脚本家の中島かずきさんが「今は、やるともやらないとも言えない」とパンフレットで答えています。作り手の方々の年齢を考えると、うーん、確かに。

自分としては「是非やってくれ!!」と、もうすでに7年も待ってられない気持ちですが、今はとりあえず、2017-2018年の"ドクロイヤー"をリアルタイムに駆け抜けられたことがたまらなく嬉しいです。

役者さんが発表されるたびに「うそ!?◯◯さんが✕✕の役やるの!?」と悲鳴をあげ、ライブビューイングに行っては「またとんでもねえ進化してた・・・なんだあの演出・・・」と足をガクガクさせながら帰路につく。
こんな経験は、そうそうないだろうと思います。

ありがとう、髑髏城。さようなら、髑髏城。
7年後でも、何年後でも、またいつか登城させてくれ!!!!!!

身も心も髑髏党員にされた、泥水でした。


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