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なぜカーシェアは乗り捨てできないのか?

こんにちは。

私は都内に住んでいるので車は保有していないのですが、都内といえども電車やバスで行きにくい場所というのは存在します。
そのとき、近距離ならば自分の自転車、ちょっと距離がある場合はレンタサイクルや電動キックボードを利用しています。
(招待コード、RF5LER2Cなのでぜひどうぞ)

それ以外でも、例えば旅行の日、大きな荷物を運ぶ日なんかは車を借りることがあります。
しかしなぜ、平常時は車を借りないのか?

その理由はたった一つ、乗り捨てできないからです。

乗り捨てとは?

乗り捨てとは、車や自転車を借りた後、貸出店舗とは異なる場所で返却することを指します。

例えば、渋谷で車を借りて、お台場まで移動し、お台場で車を返すのが乗り捨てです。

カーシェアの乗り捨て事情

現行のカーシェアサービスではほとんど乗り捨ては不可能です。

三井のカーシェアーズ、dカーシェア、楽天カーシェア、Honda EveryGoの場合は一切乗り捨てが認められていません

オリックスカーシェア、トヨタシェアではごく一部の地域のみ乗り捨てが可能です。
具体的には、オリックスカーシェアでは会津若松市・郡山駅の7ヶ所の対象ステーション、トヨタシェアでは豊田市内9ヶ所の対象ステーションのみ乗り捨てが追加料金付きで認められています(なおトヨタシェアは2024年2月29日までの限定サービスです)。
他の地域では一切不可能です。

最も乗り捨てに積極的なのがタイムズカーシェアです。
2024年2月21日現在、全国で135ヶ所、都内では24ヶ所で乗り捨てに対応しています。
ただしタイムズカーシェアは全国に16000ヶ所以上のステーションを持つため、依然乗り捨てはほとんどできないと言ってよいでしょう。
また、乗り捨て料金も最安で1回あたり3,300円と、決して安くはない額です。

タイムズカーシェア公式サイトより

カーシェアサービスの場合乗り捨てはほとんど認められないことがわかりましたが、レンタカーサービスの場合もう少し乗り捨てが使いやすいです。

トヨタレンタカーの場合同一県内であれば乗り捨て無料、オリックスレンタカー、日産レンタカー、日本レンタカー、タイムズレンタカーの場合20km以内であれば乗り捨て無料です。
これらは非常に使いやすいと言えるでしょう。

ただレンタカーの場合お店が空いている時間しか使えない上、店舗数もカーシェアのステーション数に比べるとかなり少ないですよね。
利用者としてはカーシェアで乗り捨てが使えたらどんなに嬉しいことか、と思ってしまうのも事実です。

レンタサイクルやキックボードの場合

そこで、レンタサイクルやキックボードの場合どうなるのでしょうか?
これらは、基本的に乗り捨て無料ですし、そもそも乗り捨てを前提としてオペレーションされているケースが多いです。

レンタサイクルの最大手であるHello Cyclingや、電動キックボードの最大手であるLUUPの場合、借りる際に返却するステーションを事前に選択します。走行途中で返却ステーションを変更することも可能です。
返却ステーションがすでに満杯の場合、選択できないようになっています。

LUUPで借りる時の例。緑のステーションが返却可

これってカーシェアで全く同じ運用ができる気がするんですけど、どうなんでしょうか?

カーシェアもレンタサイクルも、借りる時の手順は非常に似ています。
アプリで借りる車体を選択し、ステーションに行って、QRを読み込んだりICカードをタッチしたりする。
返す時も似たようなものです。

少なくとも都内では圧倒的にレンタサイクルや電動キックボードの方が利用者が多いわけで、それでもオペレーションが回っているのだから、ずっと稼働率の低い車ならば余裕なのでは?と思うのですけれども、違うのでしょうか…?

強いて言えばカーシェアの場合はレンタサイクルや電動キックボードよりも車種が豊富です。
ラグジュアリーな車両があったり、水素燃料車があったり、EVがあったりと、せいぜい3種類くらいしかないレンタサイクルに比べたらかなりバリエーション豊かですし、(偏見ですが)車種にこだわるユーザーもレンタサイクルユーザーよりは多そうです。

でも正直個人的にはせめて一番下のランクの車種だけでも乗り捨てできるようにして欲しいです…
一番下のランクを選んでいる時点でそのユーザーは車種に興味なんかないでしょう。特に都内の場合は乗り捨てできないとどこかに止めている間に膨大な駐車料金がかかるので、かなり不便です。

