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「感情を翻訳してゲームをデザインする」プロセス その4(最終回)

ゲームは感情を翻訳して作る。

自分がなりたい気持ちや他人になってほしい気持ちが先にあって、それを再現するためにゲームがある。

そんなゲームができるまでのプロセスを追う話の第4回目。これが最終回になる。
前回までの話は下記のような目次。

①世界観を見つける
②世界観を調べる
③世界観を分解する
④世界観を咀嚼する
⑤世界観を補強する

その1(①~③)
その2(④-1)
その3(④-2〜⑤)

⑥世界観をシステム化する

人狼ゲームをベースにすることで、「切り裂きジャック」ゲームの概要は大体見えてきた。

あとやらなければいけないのは、人狼ゲームにない部分である「プレイヤーは探偵役であり、被害者ではない」をどうゲームに落とし込むかである。

今回はオリジナルな部分がこれだけなので、ここだけ決まれば、オリジナルなゲームができあがる。

というわけでまずは分解。
1.「プレイヤーは探偵役である」
2.「プレイヤーは被害者ではない」

1は「役割カードを配布する」というルールで達成できる。人狼ゲームと同じだ。

問題は2である。これも分解してみる。2パターンのアイデアがあるだろう。
2-1.被害者が出ない
2-2.被害者が出る

2-1は、プレイヤーを殺せないなら、いっそ被害者が出ないようにしてしまえばいいという発想だ。しかし、これだと今度は切り裂きジャックになったプレイヤーが何をすればいいのか分からないので却下。
2-2の方向性で考えるのが良さそうだ。

やっぱり、誰かを殺す必要がある。でも殺していい人はいない。どうするか。

答えは「殺していい人を用意する」だ。人がだめなら、別の何かに死んでもらえばいい。ゲームならいろいろやり方があるが、今回はカードに死んでもらうことにした。

この飛躍を起こすためには、人狼における「殺す」の楽しさを理解する必要がある。理解してその楽しさを再現できれば、やり方は別でもいいというわけだ。

僕は、人狼ゲームで殺すのが楽しいのは、対象が人だからとは限らないと思う。
もちろん、自分が人狼のとき、余計な推理をいい気になってしゃべくる探偵もどきを無言退場させてやれたときは気分がいい。けれど本当のハイライトは、夜のターンに目を開けて、そいつを指名した瞬間じゃないだろうか。

こっそりと、気付かれないように、悪いことをするという快感。それが人狼ゲームの「殺す」楽しさなのだ。

「切り裂きジャックは誰?」ゲームでは、夜のターンに切り裂きジャック役が、フィールドを表現するカードをこっそりひっくり返す。
すると、なんの変哲もなかったはずのフィールドに、無残な姿となった遺体が登場する。これがカードに死んでもらうということだ。

これでゲームの大枠は出来上がった。あとは咀嚼した他の世界観も同様の手法でシステムに落とし込んでゆき、「プレイヤーが何をするか」「すると何が起こるか」と「どうすれば勝ちか」を決める。

その後はテストプレイを繰り返してバランスを調整し「おもしろい!」となればゲームはできあがりだ。完璧は目指しすぎないほうがいい。

全体を通して見てみると、やはりゲーム作りで一番大事なのは、最初に自分がワクワクする世界観を発見することだ。
ワクワクを見つけることと比べれば、あとのプロセスは作業と言えなくもない。

なぜなら「ワクワクする!伝えたい!体験してほしい!」という気持ちがなければ、こんな面倒なことはやってられないからだ。逆にそれだけあれば続けられる。
だからもしゲームづくりをやりたくなったら、まずは自分がちゃんとワクワクできているかを確認するのがいいと思う。以上です。

ナイスプレー!