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ボードゲームの企画が形になるときの、発想の飛躍の正体

企画が形になるときには、発想の飛躍があるもの。ですが、これを実行するのはちょっと大変です。

紙の上に文字で書いた概念を、触って動かせる物体にするわけなので、当たり前です。それはいわば、次元を飛び越える作業なのです。

それはボードゲームのデザインでも同様です。全体プロセスでいえば、下記の①と②の間にあたります。
そして大抵の企画は、ここで挫折(あるいは練り直し)することになる気がします。

①企画
↓ ←発想の飛躍が必要
②プロトタイピング
↕(繰り返す)
③フィードバック

④仕様決定・製品化へ

そこで今回は、発想の飛躍の正体を解き明かしつつ、それを高い確度で引き起こすためのフレームワークをご紹介していきます。

発想の飛躍の正体とは

先に答えを言ってしまうと、発想の飛躍の正体とは、「真似して、組み換えて、つじつまを合わせる」ことです。

よほどの天才ゲームデザイナーでもないかぎり、ゼロからイチで人を楽しませる仕組みをつくるのは無理です。

型なくしては、型破りもできません。茶道における「守破離」みたいなものです。何かを始める時は、型となる何かを真似するのが手っ取り早くて確実で、ゲームデザインでもそれは同じです。

【真似】既存のゲームをトレースする

というわけで、企画(なんのゲームを作りたいのか)が決まったらまず、「これをゲームにするとしたら、あのゲームみたいな感じだろうな」というゲームを探して、ルールをよく読んで、トレースしていきます。

たとえば、僕の場合は以前に「切り裂きジャック」のゲームを作ったのですが、それはそもそも、「ジャックと探偵に分かれて正体を探り合う」という企画でした。

そこで僕は、「人狼ゲームっぽいなー」と思いました。ここで「ぽいなー」をみつけるのが、とても重要です。

ちなみに「切り裂きジャック」と「人狼」ではなんとなく世界観が似ていますが、そこは必須ではありません。注目すべき点は、ゲームを構成する要素・システム(=部品)です。

「ぽいなー」を見つけるためにはまず、自分のゲームがどんな部品で作られるものなのか、ざっくりとしたイメージを浮かべます。

部品というのは、コンポーネント(コマやカード)といった形あるものから、ルールなどの形のないものまですべてです。

ホントにざっくりでかまいません。ここでのコツは、実際のルールは? コストは? といった実現性を考えないことです。

切り裂きジャックだったら、下記のような感じで出していきます。ふせん等を使って、時間を決めてどんどん書いていくのもいいでしょう。

「正体がわからない」
「ナイフ」
「人が死ぬ」
「ロンドン」
「徘徊する殺人者」
「人型のコマ」

「ナイフ」とか、ボードゲームに入ってたら作った奴は捕まりますね。でも、ここではとりあえず大丈夫です。

思い浮かんだら、それらの部品をもっているゲームをピックアップします。

知っているゲームがすぐに思いつくならそれでいいですが、そうでない場合は、JELLY JELLY CAFEのボードゲーム検索など、ネットの力を借りましょう。ゲームがタグ付けされているので、見つけやすいと思います。

そうして見つけたゲームのルールを読んでみましょう。実際のルールブックで読むのが望ましいです。

買うのはちょっと…という人は、ボードゲームカフェのJELLY JELLY CAFELITTLE CAVEにいきましょう。
ちなみに、いずれも多くのゲームを遊ぶことができる点は同じですが、前者は新宿・池袋・渋谷など多くの店舗があり、後者はご飯が美味しいです。お好みでどうぞ。

さて、ルールブックには、上記で挙げたようなゲームの部品が、有機的に連なっている(ゲームとして遊べる)状態で書かれています。この構造を理解するのが、真似をするということです。

【組み換える】ゲームの部品を抜き差しする

ルールブックを読んでそのゲームの有機的な連なりを理解できたら、それをまた部品に分解します。

【組み換える】とは、分解した部品のどれかを抜き取って、別の部品を入れてみることです。

たとえば人狼ゲームは下記のようにバラせます。ホントはもっとありますが、とりあえずざっくりです。

「狼」
「村人」
「正体がわからない」
「人が死ぬ」
「夜がある」
「相手を全滅させたら勝ち」

切り裂きジャックのゲームのときは、上記の「人が死ぬ」という部品を、「カードが死ぬ」に変えました。

「いやいや、それじゃあ、ほぼパクリじゃないか」と思われるかもしれません。ですが、これだけでバッチリ、オリジナルなゲームになります。

【つじつま合わせ】有機的な連なりを復活させる

何故なら、ひとつ部品を組み替えるだけで、もとの有機的な連なりは崩壊してしまうので、結局べつの方法で連なりを作り直さなければいけないからです。

具体的に言うと、切り裂きジャックのゲームを考える過程で、人狼ゲームで人が死ぬのをカードが死ぬようにしたら、殺害時の対象の指名の仕方や、他のプレイヤーがどうやって殺害者の情報を得ていくのかが変わります。

それを受けた上でゲームを成立させようとすると、結果、ゲームの様子は大きく変わります。有機的なつながりは、それくらい繊細なものなんです。

どうしても難しい場合は、入れ替える部品をまた考え直す必要も出てくるかもしれません。あるいは、元の連なりから不要な部品を削除することもあるでしょう。文章の推敲、編集みたいなものです。

これが、「つじつま合わせ」にあたります。そしてつじつまが合った(ように見えた)なら、そのときが、新しいゲームのプロトタイプの完成です。

おそらく、元ネタとは似ても似つかないゲームが出来上がっていることと思います。つまり、企画から発想を飛躍させて形にすることに成功したのです。

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とはいえ、これだけやっても実際に遊んでみると、またアラが見つかるものです。そのときはまた、パーツの入れ替えとつじつま合わせをしましょう。

一番大変なのは一回目なので、二回目以降は調整していくイメージです。ちょっと楽です。すると、いつかはちゃんと、遊べるゲームができあがります。

というわけで、ボードゲームの企画が形になるときの、発想の飛躍の正体と、それを高い確度で引き起こすためのフレームワークでした。
復習しましょう。【真似】【組み換える】【つじつま合わせ】です。ご活用ください。

とはいえ、身もふたもない話をすると、結局根っこにあるのは「真似するときに元ネタがどれだけあるのか」な気もしますので、やってみたいなと思った方は、まずはたくさんのボードゲームで遊んでみましょう!

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