例えば、下北沢に住んでいる人が、お台場に大きい荷物を運んでそのまま知人と食事する、みたいな用事があったとします。
もし乗り捨てできる場合は下北沢で車を借り、お台場で返却して、お台場で用事をこなし、帰りは電車で帰ることができます。

この場合かかるお金は

  • 下北沢→お台場の車代(下道で移動すると1時間弱。通常800円くらい)

  • お台場で用事をこなす(無料、食事代のみ)

  • 帰りの電車代(東京テレポート→下北沢、650円)

一方、乗り捨てができない現在こうなります

  • お台場で用事をこなす(駐車代3000円くらい、追加で食事代)

  • 車代(ずっと借りっぱなしなので6時間と仮定。通常4000円くらい)

これを見ると、乗り捨てができる場合は1450円+食事代で済むものが、乗り捨てができないだけで7000円+食事代に跳ね上がってしまうのです。

乗り捨てができないことにより、駐車料金時間料金の二つが、車を使っていない間にのしかかるわけです。
この二つは乗り捨てが可能なレンタサイクルや電動キックボードでは発生し得ません

もちろん、車内に自分の荷物を置いておきたい、みたいな需要もあるでしょうから、そういった人には長時間借りっ放しにできるのは大きなメリットでしょう。
しかし、単に移動にのみ使用したいユーザーも絶対に多いはず。そういう人たちにとってこの乗り捨てできない制度はカーシェアを選ばない理由にしかなりません

海外のカーシェアは?

さて、ここまでカーシェアが乗り捨てできないことが如何に不便でかつ財布に厳しいかを語ってきたわけですが、サービス提供側のメリットや実現可能性に触れないとただのクレーマーですので、これらについても考えていきましょう。

まずサービス提供側のメリットについてはもちろん利用者数の増加です。
移動だけしたいというユーザーは現在確実にレンタサイクル・電動キックボード、およびタクシーに完全に取られているわけですが、そのパイを取れる可能性が高いでしょう。また、競合他社のカーシェアから一定の顧客数を奪えるでしょう。
レンタサイクル・電動キックボードに比べると車は安全・雨に濡れない・プライベートが保たれる・荷物を運ぶのが楽という優位性があり、タクシーに比べると料金が安い・プライベートが保たれる・自分で運転を楽しめるという優位性があります。

デメリットについては客単価が減ることです。
これが利用者数の増加と天秤にかけた時に総収益数がどうなるかは、きちんとシミュレーションしないとわからないというのが正直なところでしょう。
ただ個人的には、現在の休日需要に圧倒的に偏っているカーシェアが平日も利用されることになるので、そのポテンシャルが3.5倍に増加すると考えると大したことないんじゃないか?という気がしています。引き続き長時間利用する人も普通にいるでしょうしね。

つづいて実現可能性についてです。
レンタサイクルや電動キックボードですでにオペレーションを確立できているのだから、カーシェアでも十分可能なのでは?というのはすでに書いた通り。
もう一つ触れておきたい事実として、海外のカーシェアの多くが乗り捨て可能であることが挙げられます。

海外カーシェア事業者で最大手となるのがShareNowという会社です。

この会社のサービスの特徴は主に以下のとおりです。

・24時間年中無休で利用可能
・月額料金はなく、時間料金のみ。利用は数分でも数日でもOK
・事前に予約し追加料金を払えばすれば指定の場所まで配送してもらえる
・アプリから車を選択して乗車
・ガソリン代、保険料、メンテナンスは一切不要
・利用後は同じ市内であれば路上・公営駐車場・デパートや空港の専用駐車場に乗り捨て可能
・利用中の駐車料金は無料

路上に乗り捨て可駐車料金無料など、流石にここまでのサービスは行政の相当の協力がないと日本での実現は難しいと思いますが、日本のカーシェアよりはかなり便利そうですよね。

この会社は特にドイツでの業績が主ですが、そのドイツのカーシェアリングは乗り捨て型が75%にまでなっています。
カーシェアはかなりエコなので、それで行政の協力を取り付けているみたいですね。

日本ではステーション以外の場所に乗り捨てというのは法律的にも実情的にもかなり厳しいだろうとして、ドイツ以外の国でもほとんどが乗り捨て型カーシェアが主流になっています。
ということは、日本でも実現可能なのでは、という気がしてきませんか?

最後に

今すぐにとは言わずとも、3年くらい以内にもう少し拡充してほしいものですね…

特に完全自動運転が仮に実現すれば、乗り捨て出来ない意味が非常に希薄になりますので、そういった側面でも是非実現してほしいです。

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