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BI(ビジネスインテリジェンス)

BI(ビジネスインテリジェンス)とは


 Business Inteligence。企業の各部署がそれぞれに蓄積している膨大なデータを、収集・蓄積・分析・加工し、経営戦略のための意志決定を支援することを指す。
 1958(昭和33)年、「ビジネス・インテリジェンス」という言葉をIBM研究所の研究員が初めて使用し企業経営に影響を与えた。その後、コンピュータを使った企業の意思決定支援システム(DSS)として発展。1989年にアメリカの調査会社ガートナー社のアナリストによって、現在の概念へと整理された。

 BIを実現するツールがBIツール、BIシステムで、自社のサーバーにインストールして使用する「ソフトウェア型(オンプレミス)」と、インターネットを通じてBIツール側のサーバーにアクセスして使用する「クラウド型」がある。

BIツール導入の目的


  • データの収集、蓄積、統合

  • データの集計、分析

  • データの可視化、ビジュアル化

データの収集、蓄積、統合


 企業活動で生まれた様々なデータを収集し、一箇所に統合してあとから活用できるように蓄積しておくこと。データは会社の中に点在しており、それぞれがバラバラ状態では事業の上場を把握したり経営判断をするためには扱いづらいため、BIが必要となる。

データの集計、分析


一箇所に統合したデータを活用するために、それぞれのデータがどういった状況を意味しているのか、データの裏に隠れているの情報を抽出する。データを集計し、複数のデータを掛け合わせるなど、事業の状況を読み取るための分析をするため、BIが必要となる。

データの可視化、ビジュアル化


 データを集計・分析をすると、データの意味する内容を読み解くことが難しくなり、分析したデータの中から必要な情報を素早く読み取れるように、情報を可視化・ビジュアル化する必要がある。経営・マネジメント層にとって、データを早く正確に把握するためのデータの可視化・ビジュアル化にBIが必要となる。

BIツールと他のシステムの違い


  • 基幹系システム

  • 情報系システム

  • 戦略系システム

基幹系システム


 企業の基幹業務と直接関連するシステム。業務系システム、バックオフィス系システムと呼ばれることもある。営業、販売、財務、経理、人事、流通などを司る重要なシステムで、管理する対象や部門によってそれぞれ別のシステムが使われることが多くなっている。

情報系システム


 ビジネス活動を支援するためにコミュニケーションや業務の効率化を目的としたシステム。メール、チャット、オフィスソフト、グループウェアなどがあり、新しい潮流として「データウェアハウス」も注目を集めている。「データウェアハウス」は単なるデータベースではなく、基幹系など複数のシステムから、必要なデータを収集し、主題ごとに再構成して、時系列に蓄積した統合データベース。BIの一部として位置付けられており、DWHからデータ分析をかけて、最終的に経営の意思決定の精度を上げるために活用される。

戦略系システム


 BIは戦略系システムに該当する。企業の最前線の業務を戦略的に自動化、効率化するためのシステム。顧客管理システム、営業支援システム、マーケティング・オートメーションなどがある。マーケティング・オートメーションは、見込み顧客情報を企業内リストから入力、もしくはサイトへのアクセス情報から自動登録し、メルマガなどで育成していき、営業にホットリスト確度の高い顧客情報を渡すまでが主な役割。

BIツールの機能


  • データ管理系機能

  • 分析系機能

  • レポーティング系機能

データ管理系機能


 BIで大量のデータを扱うために必要な機能群。ETL(データ加工)機能とデータウェアハウス(DWH)機能が挙げられる。
 ETLとは、英語の「Extract/Transform/Load」の略で「抽出/加工/出力」という意味。企業に点在する複数のシステムからデータを抽出し、変換・加工してデータウェアハウス等へ出力する処理を支援する。
 データウェアハウスは、基幹系など複数のシステムから必要なデータを収集し、顧客や担当者別などに再構成し時系列に蓄積する統合データベースで、データ分析や意思決定を支援する。

分析系機能


集積されたデータから必要な情報を紐解くために必要な機能群。OLAP分析機能、データマイニング機能、プランニング機能が挙げられる。
 OLAPとは、「Online Analytical Processing」の略で、「オンライン分析処理」を指す。蓄積したデータに対して、「ドリルダウン」「ダイシング」「スライシング」といった処理を行うことで、特定の日だけに売上が上がった要因を深掘りし特定するといった用途に使用する分析手法。

  • ドリルダウン
     ドリルで穴を空けて地下を見るイメージです。例えば、10年間の売上げ推移から特定の年の月別推移に移る、といった使い方がドリルダウン。逆に月別から年別に移ることを「ドリルアップ」と呼びます。

  • ダイシング
     サイコロ(Dice)の面を変えるイメージ。10年間の売上げ推移から、10年間の経費推移に移るように、グラフや表の片方の軸を変えて分析するのが「ダイシング」。

