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ボードゲームのボードの世界観を構築するプロセス

タイムトランクマン』というボードゲームをつくりました。11/24のゲームマーケット秋2018で先行販売します。

下記のようなストーリーのゲームです。

タイムマシンの運用が始まってしばらく経った22XX年。

プレイヤーは、民間時間移動企業「タイムトランクマン」のエージェントとして時間移動をしながら、現代では失われてしまった貴重な遺物(ロスト・トレジャー)を回収するミッションに挑みます。

いち早く、多くのロスト・トレジャーを集めた人が、No.1エージェントです。

「タイムトラベル」と「トレジャーハント」という、ワクワクとワクワクの掛け合わせから企画しました。制作は、東京ゲームメイカーズの4人チームです。

僕はマップの設定や、ロスト・トレジャーの設定を決めました。つまり、ゲームの遊び方である「ルール」と、ゲームの見え方である「デザイン」をつなぐ、「世界観」担当です。

本noteでは、そんなゲームの世界観、とりわけ、舞台となるゲームボードをどのようにして構築していったかをお話します。

どの時代の、どこを舞台にする?

まずは『タイムトランクマン』の、完成したゲームボードをご覧ください。

江戸、東京、ネオ・トーキョーの3時代分あります。各時代によって行ける場所や繋がっている道が異なっています。

このゲームではタイムトラベルというアクションを、プレイヤーのコマがこれらのゲームボード間を移動することで表現します。1つのゲームに3つのゲームボードがあるというのは、なかなか珍しいかもしれません。

タイムトラベルをテーマにするとき、まず重要になるのが、「どの時代のどこを舞台とするか」という点です。まじめっぽく言うと、2次元と4次元における座標の決定です。

タイムトラベルをする、といってもそこはアナログなゲームですから、自由にいろんな時代・場所に移動できるようにするわけにはいきません。そこで我々はまず、時代を3つに絞ることにしました。

思い返せばこれは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の影響が大きそうです。かの作品では、1と2で現代(1985年)の前後30年に移動し、合計3時代を描いていました。タイムトラベルのワクワクは、それで十分すぎるほど描かれていました。

またポイントなのは、主人公たちがいた2次元的座標が、意外にもあんまり動いてないところです。だいたいヒルバレーにいます。でも、場面転換はすっごくダイナミックです。こういうゲームになればいいなと思いました。

このアイデアが起点になって、『タイムトランクマン』は、3つのボードを使うゲームになりました。

こうして、2次元的にどこを舞台にするかを決めて、その場所でワクワクする3つの時代を探すことにしました。

ただ我々は「3つのボードを使う」というアイデアにエキサイトしていて考えがいたっていなかったのですが、3つのワクワクする時代を有していて、かつそれが現代からリサーチしうるという座標はそんなに多くありません。

加えて、プレイヤーがワクワクするためには、ある程度、想像のつく舞台を用意する必要があります。

惑星ナントカを舞台にして、惑星暦19800年を起点に、前後10000年へとタイムトラベルする、でもいいんですが、プレイヤーを選ぶゲームになってしまうと思いました。オリジナルの設定でもゲームのシステムは楽しんでもらえるかもしれませんが、ストーリーへの感情移入が難しいのです。

そうしたいくつかのアイデアを削除して、最終的に決まったのが東京でした。

東京は、タイムトラベルモノの舞台にGoodな座標

東京はすごい場所です。世界中の誰もが知っていて、変化スピードが早くて、資料が沢山手に入ります(重要)。

日本全体を舞台にするというアイデアもあったのですが、範囲が広すぎるし、某電鉄じみたマップになりそうなのでやめました。

東京と決まったら、現代の「東京」を基本マップとして、その過去は「江戸」になります。そして未来は「ネオ・トーキョー」としました。未来の東京といえば『AKIRA』だからです。異論はありませんよね。

具体的な時代は前後150年くらいのイメージです。かっちり決めると、大河ドラマみたいにきっちり詰めなくてはいけなくなるので、ざっくりです。

そんな考え方で出来上がったのが、先のマップです。

各地のイメージについては、江戸と東京は主に地図アプリ「大江戸今昔めぐり」を頼りました。

現代のマップの上に江戸時代のマップを重ねて見られるという歴史マニア向けアプリなのですが、非常に役立ちました。江戸城の外堀と内堀がどこにあったか、などが一瞬でわかります。

ネオ・トーキョーは『AKIRA』や『ニンジャスレイヤー』のテンションを参考にしてオリジナルの設定を考えました。キーワードは、荒廃と享楽です。

紙幅の関係で説明書には入れられなかったのですが、各地の設定テキストも全部作りました。たとえば、未来の新橋はこんな感じ。

ニュー・シンバシアイランド
海面上昇により、かつての新橋は海の底に沈んでしまったが、ニュー・シンバシアイランドという名で労働者の複合慰安施設になっている。

ただ、具体的なボードのデザインを指定するときには助けになったので、作っておくのは大事です。見た人が「なにかありそうだぞ」と興味をもてるデザインには、そうした裏側のストーリーが用意されてることが多いですし。

というわけで、『タイムトランクマン』のゲームボードのメイキングでした。

ゲームマーケットにいらっしゃる方は、事前の予約もしてますのでぜひ。今後、小売店でも販売予定ですが、会場限定でかなりお得にお求めいただけます。

『タイムトランクマン』ルールの製作秘話はこちら!


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