僕が、人に会いまくった結果どうなったか。

ネット出身という肩書きの見た目があまり良くなかったため「趣味が多少高じちゃっただけで…」とへりくだる癖が付いてしまった僕は、他人に対して「ここをこうしたほうがいい」などと説くことが苦手だ。「お前はどの口で言ってるんだ」と言い返されたらひとたまりもない。

しかしもし誰かに、何か一つの案としての生き方を紹介するならそれは「たくさんの人に会うこと」だと思う。もし会う場所が無いなら自分で作るくらいに。会ってみて、自分以外の誰かの人生を聞いてみるとこれがまた面白いのだ。自分の生き方はまさにこれだと思う。

実家は、とにかく客の多い家だった。小学校から帰ると、いつも知らない誰かが家に居て両親と話をしている。ランドセルを置いて食卓に行くと、すぐに話に参加させてもらえた。それが一体誰だったのかは必要なく、ただその客に構ってもらえることがうれしかった。おそらく、この家庭環境は少し変わっていたと思う。

そんな子供が、今では、客を家に呼びまくる人になった。おそらく、今の僕の家に来たことのある人は200人近くになるだろうか。家の雰囲気を少し暗くして、料理を出して、酒を出す。そうして話してくれる色んな人生が聞けることがうれしかった。同時に「この人とこの人で話をさせたら、どんな話に発展するんだろう?」という、心の中だけでの”実験”をしてみるのが面白い。とにかく人のことにとてつもなく興味を持つ人間が僕だと思う。

そういえば、まだ僕が東京に住んでいない頃。つまりホテルで働いていた頃。最初のイベントを一緒に作ってくれた人が東京に住んでいたので、その人の家で鍋パーティーをしようということになった。そこにゴムさんが居たので、とあるベース弾きの子に電話をかけた。「会いたかったんでしょ?いま来てるよ、おいでよ」__スーツ姿のまま大急ぎで向かってきてくれたその子は、その後ゴムさんと一緒にHoneyWorks(ハニーワークス)というチームを作り出すことになるShito君で、その場には今ギターを弾いているOji君も居た。ついでに言うと、僕はそのHoneyWorksが始まった頃の一番最初のCDでピアノを弾いているのだ。そのつながりもあって、良く「ハニワのパーセンテージ(印税の意)がまだ入ってないんですけど」と言う冗談を今でも言い続けている。一昨年「CHiCO with HoneyWorks」のサポートで舞台に乗ったのは実に7年ぶりの「ハニワ案件」だったのである。

とにかく、誰かと会うことと、どこかにでかけていくこと。「ああ、あの時に動いていなかったら、今ここにいないな」と思うことが多いので、とても大事なことだと思う。

イベントを制作するようになり数年、少し落ち着いた頃に、とあるイベントへのお誘いを頂いた。小さなイベントスペースで、数人がかわるがわる、歌ったり、演奏したり…というライブとのこと。そこに出るリコーダーなど数人の伴奏を頼まれたのだ。都内の、とある市民会館的な建物の小会議室に行きリハーサルに参加したのだが、だいぶ遠い場所にあったので多少愚痴っぽくなっていたことと、チケットも売れたのは40枚程と聞いたこともあって、すごく正直なことを言わせてもらうと(もうその当時で1000人規模のイベントを作っていた僕は)実は、少しだけ、「僕がこんな小さいライブの伴奏かぁ」という軽いオゴリのような何かがあったのも今回に関しては隠さないで話す。頼んでくれれば、その時はなるべく出ることにしていたから。

そのリハが終わる頃に一人の男の子が声をかけてきた。「あの…もし良かったら、僕にも伴奏付けてくれませんか」_振り返るとそこには少しボーッとした、くせっ毛の子が立っていてこっちを見ている。「あ、別にいいですよ」と答え、結局2曲の伴奏をした。どうやら生のピアノで伴奏してもらったのは初めてだったようだ。とても喜んでくれていた。

その子とは、その後、今に至るまでずっと付き合いが続いていて、先日も伴奏を頼まれたので、OKした。

「そらる君…今回はお客さん何人なの…」「2日で4万人です」

8年前の、お誘いを断らなかった僕へ。

「すげーぞ、そいつ。」

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