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「感情を翻訳してゲームをデザインする」プロセス その3

ゲーム作りは、ワクワクする世界観を他者に伝えるための手段である。

ゲームを通せば「●●っていいよね」ってことを、そう言わなくても、楽しみながら知ってもらったり、感じてもらえる。とりあえず今はそれを目指してゲームを作っている。

というわけで、いままでそういうゲームを作るプロセスをまとめてきた。いまのところ書いてきたのは下記のような感じだ。

①世界観を見つける
②世界観を調べる
③世界観を分解する
④世界観を咀嚼する-1

その1(①~③) その2(④-1)

④世界観を咀嚼する-2

前回は「正体がわからない」という要素を表現している『人狼ゲーム』からパクって、「切り裂きジャックの行動時に他のプレイヤーに目をつぶってもらう」「伏せた役割カードを配って役割を決める」というシステムを作った。

続いて、他の分解した世界観も咀嚼していく。()内のテキストはそのネタ元である。

・正体がわからないところ
 →「目をつぶる」「役割カードを伏せる」(人狼のパクリ)
・捕まっていないところ
 →「お互いの役割はわからない」「切り裂きジャックは殺人をやめない」「切り裂きジャックはなんらか証拠を残しながら殺人を犯す」(人狼のパクリ)
・犯行が真夜中に行われているところ
 →「ゲームが昼と夜に分かれて進行する」「切り裂きジャックは夜に動く」(人狼のパクリ)
・ロンドンで行われた犯行であるところ
 →「デザインはロンドンっぽくする」(個人的なこだわり)
・イメージ画像の雰囲気が良い感じであるところ
 →「デザインは当時(1888年)の雰囲気を再現する」(個人的なこだわり)

つまり、ほぼ人狼である。
「切り裂きジャック」の世界観は、人狼とよく似ているということがわかった。もはや切り裂きジャックのデザインを載せた「人狼ゲーム」でも作ればいいじゃないかという感じである。どうしようか。

⑤世界観を補強する

「人狼ゲーム」の丸パクリはさすがにどうかと思う。しかし「人狼ゲーム」に似ているという発見は利用することができる。

というわけで、次に踏むべきは「人狼ゲーム」の要素を「切り裂きジャック」の世界にアレンジして逆輸入するというステップだ。人狼ゲームをベースにしつつ、その要素を変えると言い換えることもできる。するとまったく別のゲームができるのだ。
ちょうど、「10+10×10」という数式に () を加えるだけで「(10+10)×10」となって答えが全然変わるようなイメージだ。

そのためにはまず、「切り裂きジャック」の世界観を洗い出したように、「人狼ゲーム」を分解しなければならない。本noteの②~④をまたやることになる。やり方は同じなので詳細は割愛するが、僕はキーとなる下記の要素を発見した。

プレイヤーは探偵役であり、被害者役である。

人狼の面白いところだ。「人狼ゲーム」ではプレイヤーは人狼にならない限り、人狼を探す探偵役(ゲーム内では”村人”や”市民”と呼ばれる)であるのと同時に、人狼にかみ殺される被害者になる可能性がある。これがゲームに緊張感を与え、プレイヤーが真剣に考える意味付けになっていると思う。

しかしこれは、デメリットにもつながる。人狼にかみ殺されて被害者になってしまったプレイヤーは、そのゲームにそれ以降、参加できなくなってしまうのだ。それはちょっと、つまらないところだ。

だからこの部分をアレンジすることにした。こういうときは「オズボーンのチェックリスト」が役立つ。基本的なアイデア出しのパターンが網羅されているリストだ。もしご存じなければ、ググるか、『考具』や『アイデア大全』などを読もう。

今回はそのなかの「逆転」を使用した。「プレイヤーは探偵役であり、被害者役である」を「プレイヤーは探偵役であり、被害者役ではない」とした。つまり、プレイヤーは死なない(=脱落しない)システムにしようということだ。
実際の切り裂きジャック事件でも被害者は娼婦に限られており、警察関係者などの捜査をしていた人が被害に遭ったという記録はない。だから、このシステムは切り裂きジャックの世界観にも転用できる。

これを加えると、ゲームの概要がぼんやりと見えてきた気がする。

「目をつぶる」「役割カードを伏せる」「お互いの役割はわからない」「切り裂きジャックは殺人をやめない」「切り裂きジャックはなんらか証拠を残しながら殺人を犯す」「ゲームが昼と夜に分かれて進行する」「切り裂きジャックは夜に動く」「デザインはロンドンっぽくする」「デザインは当時(1888年)の雰囲気を再現する」「プレイヤーは探偵役であり、被害者役ではない」

ちなみに、④の時点で様々な要素の組み合わせが思いついたなら、⑤のプロセスは不要だ。その時点でオリジナルなゲームはもうできつつある。

今回は、人狼ゲームに似た感じになるのは間違いなさそうだ。あとは、最後のシステム「プレイヤーは探偵役であり、被害者役ではない」をどう表現するか。それが決まれば、ゲームはできたも同然である。他は人狼ゲームと同じでいいからだ。

またしても続く。次は、オリジナルなシステムを、どう表現するかを書く。

その4

ナイスプレー!