見出し画像

「ワンス・アポン・ア・タイム」

「昔々あるところに、」で始まる物語を綴ることがすきになったのは、創作コスをはじめたこの1年くらいのこと。自撮り写真を載せることになんの抵抗も感じない人間だけど、自分の書いた小説や絵をだれかに見せることはとても恥ずかしく感じてしまう。

その時は、同調圧力がいい方向にはたらいた。創作コスの写真をSNSにあげるひとの多くが、60文字前後で物語の一部を写真に添えていた。森の奥の魔女が、とか、海の妖精は夜になると、とか、子供の頃に読んだ絵本のような物語を好きずきに綴っていた。わたしも、やってみてもいいのかな、と思った。みんなやってるし恥ずかしくないかしら、とびびりながら、どんなお話を紡ごうか、とてもわくわくしていた。

最初に作った物語は、盲目な白兎兄妹のすこし偏愛的なお話だったかな。

ぼくたちは、めがみえない。
なにもみえなくたって、おたがいのことは全部わかるんだ。
もう、いじわるなやつらも、きたないおとなたちも、ぼくたちはなにも見なくていいんだ。だから大丈夫、きょうも一緒に眠ろう、おねえちゃん。

秋には、少年たちの旅の物語を。
(ぼくらはあるいたまっすぐまっすぐのオマージュ)

ぼくらはあるいた、まっすぐまっすぐ。森の中をあるいていた赤毛の少年は、赤いお花を見つけました。少年が赤いお花を愛でているとある日、赤いお花は優しそうな青年に変身しました。2人は仲良く暮らしました。
ー青年のからだが枯れて消えてしまう、その時までずっとずっと。

春にはアリスとうさぎの物語を。

3番めのアリスはひどく臆病で、6番目のアリスはひどく乱暴で、
その次に来たアリスは、すぐに女王に殺されてしまった。
24番めのアリスは若き少年で、うさぎは初めて、アリスに恋をした。
どうか、このアリスは殺されませんように。うさぎは毎日、神に祈った。

病に蝕まれ眠りについた少女と、彼女を蘇らせる方法を探す骨董屋の青年の物語はすこし仄暗く、切ない。

店主は言った。
「…とある文献によると、愛する人の骨と人魚の涙、そして6番目に大きなあの青い星が巡ってきた時に死者はその眠りから覚めるらしい。
そんなお話に興味はあるかい?」
店主は続ける。
「…あるところに、収集すきな少年がいた。街の古書店においてある蝶の乾燥標本や、父の部屋の骨格標本は、少年をかれらの美しさで酔わせて犯して夢中にさせてしまった。そして幾年…少年は触れたものが骨になってしまう捕らわれていた。その呪いのせいで愛する彼女を失うなんて知らずにね…」

そして、今年の夏。
いちばん新しい物語、GoodBye,Neverlandがうまれた。

冬にはもうひとつ、夜に関する物語を紡ぐ予定だ。
(みんなの夜物語、たのしみだなあ。)

自分の好きなことをつづけて、自分の物語をすきになってくれるひとに巡り会えた。とても、幸運なことだなあ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?