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エンタメ作りに使えるユーザーインタビュー心得・ノウハウまとめ #theguild_study

ボードゲームを作る方法はいろいろありますが、どんなデザイナーでも確実に行っており、かつゲームの質を圧倒的に向上させる工程があります。

それは「テストプレイ」です。
テストプレイとは、作ったゲームを実際に誰かに遊んでもらい、フィードバックをもらうことです。
テストプレイという名前でなくても、エンタメ全般で同じようなことが行われていると思います。

テストプレイをたくさん繰り返せば、どんなゲームでも絶対に面白くなります。

遊ぶ→フィードバック→修正→遊ぶ→フィードバック→修正…というサイクルで、最後にはつまらないところが無くなって、ゲームが良い感じになるからです。

この手法は『ジョジョの奇妙な冒険』第5部「黄金の風」に登場する警官の名台詞にも通じるものがあります。

大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている。
向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は犯人が逃げたとしても、いつかはたどり着くだろう?向かっているわけだからな・・・
違うかい?


ド正論です。かっこいい。しかし、目まぐるしいスピードで現実を生きる我々は、もうちょっとだけ効率よく「犯人探し」をしたくなります。ごめん、アバッキオ。僕らには、面白くなるまで無限にテストプレイをしている暇はないのです。人集めるのも大変だし。

つまり、数をこなすのは現実的ではありません。だったら、質を上げるしかありません。そんな時に、「これだ!」と思って参加を決意したのが「#01 THE GUILD勉強会 〜ユーザーインタビュー設計〜 @DMM.com」でした。

ユーザーインタビュー ≒ テストプレイ

この勉強会は、ITとDesignのスペシャリストチームであるTHE GUILDが、社内のメンバーやゲストスピーカーを講師を招いて、定期的に実施しているものです。

今回は、それを一般の人にも公開しようというアツい心意気で、DMM.com の本社にて開催されました。しかも無料。太っ腹すぎるので、次からは投げ銭システムがほしいところです。

ユーザーインタビューとは、サービスの作り手が、ユーザーから話を聴き、データだけからは読み取れない情報を引き出すことです。

そこで得た知見は、改善のために大いに参考になります。ユーザー視点に立ったサービスをつくるうえで、欠かせない工程と言えるでしょう。

これはボードゲームのテストプレイに通じるものがあります。ボードゲームは「ユーザーを楽しませるもの」ですから、ユーザー視点を欠いた時点で成立しなくなります。だから、どんなデザイナーでもテストプレイを欠かしません。

よってユーザーインタビューのことを学べば、それは自ずとテストプレイの学びにもなると考えたのです。

ユーザーインタビューをテストプレイに応用

結論から言いますと、僕の仮説は正解でした。ユーザーインタビューの心得・ノウハウを取り入れれば、テストプレイの質も間違いなく向上します。

今回は、弁護士ドットコムのデザインマネージャーである金子 剛さんが組織論で、DMM.com のUXデザイナーである西部 渉さんと伊藤 麻紀子さんがインタビューのノウハウの話でご登壇され、最後にTHE GUILDの深津 貴之さんとこばかなさんも交えて5人のパネルディスカッションで〆という流れでした。

すべてに学びがあったのですが、全体の様子が知りたい方はTwitterで #theguild_study を検索いただくとして、ここではボードゲームデザイナー視点で、テストプレイに取り入れたい心得・ノウハウをいくつかご紹介していきたいと思います。

・なぜインタビューをするのか(金子さん)
それは、他者視点でモノを判断できるようになるため、と金子さんはおっしゃっていました。

この考え方は、なぜテストプレイをするのかに通じると思います。
これは一度「ゲームを作って、それが全く売れずに在庫を抱えて、泣く」という経験をすると心から理解できると思います。そういう悲劇は、自分が作ったものの面白さが、自分では正確に判断できないことが原因で発生します

そこで、他者視点で面白さを判断するために、テストプレイをするのです。

・考えて分からないことは試す(金子さん)
ユーザーインタビューを推進する組織の定義として、これができることをあげられていました。

ボードゲームづくりでは、机の前で考えるよりも、作りかけでも遊んでみるほうが100倍くらい作業が進みます。「クソゲー」と言われることを恐れずに、とりあえず遊んでみるという精神が、テストプレイのあるべき姿だと思います。

・バイアスをかけずに問いかける(西部さん・伊藤さん)
ユーザーに質問する際、抽象度の高い問いかけをするよう心掛けているそうです。たとえば「レコメンドサービスつかいますか?」ではなく「賞品をどうやって探しますか?」という具合です。

前者のような質問をすると、ユーザーの回答を限定してしまい、思わぬ考えを見逃すことにもつながりかねません。

これはテストプレイ時にも心掛けたいところです。テストプレイでは、「説明書だけで理解して遊べるか」も試すのですが、そばにいると解説したくなってしまいます。
目的は、まっさらな状態で遊んで楽しいかどうかを試すことなので、余計な解説は禁物です。

・ノンバーバル(非言語)な部分を見る(西部さん・伊藤さん)
インタビュー時には、ユーザーの言葉の内容だけでなく、仕草や声の調子などにも気を配るそうです。目は口ほどにものを言うと言いますが、それらの情報も大事な材料になります。

テストプレイでは、この点は楽です。ゲームがつまらなかったら、大抵の人はちゃんと退屈そうな顔をしてくれます。その時はすかさず、「どこでめんどくさくなった?」「どこがわかりにくかった?」と訊きましょう。

・ユーザーの言うことが正しいとは限らない。キッカケくらいにとらえるべき(深津さん)
「お腹が痛いよ…先生、ぼくはガンかもしれない…」と患者から聞いただけで、じゃあ切開手術をして治そう、と考える医者はいません。ユーザーはここでいう患者みたいなものです。ユーザーは大事ですが、正しいとは限らないのです。

テストプレイでも同様です。一度遊んでくれた人は親切心から、ゲームの色々な改善アドバイスをくれるでしょう。そういうのをメモっておくのは大事です。しかし、実際に採用するかは別問題。「ユーザーはそこに物足りなさを感じた」くらいに認識しておく程度にしましょう。

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他にも、というか大体のお話はテストプレイに応用可能で、大変学びのある時間でした。ありがとうございました。

というわけで以上、 #theguild_study のレポートでした。定期的に開催されるとのことなので、次回も楽しみです。

★Twitterもぜひ。ボードゲームデザインのことなどをつぶやいてます。


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