2022年4月11日 奈良クラブ 0-1 FCマルヤス岡崎 感想

今期5節目での初の敗戦がロートフィールド奈良で起きてしまった。この敗戦の意味は選手や監督は当然のことながら、スタッフや奈良クラブに関わる全ての人達が重く受け止めている。しかし、昨年のJFLを見てみると優勝したいわきも3敗はしている。ここではあまり悲観的になり過ぎるのは良くない。そのように陥らないためにも、客観的にこの岡﨑戦を分析する必要がある。それでは、どうして奈良クラブは岡﨑に敗戦してしまったのか。結論からいえば、岡崎が堅い守備を献身的に90分間絶え間なく行っていたからだ。それをここでいくつか挙げてみる。


6分、右サイド攻略CF降りてワンツーも相手に寄せられ合わずカットされる

10分、相手に前プレでパスミス誘導 こぼれ球右WG前向きで取るも、相手プレスあい前方へスルーパス出せず後方の右IHへ その後左サイド展開するも左WG孤立し相手2人に囲まれライン割る

14分、相手のスルーパスに左ポケット取られるもながれ球を右WG取り前へ運ぶ 右IHへパス 相手4人に囲まれながらも前へ運ぶ 右WGへリターン返すも相手のマークにタッチラインへ

18分、GK→左SB→左IHは後ろ向きで貰うも相手のプレスにボールを出せずずるする下げられGKへ

19分、相手のスルーパスもGK→左SB自陣から相手陣内まで相手2人に寄せられるもドリブル 相手にCFへのコースを切られる 右サイドへパスするも相手にクリアされタッチラインへ 

21分、センターサークル付近で左CB→左SB前へ運ぶ 左WG中へ入る 後方の左IHサイドへパス→右IH横パス→左IH相手プレスでパスミス CF裏狙うも来ず

29分、左サイド深く攻める フリーの左CBが前向きでボール受けるも相手にパスコース消され後方へ運び右SBへ。その後相手プレスに右CBまで下がりGKへ フリアン監督怒る

37分、センターサークル付近でCH→左SB 左SBは左WGとワンツーで飛び出したが相手にパスカット 空いた左SBのスペースを相手に使われカウンターを受ける

46分、右CB→右SB→CFレイオフしてリターン→相手スライディングで右WGパス受けれずタッチラインへ

46分、右WG→CF→左WG 相手1人マークに裏を狙うCFと左IHへスルーパス出せず その後2人に寄せられ後方の左SBリターン→左WG相手1人マークに、裏狙うCFや左IHへのスルーパス出せず 3人に囲まれ後方の左SBへバックパスも相手にスライディングでパスカット

47分、右IH→左WG CF裏狙うも相手に寄せられ後方へパス

52分、左CB前方のスペース使えず その後相手2人に寄せられ前方にパスするもそのスペースに入っていた相手にインターセプトされ相手のカウンターへ

54分、左IH→左WG前へ運び前方の右WGへパスも相手2人に潰される

56分、左サイド攻略するも右IHが相手に囲まれファールする

64分、左SB→左IHへパスも相手に取られ空いたスペースを使われる

71分、左SB前へ相手陣内まで運び→左WGドリブル 後方で左IHフォロー 左SBへリターンも相手にマークされゴールラインへ

75分、左サイドリスタート後 CH前方向く相手マーク離れていてほぼフリー 相手パスコース消し受け手をマーク 後方左CBへバックパス リターン後相手に詰め寄られ左SBへパスもカットされカウンター受ける GK1対1も防ぐ

このように、数々の奈良クラブがデザインしたビルドアップに対して、岡﨑はことごとくそれを潰しているのがよく分かるだろう。岡﨑はポジションチェンジを数多く繰り返すが、攻撃時も守備時も基本フォーメーションは、概ね多くの選手が慣れ親しんだ4−4−2のため、ネガティブトランジション時にポジションを変更しなくても、ボールホルダーに近い選手がプレッシングをかけ、その他の選手は即時帰陣して瞬時にそこを起点に密集隊形を形成できる。そして、ボールホルダーからボールを奪うことを最優先にして、そこでボールを奪えるや否や1人2人と奪いにいく。と同時に、その他の選手も連動し合いながら、相手選手に、執拗なマーク、パスコース消し、インターセプトなど規律が整った、まさに集団行動に秀でる日本人が得意とするコンパクトな守備を行ってくる。これはHondaFCの元監督であった現在の岡﨑の監督の十八番の戦術そのものである。このある意味においては単純明瞭な戦術は、ポジショナルプレーを用いた現代フットボールの最先端の欧州思考と比べれば、選手達に理解させることは容易なことかもしれない。しかし、この戦術を試合で体現するためには、毎日の繰り返し行うハードな実戦形式の過酷な練習あってこそのものである。頭で理解するよりも体が先に動くという極限の状態まで仕上げなくてはいけない。それもまた日本人に合っているように感じる。

ところで、この岡﨑の強固な守備をかいくぐってゴールを奪うためには、1.個の力 2.逆サイド攻略 3.ロングボール活用 4.素早い攻撃の4点をまず思いつく。1については日本代表レベルの選手か外国人選手を連れてくる必要になるため現実的ではない。2の逆サイド攻略については…


