見出し画像

How to make『DEATH NOTE人狼』

チョコレイトさんとご一緒させていただき、『DEATH NOTE人狼』というボードゲームをつくりました。

殺人ノートの力で新世界の神になろうとするキラチームと、それを阻止しようとするLチームに分かれて戦うゲームです。

画像1

画像2

僕はルールデザインをお手伝いしました。企画の大枠はチョコレイトさんの方で作られていたので、ゲームルールのテキスト化や仕上げ、テストプレイなどをご一緒したかたちです。

DEATH NOTEは週刊少年ジャンプで連載されていた超人気作品で、『DEATH NOTE人狼』はそのボードゲーム化です。いちファンとしてめちゃくちゃ嬉しいお話だったので、よろこんでお受けしました。

このnoteでは、そんな『DEATH NOTE』のボードゲーム化にあたってのエピソードと、楽しんでほしいポイントについてお話します。

そもそもゲーム的な『DEATH NOTE』

『DEATH NOTE』は、そもそもゲーム的な漫画です。

物語は、名前を書くとその人を殺せるというノート(ルール)を、死神(ゲームマスター)がもちこみ、月くんやLたち(プレイヤー)がそれを巡って争うという構造です。途中で月くんが、“ノートのルールを書き換える”という反則技をやっていましたが、大枠そんな感じでしょう。

登場人物たちはルールに則って、「いかに自分の正体を相手に悟られることなく相手の正体をつかむか」という戦いをしていました。

だから『DEATH NOTE』をボードゲーム化するなら、人狼ゲームに代表される「正体隠匿系」と呼ばれるジャンルのゲームにしようと最初の段階で決まりました。

このジャンルでは基本的に、各プレイヤーが自分の正体を隠したまま、会話などで誰が敵なのかを探って自分のチームの目的を達成することを目指します。キラチームとLチームに分かれてノート争奪戦を繰り広げる『DEATH NOTE』にぴったりです。

構造は人狼、でも体験は『DEATH NOTE』に

ただ最もやってはいけないのは、『DEATH NOTE』という作品を使って、体験が『DEATH NOTE』ではないゲームをつくってしまうことです。

たとえば人狼ゲームと同じルールで、人狼の役職を示すカードにキラと書いて月くんの画像を貼り付けるだけでも『DEATH NOTE』のゲームです、と名乗ることは可能です。

それはそれで売れるかもしれません。ですが、購入した作品のファンは納得しないと思います。それは人狼ゲームの世界観に『DEATH NOTE』の世界観を後から乗っけただけのものだからです。

グッズは、大好きな作品の世界観に浸ることができるものであるべきで、特に自分自身がプレイヤーとなるボードゲームは、そうでないと興ざめしてしまいます。

多くの人に愛され続けている作品、それも自分たち自身が大好きな『DEATH NOTE』で、そんな事態を巻き起こすわけにはいきません。世界の中に入り込めてこそ、ゲームにする意味があります。

だから我々は既存の正体隠匿系ゲームに『DEATH NOTE』を乗っけるのではなく、『DEATH NOTE』の世界観を基礎にしてゲームを構築する必要がありました。

キーアイテムとキーアクションを決める

そこでまず決めてしまったのが、アイテムとしてノートが存在すること、そして、プレイヤーがノートに名前を書くアクションを入れることでした。打ち合わせを重ねて、これらがあれば『DEATH NOTE』のゲームになるという結論になったためです。

作中でノートをもっているキャラクターたちはみな緊張し、真剣になります。言うまでもなくキーアイテムです。キラたちからすればそれは殺人の証拠であり、絶対に見つかってはいけないもの。Lや警察たちからすれば、いかなる手を使ってでも押さえたいものです。

だからノートが自分の手にあるときの緊張感や、どこにあるのか分かったときの快感、うまく使えたときの「計画通り」感…それらを感じられれば『DEATH NOTE』の世界に入ったと言えるでしょう。そして、そのためにはアイテムとしてノートが存在することが必須でした。

