界隈でライブが始まっていく頃の僕

まずは「ただの事務員」が「事務員G」になるところまでは話したわけで。ここまでは流れとして必要だったと思う。ざっくりあらすじを言っておくと、僕はそれから「この人たち(ネットで音楽を配信する人)だけでライブを作ったらすごく面白い」と思い、同調する仲間と一緒にライブを作り始める。もちろん紆余曲折あったので、その話だけでまた色々書けると思う。紆余曲折とかいう言葉でさらっと流しているが、その時はさすがに死ぬかと思った。

「ネット出身の趣味人間が、人様からチケット代を頂いて興行所得を得るなんてとんでもない!」派との苦しい戦いが少しずつおさまってくると、東京で、そして大阪で、と同系列のライブがぽつりぽつりと始まっていく。そうなると「初めて音楽イベントをやった事務員G」の名前はとても便利だった。

その頃行われていたライブの選曲は、主にアニメソングだったり、電波ソングだったりと、やはり少しやんちゃなニオイを残している感じで、リトル・アキハバラのイメージが漂っているものばかり。僕は「早く、もっと誰でも見に来やすいイベントを作りたい」と思うようになっていく。

僕は、あまりスタンディング…つまり立って見るイベントを作りたがらない。個人的に音楽も食事も、座って楽しみたい派なのだ。この頃のイベントはすべてスタンディング形式だったので、どこかホールを借りて、ゆっくり音楽を聴けるイベントを作りたいと思うようになった。

しかしスタンディング形式というのは作る側からしてみれば便利なもので、まずイスがいらないので狭い会場にたくさんの人を入れることができることだったり、客の多い少ないであまり見た目に変わりがないから心象的に楽だったり、一人に対して一つの席をあてがわなくて良いのでチケットの管理が楽だったりとか、いいことだらけ。ホールで着席でコンサートをやるのはなかなかに冒険だったのだ。

この時に作ったのが「アンプラグド・アフタヌーン(以下アンプラ)」というコンサートだった。出演者がスーツを着て出演するこの室内楽風のコンサートは、このシーンでは初めてだったろうと思う。子供の頃いわゆる”ピアノ坊や”だった僕はそういう風景のほうが見慣れていたし、安心できたのだ。この企画に出演してくれた歌い手は今はほぼだれもこの界隈にいないけど、たまにいまでもボードゲームをやったり、飛行機でバッタリ会ったりしている。

ホールを借りる際、ホールの担当者から「団体名はなんですか?」と聞かれたことがあり焦った。そんなものは存在していないからだ。とっさに作り出したのが「アンプラグドアフタヌーン実行委員会」という、それらしい委員会である。主催を「事務員G」と書いてしまうと、なんだか富が集中していくような感覚をかもし出す(実際にはどれも大赤字…笑)ので、うやむやにしたい時にこの名前は便利だった。実はこの名前は今でも使っていて、もし僕の企画した最近のイベントなりに来てくれた事がある方がいたら、チケットの券面に「アンプラグドアフタヌーン実行委員会」とおそらく書いてあるはずなので見てみてほしい。その委員会は、僕一人を意味する架空の団体なのだ。

さて、また話を大まかにすると、このアンプラの役目が終わろうとする頃が訪れる。次にもっとコンセプトを明確にしたものに時代がシフトすると考えていた僕は「ボカロP(ボーカロイドソフトを使って作曲をして作品を発表する人)一人の楽曲で構成されたイベント」というものを思いつく。刺激的な曲が多かったボカロ界隈の中で、そんなアンプラ感にマッチするボカロPがもし出てくれば企画してみよう…と考えている中で、40mPの曲に出会う。そしてとにかく「今まで自分はこういう事をやってきた。次に考えている企画にはあなたの曲が必要だ。」という事を説明して、ようやく首を縦に振ってくれた時は本当に安心した。

かくして「虹色オーケストラ(虹オケ)」のシリーズが始まり、1年か2年かをずらして、今度は星をテーマにしたイベントを…と2013年頃に始まったのが「Stars on Planet(スタプラ)」である。このスタプラシリーズはおかげさまで今でも続いているので、ご存知のかたもいらっしゃるかもしれない。

今後の僕の話の中で「あの時の」と前置きをしてから話すことが多くなるとおもう。これらは、そのために事前に説明しておくべき流れとしてざっくりと説明したものだ。なのでなるべく、誰誰と…というように人名を説明するのは避けた。これにより、今後はどの時代にも飛ぶことができると思う。

「事務員G」という名前を付されたのが2007年。つまり平成19年だ。つまり、平成10年代、平成20年代、平成30年代、そして令和元年代…と、なんだか長くなったなぁと思いつつも実際は10年ちょっとのお話。この間で、とても印象に残る出来事がたくさんあったので、少しずつ話していこうと思う。

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