1分、自陣左ポケット こぼれ球を左IHが取り右SBへサイドチェンジ 右WGとリターン後 前へ運んでCF裏狙うも相手に寄せられスルーパス出せず少し前の右WGへ そこからパス出すも相手に詰め寄られクリアされる

52分、自陣センターサークル後方から右IHロングボールで左WGへ マークに1人寄せられ後方へ回り込まされ後方へパス CFは裏狙うもボール来ず


このように、岡﨑の強固な密集隊形から逆サイドのスペースへ展開してチャンスを伺うシーンは数は少ないもののあるにはあった。しかし、それでもなお岡﨑はしっかりと対応して奈良クラブのチャンスを潰してきた。そのため私は試合前に、右SBにパサー(金子雄選手など)を入れ、左右非対称の最終ラインとなるが、この逆サイドへの展開を期待してtweetしたのだが、リスクが多大であったのか、もしくはそもそもフリアン監督の思考とはそぐわないのか、それは実現しなかった。3のロングボール活用については…


3分、右CBロングボールも前に出た相手左CBへ渡る

7分、右CB→右WGへロングボールも相手にマークされタッチラインへ

13分、GKロングボール→左SBも相手に割って入られカットされる

18分、左CBからロングボール左WGに渡らずタッチラインへ

22分、左サイドからCFへ2度ロングクロスも合わず

28分、右CBロングボールのセカンドボールを右SBが回収も右WGが相手2人に詰められパス通らずタッチラインへ

32分、左SBロングボールも合わずタッチラインへ

40分、右CB右WGへロングボール→CFへクロスも相手にクリア

55分、右IH→右WGへ縦パスもオフサイド

56分、自陣リスタートから左CB前方に運び相手に中切りされ、左WGへ狙うも相手陣内左ハーフスペースペナ前へ出したロングボールも相手にインターセプト

62分、自陣リスタート後右CB右サイドへロングも相手にカット

63分、左SBロングも相手DFへ渡る


と、ロングボールを効果的に使うことが難しかったが、そんななか…


47分、右CB→高く張っていた右SBへ渡りCFへロングクロス上げるも相手マークに合い競り合いこぼれ球GK取られる

58分、GKロングボール→左IH後ろ向き頭で→CF倒れながらリターン→左IH→左WGからクロスに右WGシュート狙うも相手にカットされCFとGK競り合うもファール


このように、数は少ないもののロングボールを効果的に使うシーンもあった。先日行われた🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿プレミアリーグ第32節のマンÇvsリバプール戦でも証明されているように、選手の力が拮抗すればするほどその試合において、ロングボールの質の向上が勝利の鍵となっている。4の素早い攻撃についは…


31分、右IH→右WGと駆け上がってきた右SBと相手の又抜けワンツーでゴールライン深くからクロス CF囮となりスルー 空いたスペースに左WG進入も相手DFと競り合う こぼれ球にCFゴールラインギリギリでクロス 左IHゴールもゴールラインを割っていたとの判定

49分、右SB浮き球→CF後ろ向きで落として→右WGフリックで→左IH→左SB→左WG素早くCFへクロスも相手GKキャッチ

66分、左CB前へ相手陣内へドリブル左WGへパス 左WGゴールライン際でクロス CF強引に足を上げ合わせるも上手くミートせず相手にクリア

73分、左SB→左IH前方へ運び相手剥がす CFへスルーパス CFと相手接触するもファールならず フリアン監督猛抗議

78分、右SB→右WG相手マークも→右IH間合いを外してマークずらしてからスルーパス 左ペナ付近フリーで右WGマイナスクロス CF相手マークを上手く外しフリーでシュートも浮かせてしまいゴールバー上へ外す


このように、いくら岡崎が強固に密集隊形を牽いてきたとしても、相手よりも素早くフリーランで動いてギャップを作り、そのこじ開けたスペースに素早く進入して相手のマークをずらし、CFへスルーパスを出してチャンスを作った場面もいくつかあった。これ以外にも最初に挙げたシーンでも同様に、選手自身が他の選手を信頼し合い、限界の先を超えたチャレンジを果敢に挑戦することがもっとできれば、岡崎といえども間違いなく数多くシュートチャンスは増えていただろうし、CFや両WGもゴールを奪えていただろう。ワンチャンスではいくらなんでも荷が重すぎる。

最後に、試合後フリアン監督のインタビューでも、JFLのレベルが年々上がって拮抗していると語っていた。JFLのレベルが上がるというのは具体的には、この試合の岡﨑のような守備が非常に堅いチームが増えているということを指す。もちろん奈良クラブの守備も同様だ。そんな強固な守備に対して小手先の戦術論などでは到底太刀打ちできない。それを体験した貴重なこの敗戦を無駄にしてはいけない。アウェイ岡﨑戦ではこの試合以上の奈良クラブを見せれば優勝もまだまだ狙える。ぜひとも、その日までにスペイン人指導者のもとエコノメソッドを用いた奈良クラブが、難敵岡﨑を圧倒してきっちりと勝ってこの悔しさを晴らして貰いたい。そのためには、こんなところで悲観的になっている暇はどこにもない。もう選手達はさらなる高みへと目指して、次節アウェイ三重戦へと練習しているからだ。

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