  • スライシング
     ハムかなにかのように、売上げを薄く切って(Slice)取り出すイメージ。10年間の全社の売上げ推移から、商品別の売上げ推移に移るのがスライシング。

 データマイニング機能は、蓄積したデータに対して統計的な処理を行い未知の関係性や傾向を掘り出す(Mining)機能。クロス分析、相関分析、回帰分析といった複雑な統計分析を自動で行うことが可能。
 プランニング機能は、経営陣やマネージャーが予算策定などに使うことを想定した機能。蓄積された過去の様々なデータを活用してシミュレーションを行い、予算計画の根拠を得る。「What-if分析」などを使い、条件の変化によって売上や利益がどのように変化するのかをシミュレーションすることができる。

  • What-if分析
     ある予測数字の特定の条件を変更した場合、予測数字がどう変化するかを分析します。たとえば、ある商品の来年度の原価が予測されたとして、為替価格が変化した場合原価はいくらになるのかを分析する。これにより、複数のシナリオを比較することができるようになる。

レポーティング機能


 分析した機能を、スピーディーに把握できるように可視化・ビジュアライズするための機能群。ダッシュボード機能、定型レポート機能、アドホックレポート機能が挙げられる。
 ダッシュボード機能は、データの中から本当に必要なデータだけを確認できるサマリー画面。通常、経営者やマネジャー向けにカスタマイズしKPIに対する達成度などが並ぶ。アラート機能を備えるBIツールも多く危機管理にも役立つ。
 定型レポート機能は、月次の報告書など、同じフォーマットのレポートを自動で作成する機能。社内の各部署からフォーマットの違うデータを集めて、エクセルでまとめていたような業務が効率的に処理できるようになる。
ブラウザ、Word、Excel、PowerPoint、CSV、PDFなどで確認可能なBIツールがほとんど。
 アドホックレポート機能は、特定の時期や商品、地域、部署などで条件設定することを「アドホックレポート機能」と言います。たとえば大きなイベント時の経営数字だけをピックアップすることがそれにあたる。アドホック(ad hoc)とは、「特定の目的のための」という意味のラテン語。定型レポート同様、様々なデータフォーマットに対応している。

BIツールの利用シーン


  • 営業支援

  • 経営支援

  • 顧客分析

  • ABC分析

  • 在庫分析

  • エリア分析

  • 購入サイクル分析

  • バスケット分析

  • 余実分析

  • 販売時期分析

  • 故障率分析

  • 不良率分析

  • 購買分析

BIツールのメリット


  • ビッグデータを分析、加工して現状把握できる

  • 複雑な情報をシンプルに可視化できて理解しやすい

  • 経営判断に必要な情報をタイムリーに得られる

ビッグデータを分析、加工して現状把握できる


 BIツールを活用することで通常では分析しきれないような膨大なデータから必要な情報を選び取り経営判断に活かすことが可能になる。デジタル化が進む中で企業は今まで以上にたくさんの情報を収集することができるようになり、ビッグデータを眠らせておくのではなく売上向上やコストダウンなど経営に影響を与えることができる情報へと昇華させることができる。

複雑な情報をシンプルに可視化できて理解しやすい


 複雑な情報を円グラフや棒グラフなどシンプルな形式に可視化することで、議論すべきポイントを素早く見つけ出したり数字に基づいた正しい意思決定へと導くことができる。

経営判断に必要な情報をタイムリーに得られる


 状況に応じてスピーディな意思決定を求められる経営者にとって必要な情報を短時間で把握できる。経営判断の速度と正確性を高めるために役に立つ。

BIツールのデメリット


  • 導入時の設定が必要

  • 一定の費用がかかる

  • 導入するとやめにくい

導入時の設置が必要


 BIツールが社内にあるデータをしっかりと集計・蓄積するために、既存の情報ソースと連携をしたりインポートするといった設定が必要になる。BIツールのベンダーごとに導入サポートも行われているのが一般的。

一定の費用がかかる


 企業が利用するに値する無料のBIツールはどこも提供していない。無料ツールを利用することはリスクがあり、利用企業がアップロードした情報をツール提供企業が加工して販売したり、それらのデータを元に広告配信をするなど、導入企業が本来自社の競争優位性を生み出すために活用するべき貴重なデータが外部で活用されてしまう。信頼のおけるシステムを選ぶことが重要。

導入するとやめにくい


 BIツールは多くのデータを集積し経年で分析をかけるなど、データの量や利用期間が長いほど有益な分析結果を得られる可能性が高くなる。経営判断に役立つ費用対効果が高いシステムとして活用できている場合は、BIツールの利用を辞めることで事業の成長速度を落としてしまう可能性があり、辞めにくくなる。ただ、採算が合うのであれば継続する価値があり、今後もより多くのデータが企業活動の中で生み出されるため競合他社に対する競争力を保つためにもデータの活用は益々大きなポイントになる。

以上、ビジネスインテリジェンス(BI)のまとめです。