『3月のライオン』が教えてくれた、初心者に「楽しく学んでもらう」レクチャー法

『3月のライオン』という超いいマンガがあります。
そのコミックス2巻に収録されている Chapter.15「将棋おしえて」という話が、初心者に「楽しく学んでもらう」レクチャーの方法を学ぶのに超参考になるので、ご紹介します。

「将棋おしえて」は、プロ棋士である桐山くんが、いつもお世話になっている川本家のひなちゃん(中学生女子)とモモちゃん(幼稚園児女子)に、将棋を教えることになるというストーリーです。そこに桐山くんの友達である、同じくプロ棋士の二海堂くんが合流し、レクチャーが始まります。

「ダメな説明」の見本のような桐山くん

川本家のちゃぶ台を4人で囲みながら、桐山君のレクチャーが始まります。

えーとですね…シンプルに説明すると…このタテ9×ヨコ9の81マスの盤の上で、お互い8種類20枚ずつの駒を使い、駒を取ったり取られたりしながら、相手の「王様」を捕まえるゲームです。
先に指す人が「先手」、後に指す人が「後手」と言って、交互に一手ずつ指していきます。8種類の駒はそれぞれ性格が違って、動ける範囲が異なります。味方の駒がいる場所には進めません。
ちなみにこのタテの列が「筋」、ヨコの列を「段」、通常ヨコを算用数字、タテを漢数字で記します。――で、マス目には1つずつ住所があって…

超ヤバイ説明です。どこが “シンプル” だ…。

”ミスター” 長嶋茂雄氏はバットの降り方を指導するときに「球がこうスッとくるだろ!」、「そこをグゥーっと構えて腰をガッとするんだ!」、「あとはバァッといってガーンと打つんだ」と言ったそうですが、それ以上にヤバイ。

一つも間違ったことは言っていないのですが、これでは「将棋というゲームの遊び方説明」ではなく、「将棋という作業の仕様説明」です。

一番の問題は、これを聞いたひなちゃんたちが「難しそう…」となってしまったところ。何かを学習しようとするとき、こうなってしまうのは、脳にとってよろしくありません。

隣にいた二海堂くんがいいことを言っています。 ”ああいう風になると緊張して、頭に入りにくくなってしまうんだ。それじゃあ、もったいないだろう? 最初のイメージだけでもつかみやすくしないと…”

お手本のようなレクチャーの二階堂くん

「じゃあどうするのさっ」

ダメ出しに凹む桐山くんからバトンタッチをうけ、今度は二海堂くんが説明します。これが本当にすばらしい。

まず二海堂くんは「将棋はじめて絵本」なる絵本を取り出します。そこには将棋の各駒が、擬人化ならぬ擬ネコ化(?)された「ニャー」のイラストが描かれています。

将棋っていうのはこんな風に、8種類の性格の違うコマを動かして、相手の「王様」を捕まえるゲームなんだ☆

言っていることは桐山くんと同じなのですが、親しみやすいイラストが加わったことによって、女子2人は俄然興味をもって聞き入っています。絵本を広げながら、二海堂くんの説明は続きます。

ゲームはこの9×9の81マスの上でやるんだ。手前の3段が自分の国(自陣)、むこうの3段が相手の国だ(敵陣)
さあ、では次は――1人1人のニャー達の性格を紹介するぞ

ここで注目してほしいのが、将棋の専門用語を巧みに言い換えている点です。

自陣   → 自分の国
敵陣   → 相手の国
将棋の駒 → ニャー

プロ棋士であれば、普段将棋の話をするときは、絶対に将棋の専門用語を使っているはず。ですがここで二海堂くんはそれらを使いません。

イラスト・言葉ともに、ひなちゃん達に合わせたコミュニケーションを心がけています。すると当然、理解もしやすくなるし、「おもしろそう!」と興味をもってもらえます。

こうしたレクチャーの甲斐あって、ひなちゃんたちは無事、将棋を学び始めることになる…というのが「将棋おしえて」なのでした。

でも、桐山くんだって良い奴なんだ

とはいえ、桐山くんもまるっきりダメというわけではありません。最後にフォローしておきたいと思います。

今回、桐山くんはひなちゃんたちに将棋を教えるのに先立ち、将棋会館で将棋セットを購入しています。その時の考え方が、大変すばらしいものでした。

木製よりビニールマットの方がいいかもな。お茶の間のちゃぶ台の上にのせるわけだから。
で、駒も気軽に扱ってもらえるようにこのプラスチックのがいいかも。モモちゃん、牛乳とかよくこぼすし…

こうした配慮ができるのは、日々、川本家にお世話になっている桐山くんだからこそ。大好きな人たちの将棋体験を、より良いものにしようとしていることが、よく伝わってきます。

説明はヤバかったけど、やっぱり桐山くんは、良い奴です

というわけで将棋をはじめとするボードゲームの最初の説明はもちろん、新しい仕事や作業のレクチャーでも、二海堂くんの語り口や桐山くんの取り組み方を、参考にしてみるといいんじゃないでしょうか。

ちなみに、今回ご紹介したお話が収録されている『3月のライオン』2巻はこちらです。ぜひ読んでみてください。

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