加えて欠かせなかったのが、"名前を書く"という行為。『DEATH NOTE』はノートに名前を書くことに始まり、名前を書くことに終わる作品です。あれを見て、誰もが一度は誰かの名前を書いてみたいと思いますから(思いますよね?)、それを再現できることは必須でした。

幸い、ボードゲームには大喜利系のゲームなどでポピュラーな仕組みとして、小さいホワイトボードと水性ペンを使ったものが多くあります。それを利用することにしました。だからこのゲームには、何度も書いて消せるホワイトボードデスノートが入っています。

アイテムとしてのノートと、実際に書けるノート。この2つが決まったことで、"キラがノートをもっている時に、誰かの名前を書いて殺す"というルールが固定されました。

制作の過程ではなんどもプロトタイプを作りなおしてテストプレイしていましたが、しっかりまとまったのはこれが動かずに固まっていたからだったと思います。また、これらのおかげで完全にオリジナルのゲームになりました。

キラのときの緊張感、Lのときの責任感、警察のときの疑心暗鬼

最後に、『DEATH NOTE人狼』の楽しみ方について。ゲームの始めに、プレイヤーたちは“正体カード”と呼ばれるカードをうけとります。そこに書かれた内容に応じて、キラになったり、Lになったりします。その正体ごとに、違ったプレイ感覚を味わえるのが面白いです。

キラ陣営であればLを殺すのが目的で、L陣営ならキラを逮捕するのが目的となります。みんな、表向きは手札のアイテムカードを交換したり、他の人のアイテムカードを見たりと同じことをやるのですが、目指しているところが異なるのです。これも『DEATH NOTE』っぽいポイントでしょう。捜査本部の中で正体を探り合っていた、月くんとLみたいになれます。

キラになったら、どうにかしてノートを手に入れたいです。ゲーム中、ノートに名前を書ける時間があるのですが、その時にノートをもっていないとキラは他のプレイヤーを殺せません。ただし露骨にノートを取りにいくとキラだと特定されてしまうので、捜査しているかのようにノートを手に入れられると理想的です。時には疑いを避けるために、ノートを他の人に渡してしまうのもいいでしょう。ノートに名前を書く時の緊張感はたまりません。勝ったときは「計画通り」とニヤつきましょう。

Lになったら、誰がキラなのかをいち早く特定するのが大事です。キラを逮捕できるのはLだけだからです。しかし原作でも起こったことですが、核心に迫るために安易に正体を明かしてしまうとキラに殺されてしまったり、逆に自分がキラだと疑われてしまうこともあるでしょう。Lが殺されたらその瞬間にキラの勝利になるので、責任重大。しかしそのプレッシャーを乗り越えて、「あなたがキラです」と宣言して逮捕を成功させるのです。

警察になったら、Lのサポートをしていきます。Lしか使えないカードをLにパスしたり、キラにデスノートが渡るのを阻止するのです。警察自身が勝負を決めることはできませんが、キラもLも、警察プレイヤーの信用をいかに勝ち取るかが勝負のカギとなるので大きな役割を担います。キラを出し抜いて、「松田~!」と言わせてやりましょう。

ひとたび遊べば自分ができなかった役割をやってみたくなりますので、何度も遊べて、やるたびにドラマが生まれると思います。僕はテストプレイのとき、警察を全員欺いてLのプレイヤーをキラだと思い込ませ、本物のキラとして圧勝したのがめちゃ気持ちよかったです。

基本的にカードのやりとりで推理をはたらかせていくゲームになっているので、人狼ゲームのように巧みなトークスキルは必要ないのもポイントです。「『DEATH NOTE』は好きだけど、人狼ゲームは苦手で…」という方でも大丈夫です。僕もそうなので。ぜひ、遊んでみてください。


ナイスプレー!