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新しいゲームをつくる3つの入り口

ゲームの開発にはテストプレイが欠かせない。

というのも、①人は自分が作ったものへの評価が甘くなりがちで、②2人以上で遊ぶゲームは自分1人では面白いかどうかわからないからだ。

なので、最近開発している新作の「切り裂きジャックは誰?」も周りの人にテストプレイで協力していただいている。スペシャルサンクス欄が、アメリカ人作家の謝辞みたいになるくらいの人に助けてもらった。

テストプレイは実際にお会いして行うのだが、そこで最近よく聞かれることがある。

「新しいゲームってどうやって思いつくの?」ということだ。
僕はこれには、大きく分けて3つの入り口があると思っている。世界観・システム・感情だ。

まずは「世界観から思いつく」。
フィクションでもノンフィクションでもいい。自分がワクワクする世界や、出来事や、設定から考える。

今、僕が作っている「切り裂きジャックは誰?」はこれにあたる。

切り裂きジャックは、100年前のイギリスで実際に起こった殺人事件だ。殺害方法の残虐さと、結局“ジャック”が捕まらなかったというミステリー性から、現代でも広く知られている。

僕はたまたまWikipediaで記事を読んで、この不思議な事件を面白いと思ってしまったのだ。だからゲームにしようと思った。
また、国外で100年前に起こった殺人事件なのに、現代日本でも多くの人がその事件を知っているという点も、コンテンツとして魅力的だ。しかも著作権の縛りもない。
ロンドンを舞台にしたライトな「人狼」的正体隠匿系ゲームになる予定だ。

この作り方がうまくいけば、同じ世界観を面白いと思う人に興味を持ってもらえそうだ。

つぎに「システムから思いつく」だ。
早い話、世の中で運用されているシステムをパクるのだ。

そもそも世の中で運用されているシステムということは、一定の人を「動かしている」ということになる。
動かしているということは、動かしてしまうなにかがあるわけだ。そこにゲームがあるはずだ。つまり何らかのゲームが、人をモチベートしているはずだ。それをパクる。

たとえば、言わずと知れた名作ボードゲーム「カタン」はこれに当たると思っている。
カタンは、資源を集めてフロンティアであるカタン島をいち早く開拓することを目指すゲームだ。

未知の地をいち早く開拓したものが、その権利と利益を得る。というのは、現実にも通じるシンプルなシステムだ。

優れたコンテンツは現実を良くデフォルメしている、と川上量生さんが『コンテンツの秘密』で書いていたが、ボードゲームも全く同様だと思う。
現実のシステムを、デフォルメしてルールに落とし込むこむと、誰もが直感的に理解でき、かつ熱狂できるゲームになる。

それがシステムから思いつくということだ。

最後に「感情から思いつく」だ。
ゲームをプレイした人に、どういう気持ちになってほしいかを起点にするということだ。
これは上手く行けば、前者2つよりもいいゲームを作れると思う。

ゲームづくりに限らず、プロジェクトは目的に向かって進んでいくものだ。
このパターンはその目的設定が、「世界観」「システム」よりも、さらに一歩先に進んでいると言える。
なぜなら「世界観」も「システム」も、プレイした人の感情をつくるための装置だからだ。

だからプレイした人に「こういう気持ちになってほしい!」と思いついて、それが多くの人に支持してもらえるものなら、あとはそういう気持ちを生み出せる世界観とシステムを用意すればいい。間違いなくいいゲームになるだろう。

ちなみに前に作った「カルテカ」というゲームは、このパターンで作った。だからプレイした人は皆、好きになってくれた。
しかし、世界観の作り込みが甘かったからか、プレイ前から目を引くような魅力が足りず、手にとってもらうためにはプレイが必要、というハードルの高いゲームになってしまった。

ここまで書いたら自明だが、挙げた3つの入り口は、ゲームづくりの過程で結局、すべて通ることになる。
世界観も、システムも、プレイヤーの感情も、ゲームには欠かすことができないものだ。この話は、どれを起点に始めるか、というだけのことだ。

もし、ゲームを作りたいけど、どこから手を付けていいか分からないというときは、これらの入り口を切り口にしてみるといいかもしれない。

ちなみに話にあげた「切り裂きジャックは誰?」と「カルテカ」はゲームマーケット秋(12/2.3開催)にて販売しますので、よろしければぜひ。

所属サークル「東京ゲームメイカーズ」のページです。
http://gamemarket.jp/booth/gm2379/

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