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アサヒ、豪ビール事業買収について

はじめに

先日、アサヒグループホールディングスがビール世界最大手のABインベブから豪州ビール事業の買収が発表された。記事によると買収金額は約1兆2000億円と巨額買収であった。

日本企業による巨額買収がニュースになるたびに、買収金額が高すぎる等の論拠のない批評が飛び交う。確かに、約1兆2000億円という金額は巨額である。しかし、それが理論的に高すぎるかどうかの判断は理論的に可能である。今回は限られた資料からそれを推計したい。

限られた資料とは

ここで重要となるのが限られた資料のである。限られた資料は全てアサヒグループホールディングスのIRから取得することができる。

まず、アサヒグループホールディングスの有価証券報告書である。少なくとも直近から3期分取得をおすすめする。次に、今回の買収に関するプレリリースである。

今回はこの2つの資料を参考にしながら1兆2000億円という数字の妥当性を検証したい。

買収金額の妥当性

買収金額の妥当性だが、それは上記に添付したIR資料が重要な役割を果たしてくれる。まず、ABインベブの豪州事業のは2018年12期実績は、売上2294百万豪ドル、営業利益990百万豪ドル、EBITDA1075百万豪ドルという結果である。

つづいてアサヒグループホールディングスの有価証券報告書のポイントを説明する。今回、買収金額の価格の妥当性を判断することが目的であるため売上ボリューム等の数値を分析する必要性は低い。今回、重要な役目を果たす指標は大きく分けて2つ存在している。

まず、M&Aの指標としてポピュラーなEBITDAとEBITDA倍率である。次に、PBRとROE・PERである。これはあまりM&A指標ではあまりポピュラーではないが、指標としては非常に有名なものである。

今回、アサヒグループホールディングスの買収金額1兆2000億円という数字だが、アサヒグループホールディングスのEBITDA倍率が14.7倍であった。

単純に豪州事業のEBITDAが1075百万豪ドルにアサヒグループホールディングスのEBITDA倍率を乗した数値を日本円に換算した数字が約1兆2000億円である。これは単純に株主説明がゴリ押し範囲で可能な数値になる。また、アサヒグループホールディングスのPBRが2.02倍、ROEが13.3%、PERが15.2倍である。おそらく、ABインベブの豪州事業も近似値であると予測される。今回、そこまでの数値開示はされていないので詳細は不明だか‥。

つまり、1兆2000億円という数字があまりにも途方のない数字でいかにも高値掴みの巨額買収というイメージ方は付きまとうが、実際にはEBITDA倍率で判断すると既存株主に説明可能な範囲である。また、豪州事業のEBITDAから推計するNPVやIRRでは10年程度で回収できる計画ではないかと思われる。

終わりに

バリエーション評価は非常に賛否が分かれたり、時に評価者の感情によって判断してしまいがちである。今回も多くの金融機関や金融機関の従事者が割高な買収と考えている節がある。その人たちの何人が論理的なロジックに基づき判断しているかは分からないが、おそらく1兆2000億円という数字の上で踊っているだけなのだろう。

今回、限られた資料のなかで推測したものであり、およそ1兆2000億円という数字が途方もない数字ではなく、あくまでも理論的な範囲内に収まる数字であることを指摘した。

アサヒグループホールディングスはNPVやIRR等の数値を判断基準としていること祈りたい。

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