名作ボードゲーム『ブラッディイン』の作り方を妄想してみる

ブラッディイン』というボードゲームが大変好きなので、それがどういう発想で作られたのか、妄想してみようと思います。UIトレースのボードゲーム版、みたいなイメージです。

目次

①『ブラッディイン』とは
②テーマだと思われる現実の事件とワクワク
③感情を再現するシステムとプレイヤーの体験
④総括

①『ブラッディイン』とは

『ブラッディイン』は、プレイヤーが極悪ホテルオーナーになって、泊まりに来た客を買収するか殺して埋めて、金を奪ってお金持ちになるゲームです。

日本では2015年末頃に発売された、比較的新しいゲームです。僕はパッケージデザインのイラストが好みだったために、ルールもロクに調べずに購入しました。

結果、大当たり。最近、拡張版も発売されたので即座に注文しました。

②テーマだと思われる現実の事件とワクワク

パッケージのイラストからも分かるように、本ゲームは明らかにアブストラクトゲーム(囲碁やオセロのようなテーマのないゲーム)ではないので、何かしらテーマ(元ネタ)があるはずです。

『ブラッディイン』では、それを比較的簡単に特定できます。パッケージや説明書のフレーバーテキスト(世界観や設定を書いた文)に、具体的な地名が書かれているからです。

そこは泊まったら最後、二度とチェックアウトできない宿屋だった…… 
1831年、フランス:アルデシュ県の片田舎にある小さな村、ペールベイユを、数多くの観光客や巡礼者が通り抜けています…… (Amazon商品ページより引用)

こちらにある「1831年」「ペールベイユ」という時代と地名、そして「殺人」というキーワードを組み合わせて検索してみると、ペールベイユ荘事件という、ドンピシャな事件がヒットします。

読んでみると、設定は『ブラッディイン』そのものであるけれど、もしかしたら冤罪だったかもしれないということもあって、なんとも後味の悪い事件。

ですが、『ブラッディイン』の作者の方はおそらくこの事件を知って、その恐ろしさにワクワクしてしまったのでしょう。そのワクワクを他の人にも味わってもらうべく、このゲームを開発したのだと思います。

素晴らしいのは、この事件(本当に事件だったとして。念のため)で誰が「ゲームをしていたのか」という点を的確に捉えているところだと思います。それはホテルのオーナーです。

このゲームでプレイヤーは、泊まりに来た旅行者を殺害する極悪ホテルオーナーになります。『ブラッディイン』はホテルオーナーがこうした悪行に取り組むにあたり、もっていたであろう緊張感、焦り、悦び…そんな数々の感情を再現しているのです。

③感情を再現するシステムとプレイヤーの体験

ペールベイユ荘事件をゲームにしようと思いついた時点で、素晴らしい企画なのですが、『ブラッディイン』はその事件に伴うであろう感情をシステムに落とし込む手腕が見事です。

前述の通り、プレイヤーは極悪ホテルオーナーになって、泊まりに来た客を買収するか殺して埋めて、金を奪います。

『ブラッディイン』では、これらのプロセス「買収」「殺害」「埋葬」に加えて埋葬場所の「建築」という4アクションを、いかなる手順で実行するかがキモになります(お金は「埋葬」して初めて手に入りますが、プレイヤーは1ターンに2アクションしかできません)。

多くのゲームでは、こうしたプロセスは省略されます。たとえば『ドラゴンクエスト』であれば、モンスターを「殺害」すれば、それだけでお金が手に入ります。モンスターを埋める場所や、埋め方を考える必要はありません。

でも、もし実際に何かや誰かを殺めてしまったとき、その処分方法や時間の使い方にかなり困るのではないでしょうか。

『ブラッディイン』のプレイヤーは、警察の捜査をかいくぐりながら、そんな困難を体験することになるのです。その緊張感は一度やるとヤミツキになります…。(完全に余談ですが、週刊ヤングマガジンで連載中の『マイホームヒーロー』はそこが詳細に再現されていて、だから面白いんだと思います)

事件で実際に発生していたであろう手順を適度な粒度で分解することで、適度に煩雑化し、行動にジレンマを生み出し、感情を再現するゲームにしているのです。お見事です。

④総括

『ブラッディイン』をプレイすることで、プレイヤーは「人殺しの煩雑なプロセス」を体験し、それに伴う緊張感や焦燥を感じることができます。

それらは、真っ当な暮らしをしていたら決してできない体験であり、知ることのない感情です。

作者の方はそれらの体験や感情をペールベイユ荘事件のあらましから妄想し、このゲームを作ったのだと思います。

僕がゲームを作る時は自分が何かに触れたときの感情を翻訳(直訳)しようとしますが、こんなふうに妄想で膨らませることでできるゲームもあるということですね。

その作り方、パクらせていただきたいと思います。ミヤザキ(@zakimiyayu)でした。

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